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認知症を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2018/04/26 頭・脳・神経の病気

認知症とは

認知症(にんちしょう)とは、何らかの原因によって脳細胞の働きが鈍くなる、あるいは脳細胞が死滅して減少することにより、判断力や記憶力、知能、状況判断能力などが低下し、日常生活や社会生活に支障をきたしている状態が6ヶ月以上継続している場合をさします。

認知症は厳密にいうと病気ではなく、認知機能が衰えた状態をさす言葉で、かつては痴呆症(ちほうしょう)ともよばれていました。
認知症は高齢になるほど発症率が高く、65歳以上の約25%が認知症の前段階である軽度認知障害の状態であるといわれており、軽度認知障害である方は日本国内に約400万人いると考えられています。

また、厚生労働省の調べによると、2012年の時点で国内の認知症患者は約462万人いるというデータがあり、74歳未満の発症率は10%以下ですが85歳以上になると40%以上というデータもあります。

認知症は男性よりも女性の発症率が高いという特徴があるほか、まれに64歳以下の若年層でも発症する場合があり、その場合は若年性認知症(じゃくねんせいにんちしょう)とよばれています。

認知症にはいくつか種類があり、主にアルツハイマー型認知症(あるつはいまーがたにんちしょう)、脳血管性認知症(のうけっかんせいにんちしょう)、レビー小体型認知症(れびーしょうたいがたにんちしょう)、前頭側頭型認知症(ぜんとうそくとうがたにんちしょう)の4つに分類されています。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症全体の約50~60%を占めるタイプで、初期段階に記憶障害だけ現れます。
やる気がない、言葉が出てこない、注意力が低下するといった症状が現れますが、進行するにつれて記憶障害が悪化し、他者の話す言葉の意味を理解できなくなります。

この段階になるとうつや妄想、不穏、焦燥などの精神症状や行動異常も現れ、さらに進行すると運動機能障害も現れ、失禁の症状も出現するほか、さまざまな病気を発症しやすくなるという特徴があります。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、認知症全体の約20~30%を占めるタイプで、脳血管疾患を患ったあとに認知症の症状が出現するという特徴があります。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、認知症全体の約20%を占めるタイプで、認知機能の低下に幻覚症状を伴うという特徴があります。

レビー小体とは神経細胞内に存在する特殊なタンパク質のことで、レビー小体型認知症を発症すると、初期段階では記憶力低下よりも注意力低下が目立ちます。

進行するにつれて方向感覚を失い、錯乱状態や幻視といった症状が現れるほか、日中の寝ぼけ、寝言、眠気といった睡眠異常の症状も現れます。
さらに動作が緩慢になり、歩行障害や失神といった症状も現れます。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、認知機能の低下に人格変化を伴う場合が多いという特徴があります。
初期段階では判断力の低下や病識の欠如、情動面の変化に加え、特徴的な人格変化の症状が現れます。

人格変化では、自分本位の無遠慮な振る舞いをして、行動を制御できなくなることが多くなりますが、記憶力低下はあまり見られません。

しかし、症状が進行すると、失語や徘徊といった症状が現れ、さらに進行すると身体機能の低下やコミュニケーション能力の低下といった症状も現れます。

認知症の原因

認知症の原因はアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などの種類によって異なります。

アルツハイマー型認知症の原因

認知症全体の約50~60%を占めるアルツハイマー型認知症は、脳内にタウやアミロイドβという特殊なタンパク質が蓄積することにより、神経細胞が破壊されることが発症原因と考えられています。
脳内にこの特殊なタンパク質が蓄積されて神経細胞が破壊されると、徐々に脳全体が委縮し、やがて認知機能の低下や身体機能の低下といった症状が現れます。

脳血管性認知症の原因

認知症全体の約20~30%を占める脳血管性認知症は、脳出血(のうしゅっけつ)や脳梗塞(のうこうそく)などの脳血管疾患を患ったあとに発症するタイプの認知症です。

脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患を発症すると、脳の血管が詰まり、血管によって脳全体へと運ばれていた栄養が滞ることで、脳の神経細胞の働きが低下したり死滅したりすることが原因となって認知症を発症します。

