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膀胱がんを詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2018/04/24 膀胱・尿道の病気, がん

膀胱がんとは

膀胱がん(ぼうこうがん)とは、膀胱の粘膜に発生するがん、いわゆる悪性腫瘍(あくせいしゅよう)のことです。
そもそも膀胱とは、骨盤の内側に位置する臓器のひとつであり、袋状の形をしています。

膀胱には、腎臓でつくられた尿が腎盂(じんう)から尿管を通過後、一時的に貯蓄するという重要な役割を担っているため、膀胱には一時的に貯蓄した尿が漏れださないようにため続ける貯蓄機能と、ある程度の尿がたまると尿意を感じて排尿を促す排尿機能が備わっています。

この袋状をした膀胱の内側は、尿路上皮(にょうろじょうひ)という粘膜細胞で覆われており、尿路上皮の細胞が何らかの原因によって悪性腫瘍化することで膀胱がんが発生します。

尿路上皮は膀胱の内側だけでなく、腎盂や尿管にも存在し、膀胱や腎盂、尿管の尿路上皮に発生するがんを尿路上皮がん(にょうろじょうひがん)と言いますが、膀胱がんは尿路上皮がんの中で最も発生率が高く、全体の半数以上を占めています。

膀胱の内側を覆う粘膜細胞の尿路上皮にがんが発生する膀胱がんは、がん細胞のひろがり具合を示す浸潤度合いによって筋層非浸潤性膀胱がん(きんそうひしんじゅんせいぼうこうがん)、筋層浸潤性膀胱がん(きんそうしんじゅんせいぼうこうがん)、転移性膀胱がん(てんいせいぼうこうがん)の3種類に分類されています。

筋層非浸潤性膀胱がん

筋層非浸潤性膀胱がんとは、尿路上皮に発生したがんの細胞が尿路上皮内にとどまり、膀胱の筋層には浸潤していないタイプで、さらに表在性がん(ひょうざいせいがん)と上皮内がん(じょうひないがん)の2種類に細かく分類されています。

表在性がんとは、がん細胞が膀胱の内側へと突き出たタイプで、病変部分がイソギンチャクやカリフラワーのようにブツブツと盛り上がっていることから乳頭がん(にゅうとうがん)ともよばれています。

表在性がんは基本的に悪性度が低く、筋層へと浸潤しませんが、まれに悪性度が高く筋層へと浸潤する場合もあります。
上皮内がんとは、表在性がんのように膀胱の内側へと突き出さず、上皮のみががん化しているタイプです。

膀胱がんの上皮内がんは、ほかの臓器の上皮内がんと比べて悪性度が高いうえに進行が早く、初期段階で適切な治療をほどこさなければ筋層へと浸潤するほか、ほかの臓器へと転移するリスクがあります。

筋層浸潤性膀胱がん

筋層浸潤性膀胱がんとは、尿路上皮に発生したがんの細胞が、尿路上皮の外側の筋層まで浸潤したタイプです。

筋層浸潤性膀胱がんは浸潤性が高いタイプであり、筋層へと浸潤したがん細胞が膀胱壁を越えてさらに外側へと浸潤する場合や、肺やリンパ節などへ転移するリスクがあります。

転移性膀胱がん

転移性膀胱がんとは、膀胱に発生したがんが肺やリンパ節、肝臓、骨など、ほかの臓器へ転移しているタイプです。

膀胱がんは1万人に1人の確率で発症しますが、女性よりも男性の発症率が約2~3倍も高いという特徴があります。
また、若年での発症はまれであり、主に40歳以上、とりわけ60歳以上の発症率が高いという特徴もあります。

膀胱がんは、膀胱の内側を覆う尿路上皮の粘膜細胞ががん化することで発症しますが、粘膜細胞をがん化させる原因には喫煙をはじめ、化学物質との慢性的な接触、感染症、薬物療法や放射線療法、カフェインの過剰摂取などをあげることができます。

