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ロタウイルス下痢症を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2018/06/04 感染症

ロタウイルス下痢症とは

ロタウイルス下痢症(ろたういるすげりしょう)とは、ロタウイルスに感染し、発症する急性胃腸炎のことをいいます。
ロタウイルスのロタというのはラテン語であり、日本語訳では車輪です。

電子顕微鏡で観察すると車輪に似た見た目をしているため、ロタウイルスという名前で呼ばれています。
アルコール消毒剤や高温に対する高い抵抗力を有しているのが特徴のウイルスでもあります。

比較されることの多いノロウイルスは10~2月までが多く、とくに12月の検出数が多いのに対し、ロタウイルスは2~5月、とくに3月の検出数が多いです。

5歳までの子どものほとんどが少なくとも一度は感染を経験し、免疫を獲得しますが、ロタウイルスには複数の種類があり、免疫を得ることができるのは感染した1種類のみですので、その後も何度かロタウイルスの感染を経験することになります。

保育所、幼稚園、小学校などで流行するほか、家族のあいだでも流行することも珍しくありません。
なお、5歳までの子どものなかでも、生後6ヶ月~2歳の乳幼児の発生割合が高くなっています。

ロタウイルス下痢症は乳幼児の胃腸炎で最多であり、急性胃腸炎の入院患者の4~5割がロタウイルスが原因とされています。
また、ロタウイルス下痢症は重症度が高いのも特徴の一つです。

主症状としては激しい下痢や嘔吐、発熱や腹痛の症状が起こることもあり、脱水症状が悪化することによって点滴をしなければいけなくなったり、入院しなければいけなくなったりするケースもあります。

国内では年間1,200,000人の5歳未満児がロタウイルスによって症状が引き起こされており、年間約800,000人が医療機関へ行っています。

また、医療機関へ行った人のなかのそのなかの26,500~78,000人程度が入院していると推計されています。
脳炎・脳症を引き起こすことがあり、後遺症が残ることもあるほか、合併症によって命を落としてしまうことにもなりかねません。

重症化するのは乳幼児の約1割とされており、1年間で2~18人がロタウイルスによって命を落としています。
なお、子どものころに獲得した免疫は成人以降も有効ですが、大人がロタウイルス下痢症を引き起こすことはあります。

ただし、大人はロタウイルスの感染を経験している回数が多いため、軽症で済んだり無症状で終わったりすることがほとんどです。
一方の乳幼児は前述したとおり、激しい症状が出ることが多く、初回の感染ではより強く症状が引き起こされます。

ロタウイルス下痢症の原因

病原体
ロタウイルス下痢症の病原体はロタウイルスです。
直径で約10,000分の1mmのサイズで、ロタウイルスに感染している人の下痢便1g中には、1,000億~1兆もの数がいるといわれています。

サイズはノロウイルスの約2倍、便中のウイルス数はノロウイルスの100万倍です。
アルコール消毒や熱に対する抵抗力も持っています。

感染経路

ロタウイルス下痢症の感染経路は経口感染です。
10~100個程度のロタウイルスを経口摂取することによって感染が成立し、のちに症状が出現するようになります。

ロタウイルスは、ロタウイルス下痢症を起こしている人の便に多く含まれており、便の処理を行なったあとに手洗いをしっかりしたとしても、何億という数のロタウイルスが手や爪に存在している場合があり、ロタウイルスが付着した手などを介して感染が拡大していってしまいます。

また、便だけでなく嘔吐物にも大量のロタウイルスが含まれているほか、鼻水にまで含まれています。

吐しゃ物の処理でウイルスが含まれているものに触った手、ウイルスによって汚染されたドアノブ、階段の手すり、トイレの便座などの表面を触った手、汚染された飲料水や食物を介し、口からロタウイルスが入り込んで感染が成立します。

さらに便や嘔吐物、鼻水などの乾燥物から出る、チリやホコリのことを意味する塵埃(じんあい)を介して経口感染するケースがあります。

感染力

ロタウイルス下痢症の病原体であるロタウイルスは、非常に強い感染力があります。

0.01mlの下痢便が手に付着している人が調理したものを摂取すると、10,000人がロタウイルスに感染してしまうほどのパワーです。

そのため、たとえば保育所などで感染者が1人でも出るとあっという間に流行・集団発生してしまいます。

ロタウイルス下痢症の症状

ロタウイルス下痢症の潜伏期間

ロタウイルス下痢症の症状は、感染後すぐに出るわけではありません。
病原体に感染後、2~4日間が経過して、ロタウイルス下痢症の症状が出現するようになります。
また、潜伏期間は2~4日のほか、1~3日ともされています。