レビー小体型認知症

認知症全体の約20%を占めるレビー小体型認知症は、レビー小体という神経細胞内に存在する特殊なタンパク質が脳全体の神経細胞内に蓄積されることにより、神経細胞が徐々に死滅していくことが原因となって認知症を発症します。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症の発症原因は、脳の前頭葉か側頭葉、あるいはその両方が委縮することです。
ただし、前頭葉や側頭葉が委縮する詳しい原因は未だ解明されていません。

このように、認知症は種類によって発症原因が異なりますが、ビタミン欠乏症(びたみんけつぼうしょう)や内分泌疾患、感染症、脳疾患や神経疾患、薬物の副作用が原因となって発症する場合もあります。

ビタミン欠乏症

ビタミンとは生きていくうえで欠かせない栄養素のひとつで、ビタミン欠乏症とは体内のビタミン量が減少し欠乏してしまう病気のことです。
ビタミンにはいくつかの種類がありますが、ビタミンB1とB12が欠乏すると認知症を発症する場合があります。

ビタミンB1の欠乏は、日頃からアルコールを過剰摂取する方や、食生活が乱れていて偏食気味の方が陥りやすく、ビタミンB1の欠乏によって発症する認知症はウェルニッケ脳症(うぇるにっけのうしょう)とよばれ、意識障害や歩行障害、眼球を外側に動かせなくなる外眼筋麻痺(がいがんきんまひ)といった症状が出現しますが、ビタミンB1を投与することで症状は改善するものの、物忘れなどの認知症の症状が後遺症として残る場合があります。

ビタミンB12の欠乏は、胃や小腸の一部である回腸を切除した方が陥りやすく、時間や場所の認識力が低下する見当識障害や記憶力低下といった症状が現れますが、ビタミンB12を投与することで症状を改善させることができます。

内分泌疾患

内分泌疾患とは、ホルモンを作り出す臓器が何らかの原因によって過剰にホルモンを分泌する、あるいはホルモンの分泌量が減少してしまう病気のことです。

内分泌疾患にはさまざまな種類がありますが、甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)や副甲状腺機能亢進症(ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう)、副甲状腺機能低下症(ふくこうじょうせんきのうていかしょう)、副腎皮質機能低下症(ふくじんひしつきのうていかしょう)、クッシング症候群(くっしんぐしょうこうぐん)などを発症すると、認知症を引き起こす場合があります。

甲状腺機能低下症とは、首の付け根の上側に位置し、新陳代謝を促すホルモンである甲状腺ホルモンを分泌する臓器の甲状腺が、何らかの原因によって正常に機能せず、甲状腺ホルモンの分泌量が低下する病気で、甲状腺機能低下症を発症すると、物忘れなどの認知症の症状が出現する場合があります。

副甲状腺機能亢進症とは、甲状腺に接し、体内のリンやカリウムの量を調整するホルモンを分泌している副甲状腺という4つの臓器が、何らかの原因によって正常に機能せず、血液中のリン濃度の低下やカルシウム濃度の上昇により食欲低下や倦怠感(けんたいかん)、意識障害などが現れる病気で、認知症の症状が現れる場合もあります。

副甲状腺機能低下症とは、副甲状腺機能亢進症とは逆に血液中のリン濃度が上昇し、カルシウム濃度が低下する病気で、さまざまな症状とともに認知症の症状が現れる場合があります。

副腎皮質機能低下症とは、コルチゾールなどのホルモンを分泌する副腎皮質が、何らかの原因によってホルモンの分泌量が減少する病気で、体重減少や脱力感、易疲労感といった症状とともに、認知症の症状が現れる場合があります。

クッシング症候群とは、副腎皮質からコルチゾールが過剰に分泌される病気で、不眠や顔の丸み、体幹を中心に脂肪がつくといった症状とともに認知症の症状が出現する場合があります。

感染症

感染症にはさまざまな種類がありますが、HIV関連神経認知障害(エイチアイブイかんれんしんけいにんちしょうがい)、神経梅毒(しんけいばいどく)、インフルエンザ脳症(いんふるえんざのうしょう)、ヘルペス脳炎(へるぺすのうえん)などの感染症を発症した場合、症状のひとつとして認知症の症状が現れる場合があります。

