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クッシング症候群を詳しく:原因・症状・検査・治療など

公開日: : 最終更新日:2018/11/19 ホルモン

クッシング症候群とは

クッシング症候群(くっしんぐしょうこうぐん)とは、副腎皮質(ふくじんひしつ)で生成されている副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾールが過剰に生成されることによって、体形の変化や皮膚の変化、筋肉や骨の変化など全身にさまざまな症状が現れる病気です。

副腎皮質とは、臓器の一種である副腎の中で副腎皮質ホルモンを生成しています。

副腎皮質ホルモンはステロイドホルモンとも呼ばれ、副腎皮質ではコルチゾール、アンドロゲン、アルドステロンという3種類の副腎皮質ホルモンが生成されています。
ホルモンは体のさまざまな臓器で生成され、生成されたホルモンは血流によって全身へと運ばれ、あらゆる場所で体の状態を一定に保つための調節機能の役割を果たしています。

副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾールは、体がストレスを受けた際に体を守るために分泌されるストレスホルモンのひとつで、ストレスを受けることで下がりやすい血糖値を上昇させて、ブドウ糖を脳へと送り脳機能の低下を防ぐほか、下がりやすい血圧を上昇させるブドウ糖のもととなるアミノ酸の供給を促すために、筋肉合成を抑えると同時に分解を促進させるといった働きをします。

そのため、コルチゾールは生きてくうえで欠かせませんが、コルチゾールが過剰に生成されると糖尿病(とうにょうびょう)や高血圧症(こうけつあつしょう)などを引き起こすリスクが高まり、体に悪影響を及ぼす場合があります。

コルチゾールは、脳(のう)の下垂体(かすいたい)で生成されるACTHホルモンと、脳の視床下部(ししょうかぶ)で生成され、ACTHホルモンを調節する役割を担っているCRHホルモンの2種類のホルモンによって血液中の濃度が調節されています。

クッシング症候群はこの下垂体で生成されるACTHホルモンや、視床下部で生成されるCRHホルモンが何らかの原因によって正常に機能しないことによって、副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾールが過剰に生成されてしまう病気のことです。

コルチゾールが過剰に生成されてしまう原因は、基本的に下垂体や副腎に発生した腫瘍(しゅよう)である場合が多く、発症原因が下垂体に発生した腫瘍である場合はクッシング病(くっしんぐびょう)、副腎に発生した腫瘍である場合は副腎性クッシング症候群(ふくじんせいくっしんぐしょうこうぐん)、肺(はい)や膵臓(すいぞう)、気管支(きかんし)、卵巣(らんそう)、甲状腺(こうじょうせん)など、下垂体や副腎以外に発生した腫瘍である場合は異所性ACTH症候群(いしょせいエーシーティーエイチしょうこうぐん)、長期にわたりステロイド治療を行なうことによってコルチゾールが過剰に生成される場合は医原性クッシング症候群(いげんせいくっしんぐしょうこうぐん)と呼ばれています。

クッシング症候群は1年あたり100人ほどが新たに発症しますが、男性と比べて女性の発症率が4倍も高く、40歳代半ばの中年女性の発症率が高いという特徴があります。

実際にクッシング症候群を発症すると顔がむくんで丸くなるムーンフェイスや、腹部が太り手足が細くなる中心性肥満(ちゅうしんせいひまん)といった外見や体形の変化をはじめ、皮膚が薄く柔らかくなり、ニキビや内出血が増えるといった皮膚の変化、筋力低下や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、不眠や抑うつ症状、月経異常(げっけいいじょう)、勃起不全(ぼっきふぜん)といった症状が現れます。

クッシング症候群の発症原因は下垂体や副腎などに発生した腫瘍である場合が多いため、できるだけ腫瘍のサイズが小さい初期段階で治療をはじめることが重要です。

そのためには問診をはじめ、血液中に含まれるコルチゾールの量を測定するコルチゾール検査、尿中に含まれるコルチゾールの量を測定する尿検査、デキサメタゾン抑制試験、CT検査、MRI検査などを行ないます。

