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がん性ニューロパチー(傍腫瘍性末梢神経障害)を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2018/05/25 神経

がん性ニューロパチー(傍腫瘍性末梢神経障害)とは

がん性ニューロパチー(がんせいにゅーろぱちー)、傍腫瘍性末梢神経障害(ぼうしゅようせいまっしょうしんけいしょうがい)は、がんによる腫瘍(しゅよう)が原因で起こる神経症候群のうち、腫瘍から直接的な影響を受けていないものをいいます。

がんによる神経障害でもっともわかりやすいのは、がんの腫瘍そのものに直接神経が圧迫されることで発症するものです。

がん性ニューロパチーの場合は、腫瘍がある場所とは遠く離れたところで神経障害が発生するもので、肺がんや血液系がんなどで、末梢神経が障害されるなどします。

ほかにもがんによる神経障害は、血液の凝固異常による血管障害、化学療法や放射線治療の副作用、がんによる免疫低下で発生する日和見(ひよりみ)感染、低栄養などが原因で発症しますが、そうしたものをすべて除外したものが、がん性ニューロパチーと診断されます。

なお、診断や早期発見のマーカーとしては、血液・髄液中の抗神経自己抗体が使われています。

がん性ニューロパチーの神経障害は、中枢・末梢神経系のどちらにも発症し、腫瘍の種類に応じてある程度一定したパターンをもっており、辺縁系脳炎(へんえんけいのうえん)、小脳変性炎(しょうのうへんせいえん)、脳脊髄炎(のうせきずいえん)、感覚性運動失調型ニューロパチー(かんかくせいうんどうしっちょうがたにゅーろぱちー)などが知られています。

こうした神経障害の60%は、神経障害発症から数ヶ月から2年のあいだに腫瘍が発見されます。
つまり、がんの症状が起こる前に神経障害があらわれるということですから、がんの早期発見の手がかりとして重要視されています。

がん性ニューロパチー(傍腫瘍性末梢神経障害)の原因

がん性ニューロパチーはどのようにして引き起こされるのでしょうか?このようなことを疑問に感じている人もいるはずです。

実はこの病気の原因については現状においてよくわかっていないのですが、自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)により引き起こされるのではないかという見方がされています。腫瘍から離れたところで神経障害が発生する仕組みは、がんに対する特殊な抗体がはたらいた結果として、抗体が神経細胞にも反応することで神経が攻撃され、障害が起こるというものです。

また、腫瘍から分泌されるなんらかの物質によって、二次的に発症するのではないかということも考えられています。

肺がん、卵巣がん、乳がん、消化器がん、リンパ腫などにより発症し、週~月単位で神経系の障害が生じます。とくに、肺がんによる発症例が多いようです。

がん性ニューロパチー(傍腫瘍性末梢神経障害)の症状

感覚性運動失調型ニューロパチー

がん性ニューロパチーの中ではもっともポピュラーなもので、とくに女性の発症頻度が高いことが知られています。

症状そのものには特定のパターンは存在せず、末梢神経の障害により、筋力低下、感覚低下、腱反射の消失といった症状が、身体のさまざまな部位に、さまざまな組み合わせて発症します。

末梢神経には3種類あり、運動神経、感覚神経、自律神経にわけられます。
運動神経は筋肉を動かす役割を持つ、神経のはたらきとしては最もイメージしやすいものです。運動神経に障害が起こると、筋力が低下したり、筋肉が萎縮したりします。

感覚神経は、温度や痛みなどの温痛覚や触覚を伝えることのほか、手足の位置や運動変化、振動などの深部感覚を伝えます。

この神経に障害が起きると、しびれや痛みがあらわれるか、逆に痛みや温度の感覚が鈍くなります。手足の位置関係がわからなくなったり、体のバランスが崩れたりといった症状もあらわれます。

