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腸チフス、パラチフスを詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/12/31 感染症

腸チフス(ちょうちふす)、パラチフス(ぱらちふす)とは、サルモネラという細菌の一種であるチフス菌とパラチフスA菌によって起こる感染症のことです。

腸チフスはチフス菌に感染することで、パラチフスはパラチフスA菌に感染し、発症する病気です。

チフス菌、パラチフスA菌は両方とも、人間にだけ感染し病気を引き起こします。
菌が腸に入り、血液中へと入り込むのが特徴です。

菌を保有している人の尿や便で汚染された食品や水、氷を摂取することで感染します。
したがって、腸チフス、パラチフスは人から人へとうつる病気です。
ごくわずかな菌だけで感染することもあります。

人間にしか感染しないということで、衛生状態が良好な地域では発生件数は少なく、日本国内では1年間で100人ほどにしか起こっていません。

しかもそれは日本国内で発症したわけではなく、東南アジア、中南米、アフリカで感染し、帰国後に発症したケースがほとんどです。
38℃以上の高熱などが主な症状にありますが、腸チフスと比較してパラチフスのほうが基本的には軽症です。

感染症法や学校保健安全法で第3類に指定されている感染症であり、診断後には直ちに保健所に届出を行なう義務があるほか、飲食物に直接接触する作業を行なう人は就業制限を受けることになり、病状により学校医その他の医師によって感染する恐れがないと認めるまで出席停止になります。

腸チフス、パラチフスの原因

病原体

腸チフス、パラチフスの病原体は、サルモネラという細菌の一種であるチフス菌とパラチフスA菌です。
チフス菌は腸チフスの病原体であり、パラチフスA菌はパラチフスの病原体です。

チフス菌やパラチフスA菌はグラム陰性桿菌(いんせいかんきん)です。
細菌の顕微鏡検査を行なうときにはグラム染色という色付けをします。

グラム染色で染まらず棒状の形をしている細菌のことを、グラム陰性桿菌といいます。
チフス菌やパラチフスA菌は、人間にだけ感染し病気を引き起こします。

感染源が人間に限定されているため、衛生状態の良い地域では起こるリスクは低下します。
そのため、日本国内では発生件数が減少していますが、途上国ではまだ多発している感染症です。

感染経路

腸チフス、パラチフスの感染経路は経口感染(けいこうかんせん)です。

菌を保有している人の尿や便に汚染された水や氷、食物を摂取することによって感染します。
菌が腸に入り込んだあと、血液中に入り込むのが特徴です。

感染し発症した人だけでなく、感染しても症状のない人も、菌を保有している人に含まれるため気をつけなくてはいけません。
人から人へとうつる病気であり、感染はごくわずかな菌量で起こるケースもあります。

食中毒を引き起こすことでも知られており、牡蠣などの貝類を生で食べたことがきっかけとなったケースや、サラダや豆腐を食べたことがきっかけとなったケースなどがありました。

腸チフス、パラチフスの症状

潜伏期間

腸チフスの病原体であるチフス菌、パラチフスの病原体であるパラチフスA菌に感染した瞬間に、症状が出現するわけではありません。
発症するまでの潜伏期間が、腸チフスやパラチフスにはあります。

具体的な期間ですが、チフス菌は3日~3ヶ月で、通常は1~3週間の潜伏期間を経て発症します。
一方、パラチフスA菌は1~5週間、通常は10~14日間の潜伏期間を経て発症します。

引き起こされる症状

腸チフス、パラチフスには第1~第4病週まであり、各病週で起こり得る症状は異なります。
第1病週では次第に体温が高まり39~40℃にまでなり、高熱が出ているわりには脈が遅い状態です。

高熱のほかにはバラ疹という、皮膚に小さな紅色の発疹(ほっしん)が出現する症状や、肝臓と脾臓(ひぞう)が腫れて大きくなる症状があります。

次に第2病週ですが、稽留熱(けいりゅうねつ)という、40℃程度の熱が持続する症状や、無気力な表情になるチフス性顔貌(がんぼう)、下痢または便秘、重症な場合には意識障害が引き起こされます。

第3病週では弛張熱(しちょうねつ)といって、1日の体温変動が1℃以上で、平熱まで低下しない症状があるほか、腸から出血する症状や、腸の出血に続いて腸に穴があく腸穿孔(ちょうせんこう)の症状が引き起こされることもあります。

なお、腸穿孔が起こってしまうのは2~3%の人とまれではあります。
そして第4週ですが、この病週では体温が低下し、快復します。

腸チフス、パラチフスの検査・診断

問診

日本国内における腸チフス、パラチフスの発症者のほとんどは、海外に渡っている最中に感染しています。

そのため、この病気であるかどうかの判断材料としては、患者に引き起こされている症状のだけでなく、途上国など国外に渡ったかどうかの情報が有用です。

細菌検査

腸チフス、パラチフスを起こしていることの決め手になるのは、チフス菌やパラチフスA菌が検出されることです。
血液、糞便、胆汁を培養し、病原体があることが確認されれば、診断が確定されます。

どういう場合には病院に行ったほうがいい?