さまざまな検査によってクッシング症候群であると確定診断が下ると、基本的に発症原因となっている腫瘍を切除する外科手術を行ないます。

発症原因が下垂体に発生した腫瘍である場合には経鼻的下垂体摘出術(けいびてきかすいたいてきしゅつじゅつ)や経鼻的内視鏡下手術(けいびてきないしきょうかしゅじゅつ)、開頭手術(かいとうしゅじゅつ)などを行ない、発症原因が副腎に発生した腫瘍である場合には腹腔鏡下副腎摘出術(ふくくうきょうかふくじんてきしゅつじゅつ)や副腎摘出術(ふくじんてきしゅつじゅつ)を行ないます。

外科手術が行なえない場合や十分な効果が得られない場合には、ミトタンやメチラポンなどを使った薬物療法やガンマナイフを使った放射線療法(ほうしゃせんりょうほう)を行ないます。

クッシング症候群の発症原因となる腫瘍は、放置すると徐々に大きくなり治療も難しくなるため、できるだけ初期段階で治療をはじめることが重要です。

そしてそのためにも少しでも体に異変を感じた場合はできるだけ早く医療機関を受診し、早期発見・早期治療に努めましょう。

クッシング症候群の原因

クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾールが過剰に生成されることによって発症する病気ですが、コルチゾールが過剰に生成される原因はACTH依存性(エーシーティーエイチいぞんせい)とATCH非依存性(エーシーティーエイチひいぞんせい)の2つに大きく分類されています。

コルチゾールの生成量は、脳の下垂体で生成されるACTHホルモンと、脳の視床下部で生成されACTHホルモンを調節するCRHホルモンによってコントロールされています。

ACTH依存性は、下垂体でACTHホルモンが過剰に生成されることに伴い、コルチゾールも過剰に生成されることによってクッシング症候群を発症するタイプで、ACTH非依存性はACTHホルモンが過剰に生成されること以外が原因となりクッシング症候群を発症するタイプです。

このように、クッシング症候群を発症する原因はACTH依存性とACTH非依存性の2つに分類されますが、ACHT依存性やACTH非依存性を招く原因によってクッシング病、副腎性クッシング病、異所性ACTH症候群、医原性クッシング症候群の4つに細かく分類されています。

クッシング病
クッシング病はACTH依存性に分類されるタイプで、下垂体性クッシング症候群(かすいたいせいくっしんぐしょうこうぐん)とも呼ばれています。

クッシング病を引き起こす原因は下垂体に発生した腫瘍で、この腫瘍によってACTHが過剰に生成されコルチゾールの生成量も増加します。

副腎性クッシング症候群

副腎性クッシング症候群は、ACTH非依存性に分類されるタイプです。
副腎性クッシング症候群を引き起こす原因は副腎に発生した腫瘍です。

副腎に発生する腫瘍としては、副腎癌(ふくじんがん)や副腎腺腫(ふくじんせんしゅ)、原発性副腎皮質小結節性異形成(げんぱつせいふくじんひしつしょうけっせつせいいけいせい)、ACTH非依存性大結節性副腎過形成(エーシーティーエイチひいぞんせいだいけっせつせいふくじんかけいせい)などの副腎疾患をあげることができます。

こういった腫瘍による副腎皮質の細胞増加に伴い、コルチゾールの生成量も増加します。

異所性ACTH症候群

異所性ACTH症候群とはACTH非依存性に分類されるタイプで、異所性ACTH産生腫瘍(いしょせいエーシーティーエイチさんせいしゅよう)とも呼ばれています。

異所性ACTH症候群を引き起こす原因は、ACTHホルモンを生成する下垂体やコルチゾールを生成する副腎皮質以外に発生した腫瘍で、肺癌(はいがん)や膵臓癌(すいぞうがん)、気管支カルチノイド腫瘍(きかんしかるちのいどしゅよう)、卵巣癌(らんそうがん)、甲状腺髄様癌(こうじょうせんずいようがん)、胸腺腫(きょうせんしゅ)などをあげることができます。

こういった腫瘍が本来下垂体の細胞が生成するACTHホルモンを生成する場合があり、それに伴いコルチゾールの生成量も増加します。

医原性クッシング症候群

医原性クッシング症候群は長期にわたりステロイド治療を行なうことが原因となって、コルチゾールの生成量が増加するタイプです。

副腎皮質ホルモンであるステロイドはさまざまな病気の薬物療法に使用されていますが、長期にわたり服用を続けることで、コルチゾールの生成量が増加する場合があります。
ただし、ステロイドによる薬物療法がクッシング症候群の発症原因である場合、ステロイドの服用を中止することでクッシング症候群の症状を改善させることができます。

