*

偽性副甲状腺機能低下症を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2018/04/07 甲状腺

偽性副甲状腺機能低下症とは

偽性副甲状腺機能低下症(ぎせいふくこうじょうせんきのうていかしょう)とは、副甲状腺ホルモンが十分に分泌されてはいるものの、このホルモンに反応する臓器が障害されて、副甲状腺ホルモンの作用が不十分な状態になる病気です。

副甲状腺というのは、首の前側の下にある甲状腺の裏側に位置する、米粒の半分程度のサイズの臓器です。

上皮小体(じょうひしょうたい)という別名があり、甲状腺の左右両葉の裏側の上下に2対、全部で4個存在します。

私たち人間は体の機能を保つため、血中のカルシウム濃度が常時一定範囲内にあります。

血中のカルシウム濃度が落ちそうになると、副甲状腺が副甲状腺ホルモンを出し、骨と腎臓に働きかけて血中カルシウム濃度を高めます。

偽性副甲状腺機能低下症では副甲状腺ホルモンの骨や腎臓での作用が不十分であり、血中カルシウム濃度が落ちて種々の症状が出現します。

偽性副甲状腺機能低下症は指定難病であり、国内では400名程度の人がこの病気にかかっていると推測されており、非常にめずらしい病気です。

遺伝性が認められることがあり、家族内で偽性副甲状腺機能低下症の人がいる場合には、検査を受けることが推奨されています。

また、甲状腺という言葉が付いていると女性に多い病気ではと思う人がいるでしょうが、甲状腺と副甲状腺はまったく別の臓器です。

偽性副甲状腺機能低下症は極端に女性のほうが患者の割合が高い、男性のほうが患者の割合が高いということはありません。

偽性副甲状腺機能低下症の原因

偽性副甲状腺機能低下症はどうして起こる?

血液中のカルシウム濃度は、人間の体の機能を保つため、常時一定の範囲内の値を示します。

血液中のカルシウム濃度が落ちそうになると、副甲状腺から副甲状腺ホルモンが出て、骨と腎臓に働きかけて血液中のカルシウム濃度を高めさせるようにします。

偽性副甲状腺機能低下症は副甲状腺ホルモンが骨や腎臓での作用が不十分であり、血液中のカルシウム濃度が落ちて、種々の症状が出現するのです。

遺伝子の異常

偽性副甲状腺機能低下症は、タンパク質の一種であるGsαタンパクの機能異常によって引き起こされるケースが多いとされています。
遺伝子のDNAはタンパク質を作る設計図であり、もともとDNAの異常があることが、Gsαタンパクの機能が異常になる原因です。

もともとのDNAの異常は遺伝することばかりではなく、遺伝しないものもあります。
また、遺伝子検査を行なっても、この遺伝子異常が発見されない人もいます。

遺伝する病気?

偽性副甲状腺機能低下症は遺伝するケースとしないケースがあります。
病気を起こす異常な遺伝子を保有していても、症状が出現しない人もいます。

偽性副甲状腺機能低下症の症状

主な症状

テタニー症状という、主に手足の筋肉に起こるつっぱり、痙攣(けいれん)、手足や口もとのしびれが偽性副甲状腺機能低下症で起こり得る症状のなかに含まれます。
痙攣はひどい場合には体中に起こることがあるほか、失神のような状態になることもあります。

また、外からの光を集めてピント合わせを行なう役割を担っている目の水晶体が白くにごり、視界が全体的にかすむ、視力が下がる、光がまぶしく感じる、明るいときと暗いときとで見え方が異なるなどの症状を引き起こす、白内障(はくないしょう)を招きやすくなります。

病型による症状

偽性副甲状腺機能低下症には複数の「型」があります。
型によっては丸顔になる、身長が同性同年齢の平均と比較して著しく低いまたは成長速度が遅い、手足の指が短い、皮膚の下の正常では骨が存在しないところに骨が形成される、肥満、知能発達が遅いなどの症状が引き起こされる病型もあります。

そのほかの症状

歯の数の過不足や歯が異常に大きいまたは小さいなどの歯の発育障害、不安、抑うつ、心不全(しんふぜん)、低血圧(ていけつあつ)、甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)、無月経(むげっけい)などの症状が起こることもあります。

絶対に症状は出現する?

