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放射線肺臓炎を詳しく:原因・症状・検査・治療など

公開日: : 最終更新日:2018/11/05 肺・気管支の病気

放射線肺臓炎とは

放射線肺臓炎(ほうしゃせんはいぞうえん)とは、肺・食道・乳房などの胸部に発生したガンの治療を目的に、放射線をあてることによって引き起こされる肺の炎症です。
ウイルスや細菌に感染することで起こる病気ではありません。

息を吸うと鼻や口からノド、気管、気管支を通過して、肺の内部にある小さな袋状の器官である肺胞(はいほう)まで空気が送り込まれます。
肺胞は肺全体に数億個存在する器官であり、1個の大きさは約0.2mmしかありません。

1個1個の肺胞は壁で仕切られていて、ほとんどすき間なく並んでおり、この仕切り壁のことを肺胞壁といいます。
そして肺胞と肺胞のあいだに存在するすき間のことを間質といい、ここには細い血管が張り巡らされています。

放射線肺臓炎はこの間質に炎症が生じ、最終的には壁が厚く硬くなってしまい、血液中に酸素が取り込まれにくくなる病気です。
炎症の程度や範囲は、照射した放射線の量、放射線を当てた範囲などによって違います。

炎症が生じた範囲が大きい場合には重篤(じゅうとく)な状態に陥り、命を落としてしまうことにもなりかねません。

主な症状として咳(せき)、息ぎれなどがありますが、とくに症状が出ないこともあります。
治療としては副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬(ステロイド薬)の投与などがあります。

放射線肺臓炎の原因

放射線肺臓炎は、肺ガン・食道ガン・乳ガンといった胸部に発生する悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の治療のため、放射線を当てることによって引き起こされる肺の炎症です。

放射線照射が主な原因ですが、リスクを高める要因として放射線治療での放射線量などがあるほか、化学療法薬や肺の持病をあげることができます。

放射線照射

胸部に直接あたる放射線の量が約40Gy以上では、放射線肺臓炎が起こるリスクが上昇します。

また、これまでに放射線の照射を受けた経験がある人や、前と同じところに放射線をあてた場合、放射線肺臓炎を起こすリスクはより上昇してしまいます。

さらに放射線のあたる肺の範囲が大きいことも、放射線肺臓炎のリスクを上げる要因のひとつです。

なお、放射線を照射する治療を行なっている最中から、この治療が終わったあと半年以内に引き起こされやすいといわれています。

化学療法薬

ガン治療では、放射線療法だけでなく化学療法薬を使った治療も行なわれています。

化学療法薬というのは抗ガン剤ともいい、この薬剤の併用によって放射線肺臓炎が引き起こされるリスクが上昇します。

とくに、放射線照射と化学療法薬の服用を同時に行なっていると、リスクはさらに高まります。

化学療法薬としては、メトトレキサート、シクロホスファミド、ビンクリスチン硫酸塩、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ブスルファンといった具合に、さまざまな種類をあげることができます。

肺の持病

慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)や肺線維症(はいせんいしょう)といった肺の病気を持っていると、放射線肺臓炎が引き起こされるリスクが上昇します。

慢性閉塞性肺疾患はCOPD(chronic obstructive pulmonary disease)ともいって、主に喫煙による有害物質の長期吸入によって引き起こされる病気です。

タバコの煙を吸うことで肺のなかの気管支に炎症が生じて、気管支が狭まることで空気の流れが悪くなります。

また、肺胞が破壊されることにより、酸素を取り込みや二酸化炭素の排出機能が落ちてしまいます。
主な症状として体を動かしたときに起こる息ぎれ、慢性の咳や痰(たん)をあげることができます。