このようにクッシング症候群を引き起こす原因は4種類ありますが、下垂体に発生した腫瘍が発症原因のうち最も多いという特徴があります。

クッシング症候群の症状

クッシング症候群を発症すると、外見や体形の変化をはじめ、皮膚の変化、骨や筋肉の変化、精神症状、性機能の異常など、全身にさまざまな症状が出現します。

外見や体形の変化

クッシング症候群を発症すると、外見や体形に特徴的な変化が現れます。

体幹を中心に腹部が太り、手足が細くなる中心性肥満、肩に脂肪が蓄積される野牛肩(やぎゅうかた)、顔がむくんで丸くなるムーンフェイスといった症状が現れます。
こういった症状はインスリンの分泌量が大きく関係しています。

インスリンは血糖値が上昇した際に、血糖値を下げるために膵臓から分泌されますが、脂肪を蓄える働きもあります。

クッシング症候群を発症するとコルチゾールが過剰に生成され、コルチゾール本来の働きが正常に機能しなくなり、インスリンの働きによって体に脂肪が蓄えられやすくなります。

インスリンによって脂肪が蓄積されるのは腹部を中心とした体幹が主で、手足など筋肉が多い部分は筋肉が落ちて細くなります。

また、急激に腹部の脂肪量が増加すると皮膚が内部の膨張に追いつかず皮下で断裂し、妊娠線や肉割れ線と呼ばれる筋状の皮膚線条(ひふせんじょう)が生じる場合もあります。

皮膚の変化

クッシング症候群を発症すると、皮膚にも変化が現れます。
主に皮膚が薄く柔らかい状態へと変化し、毛細血管(もうさいけっかん)が透けて肌全体が赤らんで見えるようになります。

またニキビが増え、内出血をしやすくなるほか、傷が治りにくく、体毛が増える場合があります。

骨や筋肉の変化

クッシング症候群の発症原因となるストレスホルモンの一種であるコルチゾールには、肝臓でのブドウ糖の生成を促すと同時に筋肉のもととなるたんぱく質を分解し、ブドウ糖を取り出す作用があります。

そのため、コルチゾールが過剰に生成されることによってクッシング症候群を発症すると、たんぱく質の分解も促進され続けるため、筋力低下や骨がもろくなる骨粗鬆症を招く場合があります。

精神症状

クッシング症候群を発症すると精神症状が現れる場合があります。
主に夜なかなか寝付けず、またぐっすり眠れなくなる不眠症状や、元気が出ず気分も落ち込む抑うつ症状が現れます。

性機能の異常

クッシング症候群を発症するとホルモンバランスが乱れやすくなり、性機能の異常を引き起こす場合があります。

女性の場合は無月経や不規則な月経周期といった月経異常、ひげが濃くなるといった症状が現れ、男性の場合は性欲減退(せいよくげんたい)、勃起不全といった症状が現れます。

そのほかの症状

クッシング症候群を発症すると、血糖値を上げる作用を持つコルチゾールが過剰に分泌されることによって、糖尿病や高血圧症を引き起こす場合があります。

さらに免疫力の低下、腎結石(じんけっせき)、尿管結石(にょうかんけっせき)、脂質異常症(ししついじょうしょう)などを引き起こす場合もあります。

クッシング症候群の検査・診断

クッシング症候群を発症すると、全身に特徴的な症状が現れるため、検査でははじめに問診を行ないます。

また、コルチゾールが過剰に生成されているかどうかを確認するために、血液中や尿中に含まれるコルチゾールやACTHホルモンの値を測定するコルチゾール検査や尿検査を行ないます。

さらに確定診断を下すために、デキサメタゾン抑制試験、CT検査やMRI検査などの画像検査を行ないます。

問診

クッシング症候群を発症すると、顔がむくんで丸くなるムーンフェイスや肩に脂肪が蓄積される野牛肩といった特徴的な症状が現れます。
そのため、まずは問診で外見や体形の変化を確認します。
なお、野牛肩はバッファローハンプともいう症状です。

