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色素性乾皮症を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/12/28 皮膚

色素性乾皮症(しきそせいかんぴしょう)とは、紫外線を浴びることによって皮膚症状と神経症状を引き起こす先天性の遺伝子疾患です。

人間の肌は、紫外線を浴びると細胞にダメージが加わり、DNAが損傷してしまいます。
しかし、人間には修復機能が備わっており、損傷したDNAを修復することが可能です。

色素性乾皮症は、損傷したDNAの修復機能に障害があるためダメージを受けた細胞が修復されず、紫外線を浴びると皮膚が乾燥し、シミが出て、皮膚癌(ひふがん)を発症しやすくなるほか、2人に1人の割合で神経症状が引き起こされます。

また、少しの紫外線を浴びるだけでも激しい日焼けを引き起こしやすく、日焼けの症状が治まるまで1~2週間ほど要することがあります。

色素性乾皮症は遺伝子の異常によって発症する遺伝子疾患ですが、原因となる遺伝子によってA~G群、V群の8つのタイプに分類されます。

A~G群

A群、B群、C群、D群、E群、F群、G群の7タイプはDNAの修復機能のうちヌクレオチド除去修復の異常が原因とされるタイプです。
国内の色素性乾皮症患者のうち約55%はA群とされ、末梢神経障害や中枢神経障害が現れやすいとされています。

V群

国内の色素性乾皮症のうち約25%を占め、ダメージを受けたDNAの損傷部分を複製する機能の異常が原因とされるタイプです。

国内における色素性乾皮症の発症率は2.2万に1人とされ、国内でこの病気にかかっている人は300~600人ほどとされています。
発症リスクに男女差や人種の差はありませんが、欧米と比べると日本人の発症率は高いとされています。

また、色素性乾皮症は常染色体劣勢遺伝による遺伝子疾患であるため、両親のうちどちらかが色素性乾皮症である場合、25%の確率で子へと受け継がれます。

色素性乾皮症の根本的な治療法は未だ確立されておらず、皮膚を紫外線ダメージから守り、皮膚癌を予防する対策法をとるしかありません。

また、色素性乾皮症を発症した場合、色素性乾皮症ではない方と比べて皮膚癌の発症率が約2,000倍も高いとされており、3~6ヶ月ごとに皮膚科での定期健診が必要とされています。

色素性乾皮症を発症した場合の平均寿命は短く、皮膚癌や重度の神経症状を引き起こすA群タイプの色素性乾皮症患者の約70%は、20歳までに命を落としてしまっていました。

しかしながら、近年では皮膚癌の予防療法や神経症状の対症療法が進歩したことにより、平均寿命も30歳までに延びています。

また、神経症状があまり現れないV群タイプの色素性乾皮症の場合、皮膚癌の予防または早期発見・早期治療によって、A群タイプの平均寿命よりも長く生きることが可能です。

色素性乾皮症の原因

色素性乾皮症を発症する原因は、遺伝子の異状によるDNA修復機能の低下と、DNA損傷部位の複製機能の低下です。

DNA修復機能の低下

色素性乾皮症を発症する原因遺伝子8タイプのうち、A~G群の7タイプはDNA修復機能の低下によるものです。

22対の染色体で構成されている遺伝子のうち、A群は9番目、B群は2番目、C群は3番目、D群は19番目、E群は11番目、F群は16番目、G群は13番目に含まれています。

このA~G群は、紫外線などのダメージによって損傷したDNAを修復する、ヌクレオチド除去修復と呼ばれる過程で必要となるタンパク質を作り出す働きを担っています。

しかし、このA~G群に異常が発生することでDNA修復機能が低下し、色素性乾皮症を発症するとされています。

DNA損傷部位の複製機能の低下

色素性乾皮症を発症する原因遺伝子8タイプのうちの一つであるV群は、DNA損傷部位の複製機能の低下によるものです。
22対の染色体で構成させている遺伝子のうち、V群は6番目に含まれています。

V群は紫外線などのダメージによって損傷したDNAの複製に必要なタンパク質を作り出す働きを担っています。

しかし、このV群に異常が発生することでDNA損傷部位の複製機能が低下し、色素性乾皮症を発症するとされています。

遺伝子に異常がない場合、紫外線によるダメージによってDNAが損傷しても修復機能によって正常な状態へと戻ります。
しかし、この修復機能や複製機能を担う遺伝子に異常があるとDNAが正常に修復されず、皮膚に乾燥やシミといった症状が現れ、
さらに皮膚癌や神経症状といった色素性乾皮症の症状が現れるのです。

