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ギランバレー症候群を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2017/12/11 神経

ギランバレー症候群(ぎらんばれーしょうこうぐん)とは、進行性の筋力低下や感覚異常が現れる多発神経障害の一種です。
そもそも人体には運動を司る運動神経、感覚を司る感覚神経、呼吸器・消化器・循環器の働きを司る自律神経、この3種類の神経で構成されている末梢神経が存在しています。

ギランバレー症候群は末梢神経に何らかの原因により障害が現れることで各神経が正常に機能せず、痺れや脱力感、痛みといった症状や急激な筋力低下が現れる病気です。

ギランバレー症候群は、末梢神経のどこに障害が現れるかによって、脱髄型(だつずいがた)と軸策型(じくさくがた)のどちらにあてはまるのかが変わります。

脱髄型

脱髄型とは、神経細胞中の電気信号の伝達速度を司る髄鞘(ずいしょう)に障害が現れることによってギランバレー症候群を発症するタイプです。

重度の自律神経障害や呼吸筋麻痺といった症状を引き起こすリスクが高いタイプとされています。

軸策型

軸策型とは、神経細胞中の電気信号の伝達回路である軸策に障害が現れることによってギランバレー症候群を発症するタイプです。

症状の進行度が早く短期間で一番悪い状態を迎えますが、その後は急速によくなるケースと、後遺症が残る予後不良のケースとにわかれます。

ギランバレー症候群は発症年齢にかたよりがなく、すべての年齢層で起こり得ます。
発症平均年齢は39.1歳とされ、年齢別の割合で見ると若年層と高齢者層が高く、60歳前後の発症率が一番高いです。

発症率は人口100,000人あたり1~2人とされ、日本国内では年間2,000人以上が新たに発症しています。
また、女性と比較して男性の発症率が高く、その割合は2:3と男性のほうが1.5倍も発症率が高いというデータがあります。

ギランバレー症候群の原因

ギランバレー症候群を発症する原因は未だ解明されていません。
ただ、ギランバレー症候群の患者の約60%が発症前に感染性胃腸炎や肺感染といった感染症の症状が出現していることから、ウイルスや細菌への感染が関与しているのではないかと考えられています。

また、ギランバレー症候群は末梢神経の障害によって発症するため、末梢神経の炎症によっても発症すると考えられています。

さらに、まれではあるものの、医薬品の副作用によってギランバレー症候群を発症するケースもあります。

ウイルスや細菌への感染

ギランバレー症候群を発症する原因となるウイルスや細菌は、カンピロバクター、マイコプラズマ、サイトメガロウイルス、EBウイルスの4種類があります。

ウイルスや細菌には神経に寄生する種類があり、これら4種類のウイルスや細菌が神経に寄生すると免疫作用に障害が発生し、自分自身で自分を攻撃する自己免疫疾患を発症するケースがあります。

この自己免疫疾患によって末梢神経に障害が発生し、ギランバレー症候群を発症してしまいます。
ギランバレー症候群患者のうち、約20~30%はカンピロバクターに感染しています。

末梢神経の炎症

ギランバレー症候群は末梢神経に引き起こされる障害によって発症します。

末梢神経には運動神経や感覚神経、自律神経の3つがあり、どれかの神経に障害が現れたことによってギランバレー症候群を発症した場合、障害が現れている神経部分に炎症が見られることが解明されています。

しかし炎症を引き起こす詳しい原因は解明されておらず、ウイルスや細菌への感染や、自己免疫性疾患によって炎症が引き起こされると考えられています。

医薬品の副作用

ギランバレー症候群は、ごくまれに医薬品の副作用によって発症することが解明されています。

主にインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、ポリオワクチンといった予防接種や、肝炎治療に用いるインターフェロン製剤、関節リウマチ治療に用いるペニラシミン製剤、ニューキノロン系抗生剤、抗がん剤などの副作用によって発症するとされています。

このような医薬品の副作用によってギランバレー症候群を発症した場合、原因となる薬物の使用をやめることで症状を改善させることが可能です。
ただし、長期間にわたり原因となる薬物を使っていた場合には、改善するまで長期間を要することになりかねません。

