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慢性甲状腺炎(橋本病)とは

公開日: : 最終更新日:2018/05/02 女性に多い病気, 甲状腺

慢性甲状腺炎(橋本病)とは

甲状腺というのはのどぼとけの下に存在する臓器であり、蝶々が羽を開いているような形をしています。
ヨード(ヨウ素)を原料として甲状腺ホルモンを産生し、血液の流れに乗って脳、心臓、肝臓、腎臓といった臓器へと運搬されて、体の新陳代謝を促進するなどの役割を果たしています。

慢性甲状腺炎(まんせいこうじょうせんえん)とは、自己免疫の異常が原因で甲状腺に慢性的な炎症が生じ、甲状腺の細胞が破壊されて、これにより甲状腺機能が低下する病気のことです。

橋本病(はしもとびょう)というのは慢性甲状腺炎の別名であり、1912年(大正元年)に世界で最初にこの病気の論文をドイツの医学雑誌に発表した、九州大学の外科医であった橋本策(はかる)博士の名字を取ったものです。

慢性甲状腺炎は性別では女性に起こりやすい病気であり、男性と比較して女性のほうが20~30倍多いです。
中年女性の10%は慢性甲状腺炎になっているという話もあります。

また、歳は20代後半以降の人、なかでも30代や40代の人の割合が高く、20歳未満の人の割合は低く、幼児や学童がなるのは非常に珍しいことです。

慢性甲状腺炎(橋本病)の原因

慢性甲状腺炎はなぜ発症するのか

慢性甲状腺炎は自己免疫疾患であるため、この病気が引き起こされてしまう原因は自己免疫です。
自己免疫というのは、自分の細胞やタンパク質に攻撃を仕掛けてしまう現象のことをいいます。

免疫は体のなかに入り込んだ細菌・ウイルスなどの異物を排除し、自分の身を守る生体防御反応です。
異物が入り込むと体は異物に対抗する抗体という物質を生み出し、異物に対し攻撃を仕掛けさせて排除させようとします。

抗体は異物の形を記憶するため、時間が経過して同じ形の異物を発見し次第、攻撃をして排除するための行動に出ます。

免疫に問題がない場合、攻撃を仕掛けるのは外部から入り込んだ人体にとって有害なものだけですが、免疫に異常が起こると、体は自分の細胞やタンパク質を異物と認識して抗体を生み出し、攻撃を仕掛けるようになってしまいます。

慢性甲状腺炎の場合、甲状腺の細胞を異物と認識して攻撃を仕掛けます。
これによって細胞が破壊されてしまい、甲状腺機能が低下してしまうというわけです。

慢性甲状腺炎の遺伝との関係

前述したとおり、慢性甲状腺炎では、免疫が甲状腺細胞を敵と判断して攻撃を仕掛けて細胞を破壊し、甲状腺機能を低下させてしまいます。

甲状腺に対し自己免疫を起こしてしまうのは、もともとこの現象を起こしやすい体質であるというのが理由であり、体質は個々人の遺伝子によって変わってくるものです。
ただ、あくまで甲状腺に対し自己免疫を起こしやすい体質というだけであり、慢性甲状腺炎という病気自体を受け継いでしまうわけではありません。

また、自己免疫を起こしやすい体質の人が絶対に慢性甲状腺炎を発症するわけではなく、遺伝による体質だけでなく、別の問題が誘因となって慢性甲状腺炎を発症します。

慢性甲状腺炎の主な誘因

この病気は自己免疫が起こりやすい体質のほか、別の問題が組み合わされることによって発症すると説明しました。
では別の問題とは一体なんなのでしょうか。

この点に疑問を感じた人もいるでしょうが、代表的な誘因としてはストレス、出産、ヨードの過剰摂取をあげることができます。
なお、ヨードは昆布、ワカメ、海苔などの海藻類に豊富に含まれている栄養素です。

慢性甲状腺炎(橋本病)の症状

甲状腺腫(こうじょうせんしゅ)

甲状腺に炎症が生じることにより、はれて大きくなった状態になります。

程度には個人差があり、肉眼で確認できる大きさにまでなっているケースもあれば、医師が触ってはじめて確認できる大きさでしかないケースもあります。

甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)

甲状腺の炎症による細胞の破壊が進むと、甲状腺機能低下症を招くケースがあります。
これは血液中の甲状腺ホルモンが足りなくなる病気であり、慢性甲状腺炎を引き起こしている人の2割程度が発症します。

出現する症状はむくむ、肌が乾燥する、寒さに弱くなる、食事量は減っているのに太る、眠くなる、髪が抜ける、もの忘れしやすくなる、意欲・気力が失われる、喋りを含めて動作がゆっくりになる、お通じが悪くなる、脈が遅くなる、生理の量が多くなる、生理が長引く、流産しやすくなる…といったものです。

中高年の場合はとくに、単なる老化現象と間違われてしまっていることも少なくありません。

甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)

甲状腺ホルモンが過剰に産生されて正常に機能しなくなる病気であり、動悸、息切れが代表的な症状です。
慢性甲状腺炎を発症後、途中で甲状腺機能亢進症に移行してしまうことがあります。

甲状腺機能亢進症への移行は非常に珍しいケースではあるのですが、血縁者で甲状腺機能亢進症の人がいる場合には起こりやすくなります。

慢性甲状腺炎の急性増悪(きゅうせいぞうあく)

