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副腎がんを詳細に:原因,症状,検査,治療,予後など

公開日: : 最終更新日:2017/11/11 腎臓の病気・人工透析

副腎(ふくじん)がんとは、副腎に発生する悪性腫瘍(しゅよう)のことです。

そもそも副腎とは腎臓の上に位置する三角形をした3~4cmほどの小さな臓器で、左右に一つずつ、腎臓とともに脂肪に包まれた状態で存在しています。

副腎は表面部位の「皮質(ひしつ)」と内部の「髄質(ずいしつ)」で構成され、皮質からは糖質コルチコイドの一種で糖代謝を担う「コルチゾール」や、鉱質コルチコイドの一種で体内の水分バランス調整の役割を担う「アルドステロン」、男性ホルモンの一種である「デヒドロエピアンドロステロン」といった副腎皮質ホルモンが分泌されています。

髄質からは、血圧上昇を招く「アドレナリン」や「ノルアドレナリン」といった副腎髄質ホルモンが分泌されています。

副腎の皮質・髄質からはそれぞれ生命活動に欠かせないホルモンを分泌していますが、何らかの原因によって副腎に悪性腫瘍が発生した場合を「副腎がん」といいます。

また、副腎に発生する腫瘍は副腎皮質に発生する「副腎皮質がん」と、副腎髄質に発生する「副腎髄質がん」があり、「副腎皮質がん」にはホルモンの分泌が過剰になる「機能性腫瘍(きのうせいしゅよう)」と、ホルモンを分泌しない「非機能性腫瘍(ひきのうせいしゅよう)」があります。

クッシング症候群(しょうこうぐん)

クッシング症候群とは、副腎皮質に発生する機能性腫瘍によってコルチゾールが過剰分泌される病気です。
腫瘍そのものは良性である場合が多いですが、高血圧(こうけつあつ)やむくみ、糖尿病(とうにょうびょう)、多毛(たもう)、不眠症(ふみんしょう)、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、月経異常(げっけいいじょう)、顔全体に脂肪が付く「ムーンフェイス」といった症状が現れます。

アルドステロン症

アルドステロン症とは、副腎皮質に発生する機能性腫瘍によってアルドステロンが過剰分泌される病気です。
腫瘍そのものはほとんど良性ですが、約1%の確率で悪性の場合があります。
高血圧や不整脈(ふせいみゃく)、心筋梗塞(しんきんこうそく)、心肥大(しんひだい)、脳出血(のうしゅっけつ)などを引き起こすリスクが高いとされています。

プレクリニカルクッシング症候群

プレクリニカルクッシング症候群とは、副腎皮質に発生する機能性腫瘍によってコルチゾールが過剰分泌される病気です。
肥満(ひまん)、耐糖能異常(たいとうのういじょう)、高血圧といった症状が現れます。

性ステロイド過剰産生

性ステロイド過剰産生とは、副腎皮質に発生する機能性腫瘍によってアンドロゲンが過剰分泌される病気です。
過剰分泌されたアンドロゲンはテストステロンに変化し、男性化を招きます。

内分泌非活性腫瘍(ないぶんぴつひかっせいしゅよう)

内分泌非活性腫瘍とは、ホルモンの過剰分泌を行わない副腎皮質腫瘍のことです。
ホルモンの過剰分泌がないため、症状が出現しにくいという特徴があります。

褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)

褐色細胞種とは副腎髄質に発生する腫瘍のことで、多くの場合は良性ですが悪性の場合もあります。
褐色細胞種はカテコールアミンを過剰分泌し、頭痛、胸痛(きょうつう)、発汗(はっかん)、高血圧、動悸(どうき)、体重減少などの症状が現れます。

副腎がんは非常にまれながんであり、100万人に2人の確率で発症されるといわれ、患者数がわずかしか存在しないという特徴があります。
発症患者は10歳未満あるいは30~40代に多く、男性よりも女性の発症率が1.5~3倍と高いことも特徴の一つとなっています。

