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高カルシウム血症を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2018/01/31 血液・骨髄の病気

高カルシウム血症(こうかるしうむけっしょう)とは、血液中に含まれるカルシウムの濃度が異常に上昇する病気です。

そもそもカルシウムは人間の体を構成する成分の一種であり、体内に存在するカルシウムのほとんどは骨に蓄えられています。

しかし、骨以外にも臓器や血液中、筋肉細胞などの中にも存在しており、筋肉収縮や酵素の機能維持、血液の凝固(ぎょうこ)、歯や骨の形成、心臓の洞調律(どうちょうりつ)など、実にさまざま役目を果たしています。

そのため体は、血液中や細胞内のカルシウム量のバランスを常に適切に保つために、血液中のカルシウム濃度が下がると、骨の中に含まれるカルシウムを血液中へと放出し、体全体のバランスを保とうとします。

しかし、何かの原因によって血液中へと放出されるカルシウムの量が多くなると、高カルシウム血症を発症します。

血液中のカルシウム濃度が上昇してしまう原因としては、血液中のカルシウム濃度を抑制する副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気の副甲状腺機能亢進症(ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう)や、カルシウムの過剰摂取、体内のカルシウム量のバランスを整える作用を持つビタミンDの過剰摂取、肺がん・腎臓がん・卵巣がんといった副甲状腺ホルモンに似たタンパク質を分泌する悪性腫瘍(あくせいしゅよう)、骨を分解または破壊することで、骨に含まれるカルシウムが血液中に流出する骨の病気、長期間にわたり骨に重力がかからないことによって、カルシウムが血液中に流出する運動不足などをあげることができます。

高カルシウム血症を発症した場合、初期の段階では自覚症状が出現しません。
症状が進行するにつれて、徐々に全身の倦怠感(けんたいかん)や食欲不振、便秘、吐き気、嘔吐(おうと)、喉(のど)の渇きなど、種々の症状が出現するようになります。

さらに高カルシウム血症が悪化してしまうと、不整脈(ふせいみゃく)や、情緒不安定、傾眠(けいみん)などの中枢神経症状が引き起こされるほか、尿路結石(にょうろけっせき)や膵炎(すいえん)、消化性潰瘍(しょうかせいかいよう)などが引き起こされるケースもあります。

高カルシウム血症は初期段階での自覚症状がないことから、多くの場合は定期健診での血液検査や尿検査によって発見されます。

治療は引き起こされる症状に応じて対症療法が行なわれることになりますが、基本的には点滴治療と薬物療法を行ない、こうした治療を行なうことによる効果が期待できないほどに進行してしまった人に対しては、透析治療が行なわれています。

高カルシウム血症は症状が進行しても命にかかわることは非常にまれで、基本的に点滴治療と薬物療法で改善することが可能です。

しかし症状が進行し、腎不全(じんふぜん)などの腎機能障害を引き起こすと、最悪の場合には死に至ることもあるため、少しでも体に異変を感じた場合には、その異常をほうっておくことはせずに、できるだけ早く医療機関で検査を受けるようにしましょう。

高カルシウム血症の原因

高カルシウム血症を発症する原因には、副甲状腺機能亢進症をはじめ、カルシウムやビタミンDの過剰摂取、悪性腫瘍、骨の病気、運動不足などをあげることができます。

副甲状腺機能亢進症

副甲状腺機能亢進症とは、4つある副甲状腺のうちどれか1つ、または複数が副甲状腺ホルモンを過剰に分泌してしまう病気です。

副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウム濃度のバランスを保つ役割を担っているホルモンであり、副甲状腺機能亢進症を発症することで血液中のカルシウム濃度が高まり、高カルシウム血症が引き起こされます。

カルシウムの過剰摂取

カルシウムは健康を保つために欠かせない栄養成分ですが、消化性潰瘍を患っている人が牛乳をたくさん飲むことによって、カルシウムの過剰摂取になってしまった場合、消化性潰瘍の治療のために服用している制酸薬によって血液中のカルシウム濃度が上がり、高カルシウム血症を引き起こす場合があります。

