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薬物性肝障害を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/10/27 肝臓の病気

薬物性肝障害とは

薬物性肝障害(やくぶつせいかんしょうがい)とは、医療機関の処方薬やドラッグストアなどで購入可能な市販薬、サプリメントなどが原因で引き起こされる肝臓の炎症です。

この病気には「中毒性(ちゅうどくせい)」と「特異体質性(とくいたいしつせい)」とがあります。
中毒性の薬物性肝障害では、薬やサプリメント自体、また薬やサプリメントが代謝されて生み出された物質によって肝臓に炎症が生じます。

原因となる物質の量が多ければ多いほど、障害はひどくなるのが特徴です。
一方の特異体質性は、薬やサプリメントなどの原因となる物質の量とは無関係に、アレルギーのように引き起こされてしまうものであり、発症の予測は困難であるとされています。

中毒性の薬物性肝障害と特異体質性の薬物性肝障害とでは、特異体質性の薬物性肝障害のほうが高い割合を占めています。
薬物性肝障害は抗生物質、解熱鎮痛薬、循環器官用薬、抗がん剤などによって引き起こされることが多いです。

ただし、どういう種類の薬でも薬物性肝障害は起こり得る病気であり、漢方薬や民間療法薬、健康食品などによって発症することがあります。
これまでには個人輸入による海外製ダイエット用健康食品で薬物性肝障害を引き起こし、命を落としてしまった人がいるという報告もあります。

また、一種類の薬では薬物性肝障害を発症しなくても、複数種類の薬を併用することにより、薬物性肝障害を引き起こすことがあります。

薬物性肝障害の原因

中毒性の薬物性肝障害はどうして引き起こされるの?

服用した薬の大部分は肝臓で解毒されて、胆道または腎臓から排出されます。
中毒性の薬物性肝障害は、肝臓の解毒を行なう能力の限界を超える量の使用によって引き起こされることが多いです。

自殺をしようとして薬を使用する、サプリメント、痩せ薬、ハーブ含有の自然食品により引き起こされるということが知られています。

特異体質性の薬物性肝障害はどうして引き起こされるの?

薬が肝臓で解毒されたあと、自分の体のなかにはない異物とみなされてアレルギー反応が生じ、肝障害が引き起こされます。

中毒性の薬物性肝障害は肝臓の処理能力を超える量の薬の使用で引き起こされることが多いのに対し、特異体質性の薬物性肝障害は、少量の服用によっても引き起こされる病気です。

これまで使用していてなんの問題もなかった薬であっても、その後の服用で急にアレルギー反応が引き起こされてしまう場合があります。
なお、喘息(ぜんそく)や蕁麻疹(じんましん)といった、いわゆるアレルギー体質の人に引き起こされるリスクが高いといわれています。

薬物性肝障害の症状

自覚症状に乏しいことも

薬物性肝障害を引き起こしていても、はっきりとした症状が出現しないことがあります。
この場合には、血液検査を受けたときに偶然わかることも珍しくありません。

新しく処方薬、市販薬、サプリメントなど薬物性肝障害を引き起こすリスクがあるものの使用をはじめた場合には、定期的に肝機能検査を受けて早期発見をすることが重要です。

どういう症状が引き起こされる?

特殊なケースでは脂肪化が起こったり、腫瘍(しゅよう)が発生したりすることがあり、脂肪肝(しぼうかん)や非アルコール性脂肪肝炎(ひあるこーるせいしぼうかんえん)を引き起こすことがあります。

非アルコール性脂肪肝炎はNASHとも呼ばれている病気で、脂肪肝が進行することにより引き起こされる肝臓の炎症です。
肝臓に炎症が生じ、肝細胞が急激に破壊されて機能しなくなったり、脂肪化が進行したりしている状態を脂肪性肝炎(しぼうせいかんえん)と呼び、肝硬変(かんこうへん)になる前段階です。

薬物性肝障害で出現する症状としては、倦怠感(けんたいかん)といって体がだるくなる症状のほか、発熱、発疹(ほっしん)、吐き気、おう吐、かゆみ、関節痛、尿の色が濃くなる、皮膚や眼の白目部分が黄色くなる黄疸(おうだん)、食欲不振、腹痛といった症状が突然に引き起こされたり、持続したりします。

黄疸や食欲不振のような重篤な症状が出現するまで放置していると最終的には重症肝炎となり、この場合には肝不全(かんふぜん)に陥ってしまう危険性があり、ここまでくると生命が危険にさらされ、肝臓の移植を検討しなければいけなくなることさえあります。

そのほか、特異体質性の薬物性肝障害の場合には、初回の服用より2回目の服用のほうが病状が重くなることが知られています。

症状が出現するまでの時間

薬物性肝障害では、薬の使用をはじめたあと1~4週間以内に発症することが多く、大部分は約2ヶ月以内に観察されます。
また、薬を解毒する酵素や薬に対する免疫が人によって異なる場合に起こる薬物性肝障害も存在します。
お酒に強い、弱いがあるように、薬の処理にも個人差があることがわかってきました。
薬によっては半年以上、場合によっては2年以上、使用を継続したあとに薬物性肝障害が出現するケースもあります。
そのほか、たった1回の服用によって薬物性肝障害を引き起こすリスクもあります。

薬物性肝障害の検査・診断

早期発見のために

倦怠感、発熱、発疹、吐き気、おう吐、かゆみ、関節痛、尿の色が濃くなる、黄疸、食欲不振、腹痛といった症状が出現したり、続くような場合で、薬やサプリメントなどを使用している場合には、そのままほうっておくことをせずに医師や薬剤師に相談することが重要です。

受診時には使用した薬の種類、使用後どの程度の時間が経過しているか、症状の種類や程度を伝えましょう。
過去には痩せ薬の1週間の使用で、肝臓の移植をするしか助かる道はないという状況になったケースもあるため、出現している症状をそのうちよくなるだろうと軽視してはいけません。

なお、早期の対処法として原因薬を使用しないことが有効ではあるものの、自己判断で中止すると危険な種類の薬があるため、医師に判断をあおぐ必要があります。

薬やサプリメントなどを使用していて異常が出たらすぐに病院へ行くということが、早期発見と的確な処置を受けることが、大事に至らないためには肝心です。

どうやって調べる?