HIV関連神経認知障害とは後天性免疫不全症候群(こうてんせいめんけいふぜんしょうこうぐん)=AIDS(エイズ)の発症原因であるHIVウイルスへの感染により認知症の症状が現れることで、主に物忘れなどの記憶障害や、時間や場所を認識できない見当識障害といった症状が現れます。

神経梅毒とは、梅毒が進行し神経にも影響が出た状態をさし、頭痛や感覚障害、麻痺、人格変化などに加え、認知症の症状が出現する場合があります。
インフルエンザ脳症とは、インフルエンザウイルスへの感染によって脳障害を引き起こす感染症で、意味不明な言動や意識障害といった認知症に似た症状が現れます。

ヘルペス脳炎とは、ヘルペスウイルスに感染することによって脳に炎症が発生する感染症で、発熱や頭痛などの症状とともに、意識障害や錯乱など認知症に似た症状が出現する場合があります。

脳疾患や神経疾患

脳疾患や神経疾患にはさまざまな種類がありますが、慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)や正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)、脳腫瘍(のうしゅよう)、パーキンソン病(ぱーきんそんびょう)、多発性硬化症(たはつせいこうかしょう)、進行性核上性麻痺(しんこうせいかくじょうせいまひ)などの病気が、認知症の発症原因となる場合があります。

慢性硬膜下血腫とは、頭部の打撲などの外傷により、脳と脳を覆う硬膜のあいだに血液が蓄積し、脳を圧迫する病気で、頭痛や嘔吐、麻痺、尿失禁といった症状とともに、物忘れなどの記憶障害や、時間や場所を認識できない見当識障害といった認知症の症状が現れます。

正常圧水頭症とは、脳を衝撃から守るために脳の周囲や内部を満たしている髄液が過剰に生成されることによって、脳室とよばれる脳内部の空間が拡大する病気で、歩行障害や尿失禁などの症状とともに、認知症の症状が現れる場合があります。

脳腫瘍とは、脳に腫瘍が発生する病気で、言葉が出にくい、動作ができなくなるといった認知症の症状が現れる場合があります。
パーキンソン病とは、脳内の情報伝達物質が不足することにより、手足の震えや体が動かしにくくなる病気で、進行した場合に認知症を引き起こす場合があります。

多発性硬化症とは、脳や脊髄の働きを司る中枢神経の障害によりさまざまな症状が現れる病気で、中枢神経の障害によって認知症の症状が現れる場合があります。

進行性核上性麻痺とは、脳幹の細胞や大脳基底核が何らかの原因で変化し正常に機能しなくなることにより発症する病気で、歩けなくなる、転びやすくなるという症状に加え、運動障害や認知症の症状が現れる場合があります。

薬物の副作用

ほかの病気の治療のために服用している薬物が原因となって、認知症を引き起こす場合があります。
主に睡眠薬、抗うつ薬、鎮静薬、鎮痛薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗がん剤、抗パーキンソン病薬、抗てんかん薬、循環器病薬などを服用している場合に副作用として認知症を引き起こす場合があります。

とくに腎機能や肝機能が低下している方、高齢者の方、いくつかの薬剤を併用している方は薬物の副作用によって認知症を引き起こしやすいという特徴があります。

認知症の症状

認知症を発症すると、主に中核症状と周辺症状が現れます。

中核症状とは、理解・論理・判断など知的な行動を司る認知機能が低下することによって現れる症状のことで、主に記憶障害、実行機能障害、見当識障害、視空間認知障害、失行(しっこう)、失語、失認などの症状をあげることができます。

記憶障害

記憶障害とはいわゆる物忘れのことで、アルツハイマー型認知症を発症している方のほとんどに現れる症状です。

記憶障害は時間の経過とともに徐々に悪化するという特徴があり、新しいことを覚えることができない、何度も同じ話をする、昨日出掛けた場所を思い出せない、食事したことを忘れる、薬を飲み忘れるといった症状が現れます。

実行機能障害

実行機能障害とは、問題解決能力が低下することで段取りや手順がわからず、道筋をたてた行動ができなくなることです。
実行機能障害が悪化すると、日常生活でも支障をきたすようになり、役所や銀行での手続きができない、スーパーや量販店で同じ商品ばかり購入する、電気製品の操作ができなくなるといった症状が現れます。

