ブユ刺症の症状・原因・治療について
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最終更新日:2015/12/01
皮膚
夏には多くの虫が活発になりますが、そのひとつがブユです。
このブユに刺されると、さまざまな症状があらわれます。
ブユ刺症について、紹介していきましょう。
ブユとは
ブユは関東地方ではブヨ、関西地方ではブトなどとも呼ばれる虫でヤムラ虫と言われることもあります。
ブヨは人間を含むほ乳類の皮膚をかみちぎって血を吸う害虫のひとつで、蚊やアブと同様にメスが栄養補給のために血を吸います。
蚊は皮膚を刺して血を吸いますが、ブユはかみちぎるので蚊に刺されるより痛みが強いとされています。
ブヨは真冬以外は常に生息し、特に3月~9月に多く出没します。
夏場は気温が低めの朝に活発に活動して、日中は比較的おとなしく、夕方頃に再び活発となります。
小雨程度であれば活動できるため、雨が降っているからといって刺されることもあります。
自然豊かな場所を好むため、キャンプ場やゴルフ場、川付近、山中などでよく見られます。
成虫はおよそ3~5mmほどで、体は黒く丸みを帯びており、透明な羽をもちます。
春に羽化したのちに成虫になって交尾後に、水中や水辺で産卵します。
卵はおよそ10日で孵化して幼虫は渓流の岩、あるいは水草に付着して数週間で蛹となって羽化します。
幼虫はきれいな水質を好むため、住宅地などではあまり確認されません。
ブユ刺症の症状
ブユは人間の皮膚をかみちぎって血を吸いますが、あらかじめ麻酔成分を注入するため、噛みつかれた際に痛みをともなうことはありません。
ブヨは単独ではなく集団でおそってくることもあり、体中に症状があらわれることもあります。
ブヨに噛まれると肌にアレルギーの原因となる酵素毒が残ります。
この酵素毒はすぐに影響が及ぼされることはないため、痛みやかゆみといった症状は時間が経ってからあらわれます。
症状があらわれるのは数時間後が多く、強いかゆみが生じます。
ブヨに噛まれると小さな出血点が残って、多くの場合は血がにじみます。
噛まれたことによる症状が強く出ると、出血点が徐々に腫れて数倍に盛り上がることもあります。
悪化するとさらに体液がにじみ出して水ぶくれに変化する場合があります。
ここまで悪化すると発熱や頭痛などほかの症状があらわれることもあり、これは「遅延型反応」と呼ばれます。
ブユによる毒素は少量であればそれほど問題ありませんが、30カ所以上噛まれると命に関わります。
症状が強くあらわれている場合、あるいはたくさん噛まれた場合はできるだけ早く皮膚科を受診したほうがいいでしょう。
また、症状が長くつづく場合もあるので、注意が必要です。
うまく治らないと慢性痒疹になることもあり、たかが虫刺されと油断するのは危険です。
ブユ刺症の診断
人を刺す虫はたくさんいるため、虫刺されということはわかっても、どの虫に刺されて起きている症状なのかを診断するのは困難です。
蜂やムカデなどは刺された瞬間に強い痛みが生じるのでわかりやすいですが、ブユの場合は瞬間的な痛みなどはないため、余計わかりにくいのです。
そのため、医師は刺された箇所や状況、時間帯、場所などによって診断を行います。
原因となる虫が特定できれば、診断は容易です。
ブユ刺症の処置
ブユの酵素毒には強力なアレルゲン成分が含まれているため、症状を悪化させないためには噛まれたことを早く自覚することが大切となります。
しかし噛まれてから数時間~半日経った頃にかゆみなどの症状があらわれるため、対処療法がメインとなります。
もしも噛まれた直後に気づいた場合は、爪で傷口を挟んで、酵素毒を絞り出すのが効果的な対処方法となります。
効率よく毒を絞り出すのなら、ポイズンリムーバーが適しています。
これは注射器のような形をした器具で、清潔に毒素を取り除くことができます。
ドラッグストアや通販などで手に入るので、ブユなどの虫が多い場所に行くときにもっていると安心です。
ポイズンリムーバーでの処理は痛みがほとんどないので、子供が刺された場合にも最適です。
また、ブユがもつ酵素毒は蜂やムカデの毒素成分に近いもの、熱に弱いという特徴をもっています。
ブユに刺されたあとを見つけたら、すぐに酵素毒を絞り出して、清潔なぬれタオルで丁寧に患部を拭き取ります。
そして、患部を冷やさずに、温めるようにしましょう。
しかし、この処置はブユに刺された直後に気づいたときのみで、数時間~半日経ってから行うのはかえってよくありません。
この段階で温めると腫れが悪化する恐れがあるので、刺された直後、かゆみが出る前に行うようにしましょう。
肌の表面を43度以上でおよそ30分温めつづけると、ブユの抗毒素は変化して中和します。
シャワーがあれば43度以上のお湯を30分ほどかけつづけます。
出先でシャワーの利用がむずかしい場合は、使い捨てカイロや自動販売機のホットドリンクを患部に当てておくのがおすすめです。
刺された箇所が冷やすとかゆみが悪化するので、注意が必要です。
ブユに刺されると強いかゆみが生じますが、掻きむしらないようにすることも重要です。
かゆみが強いとついつい刺激を与えたくなりますが、傷跡が残るだけでなく結節性のしこりに変化してしまう恐れがあります。
子供はかゆみがあると無意識に掻きむしってしまうので、まわりの大人が気をつけてあげるようにしましょう。
どうしてもかいてしまう場合は、ガーゼなどでおおうなどして工夫します。
ブユに含まれる酵素毒は一般的なかゆみ止めでは抑制できません。
ブユに刺された場所はステロイド系外用薬、特に抗ヒスタミン成分を含むものが効果的です。
市販薬でもムカデや毛虫に効くものであれば改善が見込めるので、そういったものをもっておくのもいいでしょう。
ブユがもつ酵素毒はかゆみや痛みが強いため、たかが虫刺されと油断するのは危険です。
症状がいったんおさまったとしても、時間が経ってから再び症状がぶり返すこともあるため、気をつけなければいけません。
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