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下垂体前葉機能低下症を詳しく:原因・症状・検査・治療など

公開日: : 最終更新日:2018/08/26 頭・脳・神経の病気

下垂体前葉機能低下症とは

下垂体前葉機能低下症(かすいたいぜんようきのうていかしょう)とは、脳の一部である下垂体から分泌されるホルモンの量が低下することでさまざまな症状が現れる病気です。

下垂体とは脳の底の部分、ちょうど鼻の奥に位置する器官で、体を正常に機能させるために必要なさまざまなホルモンを分泌しています。

下垂体そのものは前葉と後葉(こうよう)に分けられており、前葉は副腎皮質刺激(ふくじんひしつしげき)ホルモン、甲状腺刺激(こうじょうせんしげき)ホルモン、成長ホルモン、性腺刺激(せいせんしげき)ホルモン(卵胞刺激(らんほうしげき)ホルモン・黄体形成(おうたいけいせい)ホルモン)、プロラクチン(催乳(さいにゅう)ホルモン)の6種類のホルモンを分泌し、後葉は抗利尿(こうりにょう)ホルモン、オキシトシン(射乳(しゃにゅう)ホルモン)の2種類のホルモンを分泌しています。

前葉が分泌している6種類のホルモンにはそれぞれ異なる役割があります。

副腎皮質刺激ホルモン

副腎皮質刺激ホルモンとは、副腎皮質ホルモンの分泌をコントロールする役割を担ったホルモンです。

副腎皮質ホルモンとは、脳の下垂体から分泌されるホルモンの一種で、副腎皮質に副腎皮質ホルモンを生成するように指令を出す役割を担っています。

甲状腺刺激ホルモン

甲状腺刺激ホルモンとは、甲状腺ホルモンの分泌をコントロールする役割を担ったホルモンです。
甲状腺ホルモンとは、喉仏の下に位置する甲状腺と呼ばれる器官から分泌されるホルモンです。

甲状腺は人体のあらゆる臓器の中で最もホルモンの分泌量が多く、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは神経の興奮を促す、全身の代謝を促進させるといった役割を担っています。

成長ホルモン

成長ホルモンとは、体の成長をコントロールする役割を担ったホルモンです。
筋肉や骨の成長を促すほか、筋肉や脂肪、肝臓での代謝を促す作用も担っています。

性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモン)

性腺刺激ホルモンとは、卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの2種類のホルモンのことです。

このうち卵胞刺激ホルモンは、女性に対しては卵巣に存在する細胞の集合体である卵胞を刺激して卵胞の発育を促進させ、男性に対しては精巣を刺激して精子の発育を促進させる役割を担ったホルモンです。

一方、黄体形成ホルモンは排卵を促して、妊娠しやすい体へと導く役割を担ったホルモンです。

プロラクチン(催乳ホルモン)

プロラクチンは催乳ホルモンとも呼ばれ、乳房を刺激して母乳の生成を促す役割を担ったホルモンです。
下垂体前葉機能低下症とは、この前葉が分泌する6種類のホルモンのうちどれか1つ、あるいは複数かすべてが何らかの原因によって正常に分泌されずに欠乏状態となり、それぞれのホルモンが担う機能に障害が現れる病気です。

下垂体前葉機能低下症の発症率に年齢差はあまりなく、日本国内では平成13年の調査では1年間に約1,500人の患者が確認されています。
しかし、実際には無症状ゆえに医療機関を受診していない方も多く、実際にはもっと多くの方が発症していると推測されています。
下垂体前葉機能低下症はさまざまな原因によって発症します。

主に頭部の外傷や手術、下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)や頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)など下垂体の周囲に発生した腫瘍(しゅよう)、リンパ球性下垂体炎(りんぱきゅうせいかすいたいえん)や脳炎(のうえん)など下垂体の炎症、分娩時の大量出血による下垂体前葉機能低下症、まれに先天性の遺伝子異常や下垂体の発生異常、形成異常をあげることができます。

実際に下垂体前葉機能低下症を発症した場合、下垂体の前葉から分泌されている6種類のホルモンのうちどのホルモンが欠乏するかによって現れる症状が異なります。

副腎皮質刺激ホルモンが欠乏した場合には低血圧、食欲不振、低血糖、体重減少、疲れやすい、筋力低下、意識障害といった症状が現れ、甲状腺刺激ホルモンが欠乏した場合には皮膚の乾燥、寒がり、低体温、便秘、脱毛、顔のむくみ、無気力、声の音域の低下、脈拍が少なくなる、記憶力や集中力の低下、抑うつといった症状が現れ、成長ホルモンが欠乏した場合には子どもの成長障害や大人の体脂肪増加や筋肉量の減少といった症状が現れ、性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモン)が欠乏した場合には勃起障害や無月経、不妊、性器委縮といった症状が現れ、プロラクチン(催乳ホルモン)が欠乏した場合には出産後の母乳の生成量低下の症状が現れます。