ギランバレー症候群の症状

ギランバレー症候群を発症すると、手足の脱力感や呼吸不全などさまざまな症状が引き起こされますが、症状の現れ方には個人差があるうえに発症後4週間までに症状のピークを迎えるケースが多くなっています。

手足の脱力感

ギランバレー症候群の症状のうち最もポピュラーな症状で、原因となるウイルスや細菌に感染して1~2週間後に起こりやすい症状です。
手足に力が入らず、歩きにくく転びやすいといった症状が起こります。

手足の感覚麻痺

ギランバレー症候群は末梢神経に障害が発生するため、発症すると手足の脱力感に加えて、しびれや痛みなど感覚麻痺の症状が起こります。

呼吸困難

呼吸困難の症状は、ギランバレー症候群患者の約10~20%に現れます。
息苦しいと感じる程度の軽症から、自発呼吸が困難な重症まで現れる症状は異なりますが、重症の場合は人工呼吸器を使用することもあります。

顔面神経麻痺

末梢神経障害が顔面神経に現れた場合には顔に痛みやしびれを感じ、顔の筋肉が麻痺して表情が失われる場合があります。
この顔面神経麻痺は、ギランバレー症候群患者の10人中5人程度に現れるとされています。

眼球運動麻痺

抹消神経障害が眼神経に発生した場合には、物が二重に見える複視の症状が現れます。
この眼球運動麻痺は、ギランバレー症候群患者の10人中1人程度に現れるとされています。

球(きゅう)麻痺

球麻痺とは脊髄上部の延髄部分に障害が現れることにより、食べ物を噛めない、飲み込めないといった咀嚼(そしゃく)障害や嚥下(えんげ)障害、ろれつが回らないといった構音(こうおん)障害が引き起こされる症状です。

この球麻痺はギランバレー症候群患者のうち、10人中3人程度に現れるとされています。

声帯麻痺

末梢神経障害が声帯に現れた場合、声のかすれや、声が出しづらいといった症状が現れます。
ただし、声帯ポリープと間違われやすいため、注意が必要です。

排尿障害

末梢神経障害が排尿中枢神経に現れた場合、おしっこが出にくくなる排尿障害を引き起こします。

排尿障害は膀胱炎(ぼうこうえん)や尿道炎(にょうどうえん)の発症リスクを高めるため、尿道カテーテルの挿入が必要になるケースがあります。

下半身の筋肉痛

ギランバレー症候群を発症することによって脊椎部分の神経に炎症が生じやすく、腰からお尻にかけて筋肉痛のような痛みを感じることがあります。

このようにギランバレー症候群を発症した場合、さまざまな症状が全身に現れますが、治療方針を決定する目安となるよう、症状の重症度によってグレード0~グレード6までの全7段階に分類されています。

グレード0

ギランバレー症候群の症状が見られず、正常な場合

グレード1

手足の脱力感など軽い神経症状が現れている場合

グレード2

手足の脱力感や感覚麻痺はあるが、歩行器や支えがなくとも5m程度であれば自力歩行が可能な場合

グレード3

手足の脱力感や感覚麻痺はあるが、歩行器や支えがあれば5m程度の自力歩行が可能な場合

グレード4

歩行器や支えがある場合でも5m程度の自力歩行ができず、車椅子が欠かせない場合やベッド上での生活しか送れない場合

グレード5

自発呼吸が困難であり、人工呼吸器による補助換気が必要な場合

グレード6

生命維持が不可能であり、死亡に至る場合

ギランバレー症候群の検査・診断

ギランバレー症候群の検査は神経内科で行ないます。
ギランバレー症候群の症状は個人差があるため、神経学的診察・神経伝達速度検査・筋電図検査・血液検査・髄液検査・MRI検査などから、現れている症状に合わせて行なう形になります。

神経学的診察

神経学的診察では、運動系・脳神経系・感覚系・言語系・末梢神経系・意識状態・反射などを総合的に診察し、どういった症状が出現しているのかを確認します。

神経伝達速度検査

神経伝達速度検査とは、皮膚の上から末梢神経に電気刺激を与え、筋肉へと伝わる速度を測る検査です。

検査時間は約1時間ほどで終了しますが、全身の末梢神経を調べる場合にはさらに時間がかかります。
この検査によって、抹消神経障害の重症度を確認することができます。

筋電図検査

筋電図検査とは、末梢神経障害が筋肉に現れているかを確認することができる検査です。

ギランバレー症候群を発症すると手足の脱力感や感覚麻痺といった症状が現れますが、筋肉の損傷によるものか、あるいは末梢神経障害によるものかを筋全図を見ることによって確認することができます。