実際に膀胱がんを発症すると、血尿(けつにょう)や膀胱刺激症状、背部痛(はいぶつう)や腎機能低下といった症状が現れます。
血尿は尿に血液が混じっていることが肉眼で確認できるものの、痛みを伴わない無症候性肉眼的血尿(むしょうこうせいにくがんてきけつにょう)とよばれる症状が現れます。
膀胱刺激症状とは頻尿(ひんにょう)や排尿時の痛み、残尿感といった症状のことで、約20~30%の方に現れます。
膀胱がんが進行した場合には、がん細胞の浸潤により尿管口が塞がれ、腎臓が腫れる水腎症(すいじんしょう)を引き起こして、背部痛や腎機能低下といった症状が現れます。

膀胱がんは血尿という自覚できる症状や健康診断によって発見される場合が多いですが、確定診断を下すとともに重症度を確認するためにはさまざまな検査を行ないます。

基本的に膀胱鏡とよばれる内視鏡を使った膀胱鏡検査によって確定診断を下すことができますが、そのほかにも腫瘍マーカー検査や尿検査、尿細胞診検査、超音波検査、CT検査、MRI検査、CT尿路検査、経静脈性腎盂造影検査、骨シンチグラフィ、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)などを行ない、総合的に発症の有無や重症度を確認します。

検査によって確定診断が下ると、症状の度合いによって病期(ステージ)を0期~Ⅳ期の5段階に分類し、治療法の選択の参考にします。
膀胱がんの治療は、病期(ステージ)によって最適な治療法を選択します。

膀胱がんが膀胱の筋層まで浸潤していない筋層非浸潤性膀胱がんの場合には、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)と抗悪性腫瘍薬や抗がん剤などを使った膀胱内注入療法を行ない、筋層浸潤性膀胱がんの場合には開腹手術によって膀胱を摘出するほか、尿路変向術なども行ないます。

このほかにも膀胱がんの治療には膀胱温存療法や放射線療法、CMV療法、GC療法、MVAC療法なさまざまな治療法があり、患者の年齢や症状に合った最適な治療法を選択します。

膀胱がんの原因

膀胱がんとは、膀胱の内側を覆う尿路上皮の粘膜細胞が、何らかの原因によってがん化することで発症します。
この尿路上皮の粘膜細胞ががん化する原因としては、喫煙をはじめ化学物質との慢性的な接触、感染症、薬物療法や放射線療法、カフェインの過剰摂取などをあげることができます。

喫煙

膀胱がんの発症原因として最も多いとされているのが喫煙です。
喫煙者は非喫煙者と比べて膀胱がんの発症率が約2~4倍も高く、実際に膀胱がんを発症した方のうち男性の50%以上、女性の30%以上は喫煙が発症原因であるというデータがあります。

化学物質との慢性的な接触

膀胱がんに限らず、がんの中には環境が発症原因となる場合があります。
膀胱がんも発症原因のひとつに環境要因があげられ、アミノビフェニルやナフチラミン、ベンジジンといった化学薬品との慢性的な接触によって膀胱がんを発症する場合があります。
こういった化学薬品はゴムや皮革、染色などの染料として使用される場合が多く、皮革職人や西陣織職人、美容師といった職業に就いている方は発症リスクが高いとされています。

感染症

膀胱がんの発症原因のひとつとして、感染症をあげることができます。
日本国内では、感染症によって膀胱がんを発症することはまずありませんが、ナイル川流域に生息するヒルハルツ住血吸虫に感染すると膀胱がんを発症する場合があります。

このビルハルツ住血吸虫に感染することで発症するビルハルツ住血吸虫症(びるはるつじゅうけつきゅうちゅうしょう)は、ナイル川流域の風土病でもあり、ナイル川流域のエジプトをはじめとする発展途上国では感染率が高く、それに伴い膀胱がんの発症率も高いというデータがあります。