見当識障害

見当識障害とは、時間や場所を認識・把握できなくなることです。
主に日付けが分からない、周囲の人を判別できない、自宅にいても風呂場やトイレにいけないといった症状が現れます。

視空間認知障害

視空間認知障害とは、視力に問題がないにも関わらず、目的のものを認識したり見つけたりすることができなくなることです。

主に歩き慣れた道で迷う、いつものように片付けができない、しまったものを見つけることができない、図形をうまく描けない、車の車庫入れができないといった症状が現れます。

失行

失行とは目的を持った行動ができなくなることで、体は正常に動くものの動作や行為ができない状態に陥ります。
主に箸を使って食事ができない、服を着ることができないといった症状が現れます。

失語

失語とは言葉の意味が理解できない、あるいはうまく話せなくなることです。

主に字が書けない、文字が読めない、復唱ができない、スラスラと流暢に喋ることができない、意味不明の言葉を喋る、人が喋った内容や聞いた言葉を理解できない、物の名前を思い出せない、物の名前を間違うといった症状が現れます。

失認

失認とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感に関する認知能力が正常ではなくなることです。
五感それぞれの感覚を司る目・耳・鼻・舌・皮膚などの器官には問題がないにも関わらず、五感を通して認識するはずの対象を正確に判断できなくなります。

主に音は聞こえても識別できない、触れている感覚はあるものの質感が分からない、線を等分できない、運動麻痺は現れていないにも関わらず体の半分がないように感じるといった症状が現れます。

一方、周辺症状とは認知機能障害以外の症状のことで、暴言・暴力、徘徊、不穏、性的脱抑制などの行動症状と、不安、焦燥性興奮、幻覚、妄想、うつ症状、無気力・無関心、性格の変化、不眠などの心理症状をあげることができます。

暴力・暴言

暴力や暴言の症状は、もともと他人とのコミュニケーションが苦手な方や、認知機能障害が重度である男性に現れやすい症状です。
前頭側頭型認知症の方に現れやすいという特徴があります。

徘徊

徘徊とは家の中や外をウロウロとあてもなく歩きまわる症状のことです。
徘徊はアルツハイマー型認知症を発症している方に、長期間にわたり現れやすいという特徴があります。

不穏

不穏とは、行動が穏やかではない状態のことで、怒りや抵抗など攻撃的な行動が現れます。
不穏は不安になりやすい環境によって引き起こされやすく、環境を改善することで症状が治まる場合があります。

性的脱抑制

性的脱抑制とは、性的問題行動や不適切な性的発言など、性に関する問題行動のことです。
性的脱抑制は着衣ができない着衣失行や見当識障害、陰部の皮膚疾患によって引き起こされると考えられています。

不安

不安は、認知機能が低下することで現れる症状です。
チョットしたことでもすぐに不安になり、必要以上に何度も繰り返し尋ねるといった症状が現れます。
また、不安が大きくなると徘徊へと繋がることもあります。

焦燥性興奮

焦燥性興奮とは、焦りや苛立ちを感じることです。
焦りや苛立ちを感じることによってまわりに不満をぶちまける、まわりを無視する、奇妙な音を出す、カッとなって暴力をふるうといった症状が現れます。

幻覚

幻覚とは存在しないものを感じることで、レビー小体型認知症を発症している方は、幻覚の中でも存在しないものが見える幻視の症状が現れやすいです。

妄想

妄想とは、本来なかった事実に対して間違った判断や確信をしてしまう症状のことです。
家族や知人に財産を横領されたと思い込むもの盗られ妄想、恋人や配偶者が自分を裏切っていると思い込む嫉妬妄想、家族や友人に見捨てられたと思い込む見捨てられ妄想、知人や友人など身近な人が中身だけ別の人と入れ替わっていると思い込む誤認妄想などがあります。

うつ症状

認知症を発症すると、うつ症状が現れやすいという特徴があります。
ただし、うつ病を発症した場合には自分を責める罪責感や悲哀感、自己評価の低さといった症状が現れるのに対し、認知症によるうつ症状では主に体の不調感や喜びの欠如といった症状が現れます。

認知症によるうつ症状とうつ病は発症までの経緯が異なりますが、うつ病の発症が原因となって認知症を併発する場合もあるため、認知症によるうつ症状なのか、あるいはうつ病による症状なのかをよく見極める必要があります。

