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原発性アルドステロン症を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2017/06/21 心臓・血管の病気

原発性アルドステロン症とは

日本人にも患っている人の多い「高血圧症(こうけつあつしょう)」。
この高血圧症にはいくつかの種類があります。

一般的に知られる高血圧症は不摂生がよくないため、食生活の見直しをはじめ、生活習慣を改めたり適した薬剤を用いたりすることで症状が改善しますが、このような治療がまったく効かない高血圧症が存在するのです。

このような高血圧症のことを「二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)」と呼んでおり、そのなかの一つに「原発性アルドステロン症(げんぱつせいあるどすてろんしょう)」があります。

普段聞き慣れない病名ですが、近年はこの疾患を抱えている人が増えているとも言われており、注目されている病気です。
主な特徴は生活習慣の見直しや薬剤での改善が見られない点で、高血圧患者の5%から10%程度に見られるといいます。

また、もう一つの特徴として、高血圧の傾向がある若い人に多く見られるというものがあります。
患者数の予想では実に200万人から400万人いるといわれており、一般に聞き慣れない病名であるわりに、数多くの患者が存在する病気です。

原発性アルドステロン症の原因

ざっくりと言えば、副腎皮質ホルモンの一種であるアルドステロンが何らかの原因で過剰に分泌されてしまうことが引き金となって原発性アルドステロン症は起こります。
アルドステロンが過剰分泌されると、腎臓に作用してナトリウムと水分を体内に貯めるようになるために高血圧になるというメカニズムです。

高腎皮質に腫瘍(しゅよう)ができたり、全体が大きく腫れてしまう「過形成」が起きたりするとアルデステロンが過剰に分泌されます。
腫瘍の場合、アルドステロンは片方の腎臓から分泌されますが、過形成の場合は両方から分泌されるという特徴があります。

アルドステロンの分泌のされ方を特定することは適切な治療法を決めるために必須とされており、詳しい検査をおこなってはっきりさせる必要があります。
アルドステロンは完全な悪ではなく、塩分・水分・カリウムのバランスを保つ働きをしているため、私たちの体にとっては必要不可欠なものです。

日本人が原発性アルドステロン症にかかった場合、副腎皮質の片方に腫瘍ができることを原因とする場合が患者全体の80%、副腎皮質が腫れ上がる過形成を原因とする場合が8%という比率になっています。

偽性アルドステロン症

アルドステロン症と同じ症状を見せるのに、実際にはアルドステロンの過剰な分泌が見られない病気があります。
これを偽性(ぎせい)アルドステロン症と呼んでいます。

原発性アルドステロン症とよく似た症状が認められることで知られており、血圧の上昇に加え、脱力感、筋肉痛、手足がしびれる、吐き気をもよおす、場合によっては意識を失うなどの重篤(じゅうとく)なものもあります。
原因は漢方薬の一種である「甘草(かんぞう)」による副作用です。

甘草はマメ科の植物で、漢方薬やその他薬剤として用いられるのは根と地上の茎の部分です。
甘草の主成分であるグリチルリチンが症状の原因となると考えられています。

甘草とグリチルリチンは風邪薬や胃腸薬、鼻炎薬など身近な薬剤、また肝臓の病気を治療するための薬剤に含まれます。
また、もっと身近なものでは甘味料や食品添加物として用いられます。

発症する危険性が高まる量には個人差があると言われており、一概には言えませんが一日に2.5グラムを超える量を長期間摂取することは避けたほうが良いと考えられています。

複数の漢方薬を処方された場合や、市販の漢方薬・その他薬剤などの利用・併用には注意が必要でしょう。
過剰服用、長期的な使用によって起こるとされており、男性よりも女性の患者が多いとされます。

また、50歳から80歳の高齢者層に多く、身長の低い人や体重が軽い人の発症リスクが高いという特徴があります。

原発性アルドステロン症の症状

低カリウム血症(ていかりうむけっしょう)

