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停留精巣を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2017/08/30 男性に多い病気

停留精巣とは

停留精巣(ていりゅうせいそう)とは、一般にいう金玉袋である陰嚢(いんのう)内に、精巣がおさまっていない状態のことをいいます。
精巣はまたの名を睾丸(こうがん)といい、精子を産生したり男性ホルモンを分泌したりといった役割を担っています。

精巣ははじめから陰嚢内に入っているわけではなく、赤ちゃんが母親のお腹のなかにいるとき、腎臓付近の場所を出発点として段々に下へとおりていって、下腹部にある鼠径管(そけいかん)を通り陰嚢内まで移動します。

停留精巣の場合には精巣が陰嚢内におさまる前に、移動がストップしてしまった状態です。
停留睾丸といわれることもありますが、これは停留精巣と同じ異常のことを指しています。
精巣は左右一対ありますが、停留精巣は片方または両方に起こる病気です。

精巣は男性にしかないため、停留精巣は男性特有の異常といえますが、男性の生まれつきの異常のなかで停留精巣は最多の病気です。
予定日で出産した男の子のうち、3~4%に起こる異常であり、決して珍しい病気ではありません。

なお、停留精巣は早産・未熟児のほうが多く起こっており、未熟児の場合の停留精巣の割合は、誕生した男の子の30%程度といわれています。
生後半年までは精巣が自然と下降してくることがあり、1歳の誕生日では1%程度まで減少します。

ただ、生後半年までの話であり、半年を越えると精巣が自然とおりてくることはないため、数値が変わることはありません。

精巣の豆知識

男の子の精巣は女の子のに卵巣に相当する器官であり、同じ生殖腺です。
なお、卵巣は卵子を育み、女性ホルモンを分泌する役割を担っています。

精巣と卵巣は子どもができて2ヶ月を迎えるころまで区別がつかない状態であり、赤ちゃんのお腹のなかに存在しています。
性別が決まるのは染色体のうえの遺伝子であり、男性になるケースでは妊娠2ヶ月あたりに生殖腺が精巣へと姿を変えはじめていって、男性ホルモンを産生します。

そしてそれと一緒にお腹のなかに留まっているのではなく、脚のつけねである鼠径部へ移動し、そこから陰嚢へと胎児の時期におりてくるのです。
一方、女性の場合、卵巣は胎児のお腹のなかに留まったまま、場所を移すことはありません。

精巣がどうして陰嚢までおりてくるのか疑問に感じる人もいるでしょうが、精巣の下降は精子との関係があります。
12~15歳ごろの思春期を迎えて精子を産生するには、体温と比較して精巣の温度が1~2℃低い環境でなければいけません。

陰嚢は体の外に出ており、体のなかと比較して温度が低く、精子の産生に適した環境になっています。
そしてこれが、精巣が陰嚢までおりてくる理由です。

停留精巣の原因

なぜ停留精巣が引き起こされてしまうのか

人間に引き起こされる病気には、原因がはっきりしているものとしていないものがあります。
停留精巣の原因は、現状において正確にはわかっていません。

遺伝的、母体、環境といった要因が、お腹のなかにいる赤ちゃんのホルモンの産生、神経系や体の成育に影響をおよぼし、陰嚢まで精巣がおりてくることなくストップしてしまうのではないかという見方がされています。

停留精巣のリスクを高める問題

新生児が招く停留精巣は、低体重児や未熟児であるほうが発生率が高いです。
このほか、家族に停留精巣を起こしていた場合も、新たに生まれた子どもまで停留精巣を引き起こしてしまうリスクが上昇します。
母親の生活習慣が影響して停留精巣の発生率が上昇するという話もあり、飲酒や喫煙がリスクを高めてしまうといわれています。

停留精巣の症状

どういう症状が出現するのか

陰嚢内に精巣がおさまっていない、空の状態になります。
精巣は腹腔(ふくくう)内や鼠径部にとどまったままです。
検診で発見されるか、母親や父親によって発見されます。

停留精巣と関係のある病気・障害

停留精巣を引き起こしていると、一緒に鼠径ヘルニア(そけいへるにあ)が起こる確率が高いです。
また、陰嚢に精巣が十分に固定されていない状態だと、精巣の血管がねじれを起こしやすく、精巣捻転(せいそうねんてん)を招くリスクが高まります。

鼠径ヘルニアや精巣捻転以外に、停留精巣では精巣の温度が高まるため、精子が正常に産生されなくなってしまいます。
そしてこれによって起こり得る問題が、不妊症(ふにんしょう)です。
ただ、停留精巣が起こっているのがいずれか一方の精巣だけのケースでは、ほとんど妊娠率に違いはないとされています。

そのほか、停留精巣の人は、精巣腫瘍(せいそうしゅよう)を招いてしまうリスクが停留精巣ではない人に比べて高いです。
調査によって数値は異なるものの、停留精巣ではない人の10倍程度はリスクが高いとされています。

