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亜急性甲状腺炎を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2018/02/16 甲状腺

甲状腺(こうじょうせん)とは、体の新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンを産生する臓器です。

この臓器は首の前方、のどぼとけのすぐ下に位置しており、縦が4cm程度、重量が18g前後あり、ちょうど蝶が羽を開いたような形をしています。

蝶の羽にあたる部分のことを右葉(うよう)、左葉(さよう)といい、蝶の胴体に該当する真ん中の部分のことは峡部(きょうぶ)といいます。
峡部は靭帯(じんたい)で、すぐ後ろには肺へといたる空気の通り道である気管があります。

峡部はこの位置で固定されており、気管は右葉と左葉によって取り囲まれています。
亜急性甲状腺炎(あきゅうせいこうじょうせんえん)とは、この甲状腺に炎症が生じる病気です。

亜急性というのは、急性と比較して長引く病気であることをさしていますが、慢性化するところまではいかず、快復するまでには3ヶ月前後を要することになります。

甲状腺の病気は女性に多いというイメージがある人は多いでしょうが、亜急性甲状腺炎も男性と比較して女性の罹患者が圧倒的多数を占めています。
男性と比較して、女性のほうが亜急性甲状腺炎を引き起こすリスクが12倍高く、年齢では30~40歳代が多数を占めています。
6~9月の暑い時期に起こることが多いものの、冬季には起こらないというわけではありません。

原因は、鼻やのどの炎症に引き続いて亜急性甲状腺炎にかかることがあるため、ウイルスに感染することで起こる病気ではないかという見方がされていますが、どのような種類のウイルスによって引き起こされるのかなど、はっきりとしたことは現状においてわかっていません。

また、遺伝の関与についても不明です。
なお、ウイルス感染が原因と考えられてはいるものの、ほかの人に感染することはありません。

亜急性甲状腺炎の症状としては甲状腺の腫れ、痛みがありますが、病気は快復しやすく、亜急性甲状腺炎の1年後以上の再発は、1~2%と低いです。
再発を招いてしまった場合の症状は、初回と比較して重くないといわれています。

そのほか、甲状腺の痛みが引き起こされない場合は無痛性甲状腺炎(むつうせいこうじょうせんえん)という病気であり、この病気に関しては亜急性甲状腺炎とは異なり再発を招きやすく、甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)に変化しやすいのが特徴です。

なお、甲状腺機能低下症とは、慢性的な甲状腺の炎症などによって甲状腺ホルモンが分泌されなくなり、活動性が著しく低下してむくみや倦怠感(けんたいかん)などの症状が引き起こされて、活気がなくなってしまう病気です。

亜急性甲状腺炎の原因

亜急性甲状腺炎は何によって引き起こされてしまうのか

亜急性甲状腺炎の原因は、現状において解明されていません。

この病気にかかる40~50%の人が、亜急性甲状腺炎の症状が出現するひと月以上前に風邪(かぜ)などの上気道感染(じょうきどうかんせん)にかかっており、鼻やのどの炎症に引き続いて発症することがあるため、ウイルスが原因で起こるという説があります。

しかし、どの種類のウイルスによって亜急性甲状腺炎が引き起こされてしまうのかは不明です。

また、遺伝が関与しているかどうかという点も、はっきりしていません。
なお、6~9月の夏季に起こることが多いものの、冬季にも起こるということが知られています。

そのほか、ウイルス感染原因説があるということで、人から人へと感染がひろがってしまうのではないかと思う人もいるでしょう。
この点に関してですが、亜急性甲状腺炎はほかの人に感染させてしまう心配はありません。

亜急性甲状腺炎にかかりやすい人

亜急性甲状腺炎は、男性と比較して女性のほうがはるかにかかりやすい病気です。
女性のほうが男性より12倍も亜急性甲状腺炎を起こしやすいといわれています。
また、年齢では30~40歳代の女性が多数の割合を占めている病気です。

亜急性甲状腺炎の症状

どういう症状が出現するのか

亜急性甲状腺炎では、甲状腺の腫れや痛み、発熱の症状が引き起こされます。

甲状腺が腫れる症状は、全体が硬く腫れて痛みを感じることもありますが、多くは左または右のいずれか一方が硬く腫れて、押すと痛みを感じます。
痛みは軽く触った程度で飛び上がるほどの強さになることもあります。

また、手で押したり軽く触ったりしなくても、物を飲み込む、服が当たるようなわずかな刺激を受けるだけでも、強い痛みを感じる人も少なくありません。

痛みは甲状腺のある位置ではなく、聴覚器官の痛みとして感じ取ることがあり、甲状腺ではなくこのような痛みが起こっている場所の病気が起こっていると自己判断されることがあります。

奥歯の痛みとして感じ取ることもあり、この場合には歯が悪いと自己判断して歯科医院で受診するという行動に出るような人も少なくありません。

また、腫れや痛みの症状は、右に起こっていたものが左へ移ったり、左で起こっていたものが右へ移ったりすることがあります。
そのほか、発熱の症状も人によって程度の差があり、微熱程度の人もいれば、40℃近くまで上がる人もいます。

