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黄色ブドウ球菌食中毒を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/07/12 感染症

黄色ブドウ球菌食中毒とは

黄色ブドウ球菌食中毒(おうしょくぶどうきゅうきんしょくちゅうどく)とは、細菌の一種である黄色ブドウ球菌が原因となって引き起こされる細菌性毒素型食中毒です。

この細菌が増殖する際には耐熱性の毒素であるエンテロトキシンが産生されて、エンテロトキシンによって汚染された食品と共に摂取することで、食中毒症状が引き起こされます。
黄色ブドウ球菌自体は熱への耐性が低いものの、エンテロトキシンは熱に対して強く、100℃の温度で20分間にわたり加熱を行なっても分解されません。

また、エンテロトキシンは加熱に対してだけでなく乾燥に対しても強く、黄色ブドウ球菌は空気を必要とすることなく多くなることができます。
さらに黄色ブドウ球菌は、ある程度の塩分があってもエンテロトキシンを産生します。

したがって、毒素によって汚染されてしまえば、どの食品も黄色ブドウ球菌食中毒の原因食品になり得るということになります。
黄色ブドウ球菌は特定の場所にしかせい息していないような珍しい細菌ではありません。

私たち人間の喉(のど)や鼻腔(びくう)にもいますし、人間以外の動物の体、ホコリのなかといった具合にありふれた細菌です。

黄色ブドウ球菌による汚染はとくに、調理者の手や指に傷があったり、湿疹(しっしん)が引き起こされたりしていて、傷口が化膿した状態になっているとリスクが上昇します。
近年は家庭内で黄色ブドウ球菌食中毒を起こしているケースが多く、1年のなかではとくに夏の季節に食中毒症状を引き起こすことが多いです。

ブドウという言葉がこの食中毒の名称に使用されているのは、顕微鏡で見た際にブドウの実のような見た目をしたものが群がっているというのが理由です。

黄色ブドウ球菌食中毒の原因

菌自体が直接の原因ではない

黄色ブドウ球菌食中毒は、細菌の黄色ブドウ球菌自体によって食中毒症状が引き起こされるわけではありません。
菌が増殖する際につくり出されるエンテロトキシンという毒素によって発症します。

黄色ブドウ球菌が調理者の手から食品に入り、食品中で黄色ブドウ球菌が増殖してエンテロトキシンがつくり出され、食品と共にエンテロトキシンを摂取することにより食中毒症状が引き起こされるというわけです。

原因食品にはなにがあるのか

黄色ブドウ球菌は空気のない環境下で増殖することも可能であり、塩分がある程度あればエンテロトキシンをつくり出すことができます。
また、エンテロトキシンは熱や乾燥に強いという特徴があります。

したがって、黄色ブドウ球菌によって汚染されてしまった食品であれば、なんでも黄色ブドウ球菌食中毒を引き起こすリスクがあります。

なかでも黄色ブドウ球菌食中毒の原因食品として高い割合を占めているのが「にぎりめし(おにぎり)」です。
全体の40%がにぎりめし(おにぎり)によって発生しています。

にぎりめし以外では弁当、寿司、肉、たまご、麺、乳などによって引き起こされるリスクがあります。

どういう人に引き起こされるのか

特定の年齢や性別、健康状態などによって黄色ブドウ球菌食中毒が起こるということではありません。
すべての人に引き起こされるリスクが、黄色ブドウ球菌食中毒にはあります。

黄色ブドウ球菌食中毒の症状

潜伏時間

黄色ブドウ球菌の原因食品を摂取した瞬間に食中毒症状を引き起こすわけではありません。
発症するまでの潜伏時間を経て、食中毒症状が出現するようになります。

ほかの食中毒でも同じく潜伏時間があるのですが、黄色ブドウ球菌の場合は非常に短いのが特徴です。

現在ある食中毒のなかでは一番短い潜伏時間であり、短時間で発症する場合には30分間が経過して食中毒症状が出現します。
長くかかる場合でも6時間程度であり、平均では大体3時間ほどの潜伏時間しかありません。