検査時間は約30~120分ほどで終了します。

血液検査

ギランバレー症候群を発症した場合、抗糖脂質抗体が血液中から検出されることがあります。

そのため、血液検査によって血液中の抗糖脂質抗体の有無を調べることにより、ギランバレー症候群を発症しているかを確認することが可能です。

髄液検査

ギランバレー症候群を発症した場合、髄液内のタンパク質が増加することがあります。

そのため、髄液検査で髄液中のタンパク質や糖分の濃度、性状を調べることでギランバレーを発症しているかどうかを確認することが可能です。

MRI検査

ギランバレー症候群患者のうち、神経伝達速度検査が行なえない幼児に対しては、代わりにMRI検査を行なうケースがあります。

ギランバレー症候群の治療

ギランバレー症候群は進行が早く、早期に治療を行なわないと後遺症を残してしまうリスクがあります。

治療は基本的に血液浄化療法と免疫グロブリン大量静注療法を行ないますが、重症化した場合は全身管理が必要です。

血液浄化療法

血液浄化療法とは、血液中に含まれるギランバレー症候群を引き起こす要因物質を除去することによって、一時的に症状を改善させる治療法です。

血液浄化療法には単純血漿(けっしょう)交換療法、免疫吸着療法、二重濾過血漿交換療法の3種類がありますが、ギランバレー症候群の治療としては単純血漿交換法が最も効果的とされています。

血液浄化療法は基本的にすべてのギランバレー症候群患者に対して適応となるものの、例外として活動性の感染症を患っている人や、循環不全疾患を患っている人に対しては適応とはなりません。

また、副作用として、低血圧(ていけつあつ)や吐き気、頭痛、動悸、嘔吐、冷や汗、発疹(ほっしん)、蕁麻疹(じんましん)といった症状や、痙攣(けいれん)や筋肉の脱力感といった低カルシウム血症(ていかるしうむけっしょう)特有の症状が引き起こされることがあります。

免疫グロブリン大量静注療法

免疫グロブリン大量静注療法とは、血液製剤の一種・免疫グロブリンを静脈に点滴で投薬する治療法です。

免疫グロブリン大量静注療法は基本的にすべてのギランバレー症候群患者に適応となり、とくに低体重の人、重度の感染症や循環不全を患っている人、自律神経障害が現れている人、小児や高齢者の場合は血液浄化法よりも優先して行なわれています。

ただし、心血管障害や脳障害、腎障害のある人は適応となりません。

また、副作用として、発疹、顔のむくみ、呼吸困難、喘息(ぜんそく)、頻脈、血圧低下といった症状や、頭痛、発熱、吐き気、悪寒、軽度の高血圧(こうけつあつ)、肝機能障害などが引き起こされるリスクがあります。

重症化した場合の治療

ギランバレー症候群が重症化すると、呼吸筋麻痺によって呼吸困難となり、人工呼吸器を用いた呼吸管理が必要になります。

ほかにも血圧変動や不整脈(ふせいみゃく)、自律神経障害が出現した場合には、集中治療室での全身管理を行なわなければならなくなることもあります。

ギランバレー症候群は発症後4週間までにピークを迎え、その後は徐々に回復していきます。
ただし、症状の出方・回復度合いには個人差があり、後遺症が残る場合や症状が悪化して死亡に至る場合もあります。

早期の段階で血液浄化療法や免疫ブロブリン大量静注療法を行なえば、約6ヶ月程度で通常の生活に戻ることができるとされていますが、早期の段階では手足の脱力感や感覚麻痺など風邪を引いた時の症状に似ていることから見過ごされる場合も多いため、症状が長く続くと感じた場合などはできるだけ早く医療機関で検査を受けるようにして下さい。

また、治療後の再発率は5%未満と低いため、治療後の経過はそれほど心配する必要はありません。

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