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ペストの原因・症状・感染経路・治療・予防・検査など

公開日: : 最終更新日:2016/05/21 感染症, 人獣共通感染症


ペストは、ペスト菌によって引き起こされる全身の感染症です。
ノミや感染した人に接触することで感染します。
歴史的に大きな意味をもつ病気で、「黒死病」とも呼ばれています。
現在は、抗生物質が有効で、かつてのような恐ろしい病きではなくなりましたが、年間数千人の患者が出ている病気でもあります。

ペストの原因

ペスト菌という細菌が原因です。
もともとは、森林原野のペスト菌が常在する地域に住んでいるノネズミの感染症ですが、ペスト菌に感染したノミにかまれるとイエネズミや人にも感染します。

ペストの症状

臨床症状は三つに分けられます。

腺ペスト

腺ペストはヒトのペストの80~90%を占めます。
ペスト菌を持ったノミにかまれたり、感染したヒトや動物に接触したりすることで、傷口や粘膜から病原体が侵入して感染します。
かまれた部分には変化はなく、近くのリンパ節が腫れたり、膿をもったりして、クルミないし卵ぐらいの大きさに腫れます。
そのあと、リンパ液や血液を介して、全身の臓器に伝播し、敗血症を起こします。
潜伏期間は3~7日で、40度前後の突然の高熱、頭痛、悪寒、倦怠感、食欲不振、嘔吐、筋肉痛、精神混濁などの強い全身症状があらわれます。
発症後3~4日が経過すると敗血症を起こし、その後2~3日以内に死亡します。

敗血症型ペスト

ヒトペストの約10%を占め、局所の症状がないままで全身に菌が広がって敗血症を起こします。
臨床症状としては、急激なショック症状、昏睡、手足の壊死、皮膚の紫斑などがあらわれます。
その後、通例では2~3日以内に死亡します。

肺ペスト

非常に稀な例ですが、最も危険なペストの型です。
腺ペスト末期の患者や、敗血症型ペストの経過中に、肺にペスト菌が侵入して肺炎を起こした状態です。
肺の細胞(肺胞)が壊れて、痰やペスト菌を含んだエアゾルを排出するようになると、この患者が感染源になって、ヒトからヒトへと素早く伝播する肺ペストが起こります。
潜伏期間は2~3日ですが、発病後、12~24時間で死亡すると言われています。臨床症状としては、強烈な頭痛、嘔吐、高熱のほか、急激な呼吸困難、鮮血の泡立った血痰をともなう、重篤の肺炎の症状です。

ペストの感染経路

ペスト菌が常在する地域のノネズミが、地震や水害などの環境の変化にともなって人家の付近まで下りてきたり、森林に入ったハンターやきこりがノミを介在して感染することがきっかけです。
菌を持ったノネズミの血を吸ったノミが、ヒトを噛むと感染します。
ネコやイヌなどのペットやブタやヒツジなどの家畜もペスト菌に感染しますし、ヒトからヒトへの感染もあります。
人間に対して感染力が高いノミは、ケオピス、セラトフィルス、ノソフィルエスなどで、いずれも人家に住むネズミに寄生するノミです。
そのなかでケオピスという種類のノミは、人間を好んで吸血するため、ヒトペストに大きく関わっています。

ペストの予防

患者と直接接触した人や、肺ペスト患者に接近した人などの、発病する可能が高い人や、ペストが流行している地域に旅行などをする人は、予防のために、治療の半分から同量の抗菌剤を飲むことが有効とされています。
長期にわたって、ペスト菌がいる地域にいる人には、ワクチンの接種が進められています。
たとえば、ペスト患者の治療をする医療従事者、ペスト流行を阻止するために派遣されたWHOやJICAの専門家、またはペストネズミやノミにさらされる危険のある海外協力隊員や自衛隊員などの野外作業する仕事の人、流行地に赴任したジャーナリストや商社マンなどは、ワクチン接種の対象となります。
ワクチンは、検疫所で手に入ります。

ペストの治療

ペストの治療には、抗菌薬が非常によく効くため、早く治療さえすれば、もう昔のように恐ろしい病気ではありません。
予後も良好で、後遺症はほとんど残りません。
ただし、肺ペストは病気の進行が極めて早いので、早期に抗菌薬を投与する必要があります。
日本では、ストレプトマイシンが保険適応されており、最も効果がありますが、副作用があるので、過度の投与は避けるほうがよいとされています。
テトラサイクリン系、クロラムフェニコール、ニューキノロン系の抗生物質も有効です。

ペストの検査

ペスト菌の病原体診断が必要になります。
血液やリンパ線の腫れから取り出した体液、痰、組織からペスト菌そのものを分離したり、抗原を検出したり、ペスト菌特有の遺伝子を検出したりすることで診断されます。

ペストが起こりうる地域

ペストは、1991年を期に、年間5000人ほどの患者が出ている病気で、過去の病気ではありません。
以下はペストが流行しやすい地域です。
●アフリカの山岳・密林地帯
●東南アジアのヒマラヤ山脈周辺と熱帯森林地帯
●中国、モンゴルの亜熱帯草原地域
●アラビアからカスピ海西北部
●北米南西部ロッキー山脈周辺
●南米北西部のアンデス山脈周辺と密林地帯
特にアフリカ大陸で顕著な増加が見られています。

ペストと日本

1899年にペストが日本に輸入されてから、27年間に大小の流行が起こり、2000人以上の死者がでましたが、日本ではペストの根絶に成功しています。
ペスト菌の発見者である北里柴三郎の指導のもと、日本政府がペストネズミの撲滅対策をしたことが功を奏し、1926年以降は日本ではペストの感染者は出ていません。
しかしながら、現在、海外との交流がさかんになるにつれて、ペスト菌常在地域からの資材や食物だけではなく、ペットの輸入も増加しています。
特に問題になるのはアメリカ産のプレーリードッグです。
厚生労働省の実態検査の結果は陰性であったものの、今後も注意を怠らないようにする必要があります。

ペストと歴史

ギリシャ・ローマ時代から、ペストの流行があったことが記録からわかっています。
最も大きい流行は、14世紀の東ローマに端を発した流行で、ヨーロッパ、アジア、北アフリカ、中東にまで大流行し、当時の人口の半分がペストによって死亡したとされています。
ペストの流行は、国家を衰退させるほどの猛威を振るいました。
流行の際、ユダヤ教徒の犠牲者が少なかったとされ、彼らが井戸に毒を投げ込んだというデマが広がって、ユダヤ教徒の迫害や虐殺も行なわれました。
実際には、ユダヤ教徒の人々は戒律に則った生活をしていて、衛生的であったためだと考えられています。

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