摂取後すぐに症状が出現するということで、なにを食べたせいで食中毒症状を招いたのか判断しやすいという点があります。

どのようにして症状が出現するのか

黄色ブドウ球菌によって汚染されたものを摂取したあと、最初に唾液の分泌量が多くなります。
これに続いて強い吐き気を催して吐いてしまう症状が出現します。

そして吐き気・嘔吐に若干遅れる形でお腹が痛くなったり下してしまったりする症状が引き起こされます。

よく起こるわけではないものの、症状や管理のしかたによっては食中毒症状による脱水症を招いてしまうこともあるでしょう。
なお、食中毒症状は1日以内によくなる場合がほとんどです。

症状の種類

唾液の分泌量増加、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、まれに脱水症を引き起こします。
一般に高熱の症状が引き起こされることはありません。

ほかの細菌性食中毒との比較

黄色ブドウ球菌ではない細菌性毒素型食中毒の特徴

このタイプの食中毒を発生させる原因菌には、黄色ブドウ球菌のほかにボツリヌス菌、セレウス菌があります。

ここではボツリヌス菌のみ取り上げますが、この菌は泥砂(でいさ)中にせい息しており、熱に対して強く、酸素のない環境で増殖し、ボツリヌス毒素を生み出します。

18~36時間、短い場合は4時間、長い場合は8日間の潜伏期間を経て発症し、吐き気、嘔吐、神経障害といった症状を引き起こします。
呼吸麻痺を起こすことによって窒息(ちっそく)死してしまうことにもなりかねません。

原因食品としては発酵食品、真空包装食品、缶詰、びん詰、燻煙(くんえん)、飯寿司(いずし)、はちみつといったものがあります。
発症期間は数ヶ月間にわたることもあり、命を落としてしまう確率は約4%です。

年齢や性別、健康状態に関係なく、どのような人でも起こり得る食中毒ですが、赤ちゃんの場合ははちみつが原因で起こるリスクが高く、1歳未満には摂取させてはいけないという厚生省による通達があります。

同じ細菌性毒素型食中毒でも、原因菌が違うだけで黄色ブドウ球菌とは違った特徴を持っていることが、これだけの情報でもご理解いただけるのではないでしょうか。

毒素型ではない細菌性食中毒の特徴

細菌が原因物質となる食中毒には、毒素型以外に「感染型」のものがあります。

細菌性毒素型食中毒と細菌性感染型食中毒には、どのような違いがあるのでしょうか?
まず細菌性毒素型食中毒は、食品のなかで細菌が生み出した毒素を摂取することによって引き起こされます。

黄色ブドウ球菌食中毒の場合、食品のなかで黄色ブドウ球菌が生み出したエンテロトキシンを摂取することによって食中毒症状が出現するようになります。

これに対し、細菌性感染型食中毒は、細菌に感染した食品を食べ、体のなかで増殖した細菌が病原性を持つことによって引き起こされます。
細菌性感染型食中毒の原因となる菌の種類にはサルモネラ、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌といったものが存在しています。

腸炎ビブリオを例に出すと、この菌は沿岸海水や海泥にせい息しており、塩分濃度2~7%の場所で生存し、海水温度が15℃以上で活発化します。
熱に対しては強くなく、真水では生きることができません。

主な原因食品は海産魚介類であり、年齢や性別、健康状態などに関係なく起こるリスクがあるもので、8~24時間、短い場合は2~3時間の潜伏期間を経て発症し、主な症状は強烈な腹痛、下痢、発熱、吐き気、嘔吐のほか、下痢や嘔吐による脱水を招くこともあります。
命を落とすことはまれであり、長くても1週間も経過すると自然によくなることが多いです。