ビタミンDの過剰摂取

脂溶性ビタミンの一種であるビタミンDは、体内のカルシウム量のバランスを整える作用があります。

しかし、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などの治療のためやサプリメントなどで大量のビタミンDを摂取した場合、消化管でのカルシウム吸収を促してしまい、血液中のカルシウム濃度が上がり、高カルシウム血症を引き起こす場合があります。

悪性腫瘍

がんとよばれる悪性腫瘍のうち、肺がんや腎臓がん、卵巣がんを発症すると副甲状腺ホルモンに似たタンパク質が分泌され、血液中のカルシウム濃度を上げて高カルシウム血症を引き起こす場合があります。

また、悪性腫瘍が骨に転移すると骨の細胞を破壊してしまい、骨に含まれるカルシウムが血液中に流出することで高カルシウム血症を引き起こす場合があります。

骨の病気

骨が分解される病気や破壊される病気を発症した場合、骨に含まれるカルシウムが血液中に流出し、血液中のカルシウム濃度が上がって高カルシウム血症を引き起こす場合があります。

運動不足

四肢(しし)麻痺や両下肢(りょうかし)麻痺など長期間にわたり体を動かせず運動不足に陥った場合、骨に重力がかからないことによって骨に含まれるカルシウムが血液中へと流出し、高カルシウム血症を引き起こすことがあります。

高カルシウム血症の症状

高カルシウム血症を発症した場合、初期段階では自覚症状が出現しないケースが多いです。
初期の段階で治療をほどこすことなく進行すると、倦怠感や高血圧、嘔吐、不整脈などのさまざまな症状が引き起こされます。

初期症状

高カルシウム血症の初期段階では自覚症状がなく、この段階で高カルシウム血症を発症していることに気がつく人はまずいません。

初期から進行するにつれて徐々に食欲不振、便秘、全身の倦怠感といった症状が引き起こされますが、これらの症状は高カルシウム血症以外の病気でもよく引き起こされる症状であることから、この段階でも高カルシウム血症を発症していることに気がつかない場合が多いです。

進行した場合の症状

自覚症状が出現しない初期段階から進行するにつれて、脱力感、嘔吐、吐き気、喉の渇き、多飲、多尿、悪心(おしん)、高血圧、胃潰瘍(いかいよう)、腎不全、筋力低下、皮膚のかゆみといった、さまざまな症状が出現します。

不整脈

高カルシウム血症の症状が進行して筋力が低下した場合、不整脈や心電図の異常を引き起こす場合があります。

不整脈や心電図の異常を放置すると、最悪の場合には命を落としてしまうことにもなりかねないため、できるだけ早く治療に取り掛かる必要があります。

中枢神経症状

高カルシウム血症が進行した場合、中枢神経症状が現れる場合があります。
はじめに情緒不安定の症状が引き起こされ、次に意識がはっきりしない時間が増える傾眠、次にめまい、昏睡(こんすい)の症状が引き起こされます。
このほかに幻覚や錯覚、錯乱などの症状が引き起こされることもあります。

尿路結石・消化性潰瘍・膵炎

高カルシウム血症が慢性化すると、血液中のカルシウム濃度が高い状態が長期間続くことによってカルシウムを含む尿路結石や腎結石(じんけっせき)を引き起こす場合があります。

高カルシウム血症の慢性化は、このほかにも消化性潰瘍や膵炎を引き起こす場合もあります。

高カルシウム血症の検査・診断

高カルシウム血症を発症した場合、初期段階では自覚症状が出現しないケースが多く、定期健診で受ける血液検査で見つかります。
そのほかにも尿検査や精密検査によって、診断を確定する形になります。