認知症の検査・診断

認知症の検査では主に問診、身体診察、質問式検査、血液検査、画像検査、髄液検査などを行ない、総合的に確定診断を下すと同時に重症度も確定します。

問診

問診では病気の有無を判断するために、どういった症状がいつ頃から現れたかについて患者本人や家族に質問を行ないます。

主に受診するきっかけとなった症状は何か、いつ現れたか、ほかの症状はあるか、1日の中で症状に変化はあるかといったことをはじめ、過去の病歴や飲酒・喫煙などの生活習慣、家族や親族に認知症を発症している方はいるかといったことも確認します。

身体診察

身体診察では、体の状態を確認するためにバイタルサインの測定、視診、神経学的診察を行ないます。
バイタルサインの測定とは、全身の状態を把握するために行なう検査であり、体温、血圧、呼吸数、脈拍数、意識状態の5つを測定します。

視診とは、患者の体に外見上の異常があるかどうか、医師の目で観察する検査です。
神経学的診察とは、医師が患者の体に触れ、脳や神経の状態を確認する検査です。

質問式検査

質問式検査とは、認知機能を詳しく調べるために行なう質問形式の神経心理検査です。
質問式検査にはさまざまな種類がありますが、認知症の検査における質問式検査では主に改訂長谷川式認知スケールとミニメンタルステート検査を行なう場合が多いです。

改訂長谷川式認知スケールでは、30点満点中20点以下であれば認知症が疑われ、ミニメンタルステート検査では30点満点中23点以下であれば認知症が疑われます。

血液検査

認知症の検査における血液検査は、認知症であると確定診断を下すために行なうわけではなく、全身や臓器の状態を調べるために行ないます。
認知症を発症している場合、腎機能や肝機能が低下する場合があるため、血液検査によって臓器の状態を確認します。

また、認知症はホルモンの分泌異常や感染症が原因となって発症する場合があるため、血液検査を行なうことでほかの病気の有無を確認することもできます。

CT検査

CT検査とは、放射性物質を利用して体の内部を輪切り状に撮影することで、臓器や組織の状態を詳細に確認することができる画像検査の一種です。

認知症の検査におけるCT検査では、発症原因となる前頭葉や側頭葉、海馬などの萎縮の有無や、脳内の出血の有無を確認します。

MRI検査

MRI検査とは、磁力や電磁波を使って体の内部を輪切り状に撮影することで、臓器や組織の様子を詳細に確認することができる画像検査の一種です。

認知症の検査におけるMRI検査では、発症原因となる前頭葉や側頭葉、海馬などの萎縮の有無や、脳内の出血の有無を確認します。

MRI検査はCT検査のように放射性物質への被ばくリスクはありませんが、体内にペースメーカーなどの金属を埋め込んでいる方や閉所恐怖症(へいしょきょうふしょう)の方はMRI検査を受けることができません。

脳流血シンチグラフィ検査(SPECT検査)

脳血流シンチグラフィ検査とは、放射性同位体元素を体内に注入したあと、体を回転させながら専用のシンチカメラを使って体を輪切り状に撮影することで、脳の血流状態や代謝機能が正常かどうかを確認することができる画像検査の一種です。

脳血流シンチグラフィ検査により、脳血管障害の有無を確認することで確定診断を下すことができます。

髄液検査

髄液検査とは、脳や脊髄のまわりを満たしている脳脊髄液を採取し、認知症の発症原因となる脳炎や多発性硬化症を発症しているかどうかを確認するために行ないます。

実際に脊髄検査を行なう際には、専用の針を腰の骨と骨のあいだに刺す腰椎穿刺(ようついせんし)を行ない、脳脊髄液を採取します。

こういったさまざまな検査を行ない、確定診断が下ると、症状の度合いによって重症度を軽度・中等度・高度の3段階に分類します。

軽度は自立できる、あるいはほぼ自立できるが人の手を借りる必要がある状態で、中等度は1日のうちほとんどの時間で介護が必要な状態、高度は24時間介護が必要な状態です。