自律神経は、身体のさまざまな組織のはたらきを調節する役割を担っています。自律神経のはたらきが阻害されると、たちくらみや排尿障害、発汗異常などがあらわれます。

こうした障害が複合的にあらわれるのが、ニューロパチーの特徴ですが、3つの障害が平等にあらわれるわけではなく、感覚神経や運動神経のほうにより障害が出やすいという傾向があります。先に痛みやしびれがでますので、それが症状の前兆といってもいいでしょう。

また、症状の現れ方により、以下のパターンに分類されます。

多発神経炎(たはつしんけいえん)は全身の末梢神経が障害を受けるものであり、単神経炎(たんしんけいえん)では、ひとつの神経だけに症状が出るというのが特徴です。

そして、単神経炎が全身のあちこちに起こる多発性単神経炎(たはつせいたんしんけいえん)があります。

がん性ニューロパチーによる神経障害の場合は、主に多発性神経炎のかたちをとり、感覚や運動の障害が比較的早く進行していき、高度障害に至ることが多々あります。このタイプの場合、肺がんの患者に多い傾向があります。

脳脊髄炎

認知機能障害、意識障害、せん妄(もう)、不随意運動、運動ニューロンの障害である錐体路(すいたいろ)障害、感覚・自律神経障害、下位運動ニューロン症候などが、様々な組み合わせで発症します。
肺がんにより発症することが最も多いですが、睾丸(こうがん)がん、胸腺腫(きょうせんしゅ)、乳がんによるケースもあります。

小脳変性症

小脳失調が急性的に進行します。
乳がんなど、婦人科系の悪性腫瘍に伴い発症します。

傍腫瘍性辺縁系脳炎

記銘・認知機能障害、精神症状、けいれん、意識障害などが生じます。関連のあるがんは、肺がん、精巣(せいそう)腫瘍、乳がん、未分化奇形腫(みぶんかきけいしゅ)、胸腺腫などです。

傍腫瘍性オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群

特異な眼球運動であるオプソクローヌス、四肢の不随意運動であるミオクローヌス、小脳失調を起こすものです。子どもの場合は神経芽細胞腫(しんけいがさいぼうしゅ)、大人で乳がんによるものが知られています。

ランバートイートン筋無力症候群

疲れやすくなったり、下半身の筋力が低下したりするほか、口の渇きや勃起不全などの自律神経障害を起こします。肺小細胞がんによるものが多く、男性にあらわれやすいのが特徴です。

傍腫瘍性スティッフパーソン症候群

肺小細胞がんや乳がん、胸腺腫などに伴うもので、体幹筋や四肢近位筋(ししきんいきん)に運動や感覚の障害として、こわばりや硬直を生じます。

がん性ニューロパチー(傍腫瘍性末梢神経障害)の検査・診断

神経症状と腫瘍の種類には関連性があるので、それぞれに特徴的な抗神経自己抗体が血液、髄液中に見られます。

これらが、がん性ニューロパチーの診断および対応した腫瘍の早期発見のマーカーとして有用です。
検査では、それらを検出し、結果に基づいて診断を下すことになります。

自己抗体というのは、体内の免疫機能により生成される抗体のうち、自分の細胞または組織に対してつくられたものをいいます。
がん細胞はウイルスや微生物などと違い自分の細胞であるため、それを攻撃するために生成したものは自己抗体となるのです。

