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大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症)を詳しく:原因・症状・検査・治療など

公開日: : 最終更新日:2018/05/17 心臓・血管の病気

大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症)とは

大動脈弁(だいどうみゃくべん)は、心臓の左心室(さしんしつ)と上行大動脈(じょうこうだいどうみゃく)という太い血管の境にある心臓の出口部分の逆流防止弁です。

左心室が収縮し、心臓から上行大動脈へと血液が押し出されるときは開いて、それ以外は閉まっているという働きを繰り返している部分です。
心臓から押し出された血液は、全身へと送り出されます。

大動脈弁閉鎖不全症とは、心臓より上行大動脈に血液が押し出されるときに開閉する大動脈弁が完全に閉じず、心臓内への血液の逆流を起こしてしまう病気のことです。

大動脈弁の閉鎖が不十分なために起こる血液の逆流によって、左心室の中の血液量が増し、心臓の左心房(さしんぼう)の中の血圧が高まります。

すると心臓にかかる負担が大きくなり、これをカバーするために心肥大(しんひだい)、心拡大(しんかくだい)を起こし、長期にわたると心臓が体中で必要なだけの血液を供給することができなくなって、心不全(しんふぜん)にいたります。

大動脈弁閉鎖不全症は大動脈弁逆流症ともよばれており、重症化すれば命にかかわる危険な病気です。

大動脈弁閉鎖不全症には、突然に発症する急性(きゅうせい)と、徐々に状態が悪化する慢性(まんせい)があります。

急性の大動脈弁閉鎖不全症の主な原因としては、感染性心内膜炎(かんせんせいしんないまくえん)、大動脈解離(だいどうみゃくかいり)といったものを、慢性の大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症)の主な原因としては、弁または上行大動脈が自然にもろく弱くなることのほか、リウマチ熱(りうまちねつ)といったものをあげることができます。

大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症)の原因

大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症)は、大動脈弁そのものの弁の障害によって起こります。

そしてこのほかには、大動脈の障害によって起こる大動脈弁閉鎖不全症もあります。
なお、基本的に、遺伝することのない病気です。

大動脈弁そのものの弁の障害によって起こる場合

動脈硬化(どうみゃくこうか)で弁が壊れてしまうことが、原因になります。
年齢の高まり、高血圧(こうけつあつ)、脂質異常症(ししついじょうしょう)、糖尿病(とうにょうびょう)といった原因によって進行します。

感染性心内膜炎やリウマチ熱といった病気により弁が壊れてしまうことも、大動脈弁閉鎖不全症の原因です。
そのほか、二尖弁(にせんべん)という先天異常も大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症)の原因に含まれます。

これは生まれつきの弁の形の異常であり、正常な状態では3枚の尖弁で構成されている大動脈弁が2枚で構成されるのが二尖弁です。
弁が2枚しかないことで1枚の弁にかかる負担が大きくなり、弁が壊れるリスクが高まってしまいます。

大動脈の障害によって起こる場合

大動脈の障害によって起こる大動脈弁閉鎖不全症の中にも、動脈硬化が含まれます。
動脈硬化で大動脈が拡大することが、大動脈弁閉鎖不全症原因になります。

動脈硬化のほかには、弁輪拡張症(べんりんかくちょうしょう)、マルファン症候群(まるふぁんしょうこうぐん)といった先天性疾患(せんてんせいしっかん)によっても大動脈の拡大は生じます。

そのほか、急性大動脈解離(きゅうせいだいどうみゃくかいり)、解離性大動脈瘤(かいりせいだいどうみゃくりゅう)といった大動脈が裂けて広がる病気によっても大動脈弁閉鎖不全症は起こり、高安動脈炎(たかやすどうみゃくえん)、梅毒(ばいどく)といった大動脈に炎症が生じる病気によっても大動脈弁閉鎖不全症が起こります。

症状

軽度の段階では症状が出現しません。
これに対し、重度では、心不全症状が出現します。

症状の出かた

初期は無症状です。
ごく軽症では、生涯にわたってこれといった問題を起こすことなく過ごす方もいます。
病気が進行すると、動悸(どうき)、階段や坂道ののぼりおりで息切れが起こります。

より悪化すると安静時の息切れ、夜の寝ているときに突然に息切れが起こる夜間一過性呼吸困難(やかんいっかせいこきゅうこんなん)、横になるだけで息苦しさをおぼえ、常に体を起こした体勢をとっていなければいけなくなる起座呼吸(きざこきゅう)の症状が起こるようになってきます。

また、胸が痛む、咳(せき)が止まらなくなるといった症状みられます。
急性の場合は慢性とは異なり、急激な心不全症状が起こります。

とくに注意が必要な症状とは?

