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アメーバ性肝膿瘍を詳しく:原因・症状・検査・治療など

公開日: : 最終更新日:2018/09/23 感染症

アメーバ性肝膿瘍とは

原虫(げんちゅう)の赤痢(せきり)アメーバによる消化管の感染症を、アメーバ赤痢(あめーばせきり)といいます。

赤痢アメーバは腸内に寄生し、糞便中へと排出されます。
世界中で起こっている感染症であり、感染者の多くは途上国に集中しています。

先進国で感染している人の中で多くを占めているのは、途上国への渡航者、男性同性愛者、知的障害者施設収容者などです。
日本国内では年間で700~800人程度の感染者が出ているといわれています。

とくに男性同性愛者間の性感染症(せいかんせんしょう)(STD)としてひろがりを見せています。
アメーバ赤痢と梅毒(ばいどく)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)との混合感染も多くなっています。

世界中では年間で10万人程度の人がアメーバ赤痢によって命を落としています。
感染症法上では5類感染症に分類されており、診断した医師は1週間以内に最寄りの保健所に届出を行なう必要がある感染症です。

アメーバ性肝膿瘍(あめーばせいかんのうよう)は、このアメーバ赤痢の症状の一つです。
肝膿瘍とは、肝臓の中に膿瘍という膿(うみ)がたまった袋が形成される病気の総称です。
膿瘍は1個だけ形成されることもあれば、多数の膿瘍が形成されることもあります。

1個だけ膿瘍が生じる肝膿瘍を単発性肝膿瘍(たんぱつせいかんのうよう)、多数の膿瘍が生じる肝膿瘍のことを多発性肝膿瘍(たはつせいかんのうよう)といいます。

原因としては細菌感染によって生じるものと、赤痢アメーバ原虫によって生じるものとがあります。
細菌感染によって生じる肝膿瘍のことを細菌性肝膿瘍(さいきんせいかんのうよう)、赤痢アメーバ原虫によって生じる肝膿瘍のことをアメーバ性肝膿瘍といいます。

なお、細菌性肝膿瘍は化膿性肝膿瘍(かのうせいかんのうよう)という病名でよばれることもあります。

細菌性肝膿瘍の原因菌の最多を占めているのは大腸菌(だいちょうきん)であり、続いてブドウ球菌(きゅうきん)によって起こっていますが、嫌気性菌(けんきせいきん)によって起こることもまれにあります。

アメーバ性肝膿瘍はすべに述べたように、赤痢アメーバ原虫によって起こる肝膿瘍です。
アメーバ性肝膿瘍は渡航者、同性愛者、ヒト免疫不全ウイルス感染者、中年男性、ステロイド使用者に起こりやすい感染症です。

小児に起こった例は少なく、ほとんどが成人を占めています。
アメーバ性肝膿瘍の罹患率で高いのは、18~50歳の男性です。

また、アメーバ赤痢の患者の10人中2~3人がアメーバ性肝膿瘍を起こすといわれています。

アメーバ性肝膿瘍の原因

アメーバ性肝膿瘍は、赤痢アメーバ原虫による消化管の感染症である、アメーバ赤痢の症状の一つです。

赤痢アメーバ原虫が原因でアメーバ性肝膿瘍が起こるわけですが、どのようなメカニズムでアメーバ性肝膿瘍が生じてしまうのでしょうか。

ここではこのような疑問をお持ちの方のため、アメーバ性肝膿瘍の原因に関する情報を提供させていただきます。

アメーバ性肝膿瘍が起こるしくみ

腸内の赤痢アメーバ原虫が血管に進入して血液の流れにのり、肝臓にたどり着くことによってアメーバ性肝膿瘍は起こります。

このように、血液の流れにのって病原体が元々いたところから別のところまでたどり着いて起こることを血行性(けっこうせい)といいます。
なお、アメーバ性肝膿瘍は主に単発性で、右側の肝臓=右葉(うよう)に形成されます。

アメーバ性肝膿瘍の感染ルート

アメーバ性肝膿瘍は経口(けいこう)感染・糞口(ふんこう)感染です。
感染者が排泄する便中の赤痢アメーバによって汚染された水や氷、野菜やフルーツ、肉類を生で摂取することによって感染が起こります。

また、肛門と口が直接に接触するような肛門性交によって糞口感染します。

これまでは熱帯地方へと渡航者で感染者が多く出ていましたが、今はその数は減っており、男性の同性愛者間の感染が多くなっています。

また、赤痢アメーバ原虫の感染だけでなく、梅毒やヒト免疫不全ウイルスのような別の種類の感染が重なって起こっているケースも多くなっています。

アメーバ性肝膿瘍の症状

アメーバ性肝膿瘍が生じることによって、どのような症状が出現するのでしょうか。

以下にまとめていますので、症状を把握したいという方は内容をチェックしてみてください。

アメーバ性肝膿瘍の主な症状

アメーバ性肝膿瘍の症状として含まれているものとしては……

・38~40℃の発熱
・右上腹部の痛み
・全身のだるさ
・肝臓の腫(は)れ
・黄疸(おうだん)
・寝汗の増加
・下痢
・血便
・吐き気
・嘔吐(おうと)
・体重減少