色素性乾皮症の症状

色素性乾皮症の症状は、主に皮膚症状と神経症状です。

皮膚の乾燥・萎縮

色素性乾皮症とは、もともと皮膚症状をもとに命名されており、紫外線を浴びることで皮膚が乾燥し、萎縮する場合があります。

皮膚が乾燥するとフケのような鱗屑(りんせつ)が現れるほか、水疱(すいほう)が現れる場合もあります。

ひどい日焼け

色素性乾皮症を発症した場合、少しの紫外線を浴びるだけでもひどい日焼けを引き起こす場合があります。

一般的な日焼けが紫外線を浴びたあと8~24時間後に最も肌が赤く腫れるのに対し、色素性乾皮症の場合は48~72時間後に最も肌が赤く腫れるため、色素性乾皮症であると気付かない場合があります。

また、紫外線を浴びることによって眼に異常が現れる場合があり、白目の充血が長期間続く場合や、角膜炎(かくまくえん)・角膜びらん(かくまくびらん)・角膜潰瘍(かくまくかいよう)などの症状を引き起こす場合もあります。

そばかすのような色素沈着

色素性乾皮症を発症すると、紫外線によるダメージの損傷が正常に修復されず、シミができやすくなります。

また、そばかすのような色素沈着を引き起こしやすく、そばかすよりも灰色から黒にかけての色幅が大きい色素沈着が現れます。

ほくろ

色素性乾皮症を発症すると、良性の腫瘍(しゅよう)であるほくろができやすいとされています。

脂漏性角化症(しろうせいかっかしょう)

色素性乾皮症を発症すると、皮膚の良性腫瘍である脂漏性角化症が現れる場合があります。

脂漏性角化症とはゴマ粒大のザラザラした粒で、皮膚の色から黒色までさまざまな色味の粒が現れます。

シミ、ほくろ、皮膚癌などと外見が似ていて、素人が見分けるのは困難です。

ケラトアカントーマ

ケラトアカントーマは良性ではなく悪性との中間に位置する腫瘍です。

成長スピードが速いという特徴があり、0.5cmほどのサイズの腫瘍が1ヶ月で1cmまで大きくなる場合もあります。

ただ、完全に悪性ではないことから必ずしも切除は必要なく、3~6ヶ月ほど経過すると白壊し、自然と消えることもあります。

基底細胞癌(きていさいぼうがん)
基底細胞癌は色素性乾皮症患者に最も多い皮膚癌です。
基底細胞癌は転移しないため、初期段階で治療すれば完治が見込めます。
基底細胞癌は光沢のあるゴマ粒のような形で現れます。

扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)

扁平上皮癌は皮膚癌の一種で、ゆっくりと成長していきます。
初期の段階は半球状に現れ、成長する扁平化して徐々に中央部分が潰瘍化するという特徴があります。

悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)

悪性黒色腫とはメラノーマという別名があり、皮膚癌のなかで最も悪性度が高く、初期の段階では扁平状の黒色病変として現れます。

歪な形をしており、病変のまわりは赤みを伴う場合や黒や褐色の染みが現れる場合があります。

神経症状

色素性乾皮症を発症する8タイプの遺伝子異常のうち、A群・B群・D群・G群の場合は皮膚症状に加え神経症状も現れます。

とくに日本人患者の約55%を占めるA群タイプは進行性の神経症状が現れます。
初期段階では抹消神経障害や聴神経障害が現れます。

症状が進行すると運動障害や知能障害、脳萎縮などが現れます。
神経症状は基本的に年齢によって現れる症状が異なります。

胎児期

母体に妊娠中毒症(にんしんちゅうどくしょう)や出血が現れ、胎児には胎動微弱などが現れます。

周産期

低出生体重や仮死、黄疸(おうだん)の症状や哺乳不良などの症状が現れます。

1歳頃までの乳児期

ひどい日焼け、歩行や発語の発達の遅れ、筋緊張の軽度低下などの症状が現れます。

1~6歳頃までの幼児期

言語発達の遅れ、歩行障害、四肢の深部腱反射の低下などが現れます。

6~9歳頃までの学童期前半

聴力低下、尖足・内反凹足(せんそく・ないはんおうそく)といった足の変形異常、脳萎縮、低身長、手足が細かく震える振戦(しんせん)、末梢神経伝達速度の異常などが現れます。