下痢

ロタウイルス下痢症の主な症状の一つに強い下痢があります。
後述する嘔吐あるいは下痢の症状がとつぜん、ロタウイルス下痢症では出現します。

繰り返す下痢の症状によって脱水症状を引き起こすことがあります。
ロタウイルス下痢症の場合、下痢便は水のようであり、白い色の便が出ることも珍しくありません。

下痢の症状によってお尻のただれが起こることもあります。
なお、下痢の症状は通常、7日間以内で好転します。

白色の便だったのが次第に黄色くなって回復します。
下痢以外の腹部の症状としては、腹痛が起こることもあります。

嘔吐

ロタウイルス下痢症の代表的な症状として、強い嘔吐をあげることができます。
前述したように、嘔吐あるいは下痢の症状がとつぜん引き起こされるのがロタウイルス下痢症の特徴です。

下痢と同じく、嘔吐の症状も繰り返し起こり、その結果として重い脱水症状を招いてしまうリスクがあります。
合併症を起こしていない場合、嘔吐の症状は通常1~2日で軽快します。

発熱

下痢や嘔吐とは別の症状として、ロタウイルス下痢症では熱が上がることもあります。

3~5割に出現する症状であり、37℃程度の微熱のケースのほか、39℃以上の高熱が出ることもあります。

脳炎・脳症

ロタウイルス下痢症によって脳炎や脳症を招いてしまう詳細なメカニズムは解明されていませんが、引き起こされてしまうことがあります。

繰り返すけいれんや意識障害が症状として出現し、4割弱の患者には麻痺などの後遺症が残ってしまいます。

命を落とすケースも

前述した脳症、けいれんの症状のほか、肝機能障害、急性腎不全、心筋炎といった合併症を招くことがあります。

こうした合併症を招くと最悪の場合には亡くなってしまうこともあるため、けいれん、意識低下といった異常が認められる場合にはすぐに病院へ行くことが大切です。

また、ロタウイルス下痢症の主症状には嘔吐がありますが、仰向けの状態で気道が嘔吐物によって塞がれてしまい、窒息してしまう恐れもあります。

大人の場合の症状

ロタウイルス下痢症は5歳までの子どものほぼ100%が経験する病気です。
感染することによって免疫を獲得し、この免疫は大人になっても力を失いません。

そのため、健康な大人が感染した場合、基本的には体がだるくなるなどの軽い症状しか出現せず、そのまま回復することが多いです。

ところが、免疫が低下した大人、高齢者はとりわけ感染・発症するリスクが高くなります。
症状は強い下痢で白い色の便が出る、嘔吐、発熱、38℃以上の高熱などがありますが、発熱はないケースもあります。

症状は3~7日間にわたり続いて、吐しゃ物からウイルスが排出されて、まわりの人に二次感染させてしまうリスクがあります。
持病があったり高齢であったりする人は重症化して入院することも少なくありません。

ロタウイルス下痢症の検査・診断

診療科

出現している症状がロタウイルス下痢症の症状と一致している場合、何科に行けばよいのでしょうか。
このことに疑問を感じる人もいることでしょう。

まず、ロタウイルス下痢症は小さい子どものほぼ全員が5歳までに経験する病気です。

症状が出現した場合には、小児科へ連れて行ってあげるとよいでしょう。
そのほかの場合の診療科としては、内科や消化器内科へ行けば対応してくれます。

ロタウイルス下痢症かどうかを調べる方法

出現している症状や、症状が起こっている人のまわりの感染状況によって、ロタウイルス下痢症であると暫定的に判断して治療が行なわれるケースが多いです。

暫定的とあるとおり、これによって診断が確定するわけではありません。
診断方法としては、イムトクロマト法(迅速診断検査)があります。

これは便中にロタウイルスが含まれているかどうかを確認する検査方法であり、10~20分程度という短時間でロタウイルスに感染しているかどうか調べることが可能です。

医学的に行なう必要ありと医師が判断した場合に選択される検査であり、健康保険が適用されます。

ただし、ロタウイルスと一口にいっても複数種類が存在しており、この検査方法では検出できないこともあるため、ロタウイルスに感染、発症している場合でも、検査結果が陽性を示さないことがあります。

なお、陽性はロタウイルスである、陰性はロタウイルスではないということを意味しています。

ロタウイルス下痢症の治療

抗ウイルス剤はある?

ロタウイルス下痢症の病原体であるロタウイルスに対して有効な抗ウイルス剤は、現状において開発されていません。

下痢止めは使用する?

