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甲状腺ホルモン不応症を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2018/01/10 甲状腺

甲状腺ホルモン不応症(こうじょうせんほるもんふおうしょう)とは、先天性(生まれつき)の病気であり、甲状腺ホルモンが血液中に多量にあるにもかかわらず、十分に機能しなくなるものです。

甲状腺というのは、のどぼとけの下に位置する蝶々が羽を開いているような形をした臓器であり、ヨード(ヨウ素)を材料にして甲状腺ホルモンを産生しています。
甲状腺ホルモンは血流に乗って脳、心臓、肝臓、腎臓といった各臓器へと運搬されて、体の新陳代謝を促進するなどの重要な役割を担っています。

甲状腺ホルモンが不足すると甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)といって、寒さを感じやすくなり、発汗量が少なくなって肌が乾燥するなどの異常が起こります。

反対に甲状腺ホルモンが過度に多いと甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)といって、暑さを感じやすくなり、発汗量が多くなったり激しい動悸を起こしたりします。

また、甲状腺ホルモンは脳の発育にまで関与しており、赤ちゃんのころに甲状腺ホルモンが不十分な状態になると、知能発達遅延(ちのうはったつちえん)をはじめとする障害を抱えるようになってしまうリスクがあります。

甲状腺ホルモンの量は不足していても過度にあっても不調を起こしてしまうため、健康な人の体のなかでは、脳の下垂体という場所で血液中の濃度が自動的に適切に保たれています。
すでに述べたとおり、甲状腺ホルモン不応症は血液中に甲状腺ホルモンが十分あるものの、働きが悪くなる病気です。

働きが悪くなることにより、体はまだまだ甲状腺ホルモンが不足していると勘違いしてしまい、大量のホルモンを産生するという状態になります。
これにより、甲状腺ホルモンの働きが悪くなった分を甲状腺ホルモンが増量することによってカバーされている状態になっています。

国内では100人程度の症例が報告されていますが、甲状腺機能亢進症と診断されている人のなかには、実は甲状腺ホルモン不応症である、診断が下されていない状態、甲状腺ホルモン不応症であることに気づいていないという人がいるとも考えられており、実際には報告されている症例数より多くの患者がいるのではないかという見方もされています。

甲状腺に引き起こされる病気は、女性のほうが男性に比べて発症しやすいのですが、甲状腺ホルモン不応症に関しては、女性か男性のどちらかの割合が高いということはありません。

そのほか、2015年1月より国の定める難病として、甲状腺ホルモン不応症は医療費助成の対象の病気に分類されています。

甲状腺ホルモン不応症の原因

体内で甲状腺ホルモンが機能するには、細胞核内部に存在するタンパク質の一種である甲状腺ホルモン受容体と結び付く必要があります。

甲状腺ホルモン受容体にはα(アルファ)型とβ(ベータ)型の2種類があり、β型の甲状腺ホルモン受容体に問題が生じており、この受容体の機能が低下していることにより、甲状腺ホルモン不応症を発症している人が大部分を占めています。

ただあくまで大部分を占めているということであり、人によっては甲状腺ホルモン受容体に問題がないにもかかわらず、甲状腺ホルモン不応症を発症している人もいます。

また、甲状腺ホルモン不応症は発症している人がまわりの人にうつしてしまうような病気ではありませんが、常染色体優性遺伝の形で遺伝する病気です。
甲状腺ホルモン不応症を引き起こしている人の子どもは、50%の確率でこの病気にかかってしまいます。

ただ、母親と父親の両方が甲状腺ホルモン不応症ではない人でも、発症した本人の代になって初の遺伝子の異常が引き起こされて、甲状腺ホルモン不応症を発症するケースも珍しくありません。

そのほか、慢性甲状腺炎(まんせいこうじょうせんえん)、またの名を橋本病(はしもとびょう)という病気が付随して起こる可能性があるほか、珍しいケースではあるものの、甲状腺機能亢進症に甲状腺ホルモン不応症が付随して起こるケースもあります。

よく間違われていることですが、甲状腺不応症は慢性甲状腺炎や甲状腺機能亢進症と同じ病気ではありません。

慢性甲状腺炎や甲状腺機能亢進症は自己免疫疾患であるのに対し、甲状腺ホルモン不応症は家族性・先天性疾患です。
別の病気である以上、治療方法には違いがあります。

甲状腺ホルモン不応症の症状

甲状腺ホルモン不応症になった場合、発症した人の大半は甲状腺が大きくはれているような状態になります。

はれるといわれると痛みなどを伴うのではないかと思う人もいるでしょうが、見た目の変化以外に痛くなるなどすることはなく、これといった自覚症状がないまま過ごしているケースも多いです。

甲状腺ホルモン不応症は甲状腺ホルモンの働きが悪くなっているために、甲状腺ホルモンの産生が不十分な場合の症状が引き起こされるのではないかと思われやすいのですが、実際には違います。