認知症の治療

認知症は発症原因が脳血管疾患や感染症などほかの病気である場合、原因となる病気を治療することで認知症の症状が改善する場合がありますが、認知症全体の約50~60%を占めるアルツハイマー型認知症は根本的な治療法が確立されておらず、認知症の進行を遅らせることを目的に薬物療法やリハビリを行ないます。

薬物療法では、ドネペジル塩酸塩やリバスチグミン、ガランタミン臭化水素酸塩、メマンチン塩酸塩などを使用します。
また、認知症の発症原因が特発性正常圧水頭症である場合には、外科療法として髄液シャント術を行ないます。

リハビリテーションでは認知リハビリテーションをはじめ、リアリティオリエンテーション、回想法、運動療法や芸術療法を行ないます。

ドネペジル塩酸塩

ドネペジル塩酸塩とは、認知症の薬物療法に使用されるコリンエステラーゼ阻害薬の一種です。
ドネペジル塩酸塩は、脳内の神経伝達物質の一種であるアセチルコリンをコリンと酢酸に分解する酵素であるアセチルコリン分解酵素の働きを阻害する作用があり、アセチルコリンを利用して神経伝達を行なうコリン作動性神経系の働きを向上させることができます。

主に軽度から重度のアルツハイマー型認知症の薬物療法に使用しますが、ドネペジル塩酸塩の成分に対して過敏に反応する方に対しては使用することができません。
ドネペジル塩酸塩は錠剤タイプや細粒タイプ、ゼリータイプなどさまざまなタイプで服用できるため、患者に合わせて最適なタイプを選ぶことができます。
ただし、ドネペジル塩酸塩はアルツハイマー型認知症の症状を抑制する作用に優れているだけで、進行そのものを抑制することはできません。

また、副作用として頻脈(ひんみゃく)による息切れ・めまい・失神、心筋梗塞(しんきんこうそく)や心不全(しんふぜん)による胸痛(きょうつう)・手足のしびれや麻痺、脳出血、脳血管障害、消化器障害、肝機能障害による食欲不振・吐き気・全身の倦怠感・腹水(ふくすい)・肝臓肥大・黄疸(おうだん)といった症状を引き起こす場合があります。

リバスチグミン

リバスチグミンとは、認知症の薬物療法に使用されるコリンエステラーゼ阻害薬の一種で、脳内のコリン作動性神経系の働きを向上させることで認知症の症状を抑制することができます。

主に軽度から重度のアルツハイマー型認知症の薬物療法に使用しますが、リバスチグミンの成分に対して過敏に反応する方に対しては使用することができません。

実際に使用する際はパッチタイプを使用しますが、効果が現れるまでに長期間を要するほか、副作用として徐脈(じょみゃく)による動悸(どうき)・めまい・息苦しさ・ふらつき・失神、全身または手足などの痙攣(けいれん)、消化器障害、肝機能障害による食欲不振・吐き気・腹水・全身の倦怠感・肝臓肥大・黄疸といった症状を引き起こす場合があります。

ガランタミン臭化水素酸塩

ガランタミン臭化水素酸塩とは、認知症の薬物療法に使用されるコリンエステラーゼ阻害薬の一種で、脳内のコリン作動性神経系の働きを向上させることで認知症の症状を抑制することができます。

主に軽度から重度のアルツハイマー型認知症の薬物療法に使用しますが、ガランタミン臭化水素酸塩の成分に対して過敏に反応する方に対しては使用することができません。

実際に使用する際は内服液タイプや錠剤タイプを使用しますが、副作用として心機能異常による動悸・めまい・息苦しさ・ふらつき・失神、肝機能障害による食欲不振・吐き気・腹水・全身の倦怠感・肝臓肥大・黄疸、急性汎発性発疹性膿疱症(きゅうせいはんぱつせいほっしんせいのうほうしょう)による高熱・全身の皮膚の赤身やブツブツ・紅斑(こうはん)といった症状を引き起こす場合があります。

メマンチン塩酸塩

メマンチン塩酸塩とは、認知症の薬物療法に使用されるNMDA受容体アンタゴニストの一種で、脳内物質の一種であるグルタミン酸によって情報伝達経路のNMDA受容体チャンネルの働きを阻害し、神経細胞障害や記憶障害、学習障害といった症状を抑制することができます。