主な病型と、それに関連した自己抗体の組み合わせは、下記のようになります。

感覚性運動失調型ニューロパチー

抗Hu抗体またはCV2抗体が多く検出されます。どちらも、肺がんに対する抗体です。

脳脊髄炎

抗Hu抗体が最も多く検出されます。

小脳変性症

抗Yo抗体という、婦人科がんに対する抗体が検出されます。また、乳がんの場合、抗Ri抗体が検出される例もあります。

傍腫瘍性辺縁系脳炎

各種抗神経自己抗体がみられます。また、脳髄液で軽度のリンパ球やタンパク質の増加が見られます。

傍腫瘍性オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群

肺がんや乳がんに対する抗Ri抗体のほか、抗Hu抗体などが検出されます。

ランバートイートン筋無力症候群

抗電位依存性カルシウムチャンネル抗体という自己抗体が検出されます。

傍腫瘍性スティッフパーソン症候群

乳がんに伴う場合は、抗アンフィフィジン抗体が検出されるほか、1型糖尿病を伴う場合はグルタミン酸デカルボキシラーゼに対する抗体が検出されます。

がん性ニューロパチー(傍腫瘍性末梢神経障害)の治療

原因などがよくわかってはいませんので、エビデンスのある治療法は確立されていないのが現状です。
経験的には、がんの影響による神経障害ですから、原因となっている悪性腫瘍を取り除くのが、最も有効な治療手段と考えられています。

腫瘍の摘出には早期発見と早期治療が肝要ですから、早めの検査が重要となってきます。がん性ニューロパチー自体が、がんの警告灯のようなものですから、違和感があったら早めに医師に相談し検査を受けると良いでしょう。

もともと良性の神経線維腫をもっている人の場合、急激に大きくなったときに痛みやしびれが引き起こされたときには、すぐに診察を受けるようにします。

また、神経症状の改善に関しては、免疫療法を早期導入することにより抗体生産やリンパ球の抗原提示能を抑制することで、効果が期待できます。

使用される薬剤や治療法としては副腎皮質ステロイド薬、大量免疫グロブリン投与、血液浄化療法、免疫抑制剤投与などがありますが、どれが有効かについては症例ごとに多量のデータを取り比較した研究結果がないため、患者の症状ごとに治療法を選択することになります。

がん性ニューロパチーの根本治療は原因である腫瘍の除去ですが、こうした治療は専門機関でなければできません。
がんの治療には、三大治療といわれる手法が用いられます。

手術

一般的にイメージされる外科手術と同様、問題となっている箇所を切除してしまうものです。
がんの場合、最初にがんが発生した部位である原発巣と、転移した箇所である転移巣、周囲のリンパ節をまとめて取り去ります。

血液を除くほとんどのがんに対して行なわれ、転移などがなく初期の原発巣など主病巣が小さい場合には最も有効な治療法となります。

しかしながら、手術したことでがん細胞が転移する例が多く、また大規模に組織を切除することから生体機能が損なわれたり、術後障害が起きたりなどで生活の質については大きくマイナスになる可能性が高いです。

また、手術を行なうには患者にそれに耐えうるだけの体力が残っている必要があります。
高齢者や、若年者でも体力が低下している場合は、手術ができずに化学療法に切り替えることになります。

外科手術は、がんの治療として古くから行なわれてきましたが、医学や麻酔学の進歩により技術的な発展はめざましく、放射線治療や化学療法との組み合わせで、より効果的な治療効果を得ることができます。

理想的には、がんの病巣をすべて取りきることを目指しますが、進行したがんの場合はがん細胞が残ってしまうこともあります。

そのため、拡大根治手術といって病巣の周囲の組織も大きく切除していましたが、それでも再発することが多く、手術の負荷に対して効果が見合わない事例も多くあり、手術による治療の限界が指摘されていました。

そうした場合、必ずしも拡大根治手術をせず、ある程度の病巣を外科的に除去したうえで、化学療法などほかの治療法を組み合わせて行なう集学的治療を取るようになりました。

集学的治療が可能になったことで、縮小手術といってこれまでの手術よりも切除する組織を減らし、患者の負担を抑えることもできるようになりました。

化学療法

化学療法とは、ある特定の化学物質の選択毒性という性質を利用し、病気のもととなっている微生物などの増殖を抑え、駆逐する治療法です。
一般的にイメージされる、薬の服用による治療です。