また、非常に珍しいがんであることから検査体制や治療方法が確立されておらず、初期症状も出現しにくいため、治療後の生存率が低いという問題を抱えている病気でもあります。

副腎がんの原因

副腎がんを発症する原因は、現代の医療技術では未だ解明されていません。
体の全身に発症するがんはぞれぞれ原因が解明されているのに対し、副腎がんの原因が解明されない理由には「発症患者の少なさ」が挙げられます。

副腎がんは非常に珍しいがんで、100万人に2人の確率で発症するといわれています。
患者数が圧倒的に少ないことから、原因究明するために必要なデータ量が少ないとされています。

はっきりした原因が解明されていない副腎がんですが、発症率を上げる原因と考えられるもの(リスク因子)として、遺伝子の異常やタバコ・喫煙、ほかの疾患などが挙げられます。

リー・フラウメニ症候群

リー・フラウメニ症候群は副腎がんに限らず、さまざまながんを発症する原因になると考えられています。

家族性腺腫性(かぞくせいせんしゅせい)ポリポーシス

家族性腺腫性ポリポーシスとは遺伝子疾患の一種で、大腸にポリープができやすいとされ、大腸がんや副腎がんの発症リスクが高い病気とされています。

ベックウィズ・ヴィーデマン症候群

ベックウィズ・ヴィーデマン症候群とは奇形症候群の一種で、体の骨格や臓器が本来よりも過度に成長し、副腎がんの発症リスクを高めるとされています。

多発性内分泌腺腫(たはつせいないぶんぴつせんしゅ)

多発性内分泌腺腫とは、ホルモンの分泌腺に良性あるいは悪性の腫瘍が多く発生する疾患で、副腎がんの発症リスクを高めるとされています。

がん遺伝子の異常

遺伝子のなかでも「VHLがん抑制遺伝子」や「RETがん遺伝子」などのがん遺伝子に異常がある場合、ホルモンの一種・カテコールアミンが過剰に分泌され、副腎がんの一種である褐色細胞腫を発症しやすいとされています。

タバコ・喫煙

タバコを吸っていることと副腎がんの発症の因果関係は解明されていませんが、喫煙をしていることはさまざまながんの発症リスクを高めるとされており、体に悪影響を与えることから副腎がんのリスク因子になると考えられています。

食生活の乱れ

野菜不足、脂っこい食事ばかりなど、食生活の乱れも体に悪影響を及ぼすことから、副腎がんをのリスク因子になると考えられています。

また、副腎がんは珍しいがんであることから、発症する原因には生活習慣よりも遺伝子が深く関係していると考えられています。
そのため、家族や親族にがん患者が多い「がん家系」である場合、定期的に精密検査を受けることが早期発見・早期治療のためには重要です。

副腎がんの症状

副腎がんを発症した場合、早期の段階で現れる初期症状は乏しく、多くの場合が末期に近い状態あるいは末期の状態で発見されます。

一般的に便秘、吐き気、腹部の痛み、腹部のしこり、頭痛、高血圧、動悸、中枢性肥満、顔全体に脂肪が付く「ムーンフェイス」といった症状が現れます。
また、ホルモンの過剰分泌を伴う腫瘍が原因の場合、過剰分泌されるホルモンの種類によって現れる症状に違いがあります。

クッシング症候群の主な症状

クッシング症候群はコルチゾールが過剰分泌される病気で、代表的な症状に「ムーンフェイス」が挙げられます。
ムーンフェイスとは顔を中心に胴体に脂肪が付き、月のように真ん丸くなることから名付けられた症状です。
また、高血圧をはじめ、月経異常、骨粗しょう症、糖尿病、免疫力の低下、多毛、うつなどの症状が現れます。