9~12歳頃までの学童期後半

皮膚癌、難聴(なんちょう)、知能障害、発声障害、発語減少、脳の活動低下、脳萎縮の進行などが現れます。

思春期以降

歩行障害が現れ、車椅子を使用するなど、日常生活において全面的な介助が必要になります。

色素性乾皮症の検査・診断

色素性乾皮症の検査は問診や視診、DNA検査を行ない、総合的に確定診断を行ないます。

問診

色素性乾皮症は先天性の遺伝子疾患であることから、家族に色素性乾皮症患者がいるかどうかを確認します。
また、症状が現れた時期や程度も確認します。

視診

色素性乾皮症を発症するとさまざまな皮膚症状が現れるため、皮膚症状の有無を確認します。
また、症状が進行すると神経症状も現れるため、神経症状の有無も確認します。

DNA検査

DNA検査は確実に確定診断を行なうことが可能な検査方法です。
色素性乾皮症を引き起こす原因となる遺伝子は解明されており、その遺伝子を保有しているかどうかを調べることで確定診断が行なえます。

出生前診断

色素性乾皮症のタイプのうち、A群の患者が妊娠した場合のみ、出生前診断を受けることができます。

色素性乾皮症は原因遺伝子を保有していると子へと受け継がれる確率が高いため、生まれてくる子どものケアのために出生前診断が行なわれています。

ただし、出生前診断を受けるには遺伝子カウンセリングを受ける必要があります。

色素性乾皮症の治療

色素性乾皮症は未だ根本的な治療が確立されていません。
皮膚症状に対しては皮膚癌の予防治療を行ない、皮膚癌を発症した場合は早期に切除手術を行ないます。

神経症状に対しては効果的な治療法がなく、現れる症状に合った対症療法を行ないますが、基本的にリハビリテーションを中心に行ないます。

学童期後半のリハビリテーション

色素性乾皮症患者は、9~12歳頃の学童期後半になると聴力低下や知能障害が徐々に進行し、日常生活において補聴器が必要となります。
また脳波活動が低下し、発語の減少や脳萎縮が現れます。

さらに抹消神経障害による筋緊張低下や筋緊張亢進が現れ、運動障害を引き起こします。
この時期は足変形も現れて歩行困難になる場合が多いとされていますが、外科手術を受けることで3~4年ほど歩行可能な期間を延長することが可能です。

さまざまな症状が現れ、徐々に日常生活にも支障が現れはじめる学童期後半ですが、手足のリハビリテーション運動などを行なうことで神経症状の進行を緩和させることができるとされています。

思春期以降の治療

色素性乾皮症患者は、思春期以降になると歩行が不可能となり車椅子生活となります。
また、知能障害が進行するとともに発語消失となるほか、嚥下障害(えんげしょうがい)が現れ食事が困難になります。

呼吸障害が現れると気管切開が必要となり、咽頭気管分離術を行なう場合もあります。
このように色素性乾皮症は根本的な治療方法がないため、基本的に対症療法を行なうことしかできません。

とくに皮膚症状に関しては、徹底的に紫外線を浴びないよう、日常生活で気を配ることが重要となります。
日常生活でできる予防法には以下のものが挙げられます。

日光以外からの紫外線にも注意する

紫外線は晴れの日だけでなく、曇りの日や雨の日も降り注いでおり、とくに雨上がりは空気中のゴミが減少するため紫外線の量が増加しやすく注意が必要です。

また、空から降り注ぐ紫外線以外にも、水や氷、雪やアスファルトの道路、コンクリートなどの建物からの反射によって紫外線を浴びる場合があるため、日陰にいても紫外線ケアを怠らないようにしましょう。

徹底した紫外線ケア

紫外線を浴びないためにということで、家のなかに閉じこもる生活を送っていると、神経症状を引き起こしやすいことが知られています。

ただ、外出するときには紫外線ケアを忘れずにしなければいけません。
外を歩く場合はなるべく日陰を選び、必ず日傘を使用してください。

また、日焼け止めクリームを必ず使用し、こまめに塗り直すことも忘れずに行ないましょう。
くちびるや口のなかの日焼けを予防するために、マスクを使用することも効果的です。

さらに手には手袋をはめ、目にはサングラスをかけ、首にはマフラーやストールを巻くなど、衣服で隠れない部分を徹底して紫外線から守るようにすることが大切です。

室内での紫外線ケア

室内照明に白熱灯の使用は問題ありませんが、蛍光灯を使用する場合は紫外線をさえぎるシェードやカバーを取り付けてください。
窓には紫外線をカットするフィルムを貼り、紫外線カット効果に優れたカーテンを使用しましょう。

また、窓は換気時に開ける程度にし、基本的には常に閉めておくため、エアコンを取り付けることは不可欠です。
テレビを視聴する際は画面から2m以上の距離をとり、メガネをかけて、長時間続けて視聴するのは避けます。

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