血中カルシウム濃度が低下すると、必ず症状が出現するとは限りません。
自覚症状が全然なく、たまたま検査を受けて異常が発見されることもあります。

偽性副甲状腺機能低下症の検査・診断

血液検査

血液中のカルシウム濃度、リン濃度、副甲状腺ホルモン濃度を血液検査で把握することが可能です。

カルシウム濃度がアルブミン補正値8・5mgdl未満、リン濃度が4・5mgdl以上で、副甲状腺ホルモンが30pgml以上を示した場合には、偽性副甲状腺機能低下症の疑いがあると判断されます。

レントゲン検査

X線写真の撮影を行なうことにより、骨の成長障害の有無が確認されます。

エルスワース・ハワード試験

偽性副甲状腺機能低下症の診断を確定するために行なわれている検査です。
副甲状腺ホルモンの投与を行ない、一定時間が経過したあとのリンと細胞内情報伝達物質の一種であるサイクリックAMPを測定します。

この検査の結果により、偽性副甲状腺機能低下症の型がわかります。

偽性副甲状腺機能低下症の治療

主な治療法

偽性副甲状腺機能低下症の根本的な治療方法は確立されていません。
したがって、治療の基本は血中のカルシウム濃度を正常な範囲内に近付け、濃度が落ちることで出現する症状を解消することです。

そしてそのために毎日1~2回の頻度で、活性型ビタミンD製剤を飲み続けることになります。
また、状況次第ではカルシウム製剤の飲み薬を併用する場合もあります。

そのほか、テタニーなどの症状が強く出ているときには、カルシウム製剤を注射する治療が行なわれることがあります。
使用する薬の量や種類は、血液や尿の検査を行なって見直しをする必要があります。

なお、活性型ビタミンD製剤に頼ることなく血中カルシウム濃度を正常範囲内に保てるようになるケースもありますが、まれです。
基本的には活性型ビタミンD製剤を使用する治療は生涯、続けていかなければなりません。

活性型ビタミンD製剤は安全?

血液や尿の検査を定期的に受け、その人に合った量を使用していれば異常を起こすことはなく、突然に副作用が出たり、長期間の使用で副作用のリスクが高まったりするようなこともありません。

しかし、その人に合った量をオーバーする量の薬の服用を継続していると、高カルシウム尿症(こうかるしうむのうしょう)や高カルシウム血症(こうかるしうむけっしょう)を引き起こしてしまいます。

高カルシウム尿症では、長引くと腎結石(じんけっせき)や尿管結石(にょうかんけっせき)が発生することがあり、腎機能低下も招いてしまいます。

一方、高カルシウム血症では吐き気、おう吐、食欲がない、お腹の痛み、便秘、腸閉塞(ちょうへいそく)を起こすことがあるほか、尿量が多くなったりのどが渇いたりといった、糖尿病(とうにょうびょう)に似た症状が引き起こされることがあります。

高カルシウム血症がひどい場合には、意識障害が出てしまうこともあります。

そのほかの治療法

甲状腺機能低下症が一緒に起こっている人に対しては、甲状腺ホルモン薬を飲むことにより、甲状腺ホルモンの不足をカバーします。
また、成長ホルモンの量が少ないことが原因で低身長になっている場合には、成長ホルモンの注射が行なわれます。

あってはいけない場所に骨が形成されたり、手足の指が短いといった骨格の異常がある場合には、外科的治療が検討されることになります。

偽性副甲状腺機能低下症はどのような経過をたどる?

