*

低血圧を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2018/03/08 心臓・血管の病気

血圧というのは、血液が血管(動脈)の壁にかける圧力のことをいいます。
心臓が縮むときには、大動脈内へと血液が押し出されることにより、大動脈が膨らみます。
このときに大動脈にかかる圧力が最高血圧(収縮期血圧)です。

次に心臓が拡張すると、膨らんだ血管が大動脈が元の状態に戻ろうとし、その力で心臓へと血液が送り込まれます。
膨らんでいた動脈が元の状態に戻ろうとする力が最低血圧(拡張期血圧)です。

世界保健機関(WHO)では、最高血圧100mmHg以下、最低血圧60mmHg以下を低血圧(ていけつあつ)としています。
低血圧には複数のタイプがあり、主なものとしては本態性低血圧(ほんたいせいていけつあつ)、症候性低血圧(しょうこうせいていけつあつ)があります。

本態性低血圧は一次性低血圧(いちじせいていけつあつ)ともいい、症候性低血圧は二次性低血圧(にじせいていけつあつ)ともいいます。
本態性低血圧は特別な原因となる病気を伴わず、慢性的に血圧が低いタイプであり、症候性低血圧は原因がはっきりとしているタイプです。

低血圧の原因

低血圧はどうして引き起こされる?

全身をめぐる血液の量が減る、心臓から送り出される血液量が減る、末梢血管の血液が流れにくくなる、血液の粘り気が減ることによって低血圧になるという見方がされています。

低血圧の分類

特別な原因となる病気がはっきりしない場合は本態性低血圧、原因となる病気がはっきりしている場合は症候性低血圧といいます。

また、起立により引き起こされる場合には起立性低血圧(きりつせいていけつあつ)、食後にだけ血液が極端に下がる場合には、食後低血圧(しょくごていけつあつ)といいます。
原因の有無による分類以外では、症状の経過での分類もあります。

症状の経過の違いによって、急性低血圧症(きゅうせいていけつあつしょう)と慢性低血圧症(まんせいていけつあつしょう)に大別されています。
前者はショックといった急激な異常を招くのが特徴であり、後者は症状がゆっくりと出て持続するのが特徴です。

急性低血圧は出血や脱水などによる血流量の不足、重い感染症に付随して起こる敗血症性(はいけつしょうせい)ショック、心不全(しんふぜん)などによる心臓のポンプ機能の低下、重い不整脈(ふせいみゃく)、過度な血圧降下剤の使用や睡眠薬、麻酔薬などの使用による薬物中毒などによって引き起こされます。

本態性(一次性)低血圧

低血圧全体で、一番割合が高いのが原因がはっきりしない本態性低血圧です。
低血圧の90%程度の人がこのタイプにあてはまります。

国内では1.5~7%の人に起こっている低血圧であり、自覚症状がある人は本態性低血圧全体の10~20%とされています。

自覚症状がない場合は偶然に検査で発見されることが多く、体がだるい、肩がこる、眠れない、寝起きが悪いなどのトラブルがあって血圧を測定し、低血圧であることがわかるケースも珍しくありません。

大部分は体質的な問題であり、両親や兄弟姉妹に低血圧の人がいると、遺伝によって低血圧を引き起こしている疑いがあります。
医療機関では、別の病気の疑いがない場合に本態性低血圧と診断されるのが普通です。

症候性(二次性)低血圧

本態性低血圧とは異なり、症候性低血圧は原因がはっきりとしているのが特徴です。

負傷による大量出血、心臓病、胃腸の病気による栄養不良、アジソン病(あじそんびょう)など内分系の病気、甲状腺の異常、パーキンソン病(ぱーきんそんびょう)、末期の悪性腫瘍(あくせいしゅよう)、血圧降下剤など薬による副作用といったことが原因で引き起こされる低血圧です。

後述する起立により引き起こされる起立性低血圧や、食後に限って血圧が極端に低下する食後低血圧も、症候性低血圧に含まれます。

起立性低血圧

ベッドから起き上がったとき、椅子から立ち上がったときなどに、急激に血圧が低下し立ちくらみなどを引き起こす状態です。

起立性低血圧は、寝ている体勢から立ち上がったときに、最高血圧が20mmHg以上、または最低血圧が10~15mmHg以上低下する場合に、起立性低血圧とされます。
高血圧の人にもこのタイプの症状が引き起こされる場合があります。

