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二分脊椎を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2018/02/11 骨・関節の病気

二分脊椎とは

二分脊椎症(にぶんせきついしょう)は、先天的に脊椎が形成不全を起こしたことによる神経管閉鎖障害のことをいいます。
脊椎、つまり背骨は脊柱管という管になっていて、内部に脊髄が入っています。
この構造により、脊髄が守られる形になっています。

しかしながら、二分頚椎の場合はこの脊柱管がうまく管状に形成されず半開きになり、内部の脊髄が保護されないばかりか外に出てしまった状態になってしまいます。
本来は保護されるべきものが露出してしまっていることにより、ダメージを受けて神経障害を起こすのが、二分脊椎症です。

それにより、下半身の痛みや麻痺、排尿や排便がうまくいかないといった症状が現れます。また程度によっては、生後すぐの手術が必要となることもあります。
二分脊椎は、1万人あたり5人が発症するとされています。

二分脊椎の原因

二分脊椎は先天的な身体の形成不全ですので、母胎内にいるときに発生します。
原因としては、母親が抗てんかん薬や気分安定薬として用いられるバルプロ酸、ビタミンAを過剰摂取するなどといった、催奇形因子により誘発されることがわかっています。

また、成長に欠かせないビタミンBの一種である葉酸が不足した場合にも発症します。
そのほか、遺伝因子による発症も原因として考えられており、全体の20~30%といわれています。

第1子が二分脊椎症であった場合、第2子にも5%ほどの確率で発症することから、何らかの遺伝因子が関わっていると推察されています。

二分脊椎の症状

二分脊椎は、主に仙椎や腰椎など下半身に発症しますが、まれに胸椎や頚椎に発生することもあります。
発生した部位の神経がダメージを受けるため、発生部位から下の神経機能が麻痺することで運動機能と知覚に障害を生じます。

また、内臓の機能にも影響が出ます。
二分脊椎には、顕在性と潜在性の二種類があります。

顕在性二分脊椎症

顕在性の場合、脊柱の欠損部分から髄膜のみが飛び出している髄膜瘤と、神経組織もあわせえて出てしまっている脊髄髄膜瘤があります。
皮膚も欠損するために飛び出した部分は袋のような状態となって背中に露出してしまうので、外部から確認できます。
背中に不自然な膨らみがあるようにみえるのです。

この症状では、下肢の運動麻痺、感覚麻痺、排尿・排便障害を起こします。
また、露出部から髄液が漏れだすために脳脊髄液が減少してしまい、脳神経に重大な障害を引き起こす水頭症を合併します。水頭症の合併は、二分脊椎の半数以上とされています。

また、キアリ奇形という奇形が90%程度合併する可能性もあります。
これは、小脳や脳幹部を入れる後頭蓋窩の神経組織が、本来あるべき場所を逸脱して頚椎のなかに入ってしまう奇形です。

小脳扁桃や延髄がこの奇形になっている場合、脳肝機能障害による呼吸障害を起こすことがあります。

運動麻痺

脊椎のどの部位で発症したかにより症状が変わります。
多くの場合は下半身の麻痺になりますが、胸椎など脊椎の高い位置で発症すると、それより下の部分全体に麻痺が出ることがあるのです。

また、下半身の麻痺だけでも、足そのものが動かないケースや、股関節を少しだけ動かせるケース、運動は概ねできるものの足首や股関節の動きが少し阻害されるケース、ほとんど麻痺がないケースなど、多岐にわたります。

排尿・排泄障害

発症部位によっては、膀胱や直腸を支配する神経が麻痺を起こしてしまうので、感覚低下による膀胱直腸障害が起こり、自分で便意を感じ取ったり、排泄をしたりすることができなくなってしまいます。

膀胱の機能障害は、感覚障害のために意志に関係なく失禁してしまうケースや、尿の逆流などで膀胱に尿が大量に残るなどして腎盂腎炎などの尿路感染症を起こしやすくなります。

