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脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を詳しく:原因・症状・検査・治療など

公開日: : 最終更新日:2018/06/30 頭・脳・神経の病気

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)とは

脳脊髄液減少症(のうせきずいえきげんしょうしょう)(低髄圧症候群(ていずいあつしょうこうぐん))とは、脳や脊髄のまわりを満たすことで外部の衝撃から守る役割を担っている脳脊髄液が何らかの原因によって漏れる、あるいは量が減少することで頭痛やめまい、耳鳴りなどさまざまな症状が現れる病気です。

人間が体を自由に動かすためには脳からの指令を全身へと伝える必要があります。
脳から出た指令は脳から脊柱の中を通る脊髄という太い神経によって体の各部位へと伝達されます。

しかし、脳や脊髄は外部からの衝撃に弱いため、衝撃を和らげて保護するために脳や脊髄の周囲は髄液という無色透明の液体で満たされています。

髄液は脳や脊髄を包んでいる硬膜(こうまく)という袋の中を満たしており、この硬膜と脳や脊髄のあいだの空間をくも膜下腔(まくかくう)とよびます。

硬膜の内側、くも膜下腔を満たしている髄液は常に脳や脊髄と触れており、また髄液そのものは川のように流れています。
そのため、脳や脊髄は髄液によって常に一定の圧力がかかっています。

しかし、何らかの原因によって髄液が硬膜の外へと漏れた場合や、くも膜下腔内を満たす髄液の量が減少し圧力が下がった場合には、脳や脊髄が正常に機能しなくなり、頭痛やめまい、耳鳴りなどの症状が現れる脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を発症します。

硬膜が破れて髄液が漏れる、あるいは髄液の量が減少することで脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を引き起こす原因は不明な場合と解明されている場合があります。
原因不明な場合は主に40歳前後の中年期の発症率が高く、男性よりも女性の発症率が約3倍も高いという特徴があります。

一方、原因がハッキリとしているのは外傷によるものと医療行為によるもの、長期にわたる脱水などをあげることができます。

外傷とは主に、交通事故によるむち打ちやスポーツによる転倒や怪我、衝撃など、さらに日常生活内での尻もちなどをあげることができます。
医療行為は検査時や手術時に行なう腰椎穿刺(ようついせんし)や硬膜外麻酔(こうまくがいますい)をあげることができます。
さらに、長期にわたる脱水は、髄液の生産量そのものを減少させる原因となります。

実際に脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を発症すると頭痛やめまい、耳鳴り、首の痛み、視力障害、吐き気、嘔吐(おうと)、疲労感、倦怠感(けんたいかん)、ふらつきなどの症状が現れます。

さらに症状が進行すると頭蓋骨内で出血を引き起こすほか、記憶障害や意識障害、運動障害なども引き起こします。

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)は、初期段階で適切な治療をほどこせば自然治癒する場合も多いですが、適切な治療をほどこすには検査によって髄液が漏れている部分を特定する必要があります。

検査では問診で症状の種類や度合い、経過を確認し、その後MRI検査やMRミエログラフィー、CTミエログラフィー、RI脳槽(のうそう)・脊髄液腔(せきずいえきくう)シンチグラフィー、腰椎穿刺、硬膜外(こうまくがい)生理食塩水注入試験などを行ない、発症の有無を確認すると同時に髄液が漏れている部分の位置を特定します。

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)の治療では、保存療法とブラッドパッチを行ないます。
基本的に発症直後の初期段階であれば保存療法を選択し、点滴で水分補給をしながら1~2週間ほど安静に過ごします。

保存療法の効果が得られない場合や進行段階である場合、長期にわたり症状が現れている場合には、血液の凝固作用によって破れた硬膜を塞ぐブラッドパッチを行ないます。

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)は原因不明な場合を除けば、交通事故やスポーツによる激しい衝撃によって発症します。

とくに交通事故後の発症率が高いという特徴があり、初期段階で適切な治療をほどこすためにも、交通事故やスポーツによる外傷や衝撃を受けた直後は安静にしてしばらく様子を見るようにしましょう。

万一、異変を感じた場合や症状が現れた場合にはできるだけ早く医療機関で受診し、早期発見・早期治療に努めましょう。

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)の原因

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)は、脳や脊髄を包む硬膜の内側を満たす髄液が漏れる、あるいは髄液の量が減少することで発症する病気です。

発症原因が不明な場合もありますが、主に交通事故やスポーツによる外傷、日常生活内での衝撃、医療行為、長期にわたる脱水など、さまざまな原因によって発症します。

交通事故

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)は、交通事故後の発症率が高いという特徴があります。
事故時の衝撃によるむち打ちが脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)の発症原因になる場合が多いです。

ただし、交通事故後すぐに発症する場合もあれば、時間が経過してから発症する場合もあるため、交通事故にあった際はしばらく安静にして様子を見ることが重要です。

スポーツによる外傷

体をぶつけるような激しいスポーツや、スポーツをしている最中の転倒、怪我、衝撃などが原因となって脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を発症する場合があります。

