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遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2017/08/17 心臓・血管の病気

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)とは

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)(いでんせいしゅっけつせいまっしょうけっかんかくちょうしょう(おすらーびょう))とは遺伝性の病気であり、全身の血管に奇形と呼ばれる異常が引き起こされる病気です。

遺伝性出血性末梢血管拡張症やオスラー病のほか、遺伝性出血性毛細血管拡張症(いでんせいしゅっけつせいもうさいけっかんかくちょうしょう)という病名が使用されていることもありますが、同じ病気のことを指しています。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)は、主に脳や肝臓、脊髄、消化管の血管に奇形を引き起こすほか、毛細血管の拡張を引き起こし、鼻出血や口腔内出血、頭痛や全身の倦怠感(けんたいかん)、腹痛、消化管出血などの症状が現れる病気です。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)は遺伝子の異常によって引き起こされる病気であり、2分の1の確率で原因遺伝子が子どもへと引き継がれます。
国内では遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を引き起こす原因遺伝子を保有している人は5,000~8,000人に1人であり、実際に遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症している患者数は推定で10,000人程度です。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)は、遺伝子のうちどの遺伝子が異常を起こすことで発症するかは特定されているものの、有効な治療法は現状において確立されておらず、主に出現する症状に合った対症療法が行なわれています。

治療においては長期の療養を要しますが、早期発見・治療を受けることで症状の悪化を防ぎ、重篤な状態になってしまうのを回避することが可能です。
また、出現する症状は加齢によって顕著になるケースがあり、早期発見には日頃から定期健診を受けるといった健康ケアが重要です。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)の原因

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症する原因は遺伝子異常です。
遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)は遺伝子のうち、ACVRL-1、Endoglin、SMAD4という3種類の常染色体に異常が引き起こされることで発症することが明確になっています。

この3種類の常染色体は優性遺伝であり、高い確率で子どもへと受け継がれてしまいます。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症する原因遺伝子のうち、Endoglinが原因である場合は脳や肺に異変が起こり、ACVRL-1が原因である場合は肝臓に異変が起こりやすいことがわかっています。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)の患者のうち約80~90%はEndoglinまたはACVRL-1が原因であり、残り10~20%の患者はSMAD4あるいはまた別の種類の遺伝子が原因です。

遺伝子疾患である遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)は、常染色体優性遺伝が引き起こすさまざまな疾患のうち、発症率が高いとされています。

ただし、親から遺伝子異常を受け継いだ場合でも、必ずしも遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)が起こるとは限りません。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)の症状

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症すると全身の血管に奇形を引き起こし、鼻出血や消化管出血、皮膚病変や動静脈奇形に付随する症状が出現します。

鼻出血

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症した場合、10人中8~9人の患者に現れる最も代表的な症状が鼻出血です。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症すると血管が弱くなり、健康な人と比べて出血しやすくなるとされています。

鼻粘膜は全身のなかでもとくに弱いことから鼻出血を引き起こしやすく、また繰り返し鼻出血を引き起こすという特徴があります。

消化管出血

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症すると消化管の血管から出血することがあります。
消化管から出血した場合、吐血や下血、腹痛といった症状が出現します。

皮膚病変

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症すると全身の毛細血管が拡張されます。
主に唇や口腔内、手、指などの毛細血管が皮膚の外側から透けて見えるほど拡張され、全体的にむくんだように太くなります。
また、口腔内出血が起こることもあります。

脳動静脈奇形

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症すると、動脈と静脈のあいだで直接血液を流そうとする血管奇形を引き起こすことがあります。
この血管奇形が脳内に引き起こされる場合が脳動静脈奇形で、感覚麻痺やけいれん、知覚障害、脳機能障害といった症状が出現します。

肺動静脈奇形

肺に動静脈奇形ができた場合、全身への酸素供給が滞り低酸素状態を引き起こす場合があります。
また、呼吸困難や全身の倦怠感といった症状が出現するほか、悪化すると喀血(かっけつ)や脳梗塞(のうこうそく)、脳の虚血発作など深刻な症状を引き起こすことがあります。

肝臓動静脈奇形

肝臓に動静脈奇形ができた場合、肝硬変(かんこうへん)や胆道閉塞(たんどうへいそく)、心不全(しんふぜん)といった症状を引き起こす場合があります。

脊髄動静脈奇形

脊髄に動静脈奇形ができた場合、運動機能低下や四肢のしびれ、排便障害、排尿障害といった症状を引き起こす場合があります。
さらに症状が悪化すると脊髄内で出血し、四肢麻痺に至る場合があります。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)は上記の症状に加え、頭痛や脳出血(のうしゅっけつ)、脳梗塞など頭に関する合併症を引き起こしやすいとされています。

頭痛

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)の患者は頭痛を感じる場合が多く、脳内血管に異変が引き起こされている可能性があります。
頭痛を放置すると脳出血や脳梗塞を引き起こすため、長期間続く場合はできるだけ早く医療機関で検査を受けることが大切です。

脳出血

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)の合併症の一つである脳出血を引き起こすと、頭痛や嘔吐、強いめまいといった症状が引き起こされます。
また、意識障害や感覚機能低下、運動機能低下などの症状も出現し、早期に治療をしないと死に至る重篤な疾患です。

