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虚血性心疾患を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2018/11/14 心臓・血管の病気

虚血性心疾患とは

心臓は1日に約10万回の収縮・拡張を繰り返しており、体全体へと血液を送り出すポンプの役割を担っています。

収縮・拡張する心臓の筋肉のことを心筋(しんきん)といい、心筋に栄養や酸素が含まれている血液を送り込んでいるのが、心臓のまわりを走っている血管の冠動脈(かんどうみゃく)です。

虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)とは、冠動脈が動脈硬化(どうみゃくこうか)などによって狭まったり、完全に塞がったりして血液の流れが悪くなったり、途絶えたりする、心筋虚血(しんきんきょけつ)によって引き起こされる病気です。

動脈硬化は老化によって血管がかたくなる、血管の壁にプラークという脂肪などのかたまりが溜め込まれることにより、血管の壁の一部が盛り上がり、血管が狭まっている状態です。

冠動脈が動脈硬化などによって狭まると、血液がうまく流れなくなり、心筋に必要なだけの血液が送り込まれず、胸の痛みが生じるのですが、これを狭心症(きょうしんしょう)とよびます。

さらに動脈硬化が進行し、何かのきっかけで血管内のプラークが壊れ、冠動脈の血管内に血液のかたまりである血栓が形成されて冠動脈が完全に詰まり、心筋への血流が途絶えてしまった状態が心筋梗塞(しんきんこうそく)です。

心筋への血流が途絶えてしまうと、その部分の心筋細胞が壊死(えし)してしまい、壊死がひろい範囲におよぶと心臓が収縮・拡張を行なうことができなくなり、生命がおびやかされることになるため、迅速かつ的確な処置が必要になります。

なお、虚血性心疾患には、大きくわけて慢性冠動脈疾患(まんせいかんどうみゃくしっかん)と急性冠症候群(きゅうせいかんしょうこうぐん)があります。

慢性冠動脈疾患

慢性冠動脈疾患は、安定狭心症(あんていきょうしんしょう)ともよばれており、症状が数ヶ月以上にわたって安定していて、心筋梗塞に進展するリスクが低い狭心症です。

慢性冠動脈疾患には、労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)と冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)が含まれています。

慢性冠動脈疾患のうち労作性狭心症は、階段や坂道をのぼる、重たいものを持ち上げるなどしたときに痛みの症状が出現します。
痛みの持続時間は数分であり、安静にしていると症状は落ち着きます。

冠攣縮性狭心症は、動脈硬化がさほど進行していない状態でも、冠動脈が痙攣(けいれん)を起こすことによって血管が狭まり、血流不足になって引き起こされる狭心症です。

安静時に起こりやすく、安静時狭心症(あんせいじきょうしんしょう)という別名があります。

急性冠症候群(ACS:acute coronary syndrome)

虚血によって数日~数週間のあいだに、急に状態が悪くなる可能性があり、最悪の場合には心臓突然死を招いてしまうのが急性冠症候群です。

急性冠症候群には不安定狭心症(ふあんていきょうしんしょう)と急性心筋梗塞(きゅうせいしんきんこうそく)が含まれています。

不安定狭心症は、冠動脈のプラークの内側に、何かのきっかけで急に亀裂が生じ、そこに血栓が形成されて、その血栓が原因で急に冠動脈の流れが悪化する深刻な狭心症のことをいいます。

不安定狭心症では、労作時だけでなく、安静にしているときや寝ているときでも痛みの症状が出現し、いつ心筋梗塞に進展してもおかしくありません。
そして急性心筋梗塞ですが、形成された血栓によって冠動脈が完全に塞がり、その先へと血液が流れていかず、心筋が壊死してしまう状態のことをいいます。

そのため、重症な心不全(しんふぜん)や不整脈(ふせいみゃく)を招き、心臓の機能も低下してしまい、心臓突然死を起こしてしまうことがある、一番危険な状態です。

虚血性心疾患の原因

虚血性心疾患の主な原因は動脈硬化

動脈が硬く、狭く、もろくなる動脈硬化は、加齢や血液中で増加した悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が原因で進行します。

悪玉コレステロールには血管の壁に入り込み、溜め込まれていくことによって血管の壁が分厚くなり、弾力性がなくなります。
放置しているとプラークができるなどし、血管内が狭まって血流が悪化してしまいます。