下垂体の前葉から分泌される6種類のホルモンは、生命維持に欠かせないホルモンもあるため、下垂体前葉機能低下症を発症した場合には検査によってどのホルモンが欠乏しているか確認することが重要です。

検査でははじめに問診を行ない、その後ホルモン検査やホルモン分泌刺激検査を行ないます。
また、下垂体前葉機能低下症の発症原因となる下垂体周辺の腫瘍の有無を確認するために、CT検査やMRI検査も行ないます。
検査によって確定診断が下ると、薬物によって欠乏してるホルモンを補う補充療法を行ないます。

また、発症原因が下垂体の周辺に発生した腫瘍である場合にはハーディ手術や前頭開頭術といった外科療法やガンマナイフを使った放射線治療を行ないます。
下垂体前葉機能低下症は、早期に適切なホルモン補充療法を行なえば発症前と同じ生活を送ることができます。

ただし、適切な治療をほどこさずに放置した場合には、高血圧や高血糖、成長障害などの合併症を引き起こすほか、下垂体の周囲に腫瘍が発生している場合は腫瘍サイズが徐々に大きくなり治療が難しくなる場合があります。

そのため、少しでも異変を感じた場合には、できるだけ早く医療機関で受診するようにしましょう。

下垂体前葉機能低下症の原因

下垂体前葉機能低下症は、さまざまな原因によって発症します。
最も発症原因として多いのは頭部の外傷や手術であり、ほかにも下垂体の周囲に発生した腫瘍、下垂体の炎症、分娩時の大量出血などがあります。

頭部の外傷や手術

下垂体前葉機能低下症は、下垂体の前葉から分泌されるホルモンの量が低下して欠乏状態になる病気ですが、頭部に外傷を負った際に下垂体の前葉を損傷するとホルモンが正常に分泌されなくなり、下垂体前葉機能低下症を発症する場合があります。

さらに、脳の外科手術により下垂体の前葉を損傷した場合にも、下垂体前葉機能低下症を発症する原因となります。

腫瘍

下垂体腺腫や頭蓋咽頭腫など、下垂体の周囲に発生した腫瘍により前葉が圧迫されて正常に機能しなくなり、下垂体前葉機能低下症を発症する場合があります。

下垂体前葉機能低下症を発症する男性患者の多くは、下垂体の周囲に発生した腫瘍が発症原因です。

下垂体の炎症

リンパ球性下垂体炎や脳炎、結核(けっかく)など、下垂体に発生した炎症によって前葉が正常に機能しなくなり、下垂体前葉機能低下症の発症原因となる場合があります。

分娩時の大量出血

分娩時や分娩後に大量出血を引き起こすと下垂体への血流量が減少し、下垂体が正常に機能しなくなって前葉の細胞が壊死(えし)し、下垂体前葉機能低下症を発症する場合があります。

この分娩時や分部後の大量出血が原因となって、下垂体前葉機能低下症を引き起こすことを、シーハン症候群(しーはんしょうこうぐん)といいます。

そのほかの原因

下垂体前葉機能低下症は、基本的に下垂体や前葉への損傷や炎症によるダメージが原因となって発症しますが、まれに先天性の遺伝子異常、下垂体の発生異常や形成異常により前葉が正常に機能せず、下垂体前葉機能低下症を発症する場合があります。

下垂体前葉機能低下症の症状

下垂体前葉機能低下症の発症は、下垂体の前葉から分泌される6種類のホルモンのうちどれか1つ、あるいは複数かすべてのホルモンの分泌量が減少して欠乏した状態の病気です。

副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモン)、プロラクチン(催乳ホルモン)の6種類のホルモンはそれぞれ担う役割が異なるため、どのホルモンが欠乏するかによって現れる症状が異なります。

副腎皮質刺激ホルモンが欠乏した場合の症状

副腎皮質刺激ホルモンが欠乏すると低血圧、食欲不振、低血糖、体重減少、疲れやすい、筋力低下、意識障害といった症状が現れます。

また、血液中のナトリウム濃度が低下し、頭痛や嘔吐などの症状が現れるばあいもあります。
さらに症状が悪化した場合には、感染症を引き起こし、感染症によってショック状態に陥る場合もあります。