甲状腺ホルモンの働きが悪いために、体はまだまだ甲状腺ホルモンを欲していると勘違いして、大量の甲状腺ホルモンを産生します。

この現象によって甲状腺ホルモンの働きが悪いぶんがカバーされているため、甲状腺ホルモンが不十分な状態での症状は引き起こされないケースが多いです。
ただし、心臓は甲状腺ホルモンに対する反応がさほど悪くなっていないため、血液中の甲状腺ホルモンが増加したことによる影響を受けやすくなっています。
過剰な甲状腺ホルモンによって心臓に刺激が加わり、脈拍数が増加して動悸の症状が出現することがあります。

そしてこの症状をほうっておくことにより、心疾患である心房細動(しんぼうさいどう)を招いてしまうことにもなりかねません。
また、注意欠陥多動障害といって、落ち着きがなくなる人も、甲状腺ホルモン不応症を発症している人に多いことがわかっています。
そのほか、症状が重い人のなかには、起こりやすいかどうかでいうと起こりにくい問題ではあるのですが、先天的に甲状腺ホルモンが不
十分な状態で出現する知能発達遅延、低身長、難聴などの異常が付随して起こるケースもあります。

甲状腺ホルモン不応症の検査・診断

甲状腺ホルモン不応症を引き起こしているかどうかを調べる方法としては、血液検査をあげることができます。
採血を行なうことにより、甲状腺ホルモン(FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)の数値を確認します。

甲状腺刺激ホルモンというのは、血液中の甲状腺ホルモンの濃度が下がったときに、脳の下垂体から出るホルモンであり、甲状腺を刺激することで甲状腺ホルモンの産生を促進する役割を担っているものです。

甲状腺ホルモンは高い数値を示しているのに対し、甲状腺刺激ホルモンの濃度に異常がないか、高くなっている場合、甲状腺ホルモン不応症を起こしているかもしれません。
かもしれないとしているのは、このような検査結果は別の病気によっても出るものだからです。

甲状腺ホルモンが高い数値を示し、甲状腺刺激ホルモンの数値が異常なしか高まっている状態をTSH不適切分泌症候群(ティーエスえいちふてきせつぶんぴつしょうこうぐん)と呼びますが、この状態にはTSH産生腫瘍(てぃーえすえいちさんせいしゅよう)を引き起こしている場合もなります。

TSH産生腫瘍もまれな病気であり、これは脳の下垂体に腫瘍が形成されて、甲状腺刺激ホルモンが過剰に分泌されるものです。

甲状腺ホルモン不応症とTSH産生腫瘍の区別のしかたですが、甲状腺ホルモン不応症はTSH産生腫瘍と違って家族性・遺伝性の病気であるため、親や兄弟や姉妹、子どもに同様の検査結果が出た場合には、甲状腺ホルモン不応症の疑いがあります。

しかしながら、甲状腺ホルモン不応症は、検査を受けた人の代で遺伝子の異常が起こり、発症するケースもあるため、β型甲状腺ホルモン受容体の遺伝子解析をすることが推奨されています。

この方法によって遺伝子の異常があることを突き止め、受容体の機能が悪くなっていることがわかれば、甲状腺ホルモン不応症の診断が確定します。

なお、受容体が正常でも甲状腺ホルモン不応症を引き起こしている人もいるため、遺伝子解析の結果が正常=甲状腺ホルモン不応症ではないと決め付けることはできません。
このような結果を示したケースでは、一定の期間を置いて甲状腺ホルモン不応症の検査とTSH産生腫瘍の検査を行なう方法があります。

なお、TSH産生腫瘍を引き起こしているかどうかを見極めるための検査としては、画像検査である下垂体のMRI検査を実施する方法があります。

甲状腺ホルモン不応症の治療

甲状腺ホルモン不応症を引き起こしている大部分の人は、健康な人と大差のない日常生活を送ることが可能です。
そしてこの場合には、なにか特別な治療を受ける必要がなく、経過観察のみとなります。

ただ、大部分の人であり、すべての人にあてはまることではなく、脈拍数が増加し、動悸など心臓の症状が引き起こされてしまっている人に対しては、飲み薬を使った治療が行なわれます。
使用される飲み薬としては、β遮断薬(βブロッカー)をあげることができます。

β遮断薬は脈拍を抑制し、動悸の症状が出現しないようにして、心臓に無理をさせないようにする薬です。
この薬を使用することは、動悸の症状をほうっておくことによって起こる心房細動の対策としても効果的です。

心房細動は脳梗塞(のうこうそく)を起こすリスクを上昇させてしまうため、甲状腺ホルモン不応症で動悸がある人は、治療を受けなければいけません。
そのほか、脈拍数が増加している人は、ハードな運動などを控えることも大切です。

なお、日常生活における制限はこのぐらいであり、生活や食事制限といったことをしなければいけなくなるようなことは、別の病気が付随していたり、深刻な状態を招いたりしない限りは基本的にありません。

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