薬物療法や放射線療法

膀胱がんは、病気の治療のために行なう薬物療法や、放射線療法が発症原因となる場合があります。
薬物療法の場合、鎮痛剤の一種であるフェナセチンや抗がん剤の一種であるシクロフォスファミドを使用することで膀胱がんを発症することがあります。

また、放射線療法はがん治療によく用いられる治療法ですが、骨盤内の臓器に発生したがんの治療のために放射線療法を行なうと、膀胱が被ばくすることで膀胱がんを発症する場合があります。

カフェインの過剰摂取

膀胱がんは、カフェインを過剰摂取することで発症する場合があります。
カフェインには体の細胞周期を乱す作用があり、カフェインを過剰摂取することで、膀胱の内側を覆う尿路上皮の粘膜細胞ががん化し、膀胱がんを発症すると考えられています。
そのため、カフェインを多く含むコーヒーを日ごろからよく飲む人は膀胱がんを発症するリスクが高く、実際にコーヒーを1日1杯以上飲む方は、まったく飲まない方と比べて発症率が約2倍も高いというデータもあります。

膀胱がんの症状

膀胱がんを発症すると初期段階で約80%の方に血尿の症状が現れるほか、約20~30%の方に膀胱刺激症状が現れます。
また、症状が進行すると水腎症による背部痛や腎機能低下といった症状が現れます。

血尿

血尿とは尿の中に血液が混じった状態のことです。
血尿には、尿が赤く変色し尿の中に血液が混ざっていることを肉眼で確認することができる肉眼的血尿(にくがんてきけつにょう)と、見た目は普通の尿の色をしているものの、顕微鏡などで詳しく観察すると血液が混じっていることを確認することができる顕微的血尿(けんびてきけつにょう)の2種類があります。

膀胱がんを発症すると、約80%の方に肉眼的血尿の症状が出現しますが、痛みを伴わないことから無症候性肉眼的血尿ともよばれています。

膀胱刺激症状

膀胱がんを発症すると、約20~30%の方に膀胱刺激症状が現れます。
膀胱刺激症状とは、頻尿や排尿時の痛み、残尿感、下腹部の痛みといった膀胱炎(ぼうこうえん)に似た症状が現れることです。

膀胱刺激症状は、筋層浸潤性膀胱がんを発症した場合によく出現する症状で、膀胱炎が原因である場合には抗生物質の服用で改善するのに対し、膀胱がんが原因である場合には、抗生物質を服用しても改善しないという特徴があります。

背部痛や腎機能低下

膀胱がんが進行すると、がん細胞の浸潤が拡大して尿管口を塞ぐ場合があります。
尿管口が塞がれると尿が正常に流れなくなり、腎臓が腫れて尿管が拡張する水腎症を引き起こします。

水腎症を引き起こすと、腎臓そのものが正常に機能しなくなるために腎機能障害を引き起こすほか、背中から腰にかけて鈍い痛みを感じる背部痛も現れます。
さらに進行すると、排便異常や直腸からの出血、子宮からの出血、体重減少といった症状も出現します。

膀胱がんの検査・診断

膀胱がんは基本的に、膀胱鏡検査によって確定診断を下すことができます。
膀胱鏡検査のほかにも、発症の有無や重症度を確認するために腫瘍マーカー検査や尿検査、尿細胞診検査、超音波検査、CT検査、MRI検査、CT尿路検査、経静脈性腎盂造影検査、骨シンチグラフィ、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)などを行ないます。

膀胱鏡検査

膀胱鏡検査とは、膀胱専用の内視鏡である膀胱鏡を尿道から膀胱へと挿入し、膀胱がんが発生している位置や数、形状、サイズなどを観察する検査方法です。
膀胱がんの場合、この膀胱鏡検査を行なうことによって、基本的に確定診断を下すことができます。
実際に膀胱鏡検査を行なう場合には、局所麻酔をほどこしたうえで行ないます。

腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカー検査とは、血液中や尿中に含まれる、腫瘍マーカーという成分を測定する検査方法です。
膀胱がんに限らず、体のどこかでがんが発生した場合には、腫瘍マーカーの量が増加するため、血液中や尿中に含まれる腫瘍マーカーの量を測定することで発症の有無を確認することができます。

ただし、腫瘍マーカーの測定値が高いからといって必ずしもがんが発生しているわけではなく、逆にがんが発生しているにもかかわらず腫瘍マーカーの測定値が低い場合もあるため、膀胱がんの検査における腫瘍マーカー検査は、ほかの検査の補助を目的として行ないます。

実際に腫瘍マーカー検査を行なう場合には、尿中に含まれるBTAtestとNMP22という2種類の腫瘍マーカーの値を測定します。

尿検査

尿検査とは、採取した尿に含まれる成分を分析することで腎臓、膀胱、尿路が正常に機能しているかどうかを確認することができる検査方法です。

尿検査では主に尿の色、比重、糖、タンパク、Ph、ケトン体、亜硝酸酸塩、潜血、ウロビリノーゲンといった成分を分析します。
実際に尿検査を行なう場合には起床直後の尿ではなく、日中の尿を採取して検査を行なう形になります。

尿細胞診検査

尿細胞診検査とは、尿中に含まれる細胞を顕微鏡で観察し、がん細胞が混ざっているかどうかを確認することで、膀胱がんの確定診断を下すことができる検査方法です。

ただし、実際に膀胱がんを発症している場合でも、尿細胞診検査で陽性と診断されるのは全体の約50%前後であり、総合的に確定診断を下すためには他の検査も行なう必要があります。

超音波検査

超音波検査とは、超音波を発する特殊な機械を体にあて、跳ね返ってきた波を画像化することで、体内の臓器の様子を詳しく確認することができる画像検査の一種です。

膀胱がんにおける超音波検査は、発症の有無を確認するために行ない、膀胱の様子やがんの有無、がんのサイズや浸潤度を確認します。
実際に検査を行なう際には、食事制限や排尿制限が設けられる場合があるため、事前によく確認しておきましょう。

CT検査

CT検査とは、X線を使った画像検査の一種で、体を輪切り状に撮影することで体内の様子を詳しく確認することができます。

膀胱がんにおけるCT検査は、がんの浸潤度合いや転移の有無を確認することができ、膀胱鏡検査や尿細胞診検査によって膀胱がんであると確定診断が下された場合に重症度を確認するために行ないます。

MRI検査

MRI検査とは、磁力や電磁波を使った画像検査の一種で、体を輪切り状に撮影することで、体内の様子を詳しく確認することができます。

膀胱がんにおけるMRI検査は、CT検査と同じくがんの浸潤度合いや転移の有無を確認することができ、膀胱鏡検査や尿細胞診検査によって膀胱がんであると確定診断が下された場合に重症度を確認するために行ないますが、CT検査と比べてがんの浸潤度合いをより詳細に確認することができます。

CT尿路検査

CT尿路検査とは、CTウログラフィーともよばれ、膀胱がんの重症度を確認することを目的に行なう検査方法です。

膀胱がんは基本的に、膀胱の内側を覆う尿路上皮にがんが発生しますが、腎盂や尿管の尿路上皮にもがんが発生している場合があり、CT尿路検査を行なうことで、腎盂や尿管の尿路上皮でのがんの有無を確認することができます。

実際にCT尿路検査を行なう際は、ヨード系の造影剤を使用しマルチスライス造影CTという特殊な機械を使って撮影を行なうため、造影剤に対しアレルギーや過敏症をお持ちの方は事前に確認する必要があります。

経静脈性腎盂造影検査

経静脈性腎盂造影検査とは、造影剤を静脈から点滴し、腎臓から排出される様子をX線撮影することで、腎盂が正常に機能しているかどうかを確認することができる検査方法です。