肺線維症は肺胞・間質に炎症が生じ、線維化して、肺が硬くなって縮小するため、酸素と二酸化炭素の交換が困難になる病気です。

階段の昇り降り程度で息ぎれを起こし、ちょっとしたことで疲労を感じるようになったり、乾いた咳が出たりします。

さらに悪化すると安静にしていても息切れを感じるようになり、呼吸困難や皮膚や粘膜が青紫に変色する症状であるチアノーゼ、むくみの症状が出現するようになります。

また、指先が太くなり太鼓のばちに似た状態になるばち指の症状が起こることもあります。

放射線肺臓炎の症状

胸部に対する放射線照射によって引き起こされる放射線肺臓炎。
実際にかかった場合にはどのような種類の症状が、どのようにして起こるのでしょうか。
以下にまとめていますので、参考情報としてお役立ていただければ幸いです。

放射線肺臓炎の主な症状

放射線肺臓炎で引き起こされる症状としては、息ぎれ、咳、痰、発熱といったものをあげることができます。

発熱の症状は大したことがないケースが多いのですが、高熱が出てしまう場合もあります。

放射線肺臓炎の症状の出かた

息ぎれ、咳、熱が上がるなどの症状で発症しますが、とくに症状がないケースもあります。

放射線肺臓炎は放射線療法を受けている最中から、終わって半年以内に起こりやすいといわれています。

症状はゆっくりと進行していくことが多いのですが、放射線をあてた部位と離れた場所に起こるケースでは、急速に進行することがあります。

放射線肺臓炎の検査・診断

放射線療法を行なっている最中や、放射線療法を終えたあとに息ぎれ、咳、発熱といった症状が起こった人は、すぐに主治医に診てもらいましょう。

この病気かどうかを判断するためには、以下のようなことが行なわれています。

画像診断

胸部X線検査や胸部CT検査などによる画像検査があります。

放射線療法が行なわれたあと、画像検査で描出された画像をみて、放射線を照射した部位と一致した部位に、肺の構造とは関係のない直線的な影が出現しているのが確認されることにより、放射線肺臓炎を起こしていると判断されます。

なお、放射線をあてた部位以外に影が出現していたり、肺の容積が小さくなっていたりするのが確認されることもあります。

そのほかの検査

放射線肺臓炎の診断では、似たような肺の影を示す別の病気と区別することも重要です。

そのために前述した画像検査だけでなく、本人に起こっている症状を確認するのはもちろんのこと、血液や呼吸の能力の検査などが行なわれています。

放射線肺臓炎の治療

医療機関で行なわれている放射線肺臓炎の治療方法には、何があるのでしょうか。
この点に関してですが、主な方法は下記のとおりです。

経過観察・対症療法

原因が原因なだけに、必ず何か特別な治療が必要になるのではないかと思っている人は少なくないでしょう。
しかし、とくに症状がない放射線肺臓炎や、軽症の放射線肺臓炎の場合には、経過観察と対症療法だけで自然によくなる見込みがあります。

ただし、無症状や軽症の場合以外では、薬剤を使用する治療などが必要になってきます。
さらに重症の放射線肺臓炎では、呼吸を補う治療も受けなければいけなくなることもあります。

副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)・免疫抑制薬

息ぎれ、咳といった症状が進行する人に対しては、副腎皮質ホルモン薬(ステロイド)薬の投与が行なわれています。

薬の種類としては、メチルプレドニゾロンやプレドニゾロンといったものをあげることができます。
そのほか、免疫抑制薬を投与するケースもあります。

放射線肺臓炎に対して使用されている免疫抑制薬の種類としてはアザチオプリンなどをあげることができます。

副腎皮質ホルモン薬のプレドニゾロンを投与した場合には、徐々に薬を減らしていくことが多く、その過程で放射線肺臓炎が再燃してしまうリスクがあります。

酸素投与・人工呼吸器

呼吸の能力が低下することによって、十分な量の酸素を臓器に供給できなくなる状態を呼吸不全(こきゅうふぜん)といいます。

重い放射線肺臓炎で起こる呼吸不全に対しては、酸素の投与を行なったり、人工呼吸器を装着したりしなければいけなくなることがあります。

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