日常生活内での衝撃

髄液で満たされた袋状の硬膜が生まれつきもろい体質の方がいます。
その場合、日常生活内で軽い尻もちやせき込み、いきみ、性行為などちょっとした衝撃により硬膜が破けて髄液が漏れ、脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を発症する場合があります。

医療行為

医療行為の一種に、検査時や手術時に行なう腰椎穿刺や硬膜外麻酔などがあります。

腰椎穿刺とは、背骨と背骨のあいだに針を刺しすことで、検査のために髄液を採取したりや手術時に麻酔薬を注入したりします。
硬膜外麻酔は、手術時の麻酔や術後の痛みを軽減することを目的とした局所麻酔です。

腰椎穿刺や硬膜外麻酔はどちらも施術時に髄液が漏れる場合があり、そのことが原因となって脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を発症する場合があります。

髄液の生産量の減少

髄液は常に新しく生産され硬膜と脳や脊髄のあいだを満たしていますが、長期にわたる脱水や低血圧症(ていけつあつしょう)を患っている場合には生産量が減少し、脳や脊髄にかかる圧力の低下が原因となって脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を発症する場合があります。

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)の症状

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を発症した場合、主に頭痛やめまい、耳鳴りなどの症状が現れますが、実際に現れる症状には個人差があるほか、初期段階と進行段階で現れる症状が異なります。

主な症状

起き上がったあとや立ち上がったあとしばらくしてから頭痛が現れる、起立性頭痛(きりつせいずつう)という症状が現れます。

起立性頭痛は症状が現れるまでの時間に個人差があり、起き上がった直後や立ち上がった直後の場合もあれば数時間経過してから現れる場合もあります。
また、起立性頭痛は体を横にして安静にすることで症状が緩和する場合が多いです。

そのほかにもめまい、耳鳴り、首の痛み、物が二重に見える複視などの視力障害、吐き気、嘔吐、疲労感、倦怠感、ふらつき、光を眩しく感じる光過敏症(ひかりかびんしょう)、集中低下などの症状が現れます。

こういった症状は起立性頭痛と同じく体を横にして安静にすることで徐々に症状が緩和しますが、立ったままあるいは座ったままの場合は3時間以内に悪化しやすいという特徴があります。

進行段階の症状

初期段階では上記の主な症状が現れますが、症状が進行すると頭蓋骨内で出血を引き起こし、記憶の欠落や新しものを覚えることができないといった記憶障害が現れます。

そのほかにも周囲への反応が鈍る意識障害、動作の遅れや麻痺(まひ)によって体を上手く動かせなくなる運動障害なども現れます。

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)の検査・診断

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)の検査は髄液の減少を確認するために問診をはじめ、MRI検査、MRミエログラフィー、CTミエログラフィー、RI脳槽・脊髄液腔シンチグラフィー、腰椎穿刺、硬膜外生理食塩水注入試験などを行ない確定診断を下します。

問診

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)の検査ではまず問診を行ないます。
問診ではいつ発症したか、どんな症状が現れているか、経過などについて確認します。

とくに起立性頭痛は脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)の特徴的な症状であるため、起立性頭痛の有無は確定診断に役立ちます。

また、発症原因を特定するために病気以外の可能性を疑い、交通事故やスポーツによる外傷の有無、脱水症状や低血圧症の有無、腰椎穿刺や硬膜外麻酔の経験の有無などについて確認します。

MRI検査

MRI検査とは磁力や電磁波を用い体内を輪切り状に撮影することで、臓器の様子を詳細に確認することができる画像検査の一種です。
脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)におけるMRI検査では、脳と脊髄のMRI撮影を行ないます。

実際に脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を発症している場合、脳のMRI画像ではびまん性硬膜増強効果や脳下垂(のうかすい)、くも膜下腔の拡大、高位円蓋部硬膜下腔(こういえんがいぶこうまくかくう)、下垂体腫大(かすいたいひだい)、硬膜下血腫(こうまくかけっしゅ)、脳室狭小化(のうしつきょうしょうか)、静脈洞拡張(じょうみゃくどうかくちょう)、頭蓋内静脈(ずがいないじょうみゃく)などを確認することができます。

一方、脊髄のMRI画像ではくも膜下腔外の液体貯留、硬膜外液体貯留、硬膜外静脈叢(そう)拡張、硬膜造影(ぞうえい)などを確認することができます。

MRミエログラフィー

MRミエログラフィーとは造影剤を使用しない画像検査の一種で、硬膜と脳や脊髄のあいだの空間であるくも膜下口腔を流れる髄液の様子を、磁力や電磁波を使って撮影する検査方法です。

硬膜が破れ髄液が漏れることで脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を発症しますが、MRミエログラフィーを行なうことで発症の有無と同時に、髄液が漏れている部分の位置を特定することができます。