アルドステロン症

アルドステロン症はアルドステロンが過剰分泌される病気で、筋力低下や脱力感、高血圧、手足のしびれ、血中カリウム値の低下、多飲多尿などの症状が現れます。

褐色細胞腫

褐色細胞種はカテコールアミンを過剰分泌することから、頭痛、吐き気、便秘、動悸、高血圧、高血糖、発汗過多、代謝亢進(こうしん)などの症状が現れます。

副腎がんの検査

副腎がんは、100万人に2人の確率で発症するとても珍しいがんであることから検査体制が整っておらず、「肺がん検診」「胃がん検診」「乳がん検診」のようにがん検診がありません。
多くの場合、ほかの病気の精密検査や人間ドックの際に発見されます。

副腎がんを発見できる可能性のある検査方法としては、血液検査や尿検査、CT検査、MRI検査、超音波(エコー)検査、副腎血管造影検査などがあります。
また、各検査の結果により副腎がんであると診断された場合、適切な治療法を決定するために病気(ステージ)診断を行ないます。

血液検査・尿検査

副腎がんを発症するとホルモンが過剰分泌される場合があり、血液検査や尿検査を行なうことでホルモンが過剰に分泌されていないか確認することができます。

血液検査において、コルチゾールやアルドステロン、アンドロゲン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどが過剰に分泌されていると判明した場合、副腎がんの可能性が高いです。

CT検査

CT検査とは画像検査の一種で、X線を使って体の輪切り画像を撮影します。
副腎に発生した腫瘍にくわえ、肺や肝臓、リンパ節へ転移しているか確認できます。

副腎血管造影検査

副腎血管造影検査とは画像検査の一種で、CT検査の一種でもあります。
副腎動脈に造影剤を注入し、X線撮影を行なって副腎全体を観察することができます。
造影剤を注入すると血管に浸透し、主要で塞がった部位の有無が確認できます。

MRI検査

MRI検査は磁場を利用した画像検査の一種で、体内をあらゆる角度から撮影することができます。
また副腎はとても小さな臓器なうえに体の奥深くに位置しているため、MRI検査が最も精密に撮影・観察できるとされています。
MRI検査はCT検査では診断が難しい場合に用いられ、がんの判別や浸潤度合いを確認することができます。

超音波検査(エコー検査)

超音波検査(エコー検査)とは超音波(エコー)を体内へとあて、跳ね返ってきた波を画像化して体内を観察する検査方法です。
超音波検査(エコー検査)では副腎に発生した腫瘍のサイズや浸潤度合いを確認することができます。

上記の検査によって副腎がんであると診断された場合、適切な治療方法を決定するための目安として、がんの進行状況に合わせて病期(ステージ)を決定します。
副腎がんの病気(ステージ)は初期のⅠ期から末期のⅣ期まで、4段階に分類されています。

副腎がんの病期(ステージ)

Ⅰ期

腫瘍サイズが5cm以下で副腎内に留まっている場合。

Ⅱ期

腫瘍サイズが5cm以上であるが、副腎内に留まっている場合。

Ⅲ期

がん細胞が副腎の周辺組織に浸潤し、リンパ節に転移している場合。

Ⅳ期

肺や肝臓など副腎周辺の多臓器へ転移している場合、または遠隔転移をしている場合。

副腎がんの病気(ステージ)がⅠ~Ⅲ期であれば外科手術が選択されますが、末期のⅣ期で発見された場合には外科手術を選択することが不可能なケースが多く、症状を緩和させるための抗がん剤を使った化学療法が行なわれています。

また、外科手術によって完治が見込めるのは初期のⅠ期かⅡ期までとされており、早い段階で病気を見つけることがきわめて重要です。
そのため、副腎がんの早期発見・早期治療に繋がるように、1年に1度は人間ドックなどで精密検査を受けるようにしましょう。

副腎がんの治療

副腎がんの治療方法には、「外科手術」「腹腔鏡(ふくくうきょう)手術」「化学療法」の3種類があり、がんの進行状況に合わせて最適な治療方法を選びます。

外科手術

副腎がんの最も基本的な治療方法が外科手術です。
副腎がんに発生する腫瘍は良性・悪性にかかわらずホルモンを過剰分泌するため、基本的に外科手術によって副腎を摘出します。
副腎は2つあるため一方を手術で摘出しても、もう一方が副腎の役割を果たすことから手術後の生活に問題はありません。