感染症だけでなく、日常生活に及ぼす影響が大きいので、注意が必要な症状となります。

足部変形

症状が出た部位により、足の形成不全が起こることがあります。
足裏や指が正常に形成されず、特に下垂足、凹足(おうそく)、鵞足(がそく)と呼ばれる状態になる頻度が高いようです。

下垂足は筋肉が麻痺したことでつま先を持ちあげられず垂れ下がってしまう状態です。
凹足は、筋肉バランスが悪く土踏まずが大きく凹んでしまう状態です。

鵞足は、指の付け根が盛り上がることで、足が曲がってしまう状態です。
いずれも、歩行に障害をきたすことがあります。

膝関節・股関節の変形

歩き始めたばかりの子はとりわけ、関節の変形が進みやすいケースが指摘されています。
股関節が広がったり内側に入ったりといった変形、X脚など膝のねじれなどが起きやすく、放置しておくと脱臼したり、歩けなくなる可能性があります。

その他の症状

重症時には、呼吸障害や嚥下困難による栄養障害、てんかんの併発、知的障害などのさまざまな症状が出てきます。
また、ラテックスアレルギーのリスクもあります。

これは、顕在性二分脊椎の場合は出生後にすみやかに手術を行なう必要があり、そのため手術用ゴム手袋などのラテックス製品に触れる機会が多くなることから、アレルギー症状を起こすというものです。

潜在性二分脊椎症

潜在性二分脊椎症の場合、飛び出した神経組織が皮膚に覆われているために外部から確認しづらく、神経障害が軽度であるために見逃されることが多く、成長期になるまで気づかないこともあります。

場合によっては神経が欠損していることもあり、それにより成長とともに脚の長さや足底の大きさが左右で異なるといった症状が現れることがあり、これにより二分脊椎症が判明するケースもあります。

潜在性二分脊椎症では、水頭症の合併は非常にまれです。
ただし、脂肪腫や脊椎渓流症候群を起こした場合には顕在性二分脊椎症と似た症状が現れやすく、皮膚洞という空洞がある場合はそこが細菌に感染して髄膜炎を起こすことがあります。

二分脊椎の検査

検査方法としては、新生児の奇形ですので羊水検査による出生前検査が選択されています。
羊水検査は、子宮内で胎児を包んでいる羊水を採取し、染色体異常や特定の酵素の有無を調べるものです。
これにより、胎児の奇形や特定な遺伝子疾患を出生前に調べることができます。

羊水検査の手順は、まずエコー(超音波検査)で胎児の発育や心拍数、羊水量や胎盤の位置を調べます。
胎児が健康であること、また羊水の採取の妨げにある位置にいないかを事前に確かめるのです。

異常がなければ、母体のおへその下辺りに細い針を刺して、羊水を採取します。
採取した羊水からAFP(アルファ-フェトプロテイン)という胎児に由来するタンパク質の量を測定することで、顕在性二分脊椎などの開放性神経系奇形の確率を知ることができます。

また、出生後の状態や外見での診断も行なわれます。
二分脊椎では、胎児期から麻痺があるケースでは出生時から下半身に整形外科的な異常が発生しています。足が内側に反る内反足や、下半身の関節が固まって動かない関節拘縮、股関節脱臼などです。

顕在性二分脊椎症では脊椎の中身が飛び出しているので外見でわかりますし、脊椎の形成不全が起こり、そのために仰向けに寝られないことがあります。

二分脊椎の治療・予防

顕在性二分脊椎症の治療

顕在性二分脊椎症では、露出部分の感染を予防するために無菌処置をしたうえで、脳神経外科か小児外科による外科手術で出生後24~48時間以内に開いている箇所を閉鎖します。

手術内容としては、体外に出てしまっている脊髄のクモ膜を剥離・切開して、もとの形に収まるように縫合して閉鎖するものです。
そのうえで、皮膚も縫い合わせて閉鎖していきます。

水頭症を起こしている場合は、脳内の髄液を抜いて腹部のなかに逃がすことで脳圧を正常にする脳室-腹腔シャント術、キアリ奇形で呼吸困難がある場合は頚椎の一部を切るなどして、小脳の位置を調整する後頭下減圧術を行ないます。

