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びまん性汎細気管支炎(DPB)を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2018/08/21 肺・気管支の病気

びまん性汎細気管支炎(DPB)とは

びまん性汎細気管支炎(びまんせいはんさいきかんしえん)とは、肺へと繋がっている細長い管の気道と、肺の末端にある小さい袋状の組織である肺胞(はいほう)の境界にあたる呼吸細気管支(こきゅうさいきかんし)を中心に、慢性の炎症が生じる難治性(なんじせい)の呼吸の病気であり、DPB(Diffuse panbronchiolitis)という病名でよばれていることもあります。

びまん性汎細気管支炎のびまん性は肺全体の大きな範囲に引き起こされるために付いている言葉で、汎は気管支腔内(くうない)・気管支壁内(へきない)・気管支壁の周囲に炎症が生じるために付いている言葉です。

長引く咳(せき)と痰(たん)が多く出て、体を動かしたときに起こる息切れが主症状であり、80%以上の人が慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)を併発しています。

有効な治療法はあるものの、びまん性汎細気管支炎をほうっておくと呼吸不全(こきゅうふぜん)を招いてしまう恐れがあるため、早期に医療機関へ行くことが重要です。
また、びまん性汎細気管支炎は欧米ではほとんどなく、日本をはじめ東アジアで多発している病気です。

このことにより、人種特異性や遺伝的要因が関わっていると考えられていますが、詳しい原因ははっきりしていないのが現状であり、環境因子と遺伝因子が共に影響して引き起こされるという見方がされています。

近年、日本国内での罹患者は少なくなってきており、推定で10,000~15,000人がびまん性汎細気管支炎にかかっているとされています。
また、男性に比べて女性が圧倒的に多い、女性に比べて男性が圧倒的に多いというような、性別による罹患者の割合には違いがほぼなく、10~70歳までの幅広い年齢層に引き起こされる病気ですが、とくに40~50歳代の人が高い割合を占めています。

なお、呼吸器系の病気というと、タバコが原因として含まれていると思う人は少なくないでしょうが、びまん性汎細気管支炎とタバコを吸うことはとくに関わりはありません。

びまん性汎細気管支炎(DPB)の原因

この病気の原因は解明されているのか?

以前、実施されたびまん性汎細気管支炎の実態調査の結果、日本をはじめとする東アジア地域に罹患者が多く、欧米ではほとんどいないということがわかりました。
このことから、びまん性汎細気管支炎には人種特異性があるのではないかということになりました。

また、日本人では遺伝子のHLA-B54を保有する人が多いことも知られています。
ただ、日本と韓国が一緒に調査をしたところ、韓国人の患者ではHLA-B54を保有している人が少なく、HLA-A11を保有している人が多いことがわかりました。

すると、この2種類の遺伝子もびまん性汎細気管支炎の感受性遺伝子(遺伝因子と環境因子が重なって引き起こされる病気に関与する遺伝子)ではなく、別に原因となる遺伝子があるのではないかということになり、遺伝性の背景がある病気としてさらなる調査が進められています。

ただ、人種特異性や遺伝的要因に関しては、上記のような見解が示されているということであり、この病気が引き起こされてしまう本当の原因は、現状において明確になっていません。

この病気と慢性副鼻腔炎の関わり

びまん性汎細気管支炎にかかっている人の80%以上が、慢性副鼻腔炎にかかっています。
先行するのは慢性副鼻腔炎のほうであり、小児期~青年期に慢性副鼻腔炎にかかり、中年になってびまん性汎細気管支炎が引き起こされるといわれています。

慢性副鼻腔炎は副鼻腔といって、鼻の横(頬付近)にある上顎洞(じょうがくどう)、目頭の内側にある篩骨洞(しこつどう)、眉間から眉上にある前頭洞(ぜんとうどう)、篩骨洞のより奥深くにある蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)の計4個・左右一対の空洞があります。

この空洞のどこかに膿が貯留するのが副鼻腔炎であり、膿が喉(のど)から肺へと入り込むことでびまん性汎細気管支炎を起こすのではないかと考えられていましたが、いまは副鼻腔と気管支の粘膜の両方に起こり得る防御能力の異常によって引き起こされるという見方がされるようになっています。

びまん性汎細気管支炎(DPB)の症状

この病気によって出現する症状とは何か?

長引く咳や痰、労作時(ろうさじ)に起こる息切れが起こります。
労作時の息切れというのは、階段を上るなど体を動かしたときに起こる息切れのことをいいます。
病状が悪化すると痰の出る量が多くなり、安静時にも息切れを起こすようになって、呼吸不全を招くこともあります。

咳は気管支が狭まり空気が通りにくくなる気道閉塞(きどうへいそく)や、気道の細菌感染を伴うことでしつこく持続し、体を動かすと息切れを起こして、病状の悪化と共に呼吸困難が起こるようになります。

また、痰の症状は初期は多くないものの、細菌感染を伴うことによって多くなり、1日あたり200~300ml出ることもあります。
さらに細菌感染によって痰は黄~緑色の膿性(のうせい)に変わります。