コレステロールでできたプラークが何かのきっかけで壊れると、傷を修復しようと血小板でかさぶたが形成されます。
これが血栓であり、この血栓によって血流が完全に途絶えてしまうと、その先の組織へと栄養や酸素がいかなくなります。

動脈硬化は体内のどの動脈でも引き起こされるリスクがあり、心臓へと栄養や酸素を送り込む役割を担っている冠動脈に起こった場合には、狭心症や心筋梗塞を起こします。

血流が完全に途絶えると心筋の細胞が壊死してしまいますが、一度壊死してしまった心筋を元の状態に戻すことはできません。

また、心停止や心臓突然死を招くなど、生命がおびやかされるリスクも高いです。
動脈硬化のやっかいなところは、自覚症状なしに進行していくということです。

血栓が形成されて血管が詰まり、はじめて急性心筋梗塞などの症状が出現するようになります。
自覚症状が出た時点で一刻を争う状態になり得るのが、動脈硬化の恐ろしいところです。

動脈硬化の危険因子

動脈硬化が主な原因となって虚血性心疾患は引き起こされるため、動脈硬化のリスク因子は虚血性心疾患のリスク因子としてそのままあてはまります。

喫煙習慣がある、運動不足である、肥満である、ストレスが多い、血圧が高い、血糖値が高い、コレステロール値が高い、中性脂肪値が高い、家族歴があるといったものが、動脈硬化のリスク因子です。

なお、家族歴というのは、両親や兄弟姉妹に心筋梗塞や脳梗塞(のうこうそく)などにかかった人がいるということです。

虚血性心疾患の症状

どのような症状が起こりますか?

虚血性心疾患は冠動脈の血流が悪化し、心臓の筋肉の一部で酸素が足りなくなって、胸の痛みや圧迫感の症状が出現します。

痛みが出るところは、胸の真ん中や左側のほか、背中、肩、首、あご、左腕、胃のあたりにまで痛みがひろがることがあり、体の表面ではなく奥のほうで痛みを感じます。

痛みは押しつけられるような、締めつけられるようなと表現されることが多く、激しい痛みでは死への恐怖や不安を感じ、冷や汗が出ることもあります。
痛みは狭心症に比べ心筋梗塞のほうが激しいです。

痛みが持続する時間は、狭心症では1~3分、長引いたとしても15分ほどでおさまりますが、心筋梗塞では20分以上にわたって持続します。

なお、糖尿病(とうにょうびょう)にかかっている人は神経障害によって感覚が鈍っているため、症状を自覚しないことがあります。

慢性冠動脈疾患の症状

労作性狭心症

階段や坂道をのぼる、重たい荷物を持ち上げる、急いで歩くなどの運動=労作をきっかけに症状が出現します。

労作によって血圧が高まり、心拍数が増加して、心臓の筋肉での血液や酸素の需要量が増加します。

ところが、冠動脈が狭まっていることで需要を満たすことができず、一時的な酸素不足を招いて胸が痛くなります。

安静にしていたり、硝酸薬(しょうさんやく)を使用したりすることで、酸素不足が解消されて、症状は数分~15分ほどで止まります。

時間帯としては午前中に症状が起こりやすいといわれていますが、ほかの時間帯でも症状は出現します。

また、病気が悪化すると少しの労作や安静時でも症状が出現するようになったり、症状の持続時間が延びたり、症状の出現頻度が高まったりします。

症状が悪化している場合には急性冠症候群への進展の疑いがあります。

冠攣縮性狭心症

労作時よりも夜間や早朝といった決まった時間帯の安静時に症状が出現することが多いです。
また、アルコールの摂取時やタバコを吸ったとき、ストレス過多が続いたときに症状が出現することもあります。

労作性狭心症と一緒で、硝酸薬の使用による効果が期待できます。
症状が出現する頻度が高まり、症状が長い時間にわたっておさまらなくなるようであれば、急性冠症候群に進展している疑いがあります。

