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サイトメガロウイルス網膜炎を詳しく:原因・症状・検査・治療など

公開日: : 最終更新日:2018/08/13 目の病気

サイトメガロウイルス網膜炎とは

眼球のいちばん奥に存在し、光を感じる神経の膜のことを網膜(もうまく)といいます。
モノはこの網膜に焦点を合わせることによって見えるしくみになっています。

サイトメガロウイルス網膜炎(さいとめがろういるすもうまくえん)はヘルペスウイルス科に属しているサイトメガロウイルス(CMV)が網膜に感染し、発症する病気です。
サイトメガロウイルス網膜炎を起こすと、網膜は壊死(えし)し、失明にいたってしまうこともあります。

日本人の大部分の人はサイトメガロウイルスが潜伏感染していますが、ほとんどの人が無症状のまま一生を過ごします。
健康な人がサイトメガロウイルス網膜炎を発症するのはたいへんまれなことで、ほとんどは病気や病気の治療により免疫不全状態の人に起こります。

エイズという病名で有名な後天性免疫不全症候群(こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん)における、主な眼の日和見感染症(ひよりみかんせんしょう)にサイトメガロウイルス網膜炎は含まれています。

また、母親のおなかの中にいる時期に、赤ちゃんが胎盤(たいばん)を通して感染し、サイトメガロウイルス網膜炎が生じることがあります。

日和見感染症とは

日和見感染症というのは、健康な人に感染症を起こすだけの強さを持たない細菌・ウイルスなどの病原体が原因で発症する感染症のことで、なにか原因があって免疫力がダウンしたときに起こってくる病気をまとめて日和見感染症といいます。

たとえば、先述した後天性免疫不全症候群を患っている人や、ガンを患っていて抗ガン剤治療を受けている人、高齢で体力が低下しているなどをあげることができます。
免疫力がダウンしている状態では、そうでない状態では無害な病原体が目覚めて暴れだします。

その結果、サイトメガロウイルス網膜炎では最悪の場合、失明にいたるようなことになるというわけです。

サイトメガロウイルス網膜炎の原因

サイトメガロウイルス網膜炎には先天性のものと、後天性のものとがあります。

先天性のサイトメガロウイルス網膜炎

このタイプのサイトメガロウイルス網膜炎は、赤ちゃんが母親のお腹の中にいるときに、胎盤を通して感染することによって起こります。

先天性のサイトメガロウイルス感染症(さいとめがろういるすかんせんしょう)によって生じる、臓器症状のひとつとしてサイトメガロウイルス網膜炎が起こります。

この場合、たとえば視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)の形成異常のような、眼球そのものの問題が生じていることもあります。
サイトメガロウイルス感染症では、重症では流産や新生児死亡といった最悪の事態を招いてしまう危険性があります。

また、小頭症(しょうとうしょう)、水頭症(すいとうしょう)といった先天異常を招く原因にもなります。
ある程度、子どもが成長してくると、難聴(なんちょう)や知能障害などの問題が起こってくることもあります。

なお、視神経乳頭についてですが、網膜には光を感じ取る細胞である視細胞(しさいぼう)が1億個以上存在します。
視細胞で受け取った情報は視神経を通って脳に達し、映像化されます。

視神経は網膜全体に張り巡らされており、およそ120万本も存在します。

1本1本の視神経は眼球の奥へと向かって集束していって、最終的には1本の太い束になります。
この束が脳へといくための眼球の出口のことを、視神経乳頭といいます。

後天性のサイトメガロウイルス網膜炎

このタイプのサイトメガロウイルス網膜炎は、なにか原因があって体の免疫力が低下している状態で発症します。

後天性免疫不全症候群を患っている人、ガンを患っているために抗ガン剤治療を受けている人、臓器移植を受けたあとで生じる拒絶反応を抑制することを目的に免疫抑制剤を使っている人などにサイトメガロウイルス網膜炎が起こるリスクがあります。

大人に起こるサイトメガロウイルス網膜炎といえば普通、後天性のサイトメガロウイルス網膜炎のことをさします。

すでに体の中に潜伏感染している病原体のサイトメガロウイルスが、免疫力のダウンによって暴れだし、重度の炎症を網膜に生じさせます。
したがって、健康な人が急にサイトメガロウイルス網膜炎を発症することはまずありません。

サイトメガロウイルス網膜炎の症状

サイトメガロウイルス網膜炎は、網膜に炎症が生じている状態です。
そのため、出現する症状は眼に関わるものです。

サイトメガロウイルス網膜炎はどんな症状が出る?