コルチゾール検査

コルチゾール検査とは血液検査の一種で、血液中に含まれるコルチゾールの量を測定します。

健康な場合、コルチゾールの値は午前中のみ高い数値を示し、その後低下しますが、クッシング症候群を発症している場合には午前中のみだけでなく1日中高い数値を示します。

また、クッシング症候群を発症している場合、コルチゾールの値だけでなく血糖値も高い数値を示し、カリウム濃度は低い数値を示すため、血糖値やカリウム濃度も測定します。

尿検査

クッシング症候群の発症原因となるコルチゾールは尿中にも含まれています。
そのため、コルチゾールが過剰に生成されていないか尿検査によって確認する場合があります。

デキサメタゾン抑制試験

デキサメタゾン抑制試験とは、クッシング症候群の確定診断を下すために行なう検査です。

デキサメタゾンとは、下垂体の働きを抑制する作用を持つ物質で、デキサメタゾンを服用することでコルチゾールの生成を抑制することができます。

検査の際は、検査前日の夜にデキサメタゾンを服用し、翌朝に血液検査によって血液中のコルチゾールの量を測定します。

クッシング症候群の発症原因が下垂体にある場合、こもデキサメタゾン抑制試験によってコルチゾールの値が下がりますが、下垂体以外に発症原因がある場合はコルチゾールの値が上昇します。

CT検査

CT検査とは放射線を使って体の内部を輪切り状に撮影し、臓器や組織の様子を確認することができる画像検査の一種です。

クッシング症候群におけるCT検査は確定診断を下すために行ない、クッシング症候群の発症原因となる下垂体や副腎、肺、膵臓、気管支、卵巣、甲状腺などの腫瘍の有無やサイズを確認します。

MRI検査

MRI検査とは、電磁波や磁力を使って体の内部を輪切り状に撮影し、臓器や組織の様子を確認することができる画像検査の一種です。

クッシング症候群におけるMRI検査は確定診断を下すために行ない、CT検査と同様にクッシング症候群の発症原因となる下垂体、副腎、肺、膵臓、気管支、卵巣、甲状腺などの腫瘍の有無やサイズを確認します。

クッシング症候群の治療

クッシング症候群は、下垂体や副腎、肺、膵臓、気管支、卵巣、甲状腺などに発生する腫瘍によって、副腎皮質ホルモンの一種でストレスホルモンでもあるコルチゾールが過剰に生成されることによって発症する病気です。

そのため治療では、基本的に外科手術によって発症原因となっている腫瘍を切除しますが、手術を行なうまで、あるいは手術による十分な効果が得られない場合には薬物療法を行ないます。

また、発症原因が下垂体に発症した腫瘍で、手術によって切除しきれなかった場合には、放射線療法を行ないます。

経鼻的下垂体摘出術

経鼻的下垂体摘出術とは、クッシング症候群の発症原因が脳の下垂体に発生した腫瘍である場合に行なう、外科手術の一種です。

経鼻的下垂体摘出術は経蝶形骨下垂体手術(けいちょうけいこつかすいたいしゅじゅつ)とも呼ばれ、手術の際は上唇の裏側の歯茎を2~3cmほど切開し、切開した部分から神経内視鏡や手術用顕微鏡を挿入して、下垂体に発生した腫瘍を切除し摘出します。

手術自体は2~3時間ほどで終了し、手術翌日から食事が再開でき、7~10日間ほど入院したあとに退院することができます。

経鼻的下垂体摘出術は脳に触れずに手術を行なうことができ、手術の際に頭部に傷が残らないというメリットがありますが、下垂体に発生している腫瘍のひろがり具合やサイズによっては完全に切除できない場合があるほか、手術は全身麻酔をほどこして行なうため、合併症を引き起こして全身麻酔をほどこせない場合には手術を行なうことができません。

また副作用として、手術の際に下垂体に発生した腫瘍と脳内の髄液(ずいえき)を隔てるくも膜を傷つけると、髄液が頭蓋骨(ずがいこつ)外へと漏れ出す髄液鼻漏(ずいえきびろう)を引き起こし、頭痛やめまい、吐き気、耳鳴り、聴力低下といった症状が現れる場合があります。

ほかにも手術の際に視神経を傷つけると視力障害(しりょくしょうがい)を引き起こし、下垂体後葉(かすいたいこうよう)を傷つけると喉が渇いて尿の量が増加する尿崩症(にょうほうしょう)を引き起こし、下垂体を傷つけると下垂体の機能そのものが衰えて副腎皮質ホルモンの生成量が減り、低血圧や脱力、無月経や勃起障害といった症状が現れる下垂体機能低下症(かすいたいきのうていかしょう)を引き起こします。