原発性アルドステロン症の主な症状はやはり高血圧ですが、この低カリウム血症も特徴的な症状の1つです。

低カリウム血症では、体内のカリウムの蓄えが減り、カリウムが細胞内に異常な移動をおこなうことで血液中のカリウム濃度が低くなります。

カリウムが失われる直接的な原因は消化管、腎臓からの損失と考えられています。

頭痛・めまい

高血圧を原因とする症状にはいくつかのものがありますが、すべての高血圧症の人に絶対に起こるというものはありません。

高血圧症自体は自覚症状を感じるのが難しく、高血圧症に伴って起こる症状のほうが自覚しやすいという特徴があります。

これらには頭痛や頭が重い感覚、のぼせる感じがする、めまいなどが挙げられます。

肩こりや腰痛

肩こりや腰痛の原因にもさまざまなものがありますが、原発性アルドステロン症によっても起こります。
肩こりは肥満体質、肩への負担が大きい、姿勢が悪いなどの特徴を持つ人に多く見られる症状としても知られています。

ストレスや目の疲れ、骨や首の異常によっても引き起こされます。
これらは一般的に「肩こりの原因」として有名ですが、原発性アルドステロン症によっても起こる可能性があることも知っておくとよいでしょう。

腰痛が起こる原因にもさまざまありますが、原発性アルドステロン症の場合は肝臓の機能に障害が発生したことを要因として起こる可能性があります。

これらの症状のほか、高血圧症に伴って起こる症状として脱力感、体のむくみ、動悸、鼻血、冷や汗をかく、吐き気、便秘、多飲多尿などがあります。
多尿の定義は一般的に、1日の尿の量が3000ミリを超えた場合とされています。

トイレの回数が多い、喉がよく渇くなどの気になる点があれば、一度かかりつけの医師に相談するのも良いでしょう。

原発性アルドステロン症の検査・診断

この病気の検査と診断は、まずアルドステロンが過剰に分泌されているかどうかを調べるところからはじまります。

採血検査

原発性アルドステロン症を疑う基準には4つのものがあります。

1.薬剤の効果を得ることができない薬剤抵抗性高血圧である
2.高コレステロール、高血糖、高中性脂肪など一般的に高血圧の要因になると言われる症状がないこと
3.若年層で高血圧を発症している
4.四肢の麻痺、筋力低下、多飲多尿、よく喉がかわくなど低カリウム血症に見られる症状があること

これらの基準をもとに、原発性アルドステロン症の可能性の高さを判断します。
血液検査ではスクリーニング法をおこないます。

スクリーニング法とは、いわばふるいにかけるための検査で、疑われるあらゆる病気の特徴がないか見逃さないためにおこなうものです。
この段階で何らかの病気の特徴が認められれば、より詳しい検査に進むことになります。

原発性アルドステロン症での血液検査では、血液中のアルドステロンとレニンの量・比率の確認とカリウムの量がどうなっているかを確認します。

血液検査の際の注意点はいくつかあり、安静にした状態でおこなうこと、降圧剤の内服をしていた場合は医師のアドバイスのもとで検査前に中止しておくことなどがあります。

血液検査の結果、レニンの量よりもアルドステロンの値が高いと原発性アルドステロン症である可能性が高いと判断されます。

その後の検査

より詳しい検査は、基本的に入院が必要となります。

カプトプリル負荷試験、フロセミド立位負荷試験、経口食塩検査(生理食塩水試験)をおこなったのち、これら3つのうち2つ以上が陽性になると原発性アルドステロン症であると判断される仕組みになっています。

腹部のCT検査やMRI検査

一連のスクリーニング検査によって原発性アルドステロン症であると判断されると、次は副腎皮質に腫瘍ができているのか、過形成が起きているのかを区別するための検査をおこないます。
この段階で用いられるのが腹部のCTやMRIです。

腫瘍ができている場合はアルドステロンの濃度は低くなり、過形成の場合では上がるという特徴があります。
区別が難しい場合は両方の副腎皮質にカテーテルを挿入し、アルドステロンとコルチゾールの値を調べる検査に進みます。