膀胱がんの検査における経静脈性腎盂造影検査は、膀胱がんの重症度を確認するために行ないます。
実際に検査を行なう際には、造影剤を点滴する前後に2種類のX線撮影を行ないます。

検査時間は90分ほどを要し、検査を行なう3時間前から食事を控える必要があるほか、検査後は造影剤の体外排出を促すために多量の水分を摂取します。

また、ヨード系の造影剤を使用する場合があるため、ヨード系の造影剤に対しアレルギーをお持ちの方は事前に確認する必要があります。

骨シンチグラフィ

骨シンチグラフィとは、放射性物質の一種でがん細胞に集まる性質を持つアイソトープを静脈に注射してX線撮影を行ない、アイソトープの集まり具合を確認することで病変部位の特定や浸潤度合いを確認することができる検査方法です。

膀胱がんの検査における骨シンチグラフィは、重症度を確認するために行ないますが、検査には3~4時間ほどを要することになります。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)とは、膀胱内にがんの腫瘍が確認できた場合に膀胱専用の内視鏡である膀胱鏡を使って腫瘍を切除し、顕微鏡で詳しく調べる検査方法です。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)は、膀胱がんの浸潤度合いを正確に確認するためには欠かせない検査で、膀胱がんが数種類あるタイプのうち、膀胱の内側へと突き出した表在性がんである場合には、膀胱鏡でがんをすべて切除できることもあります。

実際に経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を行なうには入院が必要であり、施術時には麻酔をほどこします。

このように膀胱がんの検査にはさまざまな種類がありますが、適切な治療をほどこすうえで重要な指針となるのが病期(ステージ)です。

病期(ステージ)は画像診断と経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を基に、がんの浸潤度合い、リンパ節への転移の有無や程度、ほかの臓器への転移の有無、この3つによって0期~Ⅳ期の5段階に分類されています。

0期

がん細胞が膀胱の内側を覆う尿路上皮内にとどまっている場合。

Ⅰ期

がん細胞が尿路上皮から外側へと浸潤しているものの筋層へは達しておらず、リンパ節やほかの臓器への転移が確認できない場合。

Ⅱ期

がん細胞が筋層へと浸潤しているものの、リンパ節やほかの臓器への転移が確認できない場合。

Ⅲ期

がん細胞が筋層よりもさらに外側へと浸潤しているものの、リンパ節やほかの臓器への転移が確認できない場合。

あるいはがん細胞が子宮や膣、前立腺、精嚢へと浸潤しているものの、リンパ節やほかの臓器への転移が確認できない場合。

Ⅳ期

リンパ節またはほかの臓器への転移が確認できる場合。
あるいはリンパ節やほかの臓器への転移が確認できないものの、がん細胞が腹膜または骨盤壁へと浸潤している場合。

膀胱がんの治療

膀胱がんの治療は、検査によって判明した病期(ステージ)に合った治療法を選択します。

膀胱がんが膀胱の筋層まで浸潤していない筋層非浸潤性膀胱がんの場合には、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)と抗悪性腫瘍薬や抗がん剤などを使った膀胱内注入療法を行ないます。

筋層浸潤性膀胱がんの場合には、開腹手術によって膀胱を摘出するほか、尿路変向術なども行ないます。
そのほかにも膀胱温存療法や放射線療法、CMV療法、GC療法、MVAC療法などから、患者の状態に合った最適な治療法を選択します。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)とは、膀胱専用の内視鏡である膀胱鏡を尿道から挿入し、膀胱内に発生した腫瘍を膀胱鏡の先端にある電気メスによって切除する治療法です。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)は、膀胱がんの重症度を確認するために検査のひとつとして行ないますが、筋層非浸潤性膀胱がんの場合には、検査の際にすべてのがん細胞を切除することもあります。

ただし、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)によって切除したがん細胞を、顕微鏡を使って観察する組織検査を行なった結果、悪性度が高いと判明した場合や、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)によってすべてのがん細胞が切除できなかった場合には、もう一度経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を行なうことがあります。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)は1~2時間ほどで終了しますが、その後1週間以上の入院が必要です。