さらに術後は嗅覚(きゅうかく)が低下し、においを感じにくくなる場合があります。

経鼻的内視鏡下手術

経鼻的内視鏡下手術とは、クッシング症候群の発症原因が下垂体に発症した腫瘍である場合に行なう外科手術の一種です。

経鼻的内視鏡下手術は経鼻的経蝶形骨洞的腫瘍摘出術(けいびてきけいちょうけいこつどうてきしゅようてきしゅつじゅつ)とも呼ばれ、手術の際は鼻の穴から下垂体へと神経内視鏡や手術用顕微鏡など専用の機器を挿入し、下垂体に発生した腫瘍を切除し摘出します。

手術自体は2~3時間ほどで終了し、手術翌日から事が再開でき、7~10日間ほど入院したあとに退院することができます。

経鼻的内視鏡下手術は、経鼻的下垂体摘出術と同じく脳に触れずに手術を行なうことができ、手術の際に頭部に傷が残らないというメリットがありますが、下垂体に発生している腫瘍のひろがり具合やサイズによっては完全に切除できない場合があるほか、手術は全身麻酔をほどこして行なうため、合併症を引き起こして全身麻酔をほどこせない場合や高齢者には手術を行なうことができません。

また副作用として、手術の際に下垂体に発生した腫瘍と脳内の髄液を隔てるくも膜を傷つけると、髄液が頭蓋骨外へと漏れ出す髄液鼻漏を引き起こし、頭痛やめまい、吐き気、耳鳴り、聴力低下といった症状が現れる場合があります。

さらに嗅覚低下を引き起こしてにおいを感じにくくなるほか、視神経を傷つけることによって引き起こされる視覚障害、下垂体後葉を傷つけることによって引き起こされる喉の渇きや尿量の増加といった尿崩症、下垂体を傷つけることによって低血圧や脱力感、無月経、勃起障害などの症状が現れる下垂体機能低下症などの副作用が現れる場合もあります。

開頭手術

開頭手術とは、クッシング症候群の発症原因が下垂体に発生した腫瘍である場合に行なう外科手術の一種です。

下垂体に発生した腫瘍を切除し摘出する外科手術には、経鼻的下垂体摘出術や経鼻的内視鏡下手術などがありますが、下垂体に発生した腫瘍のサイズが大きく経鼻的な手術では腫瘍を切除しきれない場合に行ないます。

ただし、開頭手術は全身麻酔をほどこして行なうため、合併症を発症している方や高齢者の方には手術を行なうことができません。

開頭手術は術野がひろく確保できるため、手術の際に脳の血管や神経を直接目で確認しながら手術を行なえるというメリットがありますが、下垂体に発生した腫瘍のサイズやひろがり具合によっては完全に切除できない場合があるほか、手術の際に脳を圧迫して痙攣発作(けいれんほっさ)や脳障害を引き起こすリスクがあり、患者の体への負担が大きく術後は傷跡が残るというデメリットがあります。

実際に開頭手術を行なう際は右前頭側頭開頭術(うぜんとうそくとうかいとうじゅつ)を行ないます。

右前頭側頭開頭術とは、こめかみ部分から耳の中心部分の皮膚を髪の生え際に沿って切開し、頭蓋骨、脳を覆う硬膜(こうまく)の順に切開し、右側の前頭葉(ぜんとうよう)と側頭葉(そくとうよう)の隙間から手術用の顕微鏡を挿入し、下垂体に発生した腫瘍を切除して摘出します。

開頭手術には副作用があり、主に手術の際の出血、視力障害、尿崩症、下垂体機能低下症、感染症などをあげることができます。

腹腔鏡下副腎摘出術

腹腔鏡下副腎摘出術とは、クッシング症候群の発症原因が副腎に発生した腫瘍である場合や、放射線療法の効果が十分に得られない場合に行なう外科手術の一種です。

腹腔鏡下副腎摘出術では、腹部に3~5ヵ所ほど数mmの穴をあけ、その穴から内視鏡を挿入し、副腎に発生した腫瘍を切除し摘出します。
手術時間は2~3時間ほどですが、全身麻酔をほどこす時間も含めると3~5時間ほど要します。

