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門脈圧亢進症の原因,症状,検査,診断,治療など

公開日: : 心臓・血管の病気

門脈圧亢進症とは

門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)とは、なんらかの原因によって門脈の圧力が高まり、食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)や胃静脈瘤(いじょうみゃくりゅう)、脾腫(ひしゅ)および脾機能亢進症(ひきのうこうしんしょう)、腹水(ふくすい)、胸水(きょうすい)、肝性脳症(かんせいのうしょう)などの症状が引き起こされる病気の総称で、肝臓の病気の一種です。

門脈というのは、消化管から吸収した栄養素などを肝臓へと送り込む血管のことであり、肝臓へと流れ込む血液の60%以上を運搬しています。
肝臓病の一種である肝硬変(かんこうへん)によって門脈内の圧力が高まるケースが、門脈圧亢進症全体の80~90%を占めています。
門脈圧は健康な人の場合、仰向けの体勢で100~150mmH2Oであり、200mmH2O以上の人は門脈の圧力が高まっている状態です。

門脈の圧力は姿勢、咳、歩行などによって変わりますが、肝臓などの血液の循環障害によっても変わり、異常なまでの変わり具合になると血液は圧力の低い脾臓へと逆流して脾臓が腫れる、門脈と人の体内で最大の静脈であり、下半身の血液を集めて心臓へと流れ込む下大静脈(かだいじょうみゃく)のあいだに血液の通過路が新設されるなどの異変が起こり、こうした異変により種々の症状が引き起こされます。

門脈圧亢進症は循環障害の原因となる場所が肝臓の手前にある場合は肝前性(かんぜんせい)といいます。
そして原因が内部にある場合には肝内性(かんないせい)、後ろにある場合には肝後性(かんごせい)といいます。

門脈圧亢進症の原因

肝硬変

この病気によるものは肝内性の門脈圧亢進症であり、門脈圧亢進症全体の原因としては80~90%を占めています。
肝硬変は肝細胞の破壊と再生が繰り返されたことにより、肝臓がかたくなった状態で、肝機能がいちじるしく低下する病気です。

C型肝炎(しーがたかんえん)、B型肝炎(びーがたかんえん)のようなウイルス性肝炎(ういるすせいかんえん)、アルコール性肝障害(あるこーるせいかんしょうがい)、非アルコール性脂肪性肝炎(ひあるこーるせいしぼうせいかんえん)など、長期にわたり肝臓がダメージを受ける病気が原因で起こります。

とくに原因として多いのはC型肝炎で、肝硬変全体の半数以上を占めており、次にはアルコール性肝障害、B型肝炎と続きます。
患者数は日本に40~50万人程度いるとされており、その半数以上が男性、肝硬変で亡くなる人は1年間で1~2万人います。

初期症状は出ないことが多いものの、悪化すると倦怠感(けんたいかん)、食欲不振、むくみ、黄疸(おうだん)、腹水、手掌紅斑(しゅしょうこうはん)、クモ状血管腫(くもじょうけっかんしゅ)、肝性脳症、食道静脈瘤などの症状が出てくるようになります。

特発性門脈圧亢進症(とくはつせいもんみゃくあつこうしんしょう)

この病気も肝内性の門脈圧亢進症の原因のひとつです。
指定難病であり、肝臓や門脈に特別な病的変化が認められないにもかかわらず、門脈の圧力が高まることで食道静脈瘤、脾臓の腫大(しゅだい)、貧血(ひんけつ)などを招く病気です。
静脈瘤が破裂し、出血を起こした場合には吐血や下血の症状が起こります。

女性と男性の比率は3:1程度であり、特発性門脈圧亢進症の発症年齢で一番高いのは40~50歳代です。
正確な原因は解明されていないものの、外敵ではなく自分の体に自分の免疫が作用する自己免疫異常が関わっていると考えられています。

日本住血吸虫症(にほんじゅうけつきゅうちゅうしょう)

肝内性の門脈圧亢進症の原因のひとつです。
寄生虫の一種である日本住血吸虫によって引き起こされる感染症です。

肝臓や脾臓の腫大、血尿、血便、下痢、便秘、腎障害などの症状が起こり、感染が長く続くと肝硬変から肝細胞癌(かんさいぼうがん)へと移行することがあります。
ただ、日本住血吸虫症の撲滅計画が推し進められた結果、1976年を最後に日本での新たな感染例の報告はありません。

バッド・キアリ症候群(ばっどきありしょうこうぐん)