起立性低血圧には、原因によって特発性起立性低血圧症(とくはつせいきりつせいていけつあつしょう)と二次性起立性低血圧症(にじせいきりつせいていけつあつしょう)に大別されています。

特発性起立性低血圧症は、起立性低血圧全体の大体2割で、原因となる病気ははっきりしていないものの、神経系の異常によって生じます。
めまい、立ちくらみ、おう吐などの症状があり、ひどい場合には一時的に意識が消失してしまうこともあります。

一方の二次性起立性低血圧症は、原因となる病気がはっきりしているのが特徴で、起立性低血圧全体の約8割を占めています。
二次性起立性低血圧症を招く病気としては糖尿病(とうにょうびょう)が最多です。

ほかには内分泌系の病気、心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)、心筋症(しんきんしょう)などの病気が潜んでいるケースもあります。
そのほか、精神安定剤、血圧降下薬、パーキンソン病治療薬などの関わりが指摘されています。

食後低血圧

食後だけ血圧が極端に下がるタイプの低血圧です。
食事のあと、摂取したものの消化を行なうために胃へと血液が集中し、心臓に戻りにくくなることで起こります。

高齢者の30%程度に、とりわけ寝たきりの人や、食事中の誤嚥(ごえん)を防ぐために体を起こして食べるときに引き起こされます。

食後低血圧では食後の倦怠感(けんたいかん)、胃もたれ、吐き気、眠くなる症状が出ることがあるほか、ひどい場合には立ちくらみを起こしたり、一時的に意識を消失してしまうこともあります。

低血圧の症状

本態性(一次性)低血圧

このタイプの低血圧では、全身症状として体がだるい、疲労を感じやすい、寝起きが悪い、脱力感、集中力が落ちる症状が起こり得ます。

また、精神・神経症状としてめまい、立ちくらみ、頭痛、不眠、肩こり、不安感、手足の冷えがあります。

そのほか循環器症状として動悸や息切れ、胸の不快感、手足の冷え、呼吸器症状として息切れや呼吸困難、消化器症状として食欲がなくなる、お腹が張る、下痢、便秘、吐き気、おう吐が起こり得ます。

症候性(二次性)低血圧

症候性低血圧の場合、どの病気によって起こっているかで、出現する症状には違いがあります。

出血・脱水などによる血流量の低下、敗血症性ショック、心不全など心臓の機能の悪化、重い不整脈、薬物中毒などの場合、急性低血圧の症状が引き起こされます。
これに対し、内分泌系の病気や神経の病気、代謝性の病気の場合、慢性の経過をたどる割合が高いことが知られています。

起立性低血圧

めまい、立ちくらみ、おう吐のほか、失神することもあります。
症状の程度は体重の低下により強くなる傾向があり、高齢者ではとくに失神を起こすことがあります。
また、立ち上がったときの症状は午後より午前中に起こりやすく、食後や運動後に症状が悪化することがあります。

食後低血圧

食事を摂ったあとに体がだるくなる、胃がもたれる、吐き気がする、眠気に襲われる症状が起こります。
強い症状が出現する場合には、立ちくらみ、一次的な意識の消失が引き起こされることもあります。

低血圧の検査・診断

低血圧かもしれないと思ったら

「低血圧の症状」をチェックし、思い当たる症状があり、病院へ行ってみようと思った人もいるのではないでしょうか。
この場合に、いったい何科に行くのが適切なのか、心配になる人もいることでしょう。

低血圧は、内科へ行けば対応してくれます。
検査で本当に低血圧なのかがはっきりしますし、治療を受けることも可能です。

なお、低血圧を起こしていても自覚症状がなかったり、日常生活に支障をきたすような症状が起こったりしていなければ、治療は不要と判断されることがあります。

どうやって調べる?

本態性低血圧の場合、症状の有無とは無関係に、安静時に低血圧が持続して原因となる病気がはっきりしない場合に診断されます。

また、症候性低血圧と区別には、原因となる病気を探るため、血液一般検査、心電図検査、X線検査、各種内分泌検査などで詳しく調べます。
症候性低血圧かどうかは、原因となる病気を特定することが重要です。

スクリーニング検査(血液検査、尿検査、心電図検査、X線検査)、24時間血圧、ホルター心電図、心エコー検査、運動負荷試験、血中ホルモン測定、甲状腺・副甲状腺機能検査、起立負荷試験、自律神経機能検査、頭部CT・MRI検査が医療機関で行なわれている検査方法です。