また、がん細胞を完全に切除できれば再発のリスクはありませんが、病変部分によっては完全に切除することが難しく再発のリスクがあるため、多くの場合は経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)のあとに抗悪性腫瘍薬や抗がん剤を使った膀胱内注入療法を行ないます。

膀胱内注入療法

膀胱内注入療法とは、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を行なったあとに抗悪性腫瘍薬や抗がん剤などを膀胱内に注入することで、再発リスクを下げる治療法です。

主に筋層非浸潤性膀胱がんの方のうち、悪性度が高い方に対して行ないますが、活動性の結核症(けっかくしょう)を患っている方や免疫力が低下している方には行なわれません。

実際に膀胱内注入療法を行なう際は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)から2週間経過したあとに、弱毒結核菌ワクチンのBCGや抗がん剤の一種であるマイトマイシンなどを、尿道から膀胱へと挿入したカテーテルを通して膀胱内へと注入します。

膀胱内注入療法は週1回のペースで6~8週間ほど続け、そのあとは3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後、18ヶ月後ごとにそれぞれ週1回のペースで3週間ほど膀胱注入療法を行ないます。

抗がん剤即時単回注入法

抗がん剤即時単回注入法とは、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を行なったあとに、再発予防を目的として抗悪性腫瘍薬や抗がん剤を膀胱内に注入する治療法です。

抗がん剤即時単回注入法は膀胱内注入療法と同じく、膀胱内に抗悪性腫瘍薬や抗がん剤を注入しますが、膀胱内注入療法が悪性度が高い筋層非浸潤性膀胱がんの方に行なわれるのに対し、抗がん剤即時単回注入法は悪性度が低い筋層非浸潤性膀胱がんの方に対して行ないます。

ただし、腎機能障害や肝機能障害、骨髄抑制、水痘(すいとう)を患っている方や高齢者の方、アントラサイクリン系薬剤を使った薬物療法を行なったことがある方は注意が必要です。

実際に抗がん剤即時単回注入法を行なう際は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)後24時間以内に、尿道から膀胱へと挿入したカテーテルを通してアントラサイクリン系の抗がん剤の一種であるビラルビシンやエピルビシン塩酸塩などを注入します。

また、治療は経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)後24時間以内に1回だけ行なうケースもあれば、週1回のペースで数週間続けるケースもあります。

膀胱部分切除術

膀胱部分切除とは、全身麻酔をほどこしたあとにがんが発生している膀胱の一部分を切除する外科手術の一種です。
主に筋層浸潤性膀胱がんの方で、がん細胞が膀胱壁にまで浸潤しているものの、がんが一部分のみに発生し、かつ悪性度が低い方に対して行なう治療法です。

がんが骨盤壁や腹膜まで浸潤している方や、リンパ節やほかの臓器への転移が確認できる方には行ないません。
膀胱部分切除術は膀胱の一部分のみを切除するために、大部分は無傷で温存されて、術後に開腹すると術前と同じく排尿することができる可能性があります。

ただし、がんが発生している病変部分を完全に切除したとしても、がん細胞が残っているリスクがあるため、術後に薬物を使った化学療法を行なうケースもあります。

膀胱全摘除術

膀胱全摘除術とは、全身麻酔をほどこしたあとに膀胱のすべてを摘出する外科手術の一種で、根治的膀胱摘除術ともよばれています。

主に筋層浸潤性膀胱がんの方で、がん細胞が骨盤壁や腹膜に浸潤していない方や、筋層浸潤性膀胱がんを再発した方、リンパ節やほかの臓器へ転移していない方、BCGを使った膀胱内注入療法の効果が得られない方に対して行ない、がん細胞が骨盤壁や腹膜にまで浸潤している方や、リンパ節やほかの臓器へ転移している方に対しては行なわれません。