常に空の状態になっているわけではない場合も停留精巣なのか

2歳程度の子どもで、精巣が陰嚢内におさまっていることを確認できたりできなかったりするケースがあります。
このようなケースは停留精巣ではなく、移動性精巣(いどうせいせいそう)や遊走精巣(ゆうそうせいそう)などといわれている状態です。

精巣は精管や血管のほかに筋肉が備わっており、脚のつけねのあたりから垂れ下がっています。
反射的に精巣の筋肉の収縮が起こると、精巣は下腹部にある鼠径管のなかへと上昇します。
この筋肉反射による精巣の上昇は異常な反応ではなく、小学生まで起こるものです。

入浴時など緊張していない状態で、陰嚢のなかに左右一緒の大きさの精巣が確認できれば、それは停留精巣を起こしているわけではなく、治療も基本的には受けなくても問題ありません。

停留精巣の検査・診断

何科に行くべきか

入浴時に気持ちがいいときなど、本人がリラックス状態で陰嚢のなかが空の場合には、医療機関へ行きましょう。
診療科は泌尿器科や小児科へ行けば対応してくれます。

どうやって停留精巣かどうかを調べるのか

停留精巣を引き起こしているかどうかは、触診で判断する方法があります。
触診は文字通り触って調べる方法であり、精巣の存在の確認が行なう目的です。

画像診断のCT検査、MRI検査、超音波(エコー)検査を行なうことによって、精巣のありかを確認する方法もあるものの、診断精度が高くないことを理由に、病院で行なわれることは通常はありません。

停留精巣の治療

経過観察

停留精巣の状態であっても、生後半年までは精巣が自然におりてくる見込みがあります。
そのため、これを期待して特別な治療をすることなく、様子をみていくことになるケースが多いです。

ただ、生後半年を越えて精巣が陰嚢のなかまでおりてこない場合には、治療が検討されることになります。
なお、医療機関で行なわれている主な治療方法は手術療法です。

手術療法

脚のつけね付近での触知が可能か否かで、別々の手術の方法が選択されています。
可能な場合に選択されている手術方法は、精巣固定術(せいそうこていじゅつ)です。
鼠径部を3cmほど横に切開して精巣を発見し、精巣にくっついている血管、精管、筋肉をはがすと数cm伸びるため、陰嚢まで精巣が到達できるようになります。

陰嚢のシワに1cmほど、横の切開をくわえて精巣を陰嚢のなかにおさめ、糸を使用して固定します。
傷は体に吸収される糸で縫合するため、手術のあとに抜糸などの処置を行なう必要がなく、大きくなっていくうちにほとんどわからなくなります。

精巣固定術の所要時間は60~120分ほどです。
次に触知ができないケースの病院で行なわれている治療の例ですが、まずお腹の内部を細い内視鏡で確認します。
精巣が元々ない、極端に小さくなっていて機能しない精巣の可能性があるためです。

ヘソに直径5mmほどの穴をあけて、内視鏡を挿入することによってお腹のなかに精巣があるかどうかが明確になり、所要時間は15分程度です。
この結果を受けて手術をしなければいけないかどうかや、手術の必要がある場合には術式を決定し、鼠径部を切開します。

腹腔鏡手術といって、カメラで確認しながらお腹のなかで手術をするケースがあるほか、精巣が極端に小さく機能する見込みが場合には、摘出する方法が選択されることもあります。
また、精巣の状態次第では、陰嚢のなかに固定する際に1mm程度切除して、組織を顕微鏡でみて生殖細胞の状態を確認することもあります。

この組織検査を目的に切除を行なうことを生検(せいけん)といい、組織を顕微鏡でみることを病理組織診断といいます。
なお、停留精巣では鼠径ヘルニアが一緒に起こる確率が高いため、手術の過程で鼠径ヘルニアまで同時に治してしまいます。

手術で起こり得る問題

精巣が存在している場所が高すぎると、陰嚢のなかまでしっかりとおろすことができない場合があります。
また、精巣の血液循環が悪化して、手術を終わったあとに精巣の萎縮を招いてしまうこともあります。

停留精巣の治療と精巣腫瘍のリスク低下

停留精巣の状態を解消することによって、精巣腫瘍を招いてしまうリスクが通常と同じレベルにまで低下するかどうかはわかっていません。
ただし、精巣を陰嚢のなかまでおろすことによって、精巣腫瘍の症状である精巣が一部かたくゴツゴツしたり、全体的にはれ上がったりする症状を自覚しやすくなります。
精巣腫瘍は痛みをともなうことが少ない病気であるため、停留精巣の状態を解消しておいたほうが精巣腫瘍の早期発見治療につながりやすくなるのです。

入院は必要になるのか

日帰りは無理ということではないものの、入院して治療を受けることになるのが一般的です。
停留精巣の手術で負う傷は大きくありませんが、お腹のなかの操作を行っているため、手術をした日にはお腹の痛みや吐き気などの症状があり、正常に食事をとることができないケースがあります。
基本的に手術をした次の日には元気を取り戻すため、退院までは1泊だけすることになるケースが多いです。

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