ただし、副腎がんにおいて外科手術が選択されるのは、全4段階の病気(ステージ)のうち、Ⅰ~Ⅲ期までとされています。
また、がんの進行度合いによっては副腎の摘出とともに周囲の臓器を切除する場合もあります。

腹腔鏡手術

副腎がんの治療方法は基本的に外科手術を行ないますが、腫瘍サイズが小さい場合には腹腔鏡手術が選択されるケースがあります。
腹腔鏡手術とは、腹部に4~5箇所ほど穴を開け、その穴からカメラや専用器具を腹腔内に挿入し、カメラによって映し出される映像を見ながら病変部位を切除する方法です。
腹腔鏡手術は外科手術のように開腹する必要がないため、患者の体への負担が比較的軽いというメリットがあります。

化学療法

副腎がんが末期のⅣ期で発見された場合には外科手術の選択は難しく、抗がん剤を使った化学療法が主に行なわれる形になります。
副腎がんの化学療法には「ミトタン」と呼ばれる抗がん剤が用いられます。

「ミトタン」はホルモン剤の一種で、副腎に発生した腫瘍によるホルモンの過剰分泌を抑制し、腫瘍を縮小させる効果があります。
また、化学療法によって腫瘍を縮小することができた場合、外科手術を選択することが可能な状態にもなります。

ただし、化学療法には副作用があり、吐き気、嘔吐(おうと)、肝機能の低下、性機能の低下などが現れる場合があります。
さらに「血栓症(けっせんしょう)」を招きやすく、脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞のリスクが高まるとされています。

副腎がんの予後

副腎がんをはじめ、体のさまざまな部位に発生するがんは予後を表す目安として「5年生存率」が用いられます。

副腎がんは初期症状がない場合が多く、がんを発見した段階でかなり進行している場合が多いです。
副腎がんの5年生存率は病期(ステージ)が初期のⅠ期の場合は60%、Ⅱ期の場合は58%、Ⅲ期の場合は24%、末期のⅣ期の場合は0%というデータがあります。

Ⅰ期またはⅡ期で発見できた場合の生存率に差はそれほどありませんが、Ⅲ期になると急激に5年生存率は下がり、Ⅳ期と診断された患者の約50%は1年以内に命を落としてしまうというデータもあります。

副腎がんそのものが非常に珍しいがんであること、これまでのデータが乏しいことから精密な検査方法が確立されていないことなどにより早期発見は難しく、患者の多くがⅢ期以降で副腎がんであると診断されています。

とくに副腎がんのなかでも「非機能性腫瘍」はホルモンの分泌に異常が起きないことから発見が難しいとされています。
また、副腎そのものが小さいことも、発見しにくい理由の一つであり、がんを発症するとリンパ節や動脈などに転移しやすいというやっかいな特徴があります。

副腎がんは、早期に発見し摘出手術を行なえば、予後は良好に過ごすことができます。
手術によって片方の副腎をすべて摘出した場合、もう片方の副腎がホルモン分泌機能を保つことで手術前と同じ生活を送ることができますが、ホルモン分泌量が減少することで高血圧や疲労、ストレスといった症状が現れやすくなります。

そのため、手術後は規則正しい生活習慣を心がけるとともに、毎日しっかり睡眠時間を確保することが重要とされています。
ただし、手術後の症状が重い場合にはホルモン分泌量が安定するまで、薬剤によってホルモンを補う治療を行なうケースがあります。

また、副腎がんの再発率は10%とされており、Ⅰ期またはⅡ期の早期に治療を行なえば完治が見込めますが、治療後は数ヶ月間に一度の割合で血液検査やCT検査を行ない、経過観察を行なうことが重要とされています。

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