慢性冠動脈疾患は労作性狭心症も冠攣縮性狭心症も急性冠症候群に進展するリスクがあり、症状が悪化した場合にはすぐに医療機関へ行くことが賢明な判断です。

急性冠症候群の症状

不安定狭心症

突然に胸の痛みや圧迫感の症状が出現します。
症状は頻繁に出現し、安静時にまで起こるようになります。

短期間で病状が悪化する恐れがあるため、すぐに医療機関へ行く必要があります。

急性心筋梗塞

冠動脈への血流が完全に絶たれてしまい、心臓の筋肉の壊死が起こりはじめます。
いったん壊死した心臓の筋肉は回復せず、胸の痛みは狭心症に比べてはるかに強く、20分以上にわたって持続し、硝酸薬の使用による効果はほぼ期待できません。
また、急性心筋梗塞を発症した人の多くが、発症後1時間以内に命を落としています。

原因のほとんどは不整脈(ふせいみゃく)の一種である心室細動(しんしつさいどう)で、発症すると心臓はポンプの働きができず、2~3分以内に心肺蘇生法を行なわなければ救うことができません。

心臓が停止し、蘇生開始までが1分以内であれば97%蘇生はうまくいきますが、5分後にはその4分の1程度にまで下がってしまいます。

すぐに119番に連絡して救急車をよぶと共に、その場にいた人が人工呼吸や心臓マッサージ、AED(自動体外式除細動器)による心肺蘇生法を試みなければ助かる確率は非常に低くなってしまいます。

虚血性心疾患の検査・診断

心電図検査

狭心症の場合、症状が出現していない状態での心電図には異常がないケースが少なくありません。

また、症状が出ているときには心電図の異常が出現しますが、狭心症の症状は長くても15分以内におさまるため、医療機関に到着するころには通常の心電図検査では正確な情報が得られなくなってしまうのです。

そのため、狭心症の可能性がある場合には、症状が出現しているときの状態を確認することが可能な、ベッド上に横になり安静にして心電図をとる、通常の心電図検査とは異なる方法が選択されることがあります。

その方法のひとつとしては、安静時の心電図に異常がない人を対象として行なわれている、負荷心電図検査があります。
運動することで心筋の酸素需要量を多くして意図的に虚血状態を作り出し、このときの心電図の変化を確認します。

負荷は速さや傾斜が変化するベルトコンベアー上を歩くことでかけ、運動負荷をかける前後の心電図のほか、運動中の心電図や血圧を調べます。
負荷心電図で労作時に限って心電図の異常が出ていた人は、労作性心筋症の可能性があると判断されます。

負荷心電図のほかに、症状が出現しているときの心電図をとる方法としては、ホルター心電図検査があります。
携帯可能で小型軽量な装置を24時間装着し、どのタイミングで心電図の異常が出現するのかを確認します。

この検査を受けるときには、受ける本人がいつ運動を行なったのか記録することにより、異常な心電図の発生原因が労作なのか、安静時なのかを見極めることが可能です。
ホルター心電図検査では、自覚症状に乏しい軽い狭心症まで見つけることができます。

一方、心筋梗塞の場合には、それとわかりやすい心電図の異常を示すため、ほとんどの場合は容易に診断することが可能です。

心筋梗塞が心臓のどこで発生しているのか、心筋梗塞発生後、どの程度の時間が過ぎ去っているのかを把握することができます。

心エコー検査(心臓超音波検査)

心臓に高周波数の超音波をあてて、返ってくる反射波(エコー)を受け取り、心臓の様子を画像化して診断を行ないます。

心筋症(しんきんしょう)、大動脈弁膜症(だいどうみゃくべんまくしょう)、僧帽弁閉鎖不全(そうぼうべんへいさふぜん)といった病気でも、狭心症と同じような症状が起こることがあります。

心エコーは、このような病気と狭心症の区別をするために役立ちます。
また、心筋梗塞が起こったところでは心筋の収縮が悪くなり、この異常を心エコーによって把握することが可能です。

さらに心筋梗塞が発生している場所、どの程度の梗塞が発生しているのかを調べます。
そのほか、心筋梗塞の合併症の有無の確認、心臓の機能の評価などにも心エコーは役立ちます。