サイトメガロウイルス網膜炎を発症すると、視力が落ちたり、飛蚊症(ひぶんしょう)になったりと、さまざまな症状が起こり得ます。
出現する症状は、眼底(がんてい)のどの部分がおかされるのかによって変わってきます。

悪化のしかたも、網膜血管をおかして急速に悪化していくケースや、段々に悪化するケースまであります。
悪化のしかたの違いによっても、症状には違いが出ます。

また、サイトメガロウイルス網膜炎は、最初は左右の一方の眼にだけ症状が出現しますが、やがて両方の眼におよびます。

症状が出て1年も経たないうちに、網膜病変の萎縮にともなって網膜剥離を起こし、そのことによって視力・視野障害が生じることもあります。

飛蚊症について

飛蚊症というのはいったいどういう症状なのか、気になっている人もいるのではないでしょうか。

飛蚊症は、視界に実際にはいない蚊など小さな異物が浮遊しているかのようにうつりこむ症状です。

ただし、これは軽い飛蚊症で、ひどい飛蚊症はもっと違ったものがうつりこみます。

飛蚊症は病気と関係があるものと、無関係なものがありますが、大半の飛蚊症は病気と関係ありません。

眼球の大部分を占めている、完全ではないものの透明なゲル状の組織を硝子体(しょうしたい)といいます。

普通の飛蚊症は、網膜に硝子体のにごりが網膜にうつるため、蚊などの異物が浮遊しているように見えます。

成人であれば多かれ少なかれ、どなたにでもあるものです。
先述したとおり、硝子体は完全に透明な組織ではないというのが理由です。

歳を重ねるほど、近視が強度なほど、硝子体に繊維のかたまり状のにごりが生じやすくなります。
飛蚊症は、白い壁や晴れた日の空をバックにしたときよく見えるようになります。

また、後部硝子体剥離(こうぶしょうしたいはくり)を招くと視神経乳頭部分から離れた厚い環状の後部硝子体皮質(こうぶしょうしたいひしつ)によって飛蚊症が発生します。

この場合、円状や楕円状の濃い影が、視野の真ん中あたりを縦横に移動するため、かなり気になります。
しかし、この場合も病気として扱われません。

どうにかしてほしいと思ってもどうにもならない問題で、慣れて大して気にならなくなるのを待つだけです。
飛蚊症に気づいて医療機関へ行く人の多くは病気とは無関係な飛蚊症ですが、病気ではないと自己判断するのはよくありません。

病気と関係のある飛蚊症の場合、その病気が深刻なものである可能性もあるためです。
網膜剥離の場合、その前ぶれとして飛蚊症の症状が出現することがよくあります。

網膜が硝子体に引っ張られることで、裂け目や穴ができるとき、網膜の血管が破綻(はたん)して出血を起こします。
この出血が硝子体の中におよぶと、飛蚊症として自覚されますが、墨汁が垂れてきたようなと表現される見えかたになります。
また、網膜剥離では光視症(こうししょう)という症状もあります。

光視症は光の点滅を感じたり、暗い部屋で急に稲妻のような光が見えたりするものです。
網膜が強く牽引(けんいん)されて生じる異常放電により、光視症が起こるとされています。

墨汁が垂れてきたと表現されるような飛蚊症や、光視症に気づいた場合、深刻な状態と思ったほうがよく、すぐに病院で受診しなければいけません。

サイトメガロウイルス網膜炎の検査・診断

サイトメガロウイルス網膜炎を調べるために行なわれている検査として、眼底検査やPCR検査をあげることができます。

後天性免疫不全症候群にかかっている人や、臓器移植を受けて免疫抑制薬を使っている人など免疫不全状態にあり、視力低下、飛蚊症といった症状があれば、放置することなく速やかに眼科網膜専門医に調べてもらってください。

または、内科主治医に伝えて、眼科受診の依頼を行なってもらいましょう。

眼底検査

眼底は眼球の内部・眼球の後ろ側部分のことをさします。
眼球内部の大部分を占める透明なゲル状の組織である硝子体、光を感じる神経の膜である網膜、眼球や網膜に酸素や栄養を供給している脈絡膜、脳とつながっている視神経の出口部分の視神経乳頭などをまとめて眼底といっています。