肝後性の門脈圧亢進症の原因となるのがこの病気で、指定難病の一種です。
肝臓から流れ出る血液を運搬する肝静脈またはその先の心臓へと続いている肝部下大静脈が塞がれたり狭まったりして、肝臓からの血流が悪化し、門脈圧が高まることで、門脈圧亢進症などの症状を引き起こす病気です。

門脈圧が高まり、静脈瘤が破裂した場合には吐血や下血が起こり、出血によるショック死の危険があります。
女性に比べて男性のほうが1.6倍ほど多く、平均で男性は36歳、女性は47歳と、女性のほうが高齢で引き起こされる傾向があります。

1年では大体300人前後がバッド・キアリ症候群で医療機関へ行っています。
原因が不明の症例は全体の3分の2程度を占めていますが、肝静脈または肝部下大静脈の生まれつきの血管形成異常や、生まれつきではなく血液のかたまりが形成されることなどによって引き起こされるという見方がされています。

肝外門脈閉塞症(かんがいもんみゃくへいそくしょう)

肝前性の門脈圧亢進症の原因となる病気です。
肝臓外の門脈が閉塞し、肝臓へと流れ込む血流が悪化、その結果として門脈の圧力が高まり、門脈圧亢進症などの症状を引き起こします。

門脈圧が高まり、静脈瘤が発生したあと、破裂して出血を起こすと吐血や下血の症状が起こり、出血性ショックにより命を落としてしまうリスクがあります。
男女比では男性の割合が高く、男性を100とした場合は女性60程度です。

確定診断時の歳は20歳未満が最多で、続いて40~50歳代が多くなっています。
一次性(原発性)と二次性(続発性)の2種類があり、一次性の原因ははっきりしないものの、血管形成異常、血液凝固異常、骨髄増殖性疾患が関わっているという見方がされています。

一方、二次性は新生児臍炎(しんせいじさいえん)、腫瘍(しゅよう)、肝硬変や特発性門脈圧亢進症に付随する肝外門脈血栓(かんがいもんみゃくけっせん)、胆嚢胆管炎(たんのうたんかんえん)、膵炎(すいえん)、腹腔内(ふくくうない)手術といったものがあります。
ただ、因果関係がわからないケースもあります。

門脈圧亢進症の症状

胃・食道静脈瘤

胃の内部や食道粘膜の下に存在する静脈にコブ状のものが形成される病気です。
門脈の圧力が高まると、血液の一部は肝臓ではない別の方向へと逃げるための通過路を形成します。

この通過路を側副血行路(そくふくけっこうろ)やコラテラルと呼び、静脈瘤はこの通り道の一種です。
肝硬変が原因で起こることが多く、肝硬変の症状のほか、静脈瘤が破裂することにより出血すると吐血や下血の症状が起こり、大量出血によって命を落としてしまうリスクがあります。

脾腫・脾機能亢進症

脾腫というのは脾臓が腫れる症状です。
この臓器が腫れていることにより、お腹の張りを感じます。
また、脾機能亢進症は、脾臓が腫れることで古い血球だけでなく正常な血球まで壊してしまう病気です。

正常な血球まで破壊されてしまうことにより、全身のだるさ、出血しやすく止血しにくい、貧血などの症状が引き起こされます。

腹水・胸水

腹水はお腹に、胸水は胸に水がたまる症状です。
腹水がたまるとお腹の張りを感じ、胸水がたまると息苦しさを感じることがあります。

また、腹水に細菌が感染することで特発性細菌性腹膜炎(とくはつせいさいきんせいふくまくえん)を招くと、お腹の痛みを感じたり、熱が上がったりするほか、急速に悪化しショックを起こすことがあります。

肝性脳症

門脈の圧力が上昇して側副血行路が発達すると、肝臓を通過しない血液の流れが発生します。
そうなると肝臓で処理されるべきアンモニアなどの神経毒性物質が血液のなかで多くなり、脳のなかへと移動してしまいます。