医療機関では血液検査が行なわれています。
肝炎など肝細胞の障害が起こすケースでは、主にALT(GPT)・AST(GOT)の数値が高まり、胆汁うっ滞を起こすケースではALP(アルカリホスファターゼ)やγ-GTPの数値が高まります。

ALT(GPT)というのは主に肝細胞に存在し、細胞内で作り出される酵素のことであり、数値が異常に高いと肝細胞が障害を受けていることを意味していて、AST(GOT)は肝細胞もしくは心臓や腎臓などに多く、細胞内で作り出される酵素であり、数値が異常に高いと肝細胞が障害を受けている可能性があるものです。

ALPは肝臓、腎臓などの細胞で作り出される酵素であり、肝臓の毛細胆管膜に多く、胆汁中に存在しており、数値が異常に上昇していると肝障害や胆道の病気の可能性があります。

γ-GTPはお酒を飲む人にとってはなじみ深い検査項目でしょうが、肝臓や腎臓などで作り出されている酵素であり、肝臓では肝細胞に、ほかには胆管細胞、胆汁中にも存在していて、数値が異常に高ければ肝機能の異常を起こしている可能性があります。

なお、胆汁うっ滞に関してですが、肝細胞で作り出される胆汁は、胆道系を通過して十二指腸へと排泄されますが、この経路のどこかで胆汁の流れがさまたげられている状態のことをいいます。

胆汁の成分が肝臓のなかや胆管のなかで停滞し、さらに血液中へと漏出します。
薬の副作用は体の症状が出現する前に血液検査でわかることが多く、長期に服用する薬はとりわけ、服用開始後は定期的に血液検査を受けることが重要です。

また、肝臓に腫瘍が形成されたり、血管の異常を起こすなどの形で引き起こされる副作用も存在し、そのようなケースでは腹部超音波(エコー)検査などの画像検査が必要になります。

薬物性肝障害の治療

薬の服用を中止する

薬物性肝障害は処方薬や市販薬、サプリメントなどが原因で引き起こされる肝臓の炎症です。
したがって、服用中の薬の服用をやめることにより、症状は改善する場合が多いです。

しかしながら、自分の勝手な判断で服用を中止すると危険な薬も存在します。
自己判断ではなく医療機関で受診し、医師の判断をあおぐことが不可欠です。

多くの場合は原因薬物の使用をやめると改善し、予後は良好です。
薬の服用の中止だけでなく、安静にして低脂肪食を摂取するという方法もあります。

薬物療法

ステロイド薬やウルソデオキシコール酸などの薬が使用されるケースもあります。
黄疸、胆汁うっ滞の症状が強い場合に選択されることになります。

ステロイド薬は強力な抗炎症作用を発揮する薬剤であり、ウルソデオキシコール酸は胆汁の流れをよくし、肝臓を保護する効果のある薬剤です。

肝臓移植

肝臓の障害が非常に強い場合に起こり得るのが劇症肝炎(げきしょうかんえん)です。
劇症肝炎というのは肝細胞が急激に大量に破壊されることにより、機能が低下し、最悪の場合には命を落とすことにもなりかねない、恐ろしい病気です。

劇症肝炎に対する治療にはステロイド薬の投与のほか、血液から血球以外の成分である血漿(けっしょう)を除去し、健康な人の血漿と交換する治療(血漿交換療法)や、腎臓病の人に対し行なわれている血液透析を応用した治療が行なわれます。

血液透析というのは、血液の不要物や有毒物を透析膜で取り除くことによりきれいにする方法です。
劇症肝炎ではこうした治療により救命できる見込みがありますが、改善しない場合には肝臓の移植が検討されることになります。

薬物性肝障害での劇症肝炎の場合にも、重度の劇症肝炎では移植を行なわなければいけなくなることがあります。

薬物性肝障害の予防

なるべく薬やサプリメントなどに頼ることなく過ごす

薬物性肝障害はいわゆる風邪薬である市販の総合感冒薬によって引き起こされることもあります。

規則正しい生活、栄養バランスのとれた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレス発散、適正飲酒、禁煙など、健康的な生活を送ることにより、薬やサプリメントなどに頼るような状態にならないようにしましょう。

用法用量を守る

特異体質性の薬物性肝障害の場合は少量の服用で引き起こされるという特徴がありますが、中毒性の薬物性肝障害は多量の服用で引き起こされます。
一例として、風邪薬によく配合されているアセトアミノフェンという解熱消炎鎮痛薬があります。

この薬の規定量の10~20倍以上を1回で服用してしまえば、誰にでも肝臓の機能が障害されてしまいます。
薬を使用するときには、用法用量にしたがいましょう。

また、サプリメントなどの過剰摂取もやめ、1日あたりの目安摂取量を守ることが、薬物性肝障害を未然に防ぐためには欠かせません。

要注意な人

特異体質性の薬物性肝障害は、喘息や蕁麻疹などのアレルギー反応を起こしやすい体質に起こるリスクが高いという指摘があります。
また、薬の副作用は過度な飲酒をしている人や、肝臓や腎臓が健康ではない人に引き起こされやすいという傾向があります。

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