慢性副鼻腔炎を合併している場合の症状

びまん性汎細気管支炎を引き起こす80%以上の人が、慢性副鼻腔炎を患っています。
副鼻腔に細菌などが入り込んで炎症が生じ、鼻水や鼻づまりなどの不快症状が繰り返される病気を副鼻腔炎といい、この病気には急性副鼻腔炎(きゅうせいふくびくうえん)と慢性副鼻腔炎があります。

急性副鼻腔炎では濃い鼻水や発熱の症状が出るなどして、痛みが増し、目の付近にある空洞で起こった場合には視覚異常を招くこともあります。

この急性副鼻腔炎をほうっておくと慢性副鼻腔炎へと移行してしまいます。
慢性化することによって出現する症状としては、膿性の鼻水、鼻づまり、ニオイがわかりにくくなる嗅覚低下(きゅうかくていか)、鼻のなかに不快なニオイを感じる、喉に鼻水が流れていく後鼻漏(こうびろう)、後鼻漏による咳や痰、頭が重いなどをあげることができます。
なお、急性副鼻腔炎とは違って、慢性副鼻腔炎では痛みはほぼありません。

びまん性汎細気管支炎(DPB)の検査・診断

この病気の受診に適した診療科

びまん性汎細気管支炎にあてはまるような症状、たとえば長引く咳や膿性の痰の症状がある、慢性副鼻腔炎にかかっている人は、この病気が引き起こされている疑いがあります。

びまん性汎細気管支炎に対して効果のある治療法はありますが、ほうっておいてしまうと呼吸不全を招いてしまうリスクがあるため、症状がある人は早期に医療機関へ行きましょう。

ただ、その場合に何科に行けばいいのかが、気になる人もいるのではないでしょうか。
びまん性汎細気管支炎の受診に適した診療科としては、呼吸器科をあげることができます。

この病気かどうかをどうやって調べるか?

画像検査、呼吸機能検査、喀痰(かくたん)検査、血液検査のほか、タバコを吸っているか、慢性副鼻腔炎にかかっているかどうかが質問されます。

画像検査としては胸のX線(レントゲン)やCT写真を撮影し、左右の肺全体にひろがる小さい粒状の影が描出されるかどうかや、気管支壁の肥厚(ひこう)、気管支の拡張、肺の過膨張を確認します。
呼吸機能検査では空気が通る気道・気管支が狭まり、素早く息を吐き出せなくなる異常を、喀痰検査ではインフルエンザ桿菌(かんきん)、肺炎球菌(はいえんきゅうきん)、悪化している場合は緑膿菌(りょくのうきん)といった感染を起こしている細菌を知ることが可能です。

血液検査では白血球数の増加、赤血球が試験管のなかで沈んでいく速さであり、炎症が生じる病気の有無や程度が確認できる赤沈(せきちん)、炎症や組織細胞が壊れると血液中に流出して増加するタンパク質のCRP、寒冷状態で血球・細菌を凝集させ、温めるとほぐれる抗体の寒冷凝集素(かんれいぎょうしゅうそ)を検出する寒冷凝集反応が高い数値を示します。
また、HLAがB54を表すことも珍しくありません。

症状やこうした検査によってびまん性汎細気管支炎の診断を行ないますが、気管支喘息(きかんしぜんそく)、慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)=COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)、気管支拡張症(きかんしかくちょうしょう)、原発性線毛機能不全症候群(げんぱつせいせんもうきのうふぜんしょうこうぐん)、閉塞性細気管支炎(へいそくせいさいきかんしえん)などは、びまん性汎細気管支炎と見分けるべき病気としてあげることができます。

びまん性汎細気管支炎(DPB)の治療

抗生物質の少量長期投与

抗生物質の投与は、びまん性汎細気管支炎が早期であるほど高い効果が期待できます。
まずはエリスロマイシンを少量長期使用し、効果がなければロキシスロマイシン、クラリスロマイシンといった14員環系(いんかんけい)マクロライドの使用が効果を発揮することがあります。

こういった抗生物質は、気道の炎症の改善効果を狙って投与されています。
なお、エリスロマイシンの投与を行なう方法が確立されたことを機に、90%以上の5年生存率が期待できるようになっています。

咳や痰・気道感染に対する治療

咳や痰、空気の通り道の狭まりに対しては、去痰薬(きょたんやく)の使用のほか、ネブライザーなどの吸入、ベータ刺激薬、キサンチン製剤などの気管支拡張薬を使った治療が行なわれます。

痰が大量に出ている人に対しては、体位ドレナージといって体勢を変えることで痰を出しやすくする方法や、痰の排出を介助する器具を使用することで痰を出しやすくする方法などが効果的です。
また、気道感染に対しては、ベータラクタム系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌薬、抗緑膿菌抗菌薬などが使われています。

増悪(ぞうあく)の予防・呼吸不全に対する治療

増悪というのは病気の症状が悪化することを意味しますが、この問題を防ぐためには栄養状態をよくしたり、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種を受けることも重要です。

細菌感染が原因での増悪に関しては、原因菌に効果を発揮する抗菌薬の投与を行ないます。
病気が悪化したときの呼吸不全に対しては、在宅酸素療法が選択されます。
在宅酸素療法は家庭に酸素供給機を設置し、酸素吸入を行なう治療法です。

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