甲状腺刺激ホルモンが欠乏した場合の症状

甲状腺刺激ホルモンが欠乏すると皮膚の乾燥、寒がり、低体温、便秘、脱毛、顔のむくみ、無気力、声の音域の低下、脈拍が少なくなる、記憶力や集中力の低下、抑うつといった症状が現れます。

また、子どもの場合は発育不全などの成長障害が現れます。

成長ホルモンが欠乏した場合の症状

成長ホルモンが欠乏すると、子どもの場合は低身長などの成長障害が現れ、大人の場合は筋肉量の減少や体脂肪増加といった症状が現れます。
また骨が脆くなる骨粗しょう症やスタミナの低下といった症状も現れます。

性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモン)が欠乏した場合の症状

卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンのことを指す性腺刺激ホルモンが欠乏すると、子どもの場合は思春期の第二次性徴が遅れます。

また、成人男性の場合は性欲低下や勃起障害、成人女性の場合は無月経や乳房の萎縮、不妊、成人の男女に共通して性器萎縮、わき毛や陰毛の脱落といった症状が現れます。

プロラクチン(催乳ホルモン)が欠乏した場合の症状

催乳ホルモンともよばれるプロクチンは、妊娠や出産に大きく関係するホルモンです。
プロラクチンが欠乏すると、出産後の母乳の生成量低下といった症状が現れます。

下垂体前葉機能低下症の検査・診断

下垂体前葉機能低下症を発症した場合、下垂体の前葉から分泌される6種類のホルモンのうち、どのホルモンの分泌量が減少して欠乏しているかを突き止めることが重要であり、問診をはじめホルモン検査やホルモン分泌刺激試験、CT検査やMRI検査などの画像検査を行ない総合的に確定診断を下します。

問診

問診では、どういった症状が現れているかを確認します。
下垂体前葉機能低下症は欠乏しているホルモンの種類によって現れる症状が異なるため、症状を確認することで発症の有無や欠乏しているホルモンの種類の特定に繋がります。

ホルモン検査

ホルモン検査とは、血液検査の一種です。
血液中に含まれる6種類のホルモンの数値を測定するほか、血糖値や電解質なども調べます。
このホルモン検査を行なうことによって、発症の有無や欠乏しているホルモンの種類を特定することができます。

ホルモン分泌刺激試験

ホルモン分泌刺激試験とは、視床下部(ししょうかぶ)ホルモン剤を注射することで下垂体の前葉から分泌されるホルモンの分泌量に変化があるかどうかを確認する検査方法です。

脳の視床下部は副腎皮質ホルモンや甲状腺ホルモン、性ホルモンを分泌する器官であり、視床下部を刺激する視床下部ホルモン剤を注射によって注入することで、正常な場合は下垂体の前葉から分泌されるホルモンの量が増加します。

しかし、視床下部ホルモン剤を注射しても下垂体の前葉から分泌されるホルモンの量が増加しない場合には、下垂体前葉機能低下症を発症していると診断されます。

CT検査

CT検査とは、X線を使って体の内部を輪切り状に撮影し、臓器や骨の状態を詳しく確認することができる画像検査の一種です。

下垂体前葉機能低下症の検査におけるCT検査は発症の有無を確認するために頭部のCT撮影を行ない、下垂体の周囲に腫瘍などが発生していないか確認します。

MRI検査

MRI検査とは、磁力や電磁波を使って体の内部を輪切り状に撮影し、臓器や骨の状態を詳しく確認することができる画像検査の一種です。

下垂体前葉機能低下症の検査におけるMRI検査は発症の有無を確認するために頭部のMRI撮影を行ない、下垂体の状態や周囲に腫瘍などが発生していないかを確認します。

下垂体前葉機能低下症の治療

下垂体前葉機能低下症の治療は、基本的に下垂体の前葉から分泌されている6種類のホルモンのうち、欠乏しているホルモンを薬物によって補う補充治療を行ないます。

ただし、発症原因が下垂体の周囲に発生した腫瘍である場合には、外科療法や放射線治療を行ないます。

また、下垂体の前葉から分泌されている6種類のホルモンのうち、生命維持に必ずしも必要ではない性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモン)が欠乏している場合には、治療を行なわないこともあります。

副腎皮質ホルモン補充療法

副腎皮質ホルモン療法とは、副腎皮質ホルモンの一種であるステロイド薬を使った補充療法です。
主に下垂体前葉機能低下症を発症している方のうち、副腎皮質刺激ホルモンが欠乏している方に対して行ないます。