がん治療のおける化学療法は、抗がん剤というがん細胞の増殖を抑える薬剤を用いた抗がん剤治療を行ないます。

抗癌剤は、静脈注射か内服により血液中に入り、体内のがん細胞を攻撃します。

血液中に薬が取り込まれることから、全身に渡り行き渡らせることができるのが大きな利点で、これにより全身にあるがん細胞に効果を発揮します。
とくに、白血病などの最初から全身に発病するタイプのがんには最も効果的な治療法となります。

また、がんは転移を繰り返すことで全身に広がってしまう病気ですので、そうなってしまったがんに対しては最適な治療法となります。
この点は、ピンポイントに病巣にアプローチする外科手術や放射線治療とは対照的です。

化学療法がどの程度有効なのかは、がんの種類や発見時期により異なってきます。
急性骨髄性白血病や悪性リンパ腫、小児悪性需要には非常に高い効果が期待できるほか、乳がん、卵巣がん、肺小細胞がんでは症状の緩和が可能です。

逆に、大腸がんや腎臓がん、肝臓がん、脾臓(ひぞう)がん、大腸がんなどにはあまり期待できません。こうしたがんの場合は、集学的治療により対処します。

また、ほかの治療法の苦手な部分を補うために化学療法が用いられることもあります。手術でがんを取りきれなかったときなど転移や再発の可能性がある場合、抗がん剤の投与で病巣の根絶を狙います。

抗がん剤については、副作用は避けられず大きな問題となることもあります。

がん細胞だけでなく、正常な細胞にもダメージを与えてしまうのです。

いまのところ、がん細胞以外を一切攻撃しないという薬は開発できておらず、この副作用を防止することはできません。もちろん、副作用を抑えるための研究努力は、日夜続けられています。

抗がん剤の使用は、患者が副作用に耐えられると医師が判断した場合に限られますし、同じ効果でも副作用の異なる薬を併用することで副作用を分散させる多剤併用療法もあります。

また、副作用防止剤でのコントロールも可能です。抗がん剤自体、10年以上かけて慎重に開発してきたものですし、効果と副作用については良いバランスになるように薬の性能だけでなく使用法のノウハウを含め、進歩を続けているといっていいでしょう。

放射線療法

がん細胞に放射線を照射すると、細胞分裂ができなくなり増殖が抑制されます。

正常な細胞も放射線の影響を受けますが、放射線の照射の仕方を工夫することで、がん細胞に対して最大限の効果を発揮しつつ、可能な限り正常な細胞にダメージを与えないようするのが、放射線治療です。

この方法の最大の利点は、手術をせずにがん細胞に対して直接攻撃できることです。

とくに、舌(ぜつ)がんや咽頭(いんとう)がん、乳がん、陰茎(いんけい)がんなどは早期発見できれば、放射線治療によりもとの形や機能を維持したまま治すことができます。また、脳腫瘍などは手術が困難な部位のがんに対しても、放射線治療が有効です。

このように、切らずに治療できるのが利点となります。
悪性リンパ腫のように放射線治療が最も有効ながんもあります。

さらに、手術後に再発予防のために利用できます。
病床を切除したあと、転移しやすいリンパ節などに放射線を当てることで、再発予防が期待できます。

放射線治療では、ガンマ線やX線を利用します。

体の表面に近いがんと体の奥にあるがんでは、病巣に放射線を届かせるために必要なエネルギー量が違いますので、状況に応じた機材を用いることになります。

放射線治療にも副作用はあります。だるい、食欲がないなどで、放射線を浴びたことによるダメージによってこういった症状が引き起こされてしまいます。

近年では、画像検査の技術向上によりがんの位置がより正確にわかるようになりましたし、放射線照射の精度も向上しています。

より精密にがん細胞だけを狙い撃ちできようになっていますし、これまでの知見をもとに綿密な治療計画をたて、副作用を抑える努力もしています。

また、患者本人ががんであると知っていたほうが、治療の成果が良くなるといわれています。

医師とコミュニケーションを密にとることにより、治療に対する正しい知識を持つなど、理解を心がけることが大切になってきます。

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