超音波をあてるだけで、検査を受ける人にかかる負担が軽く、緊急時であっても迅速に行なうことが可能な検査です。

血液検査

虚血性心疾患のうち狭心症の場合には、採血を行なって調べても異常はありません。
しかし、心筋梗塞の場合は異なります。

心筋梗塞で心臓の筋肉が壊死すると、筋肉の細胞から心筋障害マーカーという酵素やタンパクが流れ出します。

この心筋障害マーカーが血液中に存在する量を確認することによって、心筋が壊死を起こしているかどうか、また起こしている場合の程度を把握することが可能です。

冠動脈造影検査

虚血性心疾患の最終的な診断を下すことを目的に行なわれているのが、冠動脈造影検査です。

カテーテルという細く柔軟なチューブを挿入し、冠動脈まで進めます。
そして造影剤という薬を冠動脈に注入して撮影を行ないます。

冠動脈が狭まったり塞がったりしている場所の特定のほか、狭まりの程度、心筋の壊死の有無や壊死を起こしている範囲を把握することが可能です。

また、冠攣縮性狭心症の可能性がある場合、薬の注入を行なうことにより、意図的に痙攣を起こすこともできます。
なお、冠動脈造影検査は、治療と並行して行なわれている検査方法でもあります。

虚血性心疾患の治療

狭心症の治療

薬物療法

薬物療法が行なわれる目的は、狭心症による胸の痛みなどを意味する狭心症発作(きょうしんしょうほっさ)や心筋梗塞を防ぐこと=予防治療と、出現した症状に対処すること=対症療法です。

予防治療としては冠動脈の動脈硬化を抑制し、心筋梗塞を防ぐことを目的に、抗血小板薬(こうけっしょうばんやく)が使われています。

抗血小板薬を少量使うことによって、血小板の活動が抑制されて血栓が形成されにくくなります。
そのため、血管の詰まりを防止する効果が望めます。

対症療法としては、硝酸薬やカルシウム拮抗薬(きっこうやく)といった血管拡張薬が使われています。
血管拡張薬は冠動脈をひろげて血液の流れをよくするほか、体全体の血管までひろげる効果もあります。

血管拡張薬の使用は、過度な血圧上昇、脈拍数の増加を防止し、心臓にかかる負担の軽減に有効です。
血管拡張薬のほかには、β遮断薬(べーたしゃだんやく)も使われています。

β遮断薬は自律神経の交感神経の働きを抑制し、血圧を低下させるほか、脈拍数を減少させて、心臓に対する負担を軽減する作用があります。
狭心症では少量の抗血小板薬以外に、血管拡張薬やβ遮断薬のなかから2~3種類を組み合わせて使うことになります。

そのほか、脂質異常症(ししついじょうしょう)や糖尿病などの持病を患っている人には、その持病の治療薬を使って狭心症や動脈硬化の進行を防ぐ治療も行なわれています。

手術療法

狭心症の手術療法としては、冠動脈形成術(PCI)と冠動脈バイパス術をあげることができます。
冠動脈形成術は、バルーン(風船)が取り付けられたカテーテルを挿入し、冠動脈が狭まっている場所でバルーンを拡張させて、冠動脈を押しひろげます。

狭くなった冠動脈をバルーンで押しひろげたあとで、ステントという金属製・網状の筒を血管内部に留置し、血管を内側から補強することもあります。
ステントは、再度の血管の狭まりを防ぐために留置されますが、再発防止は絶対ではなく、再び血栓が形成されて、血管が狭まってしまうリスクがあります。

ただ、現在ではなるべく再度の血管の狭まりを招くことがないよう、薬剤が塗布されているステントが使われるようになっています。
次に冠動脈バイパス術ですが、狭心症の薬物療法がうまくいかず、カテーテル治療が困難または無理な人に対して選択されている方法です。

冠動脈が狭まっている場所に手を着けることはせず、患者の体の別のところにある血管を使い、血管が狭まっている場所の前後を繋ぐ別の通り道=バイパスを新設し、狭まっている場所を通ることなく心筋へと血液が流れ込むようにします。

バイパス作りで使う血管のことはグラフトといい、足の静脈か、胸、腕、胃の動脈が使われています。

心筋梗塞の治療

経皮的冠動脈形成術

血管が塞がっている状態を解消して血液が通るようにし、塞がったままでは壊死を起こす心筋を救う治療法のことを、再灌流療法(さいかんりゅうりょうほう)とよびます。
経皮的冠動脈形成術は再灌流療法のなかでも一番多く行なわれている治療法であり、メスで胸を開けるようなことをしません。