実際に副腎皮質ホルモン補充療法を行なう際は、ステロイド薬の一種であるヒドロコルチゾンを1日あたり15~20㎎ほど2回に分けて経口投与します。

副腎皮質ホルモンは生命維持に欠かせないホルモンであるため、副腎皮質刺激ホルモンが欠乏している方は一生涯にわたり副腎皮質ホルモン補充療法を続ける必要があります。

しかし、副腎皮質ホルモン補充療法には副作用があり、ステロイド剤の投与後早い段階で現れやすい多幸感や不眠、不安といった精神症状をはじめ、骨の新陳代謝バランスの崩れにより骨密度が低下して脆くなる骨粗しょう症(こつそしょうしょう)、血糖値の上昇による倦怠感(けんたいかん)や頻尿(ひんにょう)、喉の渇きといった高血糖症状、胃酸の分泌や消化管運動が促進されることによる食後の痛みや吐き気、嘔吐(おうと)といった消化器障害、免疫力低下による感染症、感染症による発熱や喉の痛み、咳、倦怠感、腹痛、下痢といった症状を引き起こす場合があります。

甲状腺ホルモン補充療法

甲状腺ホルモン補充療法とは、甲状腺ホルモン製剤や甲状腺疾患治療薬などの薬物を使った補充療法です。
主に下垂体前葉機能低下症を発症している方のうち、甲状腺刺激ホルモンが欠乏している方に対して行ないますが、治療の直前に心筋梗塞を引き起こしたことがある方には行ないません。

実際に甲状腺ホルモン補充療法を行なう際は、甲状腺ホルモンと同じ働きをする薬物を少量の服用からはじめ、2~4週間かけて徐々に服用する量を増加しつつ、最も効果を発揮する服用量を見極めます。

甲状腺ホルモンは生命維持に欠かせないホルモンであるため、甲状腺刺激ホルモンが欠乏している方は一生涯に渡り甲状腺ホルモン補充療法を続ける必要があります。

しかし甲状腺ホルモン補充療法には副作用があり、胸部の違和感や胸痛、息苦しさといった狭心症発作をはじめ、腹痛、吐き気、嘔吐、食欲不振、全身の倦怠感、黄疸(おうだん)といった肝機能障害、副腎皮質刺激ホルモンが欠乏しているにもかかわらず副腎皮質ホルモンの補充療法を行なわずに甲状腺ホルモン補充療法を行なうと、血圧低下や呼吸困難といった副腎クリーゼ(ふくじんくりーぜ)などを引き起こす場合があります。

成長ホルモン補充療法

成長ホルモン補充療法とは、下垂体前葉機能低下症を発症している方のうち、成長ホルモンが欠乏している子どもの患者に対して行なう補充療法です。

子どもが成長ホルモンの欠乏に陥ると低身長などの成長障害が現れるため、早期に成長ホルモン補充療法を行なうことで、身長の成長を正常な状態へと促すことができます。

成人でも成長ホルモンの欠乏が重症化した場合には成長ホルモン補充療法を行ないますが、糖尿病(とうにょうびょう)や癌(がん)を患っている方、妊娠の可能性がある方、妊娠してる方に対しては行ないません。

実際に成長ホルモン補充療法を行なう際には、ソマトロピンという薬物を1週間に6~7回投与しますが、投与する量は症状に合わせて調節します。
成長ホルモン補充療法は、子どもの成長速度や骨年齢を確かめながら、必要な期間に応じて続ける必要があります。

しかし、成長ホルモン補充療法には副作用があり、痙攣(けいれん)をはじめ、血糖値の上昇による倦怠感や頻尿、喉の渇きといった高血糖症状、血液中のタンパク量が減少し尿中のタンパク量が増加することによるむくみといった症状を引き起こす場合があります。

性腺刺激ホルモン補充療法

性腺刺激ホルモン補充療法とは、性腺刺激ホルモンである卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンを補充する治療法です。

卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンなどの性腺刺激ホルモンの欠乏は生命維持に必ずしも必要ではありませんが、性腺刺激ホルモンが欠乏している方のうち、妊娠や出産を希望する女性の方や妊娠の確率を上げたい男性の方に対して行ないます。

ただし、前立腺癌(ぜんりつせんがん)や性早熟症(せいそうじゅくしょう)を患っている方に対しては行ないません。
実際に性腺刺激ホルモン補充療法を行なう際は、ゴナドトロピンという薬物を週に2~3回ほど一定量を筋肉注射で投与します。

性腺刺激ホルモン補充療法は、治療が必要な期間を見極めつつ継続しますが、副作用として腹水(ふくすい)や胸水(きょうすい)、下腹部の張りや痛みなどの症状が現れる卵巣過剰刺激症候群(らんそうかじょうしげきしょうこうぐん)をはじめ、卵巣過剰刺激に伴う血栓症(けっせんしょう)による足のむくみや痛み、呼吸困難など、顔面のむくみや発疹、血圧低下、頻脈(ひんみゃく)、喘鳴(ぜんめい)、喘息(ぜんそく)症状といったアナフィラキシー症状を引き起こす場合があります。

