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上腕骨顆上骨折を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2017/09/28 骨・関節の病気

大人と比較して、子どもに多い骨折の種類に上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっせつ)というものがあります。

肘の関節付近に上腕骨という骨がありますが、その部分に骨折が起こるとこの種類の骨折であると診断されます。
骨折は実際に骨を折った部位よって呼び名が変わります。

肘の関節は、肘の曲げ伸ばしが容易にできるように滑車のような構造をしており、この滑車の部分を上腕骨の顆上といいます。

この部分はほかの部位の骨に比べてやや弱く、外部からかかる力で傷つきやすいといわれています。
子どもにおける肘付近の骨折のうち、約60%がこの上腕骨顆上骨折です。

大人に比べると子どもの骨は強度も低く、さらにもともと骨が弱い部分であること、体をよく動かして遊ぶ機会が大人よりも多いことなどが子どもに多い骨折である理由です。
年齢では、5~10歳の子どもに多く見られる症状です。

屋外でサッカーや野球などの激しく体を動かす遊びに熱中しやすい男児のほうが、女児のよりも患者数が多いのも特徴で、割合は男児2に対し女児1となっています。

ただし、とくに運動をしない子どもでも、幼稚園や学校などでの体育の時間や、日常生活のなかで転んだ際などにも起こりやすい骨折なので注意が必要です。

子どもの肘付近に腫れが見られる、痛がるなどの場合は上腕骨顆上骨折を疑い、できるだけすみやかに病院での診察を受けましょう。

子どもにだけ起きるものではない

大人と比較すると子どもの患者のほうが多いですが、大人には起こらないというものではありません。

スポーツを楽しむ前には準備運動をしっかり行ない、無理な体勢で動いていないかなどもチェックしましょう。

上腕骨顆上骨折の原因

子どもの場合は幼稚園や学校での遊びや体育の時間に起こりやすいとされています。

鉄棒やうんてい、ダンスの授業、サッカーなどのスポーツ時、また転んだときに体を支えようと手をついた際にも起こりやすいようです。

大人の場合はスポーツ時や日常のなかでの転倒に加え、交通事故、高いところからの転落、労働災害や、近年はスノーボード中の事故によっても発生しています。

上腕骨顆上骨折の症状

上腕骨顆上骨折が起こると、見た目の変化では肘付近の腫れ、皮下出血、皮膚が青白色や紫色になるなどが挙げられます。

それに伴い激しい痛み、肘の曲げ伸ばしができないなどの運動障害、手指のしびれなどの症状があります。
基本的には骨折した部位に見られる炎症が主な症状となります。

上腕骨顆上骨折の型

上腕骨顆上骨折は症状の程度によって複数の型にわかれています。
もっとも重い症状と分類された場合、治療法として手術が選択されるケースもあります。

分類は症状の程度によって以下のようにわけられており、一般的に数字が低いほど軽い症状とされます。

症状の分類

Ⅰ型

転位(てんい)のない状態

Ⅱ型

骨折(こっぺん)の状態を断面図で見たとき、後ろ側にズレがある状態

Ⅲ型

中程度の転位と共に連続性のある骨片間(こっぺんかん)が確認できる

Ⅳ型

転位の状態が重いものの、骨片間には連続性が確認されないもの

骨折の基本用語

転位

転位とは、折れた骨がもとあるべき場所とは別のところにズレて移動してしまうことをいいます。

骨片

骨折をして1つの骨が複数にわかれた際の破片のことを骨片と言います。
骨片間とは骨片と骨片の間に空いた空間のことです。

骨片間

骨片と骨片の空間が広いほど骨片間の連続性があると表現します。

上腕骨顆上骨折の合併症

折れた骨での刺激や、ギプスでの固定がうまくいかなかった場合には、合併症が起こる可能性があります。

麻痺・循環障害(まひ・じゅんかんしょうがい)