甲状腺の炎症が急にひどくなって甲状腺が大きくなり、痛みや発熱の症状が出現します。
また、一時的に甲状腺ホルモンが漏れ出て、甲状腺機能亢進症の動悸、息切れなどが引き起こされるケースもあります。

無痛性甲状腺炎(むつうせいこうじょうせんえん)

甲状腺にため込まれている甲状腺ホルモンが血液中にあふれ出し、一時的に血液中の甲状腺ホルモン濃度が上昇します。
甲状腺機能亢進症と間違われるような症状が出現します。
無痛性甲状腺炎というのは、甲状腺に痛みが生じることがないためにこの名称が付いています。

特発性粘液水腫(とくはつせいねんえきすいしゅ)

慢性甲状腺炎に似た甲状腺機能低下症ですが、甲状腺がはれる症状は出現します。

甲状腺機能低下による症状は慢性甲状腺炎より重く、浮腫(ふしゅ)の症状は全身に引き起こされます。
なお、浮腫というのはむくみのことをいいます。

慢性甲状腺炎(橋本病)の検査・診断

甲状腺機能検査

慢性甲状腺炎かどうかを調べるため、血液検査が行なわれています。
血液を採取することにより、血中の甲状腺ホルモン(FT4とFT3)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度を確認します。
なお、甲状腺刺激ホルモンというのは、血中の甲状腺ホルモン濃度が低いと脳の下垂体から出て、血液中の濃度が高まるホルモンです。

甲状腺刺激ホルモンは甲状腺を刺激することにより、甲状腺ホルモンの産生を促進する役割を担っています。
甲状腺ホルモンの数値が低く、甲状腺刺激ホルモンの数値が高い場合、甲状腺機能が低下している状態になっています。

また、甲状腺機能低下症の場合、血中コレステロールの数値が上昇するため、これにより甲状腺機能低下症が発見されるケースも少なくありません。

甲状腺の抗体検査

甲状腺腫が発生していて、甲状腺機能低下症を引き起こしていると、慢性甲状腺炎であることがわかります。
ただ、甲状腺機能の疑いがあるものの、甲状腺機能検査では問題が確認されないケースもあります。

この場合、甲状腺の細胞に対して攻撃を仕掛ける物質である自己抗体の有無で慢性甲状腺炎の診断を行なう形になります。
慢性甲状腺炎の場合、抗サイログロブリン抗体(TgAb)や抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)が確認されます。

なお、自己抗体は甲状腺機能検査と同じく、血液で調べる形になります。

甲状腺超音波検査

甲状腺超音波検査は甲状腺エコー検査ともいいます。
甲状腺に超音波を発信し、跳ね返ってくる反射波(エコー)を受診し、コンピュータ処理によって画像を得る方法です。

画像を見ることにより、甲状腺のはれ、血液の流れ、腫瘍(しゅよう)があるかどうかなどを把握することができます。

甲状腺細胞診

別の検査で慢性甲状腺炎であることがはっきりしない場合、細胞を調べます。
細い注射針を使用して甲状腺の細胞を吸い出し、顕微鏡で採取した細胞を観察します。

細胞の組織を見ることにより、甲状腺がはれている原因を絞り込むことが可能です。
甲状腺細胞診は、甲状腺がんと区別する目的でも行なわれています。

慢性甲状腺炎(橋本病)の治療

甲状腺ホルモン薬の使用
慢性甲状腺炎の治療では、甲状腺ホルモン薬が使用されています。
サイロキシン(チラージンS)という薬を使用し、甲状腺ホルモンの不足を補填します。
適量の服用では副作用の心配はまずありません。

甲状腺ホルモン薬を継続して服用していくことにより、血中の甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの濃度が改善し、甲状腺の機能が低下していることで出現している症状がなくなっていきます。

適量は慢性甲状腺炎を発症している人によって異なり、少量でスタートして徐々に増量していくことになります。
2~3ヶ月の期間をかけて適量が決まり、適量が決まると、以降はその量の服用で治療を継続していく形になります。

治療での注意点

慢性甲状腺炎の治療を継続しているなかで、調子がよくなったということを理由に、甲状腺ホルモン薬の服用を自分の勝手な判断でやめてはいけません。

快調のように思えるのは薬のおかげで、慢性甲状腺炎の治療は長期間にわたることがあり、根気よく続けていく必要があります。
病院での指示にしたがい、正しく甲状腺ホルモン薬の服用を続けましょう。

また、慢性甲状腺炎でも甲状腺機能が正常な場合には、特別な治療が行なわれないことが多いです。
ただ、将来的には甲状腺機能低下による症状が出現するリスクがあるため、定期的に通院して検査を受けることが大切です。

なお、定期検査の前に甲状腺がいきなり大きくはれるなど、異変が起こった場合には、定期検査の前でも医療機関へ行くことをおすすめします。

日常生活での注意点

ヨードの過剰摂取は甲状腺機能低下のリスクがあります。
また、うがい薬の継続使用によっても、同様の問題を起こすことになりかねないため、気をつけなくてはいけません。

そのほか、慢性甲状腺炎を発症している人が妊娠をすると、流産、子どもの成長障害や知的障害、妊娠高血圧症、慢性甲状腺炎の急性増悪のリスクがあります。

子どもを望む人は、計画段階で治療を受けている医療機関で相談をすることが大切です。
また、慢性甲状腺炎になっているかどうかが不明な人は、一度甲状腺機能を調べておくと安心です。

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