腹腔鏡下副腎摘出術は2つある副腎のうち、腫瘍が発生している副腎を上にして、横たわった状態で手術を行ないますが、副腎を切除する範囲は腫瘍のサイズやひろがり具合によって異なり、片方の副腎すべてを摘出する片側副腎全摘(へんそくふくじんぜんてき)を行なう場合もあれば、両方の副腎すべてを摘出する両側副腎全摘(りょうそくふくじんぜんてき)を行なう場合もあります。

腹腔鏡下副腎摘出術は手術時間が短く、出血量が少いうえに手術の傷跡が小さいため、患者の体への負担が小さく、入院期間が短くて済むというメリットがあります。

その一方で、手術自体は全身麻酔をほどこして行うため、高齢者や合併症を引き起こしている方には手術が行なえないほか、開腹手術と比べて術野が狭いため、手術の際に出血した場合には対処が遅れやすいというデメリットがあります。

また、副作用として手術の際の出血、副腎周辺の臓器の損傷、感染症、副腎を摘出することによって低血圧や倦怠感(けんたいかん)、立ちくらみ、食欲不振(しょくよくふしん)、便秘(べんぴ)、集中力低下といった症状が現れる副腎皮質機能低下症(ふくじんひしつきのうていかしょう)を引き起こす場合があります。

さらに手術後は、副腎の機能が回復するまで半年から2年間ほど副腎皮質ホルモンの補充療法を行なう必要があり、両側副腎全摘を行なった場合には、一生涯にわたり副腎皮質ホルモンの補充療法を続ける必要があります。

副腎摘出術

副腎摘出術とは、クッシング症候群の発症原因が副腎に発生した腫瘍で、腫瘍のサイズが大きい場合や腫瘍の悪性が疑われる場合、腹腔鏡下副腎摘出術では安全に摘出できない場合に行なう外科手術の一種です。

副腎摘出術は全身麻酔をほどこしたあとに開腹して行ないますが、副腎を切除する範囲は腫瘍のサイズやひろがり具合によって異なり、腫瘍のサイズが大きい場合や、副腎の周囲の臓器も切除する場合には手術時間に10時間ほど要することがあります。

副腎摘出術は術野をひろく確保できるため、手術時の出血にも迅速に対処することができるというメリットがありますが、全身麻酔をほどこす必要があるため、高齢者や合併症を引き起こしている方に対しては手術が行なえないほか、術後は長期入院を要する場合があり、副腎の機能が回復するまで半年から2年ほど副腎皮質ホルモンの補充療法を行なう必要があります。

また、2つある副腎の両方を摘出した場合には、一生涯にわたって補充療法を続けなければいけません。

さらに副作用として、手術の際の出血、副腎周辺の臓器の損傷、感染症、副腎を摘出することによって低血圧や倦怠感、立ちくらみ、食欲不振、便秘、集中力低下といった症状が現れる副腎皮質機能低下症を引き起こす場合があります。

ミトタン(副腎皮質ホルモン合成阻害薬)

ミトタンとは、クッシング症候群の薬物療法に使用する副腎皮質ホルモン合成阻害薬(ふくじんひしつほるもんごうせいそがいやく)の一種です。

ミトタンは外科手術が行なえない方や、外科手術の効果が十分に得られない場合に使用しますが、ペントバルビタールやスピロノラクトンなどの薬物を服用中の方と重い外傷を負っている方に対しては使用することができません。

ミトタンはコルチゾールの合成を阻害する作用に優れた薬物ですが、クッシング症候群を完治させる効果はなく、あくまで症状を和らげる目的で使用します。

また、効果が現れるまでに数週間から数ヶ月を要するため、継続的に服用を行なわなければいけません。

さらに副作用として食欲不振や嘔吐(おうと)、悪心(おしん)、腹部の不快感といった消化器障害をはじめ、全身の倦怠感や腹痛、吐き気、嘔吐、皮膚や眼の白目部分が黄色くなる黄疸(おうだん)などの症状が現れる肝機能障害(かんきのうしょうがい)、コレステロール値の上昇、妄想(もうそう)や痴呆(ちほう)などの精神症状を引き起こす場合があります。

メチラポン(副腎皮質ホルモン合成阻害薬)

メチラポンとは、クッシング症候群の薬物療法に使用する副腎皮質ホルモン合成阻害薬の一種です。

メチラポンは外科手術を行なうことができえない方や、外科手術の効果を十分に得ることができない場合に使用しますが、副腎皮質機能不全を引き起こしている方や、メチラポンに対し過敏に反応する方に対しては使用することができません。