起立性低血圧は起立時の血圧を調べます。
横になった体勢や座った体勢の血圧を比べ、立ち上がったあと3分以内で最高血圧20mmHg、最低血圧10mmHg以上が低下した場合には起立性低血圧を起こしていることがわかります。

また立ち上がったときにめまい、立ちくらみ、失神などの症状が出現すると、起立性低血圧による症状であることがはっきりします。
食後低血圧に関しては、食前と比較して、食後1時間ごろの最高血圧が20mmHg以上下がっている場合には、このタイプの低血圧を起こしている疑いが濃厚です。

低血圧の治療

本態性(一次性)低血圧

本態性低血圧の治療のメインは生活指導と薬物療法です。
規則正しいリズムでの食事、食べ過ぎ、間食を防いで偏りのない食事を摂ることや、水分や塩分の補給を増量し、過度な飲酒をやめます。

また日々、ほどよい運動を習慣化することや、食事や運動だけでなく、休息や睡眠、排便などのリズムを整えることも欠かせません。
薬物療法としては抗不安薬や交感神経刺激薬が使用されています。

症候性(二次性)低血圧

このタイプの低血圧では、低血圧の原因となっている病気の治療が先決です。
原因となっている病気に対する的確な処置がほどこされることにより、症候性低血圧に悩まされることがなくなります。

起立性低血圧

起立性低血圧の治療は大きくわけて、一般療法と薬物療法があります。

一般療法としては、水分と塩分を十分に補給し、高たんぱく・高ミネラルの食事を摂る食事療法、スイミングや毎日のウォーキングでの全身運動や脚の筋肉を鍛える、乾布・冷水摩擦を行ない皮膚の血流をよくする運動療法、タイツや弾性ストッキングの使用で下半身に血液がたまることを避ける物理療法があります。

また、行動の注意として急激に体勢を変えることを避け、寝た体勢から座る体勢、立った体勢、また座っている状態から立っている状態に変えるときにはゆっくりと動くことが欠かせません。

薬物療法では、循環血漿量を多くする薬や血圧を上昇させる薬、血管拡張防止薬が使用されています。

食後低血圧

症状に応じて食事量を減らして食事の回数を増やす、水分を十分に摂り、高血圧の人でなければ塩分も適量摂取するなどの工夫をします。
また、体勢を変えるときにはゆっくり動くことも大切です。
ほかには、薬を使用することもあります。

高齢の場合、血流をよくする薬や腸への血液の流れを少なくする薬が使用されることがあります。
ほかには、高血圧の人に使用される血圧降下薬は食後低血圧のリスクがあるため、使用量を少なくするなどの工夫をします。

食前に薬を服用し、食後の低血圧の症状を軽減するやりかたもあります。
一例として、非ステロイド性消炎鎮痛薬には塩分を維持し、血液の量を多くする作用があります。

普段の暮らしのなかでできること

規則正しい生活を送る

疲れすぎを防ぎ、しっかりと休息・睡眠を確保しましょう。
低血圧で朝が弱いという人は多いですが、夜更かしをやめ、早起きを習慣化することにより、朝すっきりと起きれるようになります。

なお、朝にやや熱めのシャワーを浴びる方法も効果的です。
自律神経の交感神経が活発化して、体が起きます。

体を動かして筋肉を鍛錬する

原因がはっきりとしない本態性低血圧の人は、筋肉が弱い、長く立っていることに不慣れなどの心身のトレーニングが不十分なために起こっていることが珍しくありません。

そのため、有酸素運動のような適度な運動を習慣化することをおすすめします。
はじめは少ない運動量で、慣れてきたら無理のない範囲で徐々に運動量を多くしていくとよいでしょう。

水分・塩分を補給する

水分は毎日意識して十分に補給しましょう。
また、高血圧でない場合には塩分も適量摂取することが大切です。

バランスの取れた食事構成にする

偏りのある食生活はよくありません。
高たんぱくの食事を摂るほか、ビタミンやミネラルが豊富に含まれているものを積極的に摂取し、バランスのよい食事を習慣化しましょう。
不足しがちな栄養素は、医師に相談してサプリメントで補うというのも悪くありません。

ゆっくりと動く

起立性低血圧を起こしている場合、急に起立するとめまいや一次的な意識消失などを招く恐れがあります。
横になるときには頭を少し高い位置にし、横になっている体勢から起き上がるときには、足首を動かして血液の循環をよくしたうえで、ゆっくりと体を動かすことが症状を防ぐことに効果的です。