実際に膀胱全摘除術を行なう際は、5~10時間ほどの手術時間を要し、術後は3週間~1ヶ月ほどの入院が必要です。
また、がんの進行度合いによっては手術時に尿道をはじめ、女性の場合は子宮や膣の一部を、男性の場合は前立腺や精嚢も摘出する場合があります。

さらに膀胱全摘除術には後遺症を引き起こすリスクがあり、術後に膀胱機能障害をはじめ消化管運動障害、性機能障害、腎機能障害を引き起こす場合があります。

尿路変向術

尿路変向術とは、膀胱全摘除術のあと、尿を体外へと排出するために行なう外科手術の一種です。
尿路変向術には回腸導管、自排尿型代用膀胱形成術、尿管皮膚瘻造設術の3種類があり、患者の年齢や体力、症状に合わせて最適な術式を選択します。

回腸導管は、回腸ループという腸管で作成した通路を腹壁に開けた穴に通して尿を排出させる術式で、3種類ある尿路変向術の中でも合併症を引き起こすリスクが低いというメリットがあるものの、尿が回腸ループを通して常に排出されるため体外に集尿袋を取り付ける必要があります。

自排尿型代用膀胱形成術は、全摘除した膀胱の代用となる袋を腸管に作成し尿管と尿道につなぐ術式で、術後に骨盤の筋肉をゆるめて腹部に圧力をかける排尿方法を身につけることで術前と同じように排尿することができます。

自排尿型代用膀胱形成術は尿道を残す術式であるため、膀胱のがん細胞が尿道へと浸潤するリスクがある場合には行なうことができないほか、術後は夜間に失禁を引き起こす場合があります。

尿管皮膚瘻造設術は、切断した尿管を皮膚に縫い付けることでストーマと呼ばれる排出口を新たに造る術式で、手術による体への負担が少ないというメリットがあるものの、ストーマの排出口が狭まるストーマ狭窄を引き起こすリスクがあります。

膀胱温存療法

膀胱温存療法とは、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)でがん細胞をできる限り切除したあとに、化学療法と放射線療法を併用する化学放射線療法を行なう治療法のことです。

主に筋層浸潤性膀胱がんのうち、リンパ節やほかの臓器への転移がない方で、がん細胞の浸潤が膀胱内に狭い範囲でとどまっている方に対して行ないます。
腎疾患や肝疾患、水痘を患っている方や、高齢者の方、聴器障害や骨髄抑制がある方には注意が必要です。

膀胱温存療法は膀胱のすべてを除去しないため、術後は術前に近い生活を維持することが可能ですが、再発リスクがあるため、術後に再び経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を行なうことでがん細胞が残っていないか確認し、がん細胞が残っている場合には膀胱全摘除術を行なうケースがあります。

放射線療法

放射線療法とは、少量の放射線を約2ヶ月間、毎日病変部分に照射する治療法です。
主に高齢の方、外科手術や化学療法を受けることができない筋層浸潤性膀胱がんの方に対して行なわれています。

放射線療法は体への負担が少ない治療法ですが、放射線療法のみでの完治は難しく、基本的に化学療法も同時に行なう形になります。

CMV療法

CMV療法とは、抗がん剤のビンブラスチン、シスプラチン、メトトレキサートのみっつを組み合わせて投与する化学療法の一種です。

主に膀胱がんがリンパ節やほかの臓器へと転移している方、膀胱を全摘出したものの再発や転移のリスクが高い方に対して行ないますが、腎疾患や肝疾患、結核、水痘を患っている方をはじめ、骨髄抑制や腹水、胸水のある方、聴器障害のある方、高齢者の方、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスを保有している方には注意が必要です。