脳梗塞

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症すると頭痛や脳出血などの合併症を引き起こすことがありますが、脳梗塞を発症するケースもあります。
脳梗塞を発症すると脳細胞への血液が供給されず、早期に治療をしないと死に至る重篤な疾患です。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)の検査

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)の検査は主に問診、視診、血液検査、画像検査が行なわれています。

問診

問診では鼻出血の有無、貧血症状の有無、呼吸困難の有無、体の麻痺の有無、家族歴などを確認します。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症すると、体の血管から出血しやすくなるため鼻出血を引き起こしやすく、また出血することによって体内の鉄分量が減少し、貧血(ひんけつ)を引き起こしやすくなります。

また、動静脈奇形が肺にできると呼吸困難を引き起こしやすく、脳にできると体に麻痺が現れる場合があります。

さらに、遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)は遺伝性の病気であり、両親や親族に遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)患者がいる場合は、この病気の原因である異常遺伝子を受け継いで、保有している可能性が高いです。

視診

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症した場合、全身の毛細血管が拡張し、主に唇や口腔内、手、指、顔の皮膚に変化が現れ、見た目にも明らかな異変を確認することができます。

血液検査

血液検査では遺伝子の異常を確認することができます。
遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を引き起こす原因となる遺伝子はACVRL-1、Endoglin、SMAD4の3種類が判明しており、血液検査によって遺伝子を解析することで原因遺伝子を保有しているかどうかを確認することが可能です。

画像検査

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を引き起こすと、脳、肺、肝臓、脊髄などに動静脈奇形ができる場合があり、CT検査やMRI検査などの画像検査によって動静脈奇形や出血の有無を確認することができます。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)は上記の検査結果をもとに、鼻出血、毛細血管拡張、動静脈奇形、一親等以内に患者がいるの4項目のうち、3項目にあてはまる場合に遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)であると診断します。

2項目に当てはまる場合は「疑わしい」とし、経過観察を行なう形になります。

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)の治療

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)は、根本的な治療法が確立されておらず、現状においては出現する症状に応じて対症療法が行なわれています。

鼻出血に対する治療法

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症した場合に現れやすい鼻出血は、出血の度合いによって治療法が異なります。
鼻出血が軽度の場合には軟膏治療や圧迫止血を行ない、中度の場合には鼻粘膜をレーザーで焼灼する粘膜焼灼熱術を行ない、重度の場合には大腿部の皮膚を鼻粘膜へと移植する皮膚移植術が行なわれています。

消化管出血に対する治療法

消化管出血が見られる場合、症状の度合いによって治療法が異なります。
消化管出血が軽度の場合には輸血治療や鉄剤の服用を行ないます。
消化管出血が重度で大量出血をしている場合には、内視鏡を用いてアルゴンプラズマ凝固法などのレーザー治療が行なわれています。

皮膚病変に対する治療法

皮膚病変が現れた場合には、皮膚移植やレーザー治療などを行います。
また、軟膏治療やホルモン治療、止血剤の服用などを行なうケースもあります。

鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)に対する治療法

鉄欠乏性貧血ではいきなり大量出血はせず、日々の生活の中で徐々に出血し、体内の鉄分が不足していきます。
そのため、鉄剤を服用し、体内の鉄分量を増やすように対症療法を行ないます。

動静脈奇形に対する治療法

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を発症すると動脈と静脈が繋がる動静脈奇形を引き起こし、動脈と静脈がそれぞれ正常に機能せず、血流による全身への酸素供給に障害が出る場合があります。

動静脈奇形は脳、肺、肝臓、脊髄などに現れ、基本的に外科的手術、経カテーテル塞栓術療法、定位放射線治療を行ないます。
脳の動静脈奇形の治療は、症状が現れないほど小さな動静脈奇形の場合には経過観察を行ないますが、動静脈奇形のサイズが1~3cmほどの場合には外科的手術・経カテーテル塞栓術療法・定位放射線治療を組み合わせた集学的治療を行ないます。

肺の動静脈奇形の治療は破裂の危険を伴い、血管内の塞栓が全身へと運ばれる奇異性塞栓症(きいせいそくせんしょう)や低酸素血症(ていさんそけっしょう)を引き起こしやすいとされています。

こうしたリスクを回避するために基本的には経カテーテル塞栓術療法を行ないますが、外科的手術が選択されるケースもあります。
肝臓の動静脈奇形の治療は、基本的に肝臓の保存を目的とした内科的治療を行ないますが、症状が悪化して肝機能が低下した場合には肝移植が選択されるケースがあります。

脊髄の動静脈奇形の治療は、外科的手術か経カテーテル塞栓術療法が行なわれています。

このように、遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)の治療は出現する症状に合わせた対症療法を行ないますが、敗血症(はいけつしょう)や脳腫瘍(のうしゅよう)、血管破裂などの合併症さえなければ予後は悪くなく、健康な人と同様に暮らしていくことが可能と考えられています。

ただし、日常生活において出血しないように気をつけ、なるべく鉄分を積極的に摂取し、細菌による感染症などに注意する必要があります。

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