折れた骨が橈骨(とうこつ)神経、正中(せいちゅう)神経、尺骨(しゃっこつ)神経などを刺激し、引っかかることで起こります。

麻痺の症状は大半が一過性のもので、数ヶ月で治癒するともいわれていますが、自己診断ではなく医師のアドバイス通りに治療を進めるのが良いでしょう。

急性前腕屈筋区画症候群

骨折での腫れが大きくひどい場合に、ギプスや包帯がきつ過ぎて固定の具合が良くない場合に起こりやすい合併症です。

腫れ上がった皮膚の逃げ場がなくなり、圧迫されることによって血行が悪くなります。

神経や筋肉が圧迫されて血行が悪くなるため、この状態が長く続くと阻血性壊死(そけつせいえし)や、フォルクマン拘縮(こうしゅく)といった後遺症に発展する恐れがあります。
どちらも体を動かす上で大切な筋肉が機能しなくなる状態なので危険です。

内反肘

肘が本来の場所ではなく、内側にズレた状態で固まってしまう状態です。

上腕骨顆上骨折ではもとの場所に骨を固定する治療が必要ですが、この治療がうまくいかないとこのような骨の変形が残ります。

間違った場所で固まった場合、もとの位置に戻るようなことはないので折れた骨の固定には専門の知識が必要になります。

上腕骨顆上骨折の検査

骨折の状態を把握するため、エックス線検査を行ないます。
骨のズレ方が大きい場合、骨だけではなく筋肉に損傷がないかを確認するためにもエックス線写真での診断が必要になります。

骨折の型によって適した治療法が異なるので、診断は慎重に、正確性を重視して進められます。

上腕骨顆上骨折の治療法

この骨折の治療法は、既に述べたように型の違いで多少違ってきます。
Ⅰ型の場合は骨のズレが少なく、比較的症状が軽いのでギプスでの適切な固定を3~4週間継続することで治癒します。

骨のズレの角度が10度以上の場合、ピンニング治療といって、骨を専用の器具で串刺し状態にして固定します。
Ⅱ型も比較的軽い症状であり、ズレた骨を正しい位置に固定するのも難しくないとされています。

ピンニング治療をほどこし、肘の関節を90度に保った状態で固定し、約4週間ほどで改善します。
Ⅲ型は重い症状であり、骨の損傷だけではなく、付近の組織や筋肉が傷ついている恐れがあります。

骨折そのものにはピンニング治療がほどこされますが、組織への後遺症が残らないように注意しながら治療を進めます。
腫れが著しい場合は牽引(けんいん)が実施される場合もあるでしょう。

骨折での牽引

牽引の治療は、患者がベッドに寝た状態で腕を釣り上げる方法のことをいい、垂直牽引法と呼ばれます。

もう一つ、直達(ちょくたつ)牽引法と呼ばれるものもありますが、こちらは尺骨にスクリューを入れて行なう方法です。

一般的にギプスなどでの固定期間は年齢が低いほど短いとされ、具体的には幼稚園児の場合で3週間、小学生の場合では4週間程度とされています。

上腕骨顆上骨折の治療はほとんどの場合、保存療法といって、ギプスや包帯での固定を主にしたものになり、手術はあまり行なわない傾向があります。

しかし症状が重篤な場合や、緊急を要する合併症がある場合には手術が選択されることもあります。

骨のズレかたが著しい場合や、もとの位置への固定がうまくいかなかった場合、手術の緊急性を要する壊死の症状が見られる場合に手術が検討されます。

子どもへの保存療法の試み

病院によって違いはありますが、子どもの上腕骨顆上骨折の治療においてできるだけ手術を行なわない方向で治療を進める場合があります。
ギプスや包帯での固定を主に治療を進める場合、注意したいのがよく動く子どもに安静を求めなければならない点です。

小さな子どもであればあるほどよく動くので、固定がうまくいかないことがあります。
このため、腕だけをギプスで固定するのではなく、上半身から腕までを大きく固定する治療法があります。

大げさなくらい大きく固定するので、患者である子ども自身はもちろん両親も驚き、不安になる場合も多いですが、できるだけ手術の選択を避けながらもとの位置に骨を固定するために編み出された方法です。

固定を試みて数日後には腫れが引き、ギプスのなかで余裕ができるとその余裕のぶんだけ骨がズレてくるので、最初のうちはこまめな通院が必要になるでしょう。

適切なケア・治療を進めれば、手術なしでも元通りに骨が固まり、後遺症などの心配をせずに済むようになります。

治療が進むにつれて上半身の固定は必要がなくなり、徐々に腕部分のみの固定に移行します。
ギプスを取り外したあとは、普段の動きに徐々に戻るためのリハビリを行ないます。