ロタウイルス下痢症の主症状には下痢がありますが、症状を抑えるために下痢止めを使用することは基本的にありません。

下痢の症状はロタウイルスを体外に出すためには必要なことであり、下痢止めで症状を抑え込んでしまうと、体内にいつまでもロタウイルスがとどまってしまう原因となり、軽快するまで余計に日数がかかってしまうといわれています。

なお、下痢止めは基本的に選択されないものの、腸内環境を整えることを目的にビオフェルミンなどの善玉菌製剤(整腸剤)は使用されています。

嘔吐の症状はどうする?

下痢の症状に対して下痢止め薬が使用されることは基本的にありません。
しかしながら、嘔吐の症状が起こっている場合には鎮吐(ちんと)薬で対処する方法があります。

水分補給を行なう

ロタウイルス下痢症の強い嘔吐や下痢などの症状で大量に水分を失い、脱水症を招いてしまう恐れがあります。
脱水症は深刻なものになると命にかかわることにもなりかねません。

また、電解質も消失しているため、脱水症を防ぐためには電解質が含まれているイオン水などを飲むことによって、水分補給を行なうことが大切です。

家で水分補給をする場合には一気に多くの水分を飲むのではなく、少量(50~100ml)ずつ、何回も飲むことが大切です。
また、冷たい飲み物はお腹にとって強い刺激となるため避けたほうがいいです。

嘔吐の症状があり、飲んでも吐き出してしまうなど、経口での水分補給が困難な場合には点滴治療(経静脈輸液)を受ける必要があります。

ロタウイルス下痢症の予防

手洗い

この病気を予防するためには、徹底して手洗いを行なうことが大切です。

自分がトイレに行ったあと、子どものトイレを補助したあと、子どものオムツ交換をしたあと、料理をする前、配膳する前、食事をとる前、おやつの前などには手を洗うことを習慣化しましょう。

手洗いをする際にはアクセサリー類は外し、石けんを使って十分に時間をかけて洗い上げます。

また、子どもが家に帰ってきてすぐ、おむつ交換をしたあと、トイレに行ったあと、食事やおやつを食べる前など、子どもの手洗いを大人が手伝うことが大切です。
そのほか、手洗いのあとには同じタオルを繰り返し使用することはよくありません。

タオルがロタウイルスによって汚染されると、そのタオルが感染源となって、使用した人が感染してしまう原因になってしまいます。
ロタウイルスの感染を防ぐためには、使い捨てのペーパータオルを使用すると効果的です。

加熱

手洗い以外の方法としては、加熱も効果的です。
玩具、衣類、タオル、調理用具などは85度以上の熱湯で60秒以上の処理をほどこすことが、ロタウイルス下痢症の予防に役立ちます。

汚物処理

ロタウイルス下痢症を引き起こしている人の吐しゃ物には、大量のロタウイルスが含まれています。

この吐しゃ物と接触した手を経由して、口からロタウイルスが入り込んで感染成立することがあるため、汚物処理は慎重に行なう必要があります。

なお、下痢の症状が解消されたあとも、ロタウイルス下痢症になった人の便にはウイルスがいるため、軽快したあとも油断は禁物です。

オムツの交換を行なう際には使い捨ての手袋、マスクなどを身に着けて汚物をポリ袋などに入れて廃棄し、処理が完了したあとの手洗いを徹底することが欠かせません。

衣類に吐しゃ物が付着した際には次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)を使用してつけおき消毒を行なったあと、ほかの衣類とは別々に洗濯をすることが大切です。

ワクチン接種

ロタウイルス下痢症のワクチンは2種類があります。
名称はロタテックとロタリックスです。

ロタウイルス下痢症を未然に防ぐ経口生ワクチンで、重症のロタウイルス下痢症を約90%防ぎ、約100%と非常に高い数値で入院を防ぐことが可能です。

ワクチンは生後6週間~接種することが可能であり、初回は生後14週6日までが推奨されています。

ロタテックは初回~4週間以上ずつあけて合計3回接種、ロタリックスは初回~4週間以上あけて合計2回接種を行なうワクチンです。
副反応として、易刺激性、下痢、咳、鼻水が起こることがあります。

易刺激性は7%、あとの副反応は3%ほどに認められる症状ですが、1~数日が経過すると回復します。
なお、ワクチンは任意接種であり全額自己負担となるため、医療機関によって金額が異なります。

また、腸重積症の既往があったり、それを起こす恐れのある先天異常がある患者に対しては接種不可など、接種禁忌者や接種要注意者もあります。
くわしい話は医療機関で聞いてみるとよいでしょう。

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