結果、片側の副腎にアルドステロンが過剰な場合は腫瘍、両方の副腎でアルドステロンが過剰であれば過形成が原因であると診断されます。

核医学検査

核医学検査は「アイソトープ検査」「RI検査」と呼ばれることもあります。
特定の臓器・組織に集まる性質を持った放射性の薬品を投与し、検査の目的である臓器・組織に集まった薬品が放射するガンマ線の様子を画像化して確認するというものです。
原発性アルドステロン症の核医学検査は、副腎皮質のシンチグラフィ検査と呼ばれるものです。
副腎の疾患の状況を確認するため、ヨウ化メチルノコレステロールを用います。

副腎静脈血サンプリング検査

副腎皮質に腫瘍ができることでの原発性アルドステロン症の場合に、手術による治療をおこなうためにどちらの副腎に腫瘍ができているのかを確認するための検査です。

腕からの採血検査ではアルドステロンの量を確認するのが限界で、どちらの副腎に異常があるのかまでを確認することはできません。

そのため、原発性アルドステロン症であると診断されたのちに、入院しながらおこなう検査となります。
両方の太ももからカテーテルを挿入し、副腎静脈まで進めて採血をします。

この結果、腫瘍化している副腎が確認できればそちら側に対する手術が視野に入ります。
検査のための入院期間は3泊4日程度です。

原発性アルドステロンの治療

手術による治療

アルドステロンを過剰に発する原因が副腎皮質の腫瘍であった場合は、腫瘍を取り除く手術がおこなわれます。
従来は開腹手術が主流でしたが、近年はより患者の負担が少ないミニマム創内視鏡下副腎摘出手術や炭酸ガスとスコープを用いる術法が広がってきています。

ミニマム創内視鏡下副腎摘出手術

腹部を2センチから3センチほど切り、内視鏡を用いて副腎の腫瘍を摘出します。
縫合は抜糸が不要な真皮埋没縫合法でおこなわれ、手術の痕が目立たないのが特徴です

手術の翌日には食事、歩行も可能です。
入院から手術、退院までが数日で済み、肉体的な負担はもちろん、生活への影響も少なく済む手術法です。

炭酸ガスとスコープを用いた手術

腹腔鏡下手術の一種で、スコープを通しモニターで確認しながらおこなう手術法です。

ミニマム創内視鏡下副腎摘出手術と炭酸ガスとスコープを用いた手術のどちらを選択するかは病院によって差があります。
手術後に血圧が正常になる確率は50%程度とされています。
治療のための入院と手術にかかる費用は患者の状態によっても異なりますが、健康保険の利用で25万円程度となっています。

薬剤での治療

高血圧の患者の血圧を正常化させる目的でレニン-アンジオテンシン系の薬剤が投与される場合があります。
ただし、高血圧の原因が原発性アルドステロン症だった場合は、降圧剤の効果は薄いでしょう。

手術による治療が難しいと判断された場合や、腫瘍ではなく過形成が原因だった場合は、一般的な高血圧の薬剤ではなくアルドステロンの過剰な生成を阻害するための薬剤が用いられます。

主に内服薬で、トリロスタン(デソパン)、スピロノラクトン(アルダクトン)、エプレレノン(セララ)などが代表的です。
これらの薬剤はアルドステロンの生成を阻害するだけではなく、その作用を抑える役割も持っています。

治療によりアルドステロン症に改善が見られれば、血圧もだんだん正常な状態に近づいていきます。
しかしながら、患っている期間が長い場合や、高血圧の状態が長く続いた場合には、なかなか血圧が正常化しないこともあるようです。
そのため、早期の治療開始が望ましいでしょう。

原発性アルドステロン症は、多くの人にとって普段ほとんど耳にすることのない病気です。
しかしながら、若年層で高血圧の傾向がある人に多いと言われており、働き盛りの人にも見られる病気です。

血圧が高いことが気になる場合は、できるだけすみやかに病院での検査を受けることをおすすめします。
また、一部の薬剤がきっかけになりやすい偽性アルドステロン症という病気もあります。

早めに病気を発見し、手術や投薬の効果が高いうちに適切な治療を受けることが大切なので、気になることがあれば放っておかないようにしましょう。

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