起座呼吸が起こるようになった状態は危ないです。
この症状は心不全の症状としては一番重いものの一つであり、命にかかわることもあります。

重い心不全症状を起こすような状態では、入院をして治療を受けなければいけません。
なお、心不全症状が起こっている原因が、大動脈弁閉鎖不全症であるとは限りません。

たとえば息切れの症状は、心臓の深刻な問題があれば出現しますし、肺の病気、貧血(ひんけつ)によって起こることもあります。
どのような病気などが症状を起こしているのか、医療機関で調べることが重要です。

検査・診断

大動脈弁閉鎖不全症は自覚症状がなく、健康診断や何か別の病気で医療機関で受診したところ、聴診で偶然に発見されることもある病気です。
症状がある場合には、動悸・息切れを訴えて病院を訪れる方が多いです。

受診に適した診療科

動悸・息切れなど大動脈弁閉鎖不全症で出現する症状の中にあてはまるものが起こったとき、病院に行くとして何科が適切なのでしょうか。

中にはこのことが気になって、どこの病院へ行くかで迷ってしまう方もいることでしょう。
この点に関してですが、かかりつけの医療機関があるという方は、まずはその医療機関へ、かかりつけの医療機関がないという方は、循環器内科または心臓血管外科へ行けば対応してくれます。

なお、循環器内科では診察や検査が、心臓血管外科では手術など外科的療法が行なわれています。
重症化すると命にかかわることもある病気です。
気になる症状があればその症状を放置することなく、できるだけ早く病院で受診しましょう。

調べる方法

聴診を行なうことによって、血液の逆流音の有無を確かめます。
胸部X線検査(きょうぶえっくすせんけんさ)で心臓が大きくなっていないか、胸に液体が貯留していないか、心電図検査(しんでんずけんさ)で心臓が大きくなっていないか、不整脈が起こっていないかを調べます。

血液検査では腎臓や肝臓の機能といった一般的な検査だけでなく、心臓に負荷がかかると分泌されるホルモンで、心不全の重症度をみるために有用なヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(ひとのうせいなとりうむりにょうぺぷちど)などを測定します。

ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチドは英表記ではbrain natriuretic peptide、BNPと略してよばれていることも多いホルモンです。
重症度や原因を調べるために重要な心エコー検査(しんえこーけんさ)、大動脈弁閉鎖不全症に重なって起こる弁膜症(べんまくしょう)、心奇形(しんきけい)などをくわしく調べる経食道心エコー検査(けいしょくどうしんえこーけんさ)のほか、手術などの治療を受けなければいけない方に対し、入院をして受けることになる心臓カテーテル検査(しんぞうかてーてるけんさ)が行なわれています。

治療

治療方法としては、大きくわけて内科的治療と外科的治療があります。
どのような治療方法が選択されるかは、大動脈弁閉鎖不全症進行度合いによって違います。

血液の逆流の程度、何によって逆流が起こっているのか、心臓の大きさ、心筋(しんきん)の動きかたなどが治療方法を決める上で重要です。

治療方法

急性で重度の場合、内科的治療が効かない方に対しては、手術が優先されます。

これに対し、徐々に状態が悪化していく中等度より軽度な慢性の大動脈弁閉鎖不全症では、主に心臓の負担を軽くする薬を使った内科的治療がおこなわれます。

弁の逆流を正常な状態にする薬はなく、治療の目的は主に現状より病状が悪化しないようにすることです。
とりわけ血圧を低下させることが重要です。

血圧が高ければ弁の破壊が進行し、逆流する血液量も多くなるため、大動脈弁閉鎖不全症が悪化して心不全を早期に招いてしまいます。
血圧を低下させる作用のある薬剤としては、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(あんじおてんしんへんかんこうそそがいやく)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(あんじおてんしんじゅようたいきっこうやく)といった種類があります。