上腕骨顆上骨折が疑われる場合の応急処置

上腕から手にかけて、肘を90度に曲げた状態で、厚めのダンボールと木材を用いて動かないように固定します。
あくまでも応急処置なので、すみやかに病院で診断と治療を受けるようにしましょう。

治療後のリハビリテーション

固定期間が続いているあいだは腕や肘を動かすことができないため、その期間中に衰えた関節や筋肉を動かして可動域を改善していきます。

痛みがあるのに動かす必要はなく、痛みのない、無理のない状態で動かしていきます。
ギプスを外したあとにもし痛みがあるようであれば、そのままにせずに医師に相談してください。

ゆっくりと、焦らずに動かしていきましょう。
ここで無理な運動を行なうと、かえって筋肉を硬くする恐れがあります。

子どもの場合は無理のない範囲で、日常の生活や遊びの範囲内で進めることが多いでしょう。
日常生活が無理なく送れるところまできていれば、あとは時間が経つにつれて自然と回復していきます。

大人の上腕骨顆上骨折の場合は、可動域が狭くなりうまく動かせなくなる場合も多いといわれています。
こちらも少しでも気になる点があれば、そのままにせずに医師の判断を仰ぐようにしてください。

上腕骨外顆骨折(じょうわんこつがいかこっせつ)

上腕骨顆上骨折と同じくらいの頻度で起こるとされている骨折です。

肘の外側の骨が折れてズレるもので、こちらもズレかたが少ない場合には比較的治療が楽に済みますが、骨のズレが大きかったり、周囲の組織を傷つけている場合は固定が難しいとされています。

固定がうまくいかなかった場合、上腕骨顆上骨折の合併症としても危険視される尺骨神経麻痺(しゃっこつしんけいまひ)を起こす可能性があります。

子どもがこの骨折を起こした場合、治療法として手術が選択される割合が比較的高くなっているのが特徴です。

上腕骨外顆骨折での手術方法

骨のズレをしっかりと固定する治療を目的とします。

具体的には、医療用のワイヤー、プレート、スクリューなどを用い、肘の外側から、もしくは外側と内側の療法からの固定を試みます。
手術に加え、ギプスや包帯、シーネなどでの外固定も実施されます。

この固定は3~4週間にわたって実施されます。
症状が重く、牽引法などがとられていた場合には、入院にかかる日数も長くなります。

手術で内部からの固定を行なっているときは、骨が十分に固まったことを確認してから、プレートなどの部品が取り外される形になります。

患者が子どもの場合

子どもの場合は、できるだけ手術を行なわずに保存療法での治癒を選択する動きがあります。
大人と違い骨が成長段階であり、その後の成長で骨の少々のズレは治っていくと考えられるためです。

普段の生活で気をつけたいこと

子どものうちは骨が成長段階で大人より柔らかく、刺激が加われば折れやすいと考えられています。
よく遊び、よく動くなかで骨折を起こす確率はとても高いといえるかもしれません。

適切な治療でしっかりと治すことができるため、子どもが骨折しても慌てず、すみやかに医師のもとでの診察を受けましょう。

また、大人であっても起こりうる骨折なので、運動前には準備運動などを行ない、慣れない動作や激しい動きに注意しましょう。

自分で無理があると思ったら、運動を中止することも必要でしょう。
また、肘に違和感があればそのままにせず、医師の診察を受けることが必要です。

大人の場合は骨がズレた位置で固まるとそのままになってしまうことが多く、動かしにくいなどの後遺症が残る場合もあります。
将来の骨の痛みの原因になることもあるので、このくらいは大丈夫だろうと自己判断をせず、専門の知識を持った医師の治療を受けましょう。

大人にとっても子どもにとっても、日常生活のちょっとした動作や運動時の衝撃などで起こりやすい骨折は身近な問題といえるかもしれません。

肘の痛みや腫れにどんな意味があるか、このような骨折があるということを頭のなかに入れておくだけでも、その後の通院などを慌てずスムーズに行なえるようになるでしょう。

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