自覚症状としてわかりやすいのは発熱の症状です。
次第に熱が高くなってくる症状が腸チフス、パラチフスでは起こります。

熱が出ると真っ先に思い浮かべるのは風邪ですが、とくに海外に渡って、帰国後ひと月以内に発熱が3日以上にわたって解消されない場合には、医療機関へ行きましょう。

腸チフス、パラチフスの治療

抗菌薬の使用

腸チフス、パラチフスの病原体であるチフス菌やパラチフスA菌に対して効果を発揮する薬剤が使用されることになります。
ニューキノロン系抗菌薬という、病原体の増殖に不可欠な酵素を阻害する作用のある薬剤が使用されます。

これまでは特効薬としてクロラムフェニコール、アンピシリンまたはアモキシシリン、ST合剤が使用されていましたが、いまは薬が効かない耐性菌が多くなっており、さらに副作用などの問題もあり、ニューキノロン系抗菌薬が第一選択になっています。

ただ、いまはニューキノロン系抗菌薬の耐性菌も出てきており、この薬による治療がうまくいかなかった報告例も少なくありません。
ニューキノロン系抗菌薬に効果を期待できない場合には、第3世代セフェム系抗菌薬という薬剤が選択される形になります。

薬を服用する期間は基本的に2週間であり、適切な治療を受けても菌が完全にはいなくならないことがあります。
したがって、治療後には菌の有無を確かめる検査を受けます。

なお、菌を撲滅できていないと、生涯にわたって保菌者になってしまうリスクがあるほか、保菌者では食品に直接接触するような仕事に就くことができなくなります。

抗菌薬の使用以外の治療

症状が起こっている場合は、入院して治療を受けることになるのが原則です。
消化の良い食事を摂り、腸出血のリスクがあるため安静にしていることが大切です。

熱が下がれば退院することはできますが、熱が下がったあとの1週間程度は腸出血を起こすリスクが残っているため、安静にしていることが不可欠です。

腸チフス、パラチフスの予防

ワクチンの接種

腸チフスの予防効果のあるワクチンには、経口弱毒性ワクチンと注射用不活化ワクチンの2種類が存在します。
経口弱毒性ワクチンは6歳以上が接種を受けることが可能で、海外に渡る1週間前までに接種を完了させる必要があります。

1日おきに4回内服するのが接種スケジュールで、効果は5年は持続するとされています。
次に注射用不活化ワクチンですが、2歳以上が接種を受けることが可能で、海外に渡る2週間前までに完了させます。

筋肉注射による一度の接種により、2年間は効果が持続するとされています。
なお、経口弱毒性ワクチンと注射用不活化ワクチンは国内未承認です。

トラベルクリニックなどで海外から輸入したワクチンの接種を行なっているため、流行地に渡る際には相談しましょう。
パラチフスに関しては、現在有効なワクチンは開発されていません。

手洗いの徹底

腸チフス、パラチフスの病原体の感染は、菌を保有している人の尿や便に汚染された食べ物、手指を介して拡大します。
したがって、菌を保有している本人が手洗いを徹底することにより、感染拡大を食い止めることが可能です。

また、菌を保有しているのが子どもや高齢者であり、トイレの介助が必要な場合には、介助を行なう人の手洗いも徹底します。
患者でなくとも、食事の前などこまめに手洗いを行なうことは感染予防に効果的です。

食事

生水、氷、生肉、生野菜、生の魚介類などによって感染するリスクがあります。

食事ではしっかりと火の通ったものを摂ることが、腸チフスやパラチフスを回避するためには効果的です。
途上国では一度沸騰させた水を飲用するか、ビンに入っていてフタがしっかりと閉まったミネラルウォーターを飲用しましょう。

また、カットフルーツも果物自体は大丈夫であっても、果物を洗った水が汚染されていればこの病気を起こすリスクがあるため、カットフルーツ自体を食べないか、皮が傷んだ状態ではないものを、自分でむいて摂ることが大切です。

危険のある地域に行かない

衛生状態が良好な日本国内で腸チフス、パラチフスになることは少ないです。

東南アジア、アフリカ、中央および南アフリカ、カリブ海など、この病気が多発している地域に行かなければ、感染を回避することが可能です。
なかでも南アジアでの感染リスクは、別のエリアと比較すると6~30倍にもなるとされています。

とくに悪性リンパ腫(あくせいりんぱしゅ)、白血病(はっけつびょう)、炎症性腸疾患(えんしょうせいちょうしっかん)にかかっている状態、腎臓の移植を行なった人、HIV感染者、制酸薬を使用している人などは感染するリスクが高まるため、流行国へ渡るのはなるべくやめたほうが良いといえるでしょう。

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