食後にカフェインを摂取する

食後低血圧を起こしている場合には、1回の食事量を減らして回数を増やすほか、食事のあとにカフェイン入りの飲料を摂るとよいでしょう。
コーヒーやお茶などに含まれているカフェインには、自律神経の交感神経を刺激し、血液の循環をよくする作用があります。

ただカフェインは摂り過ぎると眠れなくなるほか、耐性の問題も出てくるものです。
不安な人は食後ではなく、朝ごはんを摂る前にコーヒーなどを飲むという方法でもかまいません。

寒暖差に気をつける

極端に室温を上げ下げするのはよくありません。
表との気温差が大きくならないよう、エアコンなどを駆使して室内の温度を適切にコントロールしましょう。

自律神経を狂わせない

低血圧の症状に悩まされている人は、自律神経に狂いが生じやすいということが知られています。
季節の変わり目、生理の前などは自律神経のバランスが崩れてしまいやすい時期のため、普段以上に体をいたわってあげることが大切といえるでしょう。

症状がツライ場合には我慢しない

「低血圧の治療」にあるように、検査を受けることによって自分がどのタイプの低血圧なのかがわかると、適切な治療を受けることが可能です。

長く悩まされ続けてきた症状が、改善する可能性があります。
症状がツライ場合には血圧をコントロールする薬もあるため、我慢するのではなく内科へ行くことをおすすめします。

関連記事

バッド・キアリ症候群を詳細に:原因,症状,検査,治療など

バッド・キアリ症候群(ばっどきありしょうこうぐん)とは、肝臓から流れ出る血液を運ぶ肝静脈(か

記事を読む

大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症)を詳しく:原因・症状・検査・治療など

大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁逆流症)とは 大動脈弁(だいどうみゃくべん)は、心臓の左心室(さし

記事を読む

動脈・静脈の病気の原因・症状・治療

動静脈瘻の概略や原因について 血液は動脈から毛細血管を通り静脈へ流れるのが普通ですが、動脈と静

記事を読む

心臓の洞結節に異常が起こる病気の原因・症状・治療

洞不全症候群の概略や原因について 心臓の右心房の上部にある電気的刺激の発生場所である、洞結節や

記事を読む

期外収縮を詳細に:原因,症状,検査,治療など

期外収縮とは 期外収縮(きがいしゅうしゅく)は不整脈(ふせいみゃく)の一種 心臓の内

記事を読む

心臓の心膜に異常が起こる病気の原因・症状・治療

急性心膜炎の概略や原因について 心膜は、心臓をおおっている2層の膜で、臓側心膜と壁側心膜の空間

記事を読む

脱水症を詳細に:分類,原因,症状,検査,治療,予防,術後など

脱水症とは(概要) 人間の体の大半は体液(血液、リンパ液、唾液、粘液、汗、消化液および尿な

記事を読む

リンパ浮腫の概略や原因について

リンパ浮腫の概略や原因について リンパは体内の体液循環の1つで、リンパ管が静脈に沿ってほぼ全身

記事を読む

心臓の大動脈弁に異常が起こる病気の原因・症状・治療

大動脈弁狭窄症の概略や原因について 左心室と大動脈の間にある大動脈弁が充分に開かなくなる病気で

記事を読む

心筋梗塞を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

心筋梗塞とは 心筋梗塞(しんきんこうそく)とは、心臓へと栄養や酸素を送る血管である冠動脈(

記事を読む

クッシング症候群を詳しく:原因・症状・検査・治療など

クッシング症候群とは クッシング症候群(くっしんぐしょうこうぐん)とは、副腎皮質(ふ

虚血性心疾患を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

虚血性心疾患とは 心臓は1日に約10万回の収縮・拡張を繰り返しており、体全体へと

脂漏性角化症(老人性疣贅)を詳しく:原因・症状・検査・治療など

脂漏性角化症(老人性疣贅)とは まず、脂漏性角化症は「しろうせいかくかしょう」と読み

放射線肺臓炎を詳しく:原因・症状・検査・治療など

放射線肺臓炎とは 放射線肺臓炎(ほうしゃせんはいぞうえん)とは、肺・食道・乳房などの

眼球突出を詳しく:原因・症状・検査・治療など

眼球突出とは 眼球突出(がんきゅうとっしゅつ)とは、眼球が前方に飛び出ているように見

→もっと見る

PAGE TOP ↑