CMV療法は基本的に1ヶ月ほど続けますが、外科療法の前に行なうことで高い治療効果を得ることができる場合もあります。

GC療法

GC療法とは、抗がん剤のシスプラチンとゲムシタビンのふたつを組み合わせて投与する化学療法の一種です。

主に膀胱がんがリンパ節やほかの臓器へと転移している方、膀胱を全摘出したものの再発や転移のリスクが高い方に対して行ないますが、腎疾患や肝疾患、水痘を患っている方、骨髄抑制や聴器障害のある方、高齢者の方は注意が必要です。

GC療法は基本的に1ヶ月ほど続けますが、がんがリンパ節の1ヵ所だけに転移している場合には、GC療法と同時に放射線療法を行ないます。

MVAC療法

MVAC療法とは、抗がん剤のシスプラチン、ビンブラスチン、メソトレキセート、ドキソルビシンのよっつを組み合わせて投与する化学療法の一種です。

主に膀胱がんがリンパ節やほかの臓器へと転移している方、膀胱を全摘出したものの再発や転移のリスクが高い方、GC療法の効果が得られない方に対して行ないますが、腎疾患や肝疾患、結核を患っている方をはじめ、骨髄抑制や腹水、胸水のある方には行なわれません。

また、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスを保有している方、水痘を患っている方、聴器障害のある方、高齢者の方、結核や肺疾患の既往歴がある方は注意が必要です。
MVAC療法は基本的に1ヶ月ほど続けますが、抗がん剤による副作用が強く現れる場合があります。

経過観察

膀胱がんは、どの治療法を選択したとしても、治療後には経過観察が必要です。
まず、治療から3ヶ月後に膀胱鏡検査や尿細胞診検査を行ない、再発の有無や治療効果を確認しながら定期的に通院して経過観察を行ないます。
外科手術によって膀胱を摘出した場合の局所再発率は約20%ですが、外科手術後の2年間は3~6ヶ月毎に検査を行ない、その後は1年ごとに検査を行ないます。

膀胱がんにはいくつか種類がありますが、最も症状が軽い筋層非浸潤性タイプの表在性がんの場合、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を行なったあとの5年生存率は約95%以上と高いですが、膀胱がんが進行するごとに治療後の5年生存率は下がるため、できるだけ早期に適切な治療をほどこすことが重要です。

膀胱がんそのものは健康診断や自覚できる血尿の症状によって発見される場合が多いため、日ごろから定期的に健康診断を受けるとともに、体の様子を自分自身でもよく観察し、少しでも異変を感じた場合にはできるだけ早く医療機関で受診して早期発見・早期治療に努めましょう。

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がんは私たち人間の体に巨大な腫瘍をつくり出したり、別の部位に転移したりして、最悪の場合は生命を奪

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遺伝子のエピジェネティックな変異とは?

どうしてがんが引き起こされてしまうのかが気になり、いろいろと調べているという人は多いでしょう。

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骨腫瘍・骨肉腫を詳細に:原因,症状,治療,予防,術後など

骨腫瘍・骨肉腫とは(概要) 骨に発生するがんの総称が悪性骨腫瘍であり、骨肉腫は悪性骨腫瘍の一種

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膵胆管合流異常を詳しく:原因・症状・検査・治療など

膵胆管合流異常とは 膵臓(すいぞう)で分泌される弱アルカリ性の消化液のことを膵液(す

無気肺を詳しく:原因・症状・検査・治療など

無気肺とは 無気肺(むきはい)とは、肺内の空気が極端に減少したり、肺内に空気が入って

手根管症候群を詳しく:原因・症状・検査・治療など

手根管症候群とは 手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)とは、手根管という手首の

空気嚥下症(呑気症)を詳しく:原因・症状・検査・治療など

空気嚥下症(呑気症)とは 空気嚥下症(くうきえんげしょう)とは、主に精神面の問題によ

眼窩蜂窩織炎(眼窩蜂巣炎)を詳しく:原因・症状・検査・治療など

眼窩蜂窩織炎(眼窩蜂巣炎)とは まず、眼窩蜂窩織炎は「がんがほうかしきえん」と読み、

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