血液検査

血液検査によって血液中に含まれるカルシウムの量や、発症の原因となる副甲状腺機能亢進症を引き起こしているかどうかを副甲状腺ホルモン値で確認します。

尿検査

血液検査と同じく、尿中に含まれるカルシウムの量や副甲状腺ホルモン値を確認します。

精密検査

高カルシウム血症は、悪性腫瘍や骨の病気が原因となって発症する場合があるため、原因となる病気を特定するために頸部(けいぶ)超音波検査やCT検査などの画像検査や、心電図検査が行なわれることがあります。

高カルシウム血症の治療

高カルシウム血症を発症した場合、引き起こされる症状には個人差があるため、それぞれの人に引き起こされる症状に応じて対症療法が行なわれています。

点滴治療

高カルシウム血症を発症した場合の最も基本的な治療は、生理食塩水の点滴です。

生理食塩水を点滴することによって脱水症状を緩和させ、尿の出かたに合わせて点滴の量を調節するほか、利尿剤を使用する場合もあります。

また、症状が中度異常の場合には生理食塩水にカルシトニン製剤を混ぜて点滴を行ないます。

カルシトニン製剤は腎臓に蓄積されたカルシウムの排出作用に優れた薬剤ですが、徐々に効果が弱まるという特徴があり、主に一時的な治療として使用します。

薬物療法

高カルシウム血症の薬物療法では、主にビスホスホネート製剤や副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン剤(ステロイド)を使用します。

ビスホスホネート製剤は、骨の破壊によるカルシウム流出を抑制する作用に優れた薬剤で、がんの骨転移や骨粗鬆症の治療に使用されています。

高カルシウム血症の治療においては、生理食塩水にカルシトニン製剤と共に混ぜて点滴することで、血液中のカルシウム濃度を低下させることができますが、効果が現れるまでに数日間を要します。

高カルシウム血症の発症原因が肉芽種(にくがしゅ)や悪性リンパ腫、ビタミンDの過剰摂取である場合には、副腎皮質ホルモン剤の投与が行なわれます。

透析治療

症状が進行して腎不全を引き起こし、点滴治療や薬物治療の効果が望めない場合には、透析治療が選択されることになります。

血液を一度体外へと取り出し、透析機でろ過することによって、血液中のカルシウムを除去することが可能です。

軽度の高カルシウム血症の治療

症状が軽度の場合は自覚症状が現れにくく、腎機能障害がない場合には、水分を摂ってカルシウムの排出を促します。

水分をたくさん摂取することで腎臓を刺激し、カルシウムが体外へと排出されやすくなるほか、脱水症状の予防にも繋がります。

また、発症原因が薬物やサプリメントによるカルシウムやビタミンDの過剰摂取である場合には、薬物やサプリメントの服用を控えるだけで症状を改善させることができます。

中度の高カルシウム血症の治療

症状が中度の場合には生理食塩水の点滴を行ないます。
また、症状の度合いをよく見極めながら、ビスホスホネート製剤やカルシトニン製剤も使用します。

高度の高カルシウム血症の治療

症状が高度にまで進行すると昏睡状態に陥る場合もあるため、早急に対処を行なう必要があります。
主に薬物療法を行ないますが、効果が得られない場合には透析治療が行なわれることになります。

薬物療法における副作用のリスク

薬物療法で使用するビスホスホネート製剤は、骨からのカルシウム流出を抑制する作用に優れていますが、副作用のリスクを伴うため注意が必要です。

副作用の主な症状には、発熱や倦怠感などの全身症状、貧血や白血球減少、血小板減少などの血液系症状、多尿、欠尿、無尿、むくみ、発疹(ほっしん)などの急性腎機能障害や間質性腎炎(かんしつせいじんえん)の症状、顎骨壊死(がっこつえし)などをあげることができます。

高カルシウム血症の治療は、初期であればあるほど改善しやすいのに対し、症状が進行して腎機能障害を引き起こすと重篤な症状が引き起こされることもあり、最悪の場合には命を落としてしまうことにもなりかねません。

そのため、少しでも高カルシウム血症に該当するような症状が出現したときには、そのまま放置することなくできるだけ早く医療機関を受診するようにしてください。

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