眼底はわたしたちの体の中で唯一、肉眼で血管の状態を観察することが可能なところです。
眼底の血管を観察して問題が生じている場合には、眼底とは別の場所の血管にまで問題が起こっている疑いもあります。

眼底検査には、眼底鏡(がんていきょう)というライトとレンズを医師が持って、眼底を観察するやりかたと、眼底カメラという器械を使って眼底の写真撮影を行なうやりかたがあります。

通常の健康診断などで行なわれている眼底検査では、無散瞳型(むさんどうがた)の眼底カメラが使われており、瞳孔(どうこう)を開けず普段どおりの眼で撮影します。

しかし、瞳孔が開いていなければ眼底の周辺部は調べにくいため、眼底周辺部の問題を見つけにくくなります。

眼底を細部にいたるまで観察するには、散瞳薬(さんどうやく)という点眼薬をさして30分程度の時間が経過し、瞳孔が開いた状態になったうえで検査を行ないます。

眼科での眼底検査は瞳孔を開けたうえで行なうのが普通です。

検査そのものは点眼薬をさすだけで痛みなどはともないませんが、点眼薬の効果がなくなるまで4~5時間ほど要します。

診察を受けたあとも効果が続いているうちはまぶしさや見にくさなどの症状を自覚するため、自分での車の運転など避けなければいけません。

PCR検査

PCR検査のPCRは、Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)を略したものです。
きわめてわずかな量の検体を、高感度で検出する方法です。
ウイルスなどの顕微鏡で観察することの不可能な病原体の有無を突き止める検査です。

普通、遺伝子は肉眼で見ることはできませんが、病原体のDNAを増幅させ、染色して検出装置にかけることで、ターゲットである病原体のDNAを目で確かめることが可能になります。

PCR検査では、数時間でDNAを100万倍にまで増やすことが可能です。

ターゲットである病原体のDNAを確認できた場合には陽性(ようせい)、確認できない場合には陰性(いんせい)といいます。

サイトメガロウイルス網膜炎では、診断の確定やほかのヘルペスウイルスによる網膜の炎症ではないことを確認するため、PCR検査は行なわれています。

サイトメガロウイルス網膜炎の治療

サイトメガロウイルス網膜炎に対しては、抗ウイルス薬を使った治療が行なわれています。

サイトメガロウイルス網膜炎に対する抗ウイルス薬の投与

免疫力が弱まると、ほかのさまざまな感染症にかかりやすくなります。
サイトメガロウイルス網膜炎もその中のひとつです。

サイトメガロウイルス網膜炎に対しては、ガンシクロビルという抗ウイルス薬が使用されています。
この薬剤には、サイトメガロウイルスの増殖を抑制する作用があります。

点滴でガンシクロビルの全身投与を行ないます。
長期におよぶ点滴を行なわなければいけないため、副作用として骨髄抑制に気をつけなければいけません。

この問題をなくすため、アメリカではガンシクロビルを特殊な小さい入れ物に入れて、持続的に眼球の中に放出する方法があります。

この方法は眼球局所に投与を行なうことができ、薬剤効果を半年以上にわたって得ることが可能です。

ただし、ガンシクロビルの作用はサイトメガロウイルスの増殖抑制で、サイトメガロウイルスを殺すものではありません。

そのため、病気自体を治す効き目はなく、早期に治療をやめると再発を起こすリスクがあります。
治療で一番重要なのは、背景にある全身の免疫不全状態をよくすることです。

骨髄抑制について

サイトメガロウイルス網膜炎に対する抗ウイルス薬の投与による副作用として、先述した骨髄抑制をあげることができます。

骨髄抑制は、骨髄の血液をつくる働きが悪くなった状態のことです。
赤血球(せっけっきゅう)、白血球(はっけっきゅう)、血小板(けっしょうばん)の数が減ってしまいます。

中でも減りやすいのは白血球です。
白血球が減少すると、細菌感染を起こすリスクが高まります。

また、血小板が減少すれば出血を起こしやすくなり、赤血球が減少すると貧血(ひんけつ)を起こしやすくなります。

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