メチラポンは、ミトタンと同様にコルチゾールの合成を阻害することで症状を緩和させる効果がありますが、効果が現れるまでに数週間から数ヶ月を要するミトタンとは異なり即効性に優れているほか、遅くとも24時間以内に効果が現れるため緊急時に使用します。

ただし、肝硬変(かんこうへん)を患っている方は効果が現れるまでに時間を要するほか、授乳している方は服用中の授乳を中止する必要があります。

また、副作用として食欲不振や嘔吐、悪心、腹部の不快感といった消化器障害をはじめ、白血球(はっけっきゅう)や血小板(けっしょうばん)、好中球(こうちゅうきゅう)の量が減少する骨髄抑制(こつずいよくせい)を引き起こし、発熱や貧血(ひんけつ)、出血といった症状を引き起こすほか、めまい、頭痛や動悸(どうき)、嘔吐、吐き気、あくび、冷や汗といった低血圧症状、息苦しさ、脈の乱れ、意識消失、血圧低下といったショック症状を引き起こす場合があります。

トリロスタン(副腎皮質ホルモン合成阻害薬)

トリロスタンとは、クッシング症候群の薬物療法に使用する副腎皮質ホルモン合成阻害薬の一種です。

トリロスタンは外科手術が行なえない方や、外科手術の効果が十分に得られない場合に使用しますが、妊娠している方や妊娠の可能性がある方に対しては使用できません。

トリロスタンはミトタンと同じく、コルチゾールの合成を阻害することで症状を緩和させることができますが、ミトタンと比べて副作用のリスクが低いというメリットがあります。

ただし、効果はミトタンよりも弱いうえに、効果が現れるまでに数週間から数ヶ月を要します。

また、副作用として食欲不振や嘔吐、悪心、腹部の不快感といった消化器障害(しょうかきしょうがい)、吐き気、嘔吐、食欲不振、全身の倦怠感、腹痛、黄疸などの症状が現れる肝機能障害、関節痛(かんせつつう)などを引き起こす場合があります。

ガンマナイフ(定位放射線治療)

ガンマナイフは定位放射線治療(ていいほうしゃせんちりょう)とも呼ばれ、体のさまざまな部位に発生した腫瘍に対し放射線を照射することで、腫瘍を破壊することができる治療法です。

クッシング症候群の治療におけるガンマナイフは、発症原因となる下垂体に発生した腫瘍を外科手術によって摘出することができない場合や、腫瘍を外科手術によって完全に摘出できなかった場合に行ないます。

ただし、下垂体に発生した腫瘍が視神経に近い部位にある場合、ガンマナイフを使った放射線療法は行なえません。
ガンマナイフを使った放射線療法は、外科手術のような痛みや副作用が少ないという特徴がありますが、効果が得られるまでに1~5年ほどと長期を要します。

実際にガンマナイフを使った放射線療法を行なう際には3時間ほど照射し、2泊3日ほどの入院も必要です。

また、ガンマナイフを照射した際に下垂体を損傷すると下垂体機能低下症を引き起こし、低血圧や脱力感、無月経、勃起障害といった症状が現れる場合があります。

クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾールが過剰に生成されることによって発症する病気です。

下垂体や副腎などに発生した腫瘍が原因となってクッシング症候群を発症している場合、外科手術によって腫瘍を切除する必要があります。

下垂体はコルチゾールの生成量をコントロールするACTHホルモンを生成しているため、下垂体に発生した腫瘍を外科手術によって切除した場合には、ACTHホルモンの生成量が回復するまでに1~2年を要します。

また、副腎に発生した腫瘍を切除した場合、手術後は副腎皮質ホルモンを補充する治療を継続的に行なう必要があります。

さらに適切な治療を行なったとしても、治療後は免疫力の低下により感染症を引き起こしやすくなるため、日常生活においては風邪(かぜ)や肺炎(はいえん)などにかからないよう気をつけなければいけません。

下垂体や副腎に発生した腫瘍は放置すると徐々に大きくなり、腫瘍が大きくなるほど治療も難しくなるため、できるだけ初期段階で発見することが重要です。

そしてそのためにも日ごろから体調の変化に気をつけ、少しでも異変を感じた場合は放置することなくできるだけ早く医療機関を受診し、早期発見・早期治療に努めましょう。

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