なお、亜急性甲状腺炎の症状が出現する前段階には、風邪に似た症状が起こり、そのあとで突然に発症することが多いです。

甲状腺機能の亢進(こうしん)によって出現する症状

亜急性甲状腺炎では、甲状腺機能の亢進を伴うケースがあります。
そしてこのことにより、バセドウ病と同様の症状が引き起こされることがあります。

具体的には、体がだるくなる倦怠感(けんたいかん)、胸がどきどきする動悸(どうき)、息切れ、発汗、体重低下、手のふるえなどが起こり得ます。

ただ、バセドウ病とは亢進症のしくみは違っており、バセドウ病では甲状腺が甲状腺ホルモンを次々につくり出して血中に分泌していますが、亜急性甲状腺炎では、炎症で甲状腺組織が壊れてしまい、甲状腺にため込まれていた甲状腺ホルモンが急激に血中へと流出して濃度が上昇します。
そのため、甲状腺機能の亢進が長引くことはありません。

また、甲状腺機能の亢進による症状のあと、一過性(いっかせい)の気力の落ち込みや手足のむくみ、冷えといった、甲状腺の機能が低下することによる症状の出現を経て、正常な状態になる場合もあります。

亜急性甲状腺炎の検査・診断

血液検査

赤沈(せきちん)が異常に低く、CRPの数値が高まっていることが、血液検査で把握できます。
赤沈というのは赤血球沈降速度(せっけっきゅうちんこうそくど)の略で、試験管内における赤血球が沈む速さを調べる方法です。

この検査によって、炎症を伴う病気が起こっているかどうかや、起こっている場合にはその程度を確認することが可能です。
一方のCRPは、炎症や組織細胞が壊れると血液中に増加するタンパク質のことをいいます。

また、甲状腺のなかにため込まれているホルモンが血液中へと流出すると甲状腺ホルモンが上昇し、甲状腺の分泌を促進する甲状腺刺激ホルモンが低下することがあります。

これはバセドウ病でも一緒の結果が出ますが、甲状腺刺激ホルモンが測定限界以下にまで低くなることは少なく、バセドウ病の原因物質であるTSHレセプター抗体という自己抗体が陽性を示さないため、亜急性甲状腺炎と見分けることが可能です。

画像検査

体の装置をあてて超音波を発し、跳ね返ってくるエコー(反射波)を受け取り、コンピュータ処理で体内の様子を画像化して診断する方法です。

超音波検査には腹部超音波検査や心臓超音波検査などがありますが、亜急性甲状腺炎を調べる場合の超音波検査は、甲状腺超音波検査といいます。

のどに専用ジェルを塗布して超音波を発する装置をあてて、甲状腺の異常の有無を探ります。
時間は5分ほどしかかからず、圧迫感などを感じることなく外来で受けることが可能な検査です。

核医学検査

甲状腺シンチグラフィという検査が行なわれています。
これは甲状腺にヨウ素が集まるしくみを利用した検査であり、放射性ヨウ素を体内にとり入れることで、その取り込まれかたを確認します。

この検査によってヨウ素が甲状腺に取り込まれていないのを把握することができ、甲状腺機能の亢進が起こっていても、バセドウ病と見分けることが可能です。

亜急性甲状腺炎の治療

主な治療方法

亜急性甲状腺炎は自然に快復することが多い病気のため、症状の軽減を目的とした対症療法が中心になります。
この病気の治療では、引き起こされる症状に合った種類の薬の投与が行なわれています。

NSAIDs(エヌセッズ、エヌセイズ)

非ステロイド性抗炎症薬ともいいます。
後述する副腎皮質ホルモンと比較して体にかかる負担が軽く副作用が少ないこと、速やかに薬の使用量を少なくしたり、使用を中止したりできることが長所です。

亜急性甲状腺炎で起こる軽い痛みや腫れを抑制する効果を狙って使われている薬であり、一般的には内服薬が選択されます。

副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン

ステロイドともいいますが、NSAIDsと比較して高い効果が発揮されるというのが強みです。

ひどい甲状腺の痛み、腫れ、発熱の症状が速やかに解消されます。
ただ、薬の使用量を少なくしたり中止するタイミングが早すぎると、症状が再燃してしまう原因になります。

薬は2ヶ月前後は使用を続け、甲状腺機能の改善を確認した上で、使用を止めます。
途中で薬の使用をやめてしまうと、何度も再発してしまう原因になってしまいます。

ベータ遮断(しゃだん)薬

この薬は緊張が高まり、神経が興奮することによって出現する症状を抑制する効果を狙って使用されます。
亜急性甲状腺炎の症状として起こり得る、動悸や手のふるえなどの症状に対して効果的です。

甲状腺ホルモン薬

甲状腺機能が落ちてしまった人に対して使用されている薬です。
甲状腺ホルモンを補充することにより、機能低下による症状を抑制します。
元々、体内に存在するホルモンを補充するため、副作用が軽いのが特長のひとつです。

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