そのため、治療を受ける人の負担が軽いのがメリットです。
なお、経皮的冠動脈形成術としては、バルーンカテーテル治療、冠動脈ステント留置治療、薬剤溶出性ステントが存在します。

まず、バルーンカテーテル治療ですが、しぼんだバルーン(風船)が取り付けられた管を血管が塞がっているところまで送り込み、そこでバルーンを拡張させることによって血管を押しひろげ、血流を回復させる方法です。

処置が終わるとバルーンを抜き取り、体のなかには何も留置しませんが、治療箇所が再び狭まってしまうリスクがあります。
次に冠動脈ステント留置治療ですが、バルーンカテーテル治療で血管を十分に拡張させることができなかったときや、血管の内膜が傷ついてしまったときなどに行なわれている方法です。

心筋梗塞の治療の約80%は、バルーンカテーテル治療に続いて冠動脈ステント治療が行なわれています。
バルーンを使用して血管を押しひろげたあと、そこにステントを留置することによって、血管を内側から固定するのが冠動脈ステント治療であり、90%以上の人の血流が改善しています。
ただし、再び血管が狭まってしまうリスクはあります。
なお、薬剤溶出性ステントですが、ステントの表面に細胞の増殖を抑制する作用のある薬が塗布されているものが使われています。

薬が溶け出すために血栓が作られにくく、長期にわたって狭まっていた血管がひろがった状態を維持することが可能です。

そして薬剤溶出性ステントにより、再び血管が狭くなってしまうリスクが低減され、再治療が必要になる可能性も低下させることができます。

ただ、絶対にというわけではなく、血栓が作られて血流が悪くなってしまうリスクがあるため、薬剤溶出性ステントでも、治療後には抗血小板薬の投与は続けていく形になります。

冠動脈バイパス術

心筋梗塞の治療では、カテーテルを使用する治療法が優先されて、この治療がうまくいかなかったときなどに検討されことになるのが冠動脈バイパス術です。

冠動脈バイパス術は外科的治療であり、冠動脈が塞がっているところを避ける形で、新たな血液の通り道=バイパスを作る方法です。

バイパスは体の別の部位にある血管、たとえば内胸動脈(ないきょうどうみゃく)や胃大網動脈(いだいもうどうみゃく)などが使われています。

バイパスが新設されるとそこから心臓に血液が流れ込むようになるため、効果が持続し、再発や再発による治療のリスクを低減させることが可能です。

しかし、胸を開ける手術になるため準備に時間を要し、治療を受ける人の身体的負担が大きく、退院までには長い日数を要することになります。

CCU(冠動脈疾患用集中治療室

CCUはCoronary Care Unitの略であり、急性期の冠動脈疾患患者用の集中治療施設のことをいいます。

心筋梗塞では急に心筋が壊死することによる合併症が引き起こされることがあり、そのなかには命を落としてしまう危険なものも含まれています。

そのため、心筋梗塞を発症して間もないころには、冠動脈疾患用集中治療室に収容されて、厳重な監視下における持続的な管理が行なわれます。

主な合併症としては、うっ血性心不全(うっけつせいしんふぜん)、不整脈、心破裂(しんはれつ)をあげることができます。

うっ血性心不全は、肺に水が貯留することによる呼吸困難が主症状の合併症で、不整脈は正常な状態より脈が速くなったり遅くなったりと、リズムに乱れが出る病気であり、必要なだけの量の血液を心臓が送り出せなくなってしまいます。

心破裂は壊死して弱まった心筋に過度な血圧がかかることにより、心筋が破れてしまう合併症です。

心臓リハビリテーション

入院後、状態が安定したころにはじめるのが心臓リハビリテーションです。
心筋梗塞を起こした人の心臓の機能は落ちており、快適な社会生活や家庭生活を送れるようになるまでは時間を要します。

心臓リハビリテーションは1日も早く仕事や家庭に戻って快適に過ごし、再発を防止することを狙いとした、運動療法・食事療法・健康相談などの活動のことをいいます。

医師・看護師・理学療法士・検査技師などの専門家が患者の支えになってくれます。
心筋梗塞の発症日または手術日から6ヶ月間は健康保険が適用されます。

薬物療法

抗狭心症薬、抗血栓薬など、いろいろな種類の薬が心筋梗塞の治療では使われています。

抗狭心症薬としてはβ遮断薬、硝酸薬、カルシウム拮抗薬があり、心臓に対する酸素供給量を多くし、酸素の消費量を少なくする効果があります。
抗血栓薬としては抗血小板薬、抗凝固(ぎょうこ)薬があり、血液をサラサラにして血管が塞がる原因となる血栓が作られにくくなります。