とくにキアリ奇形の場合、症状が重篤化する前の手術が推奨されています。
また、下半身の障害により排泄が難しくなるので、排尿のためのカテーテル挿入や、摘便や下剤など便秘への対策を行ないます。

手術後はリハビリを行ないます。
筋肉の働きや知覚の状態を測定し、足の変形の予測やリハビリのスケジュールを考案します。
可能な運動レベルに合わせ、また残された機能を活用できるように、リハビリを実施していきます。

排泄の障害がある場合には日常生活を送る上で大きな問題となりますので、その点に関する訓練やケアも行なわなければなりません。
また、下半身の関節に変形があるときには、装具をつけたりストレッチを行なったりといった予防措置をほどこします。

このように、症状によってアフターケアが必要な範囲が多岐にわたりますので、手術を行なった脳神経外科や小児外科、運動機能を診る整形外科やリハビリテーション科だけでなく、皮膚科や内科、眼科など幅広い分野による助けが必要となります。

さらに障害の程度によっては、治療だけでなく療育、教育や就職に対するフォローも求められるでしょう。

潜在性二分脊椎症の治療

潜在性二分脊椎症では、出生時に症状が出ることは少ないので、すぐに治療は行なわれません。
ただし、脊髄神経の異常があることもあるので、経過観察となります。

成長して検査しやすくなったところでMRI検査により脊髄神経の状態を見て、治療が必要であればほどこすようにします。
無処置でよいこともありますが、脂肪腫や脊髄係留がある場合には除去したり、皮膚洞を切除したりといった手術を行なうこともあります。

二分脊椎症の予防

子供の先天的な症状ですので、母親が予防のための行動を取らなければなりません。
予防方法としては、葉酸の摂取が有効といわれています。

葉酸は成長に欠かせないビタミンB群の一種で、これの不足が胎児の異常を引き起こすため、意識して摂取することで充分な葉酸を供給できるようにします。
女性が妊娠3ヶ月前から妊娠中にかけて継続して1日400マイクログラムの葉酸を摂取した場合、70%の発症を予防できることがわかっており、厚生労働省は妊娠可能年齢の女性全員が必要量の葉酸を摂取することを推奨しています。

ただし、これらあくまでリスクを減少させるだけであり、完全に発症を食い止めるようなものではありません。
米国などでは穀類に葉酸の添加が義務化され、その結果として発生率が50%ほど低下したというデータがあるようです。

日本では、食品への添加は難しいことから、女性に対して葉酸の役割を周知することでサプリメントを普及させる方向で予防を考えているようです。
しかしながら、妊娠の前から葉酸の摂取が必要なため、妊娠は必ずしも計画的なものではないことから、教育による周知では必ずしも葉酸摂取が理想的な状態で行なわれるとは限りません。

このように、女性が葉酸を摂取することが二分脊椎の予防に繋がることは確かですが、だからといって女性に対し責任を負わせるでもありません。
子供が二分脊椎症であっても、それは親の責任ではなく確率の問題にすぎませんし、周囲もそれを追求してはいけません。
葉酸を摂取したからといって二分脊椎を完全に防げるわけではないためです。

ただ、普段から葉酸摂取を心がけておくほうが良いことは確かで、70%の予防効果という数値は決して小さいものでありません。
妊娠を希望しているのであれば、葉酸サプリメントの摂取をおすすめします。

顕在性二分脊椎症の場合、出生時に発覚して緊急手術となりますが、もし羊水検査などで可能性があるとわかった場合は、こうした症状に対処できる体制の整った病院での受診が推奨されます。

この病気では、上に述べたように症状が多岐にわたり、また人によって程度が大きく異なってきますので、脳神経外科や小児科だけでなく、泌尿器科や整形外科、リハビリテーション科などで構成された医療チームによる包括的な対処が必要となるためです。
生まれた子供が適切な処置を受けられるように、考慮してあげてください。

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