なお、同じ細菌性感染型食中毒に分類されている病気も、原因菌の種類が違えば腸炎ビブリオとはまた違った特徴を持っています。

発生件数と患者数

過去の食中毒事件の発生状況を把握することが可能なデータとしては、2008年(平成20年)に厚生労働省が行なった食中毒統計調査があります。

黄色ブドウ球菌の発生件数は50件であり、細菌が原因となって発生した食中毒全体の7.5%を占めています。

カンピロバクターの509件(65.4%)、サルモネラ属菌の99件(12.7%)に次いで黄色ブドウ球菌食中毒は多く起こっています。

また、患者数に関しては、黄色ブドウ球菌食中毒は1,424人でした。
この人数はカンピロバクターの3,071人、サルモネラ属菌の2,551人、ウェルシュ菌の2,088人に次いで多いです。

このデータは発生件数では3位、患者数では4位と、黄色ブドウ球菌食中毒は細菌性食中毒のなかでも比較的多い部類に入っているということがわかります。

黄色ブドウ球菌食中毒の検査・診断

何科を受診するか

出現している症状で、黄色ブドウ球菌食中毒の疑いがある場合に、何科の病院へ行けばいいのか迷う人もいるでしょう。

この疑問に対する回答ですが、内科や小児科に行けば対応してくれます。
まずは近くにある医療機関で診察を受けるとよいでしょう。

この食中毒かどうかを調べる方法

医療機関で行なわれている検査方法としては血液検査や便検査のほか、食中毒を引き起こしている黄色ブドウ球菌やエンテロトキシンの有無を確認する細菌検査があります。
細菌や毒素の有無は食品、糞便、吐物、手拭きなどから探ることになります。

そのほか、別の病気による症状ではないか調べることを目的に、レントゲンやCTといった画像検査が選択されるケースもあります。

さまざまな検査方法がありますが、黄色ブドウ球菌食中毒かどうかの診断は、問診と診察だけで下されることが多いというのが実際のところです。

黄色ブドウ球菌食中毒の治療

抗菌薬は有効?

黄色ブドウ球菌に対しては、抗菌薬は効果を発揮してくれます。
殺菌すれば安心と思うかもしれませんが、黄色ブドウ球菌が増殖する際に生み出された毒素のエンテロトキシンによって引き起こされるものです。

抗菌薬によって菌自体を殺菌したとしても、エンテロトキシンがあるため意味がないということになります。
エンテロトキシンに対しては抗菌薬が効果を発揮することはないです。

また、エンテロトキシンに対する特効薬も現状に開発されていません。
このことから、抗菌薬を使った治療を行なう必要はないとされています。

どうやって治療する?

深刻な状態になることは少ないため、脱水症を予防するための水分補給を行ない、安静にしているというのが基本です。
黄色ブドウ球菌食中毒の症状は24時間以内に自然と治まります。

なお、嘔吐や下痢によって脱水症状を引き起こした場合には点滴を行なうことで対処します、

黄色ブドウ球菌食中毒の予防

加熱処理は有効?

黄色ブドウ球菌自体は熱に強くないため、加熱を行なうことによって殺菌することが可能です。

しかしながら、黄色ブドウ球菌によって産生されるエンテロトキシンは熱への耐性があり、100℃の温度で20分間の加熱処理を行なっても食中毒症状を引き起こすだけの力が失われることはありません。

調理の直前に十分に食品に火を通しておけば安心というわけにはいかない点が、黄色ブドウ球菌食中毒のやっかいなところといえるでしょう。

予防は不可能?

加熱処理が効かないということで、黄色ブドウ球菌を未然に防ぐのは無理なのかと思ってしまう人もいるでしょう。
しかしながら、予防法がないわけではありません。

黄色ブドウ球菌はおにぎりのような手から食品に入り込むことが原因となる場合が多いです。

食品を取り扱う人は手や指の洗浄や消毒を徹底し、手や指などに傷や湿疹を起こしている人は、食品と直接接触したり(手であれば素手で食品に触ることをしない)、調理を行なったりするのを避けます。

また、切り傷がある人は調理を行なう際に手ぶくろの装着をすると予防につながりますし、帽子をかぶる、マスクを着けるというのも黄色ブドウ球菌を未然に防ぐことに役立ちます。

食品の温度

食品を10℃以下の温度に保つことが予防のためには大切です。
この温度条件下では、黄色ブドウ球菌の増殖が抑制されるためです。

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