冠動脈ステント留置治療を受けた人は血栓が作られる可能性が高く、予防のために抗血小板薬を使わなければいけません。
指示を守って薬の使用をしなければ、血栓が作られて再発を招いてしまうリスクが高まってしまいます。

そのほか、心臓の機能の低下を防ぎ、血栓が形成される原因となる動脈硬化を防ぐスタチン、ACE(エース)阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)も使われていますし、激烈な胸の痛みや命を落とすことへの恐怖や不安を和らげるためにモルヒネなどの鎮痛薬が、不整脈に対しては抗不整脈薬が、心不全を起こしている人に対しては利尿薬が使われています。

虚血性心疾患の予防

食生活を改善する

虚血性心疾患のリスク因子である肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などは、食生活と深い関わりがあります。

毎日の食事では腹八分目にとどめ、脂っこいもの、塩分は控え、緑黄色野菜、大豆製品、海藻類、きのこ類を積極的に摂取しましょう。
また、肉類よりは魚類を積極的に摂取することをおすすめします。

魚類は肉類より低カロリーであり、なかでもイワシやサバなどの青魚には、血液をサラサラにしてくれる成分が豊富に含まれており、動脈硬化対策に適しています。

また、間食はやめて、糖分が多く含まれているジュースや缶コーヒーも避け、夕食は眠る約3時間前までには済ませておくことが大切です。
水分補給も大事で、体内の水分が減少すると血液濃度が上がり、血栓が形成されやすくなるため、十分な量の水分を補給しましょう。

そのほか、過度な飲酒は動脈硬化の悪化を早めてしまうためよくありません。
適量は一般的に度数5%のビールで500mlです。
自分で飲酒量をコントロールできず、お酒に手を着けるとついつい飲み過ぎてしまうという人は、禁酒をしたほうがよいでしょう。

また、お酒が不整脈を招くことがあり、それによって血栓の形成が促されてしまうこともあります。
脳や心臓の病気を患っている人は、医師の指示にしたがいましょう。

タバコをやめる

喫煙は血管の収縮や活性酸素の発生を招いて、動脈硬化を助長してしまいます。
イコール、虚血性心疾患のリスクを高める原因にもなります。

自力での禁煙では挫折してしまう人は、禁煙補助薬などによる治療を受けることが可能な、禁煙外来に行くことを検討するとよいでしょう。

ストレスを発散する

強いストレスがかかっている状態が続いていることは、虚血性心疾患の引き金になる要素のひとつです。
自分に合った方法で気分転換をし、ストレスを解消しましょう。

旅行、ショッピング、映画鑑賞、温泉、マッサージなど、方法はいろいろあります。
また、後述する睡眠や適度な運動もストレス解消に効果的です。

十分に休息・睡眠をとる

過労や睡眠不足は虚血性心疾患の引き金になる要素として含まれています。
寝不足でのイライラは、ストレスの原因にもなってしまいます。
しっかりと休息・睡眠をとる時間を確保し、心身を休ませてあげましょう。

適度な運動をする

適度な運動は血流をよくする、血管にこびりついた悪玉コレステロールをはがしてくれる善玉コレステロールが増加する、血圧や血糖値が低下する、ストレス発散になる、肥満の解消に繋がるなどさまざまな効果があります。

ただ、どのぐらいのレベルの運動が適度なのかは個人差があるほか、すでに動脈硬化などが悪化している人では、運動自体が虚血性心疾患のリスクになってしまうこともあるため、医師に判断をあおぐとよいでしょう。

なお、一般的には1日30~40分の早歩を、週に3回ほどのペースで続けていくのがよいといわれています。

急激な温度変化を避ける

急激な温度変化が発作の引き金になるリスクがあります。
なかでも入浴時は浴室や脱衣所の温度を事前に室温と一緒に調節しておく、湯温はぬるま湯にする、長湯を避けるといった点に気をつけましょう。

また、トイレでいきむこともよくないため、便秘に悩まされている人は病院へ行き、整腸剤などを使用して解決するようにしたいところです。

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