アンジオテンシン変換酵素阻害薬は英表記でAngiotensin-converting-enzyme inhibitor、ACEIと略してよばれていることも多く、アンジオテンシン受容体拮抗薬は英表記でAngiotensin II Receptor Blocker、ARBと略してよばれていることも多い血圧降下剤です。

こうした降圧剤には血圧低下作用だけでなく、心臓を保護する作用もあります。
そのほかの血圧降下剤としてカルシウム拮抗薬(かるしうむきっこうやく)があり、利尿薬(りにょうやく)やジギタリス製剤(じぎたりすせいざい)を一緒に使うこともあります。

逆流の程度しだいで間隔は異なるものの、中等度ぐらいの大動脈弁閉鎖不全症の場合には1~2年に1回ほどのペースで心エコー検査がおこなわれます。
そうすることで心臓、病気の状態を確認するのです。
薬を使った内科的治療を受けていても、中には歳を重ねていくことで病状が進行して、重度になってしまいます。

重度の大動脈弁閉鎖不全症にいたっても症状がなく、心臓の働きも維持できている方であれば、6ヶ月~1年間に1回ほどの心エコー検査で様子をみます。

しかし、息切れなどの症状が起こる、症状が出なくても心エコー検査で心臓の様子に大きな違いが出る、心臓の収縮力が落ちてきた方に対しては、手術が検討されます。

また、中等度の逆流でもほかの弁膜症、上行大動脈の病気の手術をする際には、大動脈弁の手術を同時におこなうことが検討される場合があります。

ただし、極端に心臓の働きが落ちていたり、年齢が高すぎたり、別の大きな病気が重なって起こっていたりすると手術でのリスクが大きくなるため気をつけなければいけません。
手術はたいてい、壊れてしまった大動脈弁を人工弁と置き換える方法が選択されます。
この方法は大動脈弁置換術(だいどうみゃくべんちかんじゅつ)といいます。

人工弁としては機械弁のほか、生体弁といって豚や牛など別の生き物の弁と置き換えることもあります。
どちらを選択するかは、手術を受ける方の年齢、全身状態によって決定されることになります。

また、大動脈弁がほどんど壊れていない逆流であれば、弁を置き換えることはせず、縫って形を整える手術が選択されることもあります。

なお、縫って形を整える手術のことは大動脈弁形成術(だいどうみゃくべんけいせいじゅつ)といいます。
大動脈弁閉鎖不全症の治療と共に重要なのが、感染性心内膜炎を防ぐことです。

感染性心内膜炎は、心臓の弁などに細菌感染を起こし、心不全、塞栓症(そくせんしょう)、脳出血(のうしゅっけつ)といた合併症を起こして命を落としてしまう恐れのある病気です。

弁の逆流があれば心臓が痛みやすく、細菌感染が起こりやすいといわれています。
歯を抜く処置や出血が生じる処置などでは、血液中に一時的な細菌の侵入があると指摘されています。

そのため、大動脈弁閉鎖不全症にかかっている方は、処置をほどこす前に感染性心内膜炎を回避することを目的に抗菌薬を服用することがあります。

大動脈弁置換術を受けた方に対して外科的、歯科的、内科的処置をおこなう際にも、心臓弁の感染症の危険性を減少させるため、処置をほどこす前に抗菌薬を使用します。

生活で気をつけること

薬は指示を守って服用しなければいけません。
心臓の状態によって違いますが、水分・塩分の過剰摂取は避けます。
運動に関しては、マイペースで無理なく実践できる範囲内にとどめ、過剰な運動は避けます。

心不全は風邪などが原因で急にひどくなることがあるため、手洗い・うがいなど感染予防を徹底したいところです。

症状については、息切れなどの軽いものであっても、新たに起こったときや強まったときにはすみやかに医療機関へ行きましょう。

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