といったものをあげることができます。
ただ、軽症のこともあれば、感染後数年以上が経過して発見されることもあります。

アメーバ性肝膿瘍の検査・診断

アメーバ性肝膿瘍を疑うような症状がある場合に、どこの医療機関へ行けば適切な診療を受けることができるのか、気になっている方もいるのでしょうか。

また、受診した歳にどういった方法でアメーバ性肝膿瘍の診断をつけるのか、疑問をお持ちの方もいることでしょう。
ここではアメーバ性肝膿瘍の検査・診断に関する情報を提供させていただきますので、気になっている方はご一読ください。

受診に適した診療科

発熱などのアメーバ性肝膿瘍に該当する症状がある場合には、何科へ行けば良いのでしょうか。
このことで迷ってしまう方もいるでしょう。

受診に適した診療科ですが、消化器内科へ行けば診療を受けることが可能です。
また、感染症内科へ行くのも、選択肢の一つに含まれます。

気になる症状がある場合には放置することなく、なるべく早く医療機関へ行きましょう。

どのようにしてアメーバ性肝膿瘍を起こしているかどうかを調べるのか

医療機関で行なわれている検査としては、画像検査をあげることができます。
超音波(エコー)検査、CT検査によって右側の肝臓に円形~楕円形の膿瘍が形成されていることを把握することが可能です。

また、体に針を刺して膿瘍液をとり出し、その膿瘍液を顕微鏡で観察することによって、赤痢アメーバ原虫の有無を確認する方法、あるいは血清赤痢アメーバ抗体が陽性を示すかどうか調べる方法もあります。

便を顕微鏡で観察して赤痢アメーバ原虫がいることを調べる方法もあります。

アメーバ性肝膿瘍の膿はニオイがなく、赤褐色をしているのが特徴で、アンチョビソース様・チョコレート様と表現されるわかりやすい見た目をしています。

アメーバ性肝膿瘍の治療

アメーバ性肝膿瘍が生じていることがわかった場合、医療機関ではどのような治療が行なわれているのでしょうか。

以下にまとめていますので、参考情報としてお役立ていただければ幸いです。

アメーバ性肝膿瘍の治療方法

メトロニダゾール成分名(一般名)で、製品名はフラジールという薬剤が使用されます。
これは原虫を駆除する抗原虫薬であり、内服することによってアメーバ性肝膿瘍の治癒が期待できます。

服用量は1~2gを1日3~4回、1週間~10日にわたって治療を続けます。
なお、メトロニダゾールの服薬中や服薬終了後1週間は、禁酒しなければいけません。

飲酒をすることにより、アルコールによる吐き気、嘔吐、腹痛、頭痛、動悸(どうき)などの不快症状が強くなってしまうためです。

アルコールに関しては、配合されている医薬品にも気をつけなければいけません。

メトロニダゾールに副作用はあるのか

メトロニダゾールは副作用が少ない部類に入る薬剤です。

ただ、食欲低下、胃部不快感、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、白血球減少、発疹、めまい、肝障害、運動失調、うつ傾向などが起こるリスクはあります。
また、飲み合わせの悪い薬もあります。

抗血栓薬のワルファリンや気分安定薬のリチウムの血中濃度を高め、これらの副作用を強くするリスクがあります。
また、抗酒薬のジスルフィラムと一緒に使うと精神症状の副作用が生じることがあります。

そのほか、抗がん剤のフルオロウラシルや免疫抑制薬のシクロスポリンの血中濃度を高めるリスクがあります。
持病・アレルギーがある人、お腹の中にこどもがいる人、薬を服用中の人は医師に教えましょう。

アメーバ性肝膿瘍の予防

アメーバ性肝膿瘍を未然に食い止める方法はあるのでしょうか?
ここでは、アメーバ性肝膿瘍の予防に関する情報を提供させていただきます。

ワクチンの有無

感染症の中にはワクチンによって予防可能なものが少なくありません。
アメーバ赤痢は消化管の感染症であり、ワクチンが効くのではないかと思った方もいるでしょう。

しかしながら、残念なことにアメーバ赤痢を予防するワクチンは開発されていません。
別の方法で防げるようにするほかないのが現状です。

食事でのアメーバ性肝膿瘍対策

水、氷、野菜、果物、肉類を生で摂取することなど、汚染された飲食物を摂ることによって感染する恐れがあります。
食事では、十分に加熱調理を行なったものを摂ることがアメーバ性肝膿瘍を防ぐためには効果的です。

途上国の水に関しては、ビンに入っていてフタがしっかり閉まっているミネラルウォーター、または沸騰を一度させたものを飲みましょう。
また、切った果物も洗った水が汚染されていれば感染を起こすリスクがあります。

皮の傷みのない果物を、自分でむいて摂ることがアメーバ性肝膿瘍の予防のためには大切です。
そのほか、食事を摂る前には十分に手洗いを行ない、感染者の便からの感染を回避しましょう。

性感染症(STD)対策

アメーバ性肝膿瘍の病原体は糞便中へと排出されます。
肛門と口が直接あたるような肛門性交によって糞口感染してしまうリスクがあります。

アメーバ性肝膿瘍の予防のためには、このような性行為を控えることが効果的です。
また、コンドームを適切に取り扱うことも、性感染症対策として重要です。

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