主に中等度から高度のアルツハイマー型認知症の薬物療法に使用しますが、メマンチン塩酸塩の成分に対し過剰に反応する方には使用できないほか、腎機能障害の治療のために炭酸水素ナトリウムを服用している方への使用は注意が必要です。

実際に使用する際は錠剤タイプを使用しますが、副作用として全身または手足の痙攣、精神症状としてイライラ・不眠・幻覚・妄想といった症状を引き起こす場合があります。

髄液シャント術

髄液シャント術とは、脳内に過剰に蓄積された脳脊髄液を、皮下に埋め込んだチューブによって体の別の部分へと排出させることで、脳機能を回復させる外科療法の一種です。

髄液シャント術には脳室と腹部を繋ぐ脳室-腹腔(ふくくう)シャント、脳室と心房を繋ぐ脳室-心房シャント、腰椎と腹部を繋ぐ腰椎-腹腔シャントの3つの術式があります。
認知症の治療では、発症原因が特発性正常圧水頭症である方に対して行なう治療法ですが、重度の腰椎変形が見られる方には腰椎-腹腔シャントの術式を選ぶことができません。

髄液シャント術の手術は1時間ほどで終了しますが、10日間ほどの入院を要するほか、副作用としてシャント部分が閉塞するシャントトラブルにより周期的な頭痛・吐き気・気力低下・眠気、感染症による発熱・疼痛(とうつう)・炎症、脳脊髄液の過剰流出による吐き気・頭痛・視覚障害、硬膜下血腫といった症状を引き起こす場合があります。

認知リハビリテーション

認知リハビリテーションとは、認知機能向上を目的に音読やドリル、書き取りなどを行なうリハビリテーションです。
認知リハビリテーションは脳の活性化に繋がるほか、身体的機能の低下の予防にも繋がります。

初期段階の方が行なうと症状軽減効果が得られ、進行後の寝たきり状態の方が行なうと動作能力の回復効果が得られます。

リアリティオリエンテーション

リアリティオリエンテーションとは、見当識障害の改善を目的としたリハビリテーションです。
主に軽度から重度のアルツハイマー型認知症のリハビリテーションとして行ないます。

リアリティオリエンテーションには少人数でグループを組み、1人1人に名前・日付・場所などの情報を提供する定型リアリティオリエンテーションと、改まった機会を設けずに日常生活の中で見当識を教える非定型リアリティオリエンテーションの2種類があります。

回想法

回想法とは認知機能の向上を目的としたリハビリテーションで、患者に昔話や自慢話をさせ、それを周囲が聞きます。
回想法は自宅で行なう場合もあれば、病院や介護施設などで患者同士グループを組んで行なう場合もあります。

主に最近のできごとは思い出せないものの、若い頃など昔のことは思い出せるという方に対して行なうリハビリテーションです。

運動療法

運動療法とは、軽いウォーキングなどの有酸素運動を中心に、身体機能や運動機能、日常生活動作の向上や維持を目的に行なうリハビリテーションです。

認知症の治療では認知機能を向上すると同時に、介護の面から身体機能を向上することも重要です。
そのため、屋外での有酸素運動が難しい場合でも、室内で椅子に座ったままの状態や寝たきりの状態でもできる軽い体操でも十分に効果的です。

芸術療法

芸術療法とは、日常生活動作の向上や維持、心身機能の活発化を目的に音楽や書道、絵画などを行なうリハビリテーションの一種です。

音楽や書道、絵画などの芸術は作品が仕上がったときの達成感や表現する喜びなど、ほかのリハビリテーションでは得られない感情の動きがあり、認知症のリハビリテーションとして有効と考えられています。

認知症は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症などのタイプの場合、適切な治療をほどこしたとしても完治は見込めず、進行を遅らせる治療しか行なうことできません。

一方、認知症の発症原因が脳腫瘍やビタミン欠乏症、代謝障害などである場合には、原因となる病気を治療することで認知症も完治させることができます。
ただし、治療後の再発を防ぐために飲酒や喫煙は控え、規則正しい生活習慣やバランスの良い食生活を心掛ける必要があります。

どちらにしても早期発見・早期治療が重要であるため、少しでも異変を感じた場合にはできるだけ早く医療機関で受診するようにしましょう。

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