活性型ビタミンD製剤を使用し続け、血中カルシウム濃度をほぼ正常に保つことにより、濃度低下による症状を起こすことなく普通の暮らしを送っていくことが可能です。

病院に通い続け、適切な治療を受けていれば、早死にしてしまうようなことも基本的にはありません。

偽性副甲状腺機能低下症は普段の暮らしで何に気をつける?

薬の使用を自分だけの判断で勝手にやめる、量を変更する行為は、血中カルシウム濃度低下による症状出現の原因になるだけでなく、薬の副作用を招いてしまうことにもなりかねません。

定期的な通院で血液や尿を調べ、自分に合った薬の投与量で治療を継続していくことが大切です。

また、食事に気を遣うようなことは通常は要りませんが、活性型ビタミンD製剤を使用している人は、カルシウムの豊富な食品に関して摂り過ぎや不足することがないように補う必要があります。

そのほか、この病気で肥満が起こっている場合には、食事療法や運動療法に取り組む形になります。

関連記事

甲状腺の検査の内容やわかる事

甲状腺ホルモン検査でわかる事 『甲状腺ホルモン』というのは、喉仏の下のあたりで気管の外側に付い

記事を読む

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)を詳細に:原因,症状,検査,治療など

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)とは 先天性甲状腺機能低下症(せんてんせいこうじょ

記事を読む

甲状腺ホルモン不応症を詳細に:原因,症状,検査,治療など

甲状腺ホルモン不応症(こうじょうせんほるもんふおうしょう)とは、先天性(生まれつき)の病気で

記事を読む

亜急性甲状腺炎を詳細に:原因,症状,検査,治療など

甲状腺(こうじょうせん)とは、体の新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンを産生する臓器です。

記事を読む

甲状腺機能低下症を詳細に:原因,症状,検査,治療など

甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)とは、甲状腺の働きが悪くなることで甲状腺

記事を読む

甲状腺髄様がんを詳細に:原因,症状,検査,治療など

甲状腺髄様がん(こうじょうせんずいようがん)とは、甲状腺がんの一種であり、この部位のがん全体

記事を読む

甲状腺がんを詳細に:原因,症状,治療,予防,術後など

甲状腺がんとは 甲状腺がん(こうじょうせんがん)とは、甲状腺ホルモンを分泌する器官である甲状腺

記事を読む

副甲状腺機能低下症を詳細に:原因,症状,検査,治療など

副甲状腺機能低下症とは 副甲状腺機能低下症(ふくこうじょうせんきのうていかしょう)とは

記事を読む

副甲状腺機能亢進症を詳細に:原因,症状,検査,治療など

副甲状腺機能亢進症とは 副甲状腺機能亢進症(ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう)と

記事を読む

no image

慢性甲状腺炎(橋本病)とは

慢性甲状腺炎(橋本病)とは 甲状腺というのはのどぼとけの下に存在する臓器であり、蝶々が羽を開いてい

記事を読む

びまん性汎細気管支炎(DPB)を詳細に:原因,症状,検査,治療など

びまん性汎細気管支炎(DPB)とは びまん性汎細気管支炎(びまんせいはんさいきか

ぶどう膜炎を詳しく:原因・症状・検査・治療など

ぶどう膜炎とは 眼球はその内側に存在する虹彩(こうさい)・毛様体(もうようたい)・脈

サイトメガロウイルス網膜炎を詳しく:原因・症状・検査・治療など

サイトメガロウイルス網膜炎とは 眼球のいちばん奥に存在し、光を感じる神経の膜のことを

粉瘤を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

粉瘤とは(概要) 粉瘤は「ふんりゅう」と読み、皮膚の下に形成された袋状の良性腫瘍

心室細動を詳細に:原因,症状,検査,治療など

心室細動とは 心室細動(しんしつさいどう)はVF(Ventricular fib

→もっと見る

PAGE TOP ↑