CTミエログラフィー

CTミエログラフィーとは、造影剤を使用し、髄液が漏れている部分の位置を特定することができる画像検査の一種です。

実際に検査を行なう際は腰から脊髄へと針を刺す腰椎穿刺を行ない、脊髄中に造影剤を注入したあとにX線を照射してCT撮影を行ないます。

CTミエログラフィーは検査時に痛みを伴うものの、発症の有無や髄液が漏れている部分の位置を細かく特定することができます。

RI脳槽・脊髄液腔シンチグラフィー

RI脳槽・脊髄液腔シンチグラフィーとは、放射性物質を使用して体内の臓器の様子や病変部位の特定を行なうシンチグラフィー検査の一種です。

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)におけるRI脳槽・脊髄液腔シンチグラフィーは、髄液の流れを調べるすることで重症度の確認や確定診断を下すことができる検査です。

実際にRI脳槽・脊髄液腔シンチグラフィーを行なう際は、腰から脊髄へと針を刺す脊髄穿刺を行ない、放射性物質であるRIを髄液中へと注入し、ガンマカメラで撮影します。

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を発症している場合には、硬膜から髄液の漏れが確認できるほか、漏れている量も詳細に確認することができます。

腰椎穿刺

腰椎穿刺とは、腰から脊髄へと針を刺す検査のことです。
脳や脊髄は髄液によって髄圧という一定の圧力がかかっていますが、脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を発症すると髄液が硬膜から漏れるため髄圧が低下します。

腰椎穿刺を行なうことで髄圧を測定することができ、発症の有無を確認することができます。

硬膜外生理食塩水注入試験

硬膜外生理食塩水注入試験とは、腰部硬膜外腔に生理食塩水を注入して経過を観察する検査方法です。

生理食塩水を注入後、1時間ほどで症状が改善した場合には、髄液の量が減少している可能性が高く、発症の有無を確認することができます。

実際に検査を行なう際は多少の痛みを伴いますが、短時間で検査が終了します。

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)の治療

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を発症した場合、初期段階の治療は保存療法を優先的に行ないます。

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)は保存療法で治癒する場合が多いですが、保存療法の効果が得られない場合や症状が長期間現れている場合には、ブラッドパッチという硬膜外自家血注入療法を行ないます。

保存療法

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)の治療において、まず第一に選択されるのが保存療法です。
保存療法では体を横にして安静な状態を保ち、点滴で水分補給をしながら1~2週間ほど過ごします。

時間の経過とともに破けていた硬膜が自然治癒し、症状も改善します。
保存療法は主に、初期段階の患者に対して高い効果を発揮します。

成人の場合は発症後3ヶ月以内、小児の場合は発症後1年以内だと効果を得られる場合が多いです。
ただし、心機能障害や肺機能障害を患っている方、高齢者の方、症状が長期間現れている方には行ないません。

実際に保存療法を行なう際は入院が必要で、入院直後の1週間程は頭を持ち上げないように安静にする必要があります。

ブラッドパッチ

ブラッドパッチは硬膜外自家血注入療法ともよばれ、血液の凝固作用によって髄液が漏れている硬膜部分を塞ぐ治療法です。

主に保存療法の効果が得られない方や発症後時間が経過している方に対して行なわれる治療法で、発症直後の初期段階の方や髄液が漏れている硬膜部分の位置が特定できていない方には行ないません。

実際にブラッドパッチを行なう際は患者の血液を少量だけ採取し、局所麻酔をほどこしたうえで髄液が漏れている硬膜部分の外側に注射で注入します。

注入された血液は凝固作用によって固まり、破れた硬膜が塞がることで症状を改善させます。
ブラッドパッチは1~2週間の入院が必要なうえ、髄液が漏れている部分が数か所ある場合には複数回にわたり治療を行ないます。

また、退院後は3ヶ月ほど激しい運動を控える必要があるほか、副作用として施術時の痛み、発熱、倦怠感や、注入した血液が神経を圧迫することでしびれや痛み、知覚低下、尿失禁(にょうしっきん)などを引き起こす場合があります。

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)は、初期段階に保存療法を行なえば自然治癒する場合が多いですが、進行すると合併症として慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)を引き起こす場合があります。

これは脳のまわりを満たしている髄液が漏れて脳が下に落ちることで、脳脊髄を支える硬膜血管などが拡張し、血管の壁が拡張によって薄くなり破れることで引き起こされます。

脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)の治療後は、生活習慣を改善することが重要です。

規則正しい生活を心掛ける、栄養バランスの取れた食生活を心掛ける、睡眠時間を十分に確保する、暴飲暴食や喫煙を控える、ストレスは適度に発散するなど、こういった生活を心掛けることで免疫力や自然治癒力がアップし、体力の回復を早めることに繋がります。

また、日頃から脳脊髄液減少症(低髄圧症候群)を予防するためにも、スポーツを行なう際はヘルメットを着用するなど、頭部への衝撃を防ぐことが効果的です。

万一、交通事故やスポーツによる外傷などで頭部への衝撃を受けた場合はできるだけ安静にし、少しでも異変を感じた場合はただちに医療機関を受診するようにしましょう。

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