そして異常行動、せん妄、見当識障害、こん睡のような意識障害や不随意運動のような運動障害、言語障害を起こす肝性脳症の状態を招いてしまうというわけです。

門脈圧亢進症の検査・診断

血液検査

血液を採取して調べる方法です。
門脈圧亢進症では、脾機能亢進症があると白血球や赤血球、血小板が減少しています。

また、肝硬変が原因の場合には肝機能も異常値を示します。
アンモニアの数値が高い場合には肝性脳症の可能性が出てきます。

腹部超音波検査

超音波をお腹にあてる方法で、体内の様子を画像で調べることが可能です。
痛みなどの負担はなく、容易にお腹のなかを確認することができます。

この検査では肝臓の形状のほか、脾臓が肥大していないか、お腹のなかに水が貯留していないか、側副血行路が発生していないかを把握することが可能です。

ほかにも、門脈を通る血流の速さや血液がどこへ向かって流れているかも知ることができます。

腹部CT検査

X線をあてることにより、お腹のなかの状態を画像で調べることが可能な検査です。
腹部CT検査では、腹部超音波検査と同じような情報を得ることができます。

腹部血管造影検査

造影剤を注射することにより、お腹の血管の状態を把握することが可能な方法です。
この検査では門脈の圧力を把握することができます。

肝静脈カテーテル法

カテーテルという細く柔軟な管を肝静脈に挿入します。
この検査では血流の状態を調べることが可能です。

また、肝静脈にカテーテルを挿入し、そこで小さなバルーンを膨らませ、肝静脈を塞ぐことにより測定可能な圧力を閉塞性肝静脈圧といいます。
この数値と門脈の圧力は類似することが確認されています。

上部消化管内視鏡(ないしきょう)検査

先端に小型カメラが搭載された細長い管のことを内視鏡といいます。
いわゆる胃カメラのことで、体内に挿入することにより映像で胃静脈瘤や食道静脈瘤の状態を確認します。

門脈圧亢進症の治療

門脈圧亢進の治療法

β(ベータ)ブロッカー、バソプレシン、オクトレオチド、ニトログリセリンといった、門脈の圧力を低下させる作用のある薬物が使用されています。

胃・食道静脈瘤の治療法

静脈瘤が破裂した場合、大量出血によるショック死のリスクがあります。
そのため、出血時には緊急の止血処置をほどこすことになるほか、静脈瘤が破れる恐れがある場合には破裂の予防目的での処置をほどこします。

現在の主流になっているのは結紮(けっさつ)術と硬化療法です。
結紮術というのは、内視鏡を駆使して静脈瘤をゴム製のバンドで縛ることで血流を遮断し、壊死させてしまう方法です。

一方の硬化療法というのは、内視鏡を使って静脈瘤の血管の内部や周囲に硬化剤を注入し、かためてしまう方法です。

脾機能亢進症の治療法

門脈の圧力が高まると、門脈を流れる血液が脾臓に逆行し、脾腫・脾機能亢進症が起こります。
この症状がある場合には、脾臓へと栄養を届ける動脈を部分的に血管内治療で塞いだり、脾臓を摘出したりする治療が行なわれています。
治療後には白血球や血小板などの血球数が増加するというよい変化が望めます。

腹水の治療法

お腹のなかに水が貯留している場合には、食事制限として塩分摂取量を制限し、利尿薬を使用していくのが一般的です。
また、低アルブミン血症(ていあるぶみんけっしょう)が起こっている場合には、アルブミンを補充する治療も行なわれる形になります。

血液中のアルブミン濃度が下がっていると、血管内の浸透圧が下がり、水分が染み出して腹水が貯留してしまう原因になるためです。
こうした方法でよくならない場合には、大量腹水穿刺排液(たいりょうふくすいせんしはいえき)が行なわれます。

この治療は針を刺すことにより、直接お腹のなかにたまった水を出す方法です。
大量腹水穿刺排液を行なうペースが14日間に1回以上の場合は、難知性腹水(なんちせいふくすい)といって、経頸静脈的肝内門脈肝静脈短絡術(けいけいじょうみゃくてきかんないもんみゃくかんじょうみゃくたんらくじゅつ)が検討されることになります。

経頸静脈的肝内門脈肝静脈短絡術は、金属の網でできた筒状のステントという器具で門脈と静脈の交通路を作り出すことにより、肝静脈へと血液を流して門脈の圧力を落とす治療法です。

肝性脳症の治療法

門脈圧の高まりにより肝臓を通過することができず、血液中に解毒されなかったアンモニアが蓄積し、脳にまわってしまうことで意識障害や運動障害、言語障害が起こります。

肝性脳症に対しては、アンモニアを生み出すもとになるタンパク質の摂取量制限を行ないます。
また、アンモニアが腸管から取り込まれることを抑制するためラクツロースという薬剤を使用し、腸管を浄化する硬化を狙って抗菌薬が使用されることになります。

さらに、血中のアミノ酸のバランスが崩れると神経伝達物質の異常を招いてしまい、肝性脳症が起こることに関わってくるため、アミノ酸のバランス調整を目的に分岐鎖アミノ酸を補うことにもなります。

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