ホルモン療法

ホルモン療法とは、女性ホルモンを補充することで女性の性機能を正常な状態へと改善させる治療法です。

主に下垂体前葉機能低下症を発症している方のうち、女性ホルモンの欠乏により無月経や卵巣機能不全症(らんそうきのうふぜんしょう)などの症状が現れている方に対して行ないますが、妊娠の可能性がある方や妊娠している方、乳がんを患っている方や乳がんの経験がある方には行ないません。

実際にホルモン療法を行なう際は、エストロゲン製剤を1日あたり一定量を経口投与しますが、患者の症状や年齢に合わせて投与量を調節します。

ただし副作用として、血栓症を引き起こし呼吸困難、足のむくみや痛みといった症状が現れるほか、薬物に対するアレルギー反応によって発疹(ほっしん)、発熱、目のかゆみといった症状や、重症化した場合には急激な血圧低下や呼吸困難、意識消失といったアナフィラキシー症状を引き起こす場合があります。

さらに体内にナトリウムが蓄積されて、体重増加やむくみなどの症状が現れる電解質異常を引き起こす場合もあります。

男性ホルモン補充療法

男性ホルモン補充療法とは、テストステロン製剤などの薬物を使った補充療法です。
主に下垂体前葉機能低下症を発症している方のうち、男性ホルモンの欠乏により男性の性機能不全や不妊の症状が現れている方に対して行ないますが、前立腺癌を患っている方や妊娠の可能性や妊娠している女性には行ないません。

実際に男性ホルモン補充療法を行なう際は、テストステロン製剤の筋肉注射を2~4週間ごとに行ないます。

ただし副作用として、筋肉注射を行った部分の疼痛(とうつう)や、薬物に対するアレルギー反応により発熱や発疹、眼のかゆみ、重症化した場合には急激な血圧低下や呼吸困難、意識消失などのアナフィラキシー症状を引き起こすほか、性的興奮とは関係なく勃起状態が続く持続勃起症(じぞくぼっきしょう)を引き起こす場合もあります。

ハーディ手術

ハーディ手術とは、経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術(けいちょうけいこつどうかすいたいせんしゅてきしゅつじゅつ)とも呼ばれる外科療法の一種です。

主に下垂体腺腫など、下垂体の周囲に発生した腫瘍が原因となって下垂体前葉機能低下症を発症している方に対して行ないますが、腫瘍サイズが大きい方や合併症を引き起こしている方、高齢者、外科療法を希望しない方には行ないません。

実際にハーディ手術を行なう際は、鼻腔(びくう)から蝶形骨洞の後ろ側へと内視鏡を挿入し、下垂体の周囲に発生した腫瘍を切除または掻き出します。
ハーディ手術は2時間ほどで終了し、術後は10~14日間ほどの入院が必要ですが、開頭しないため患者の体への負担が少ないというメリットがあります。

しかし、腫瘍のひろがり具合によってはすべて切除できない場合があるほか、副作用として手術時に下垂体を損傷するとによる低血圧や脱力、放尿症、無月経、勃起障害といった下垂体機能低下症(かすいたいきのうたいかしょう)をはじめ、下垂体後葉の機能低下により喉の渇きや多尿(たにょう)、頻尿といった中枢性尿崩症(ちゅうすうせいにょうほうしょう)、くも膜下腔(まくかくう)から髄液が漏れる髄液鼻漏(ずいえきびろう)、手術部位の痛みや膿、感染症などを引き起こす場合があります。

前頭開頭術

前頭開頭術とは外科療法の一種で、開頭して下垂体の周囲に発生した腫瘍を切除または掻き出す手術方法です。

主に下垂体の周囲に発生した腫瘍が原因となって下垂体前葉機能低下症を発症している方のうち、ハーディ手術では腫瘍を完全に摘出できない方に対して行ないますが、腫瘍サイズが大きい方や合併症を引き起こしている方、高齢者、外科療法を希望しない方には行ないません。

実際に前頭開頭手術を行なう際には、前頭部の皮膚を切開後に頭蓋骨の一部を外し、発症原因となっている腫瘍を目視で確認しながら切除または掻き出します。

ハーディ手術と比べると患者の体への負担が大きいというデメリットがあり、さらに副作用として手術時に下垂体を損傷するとによる低血圧や脱力、放尿症、無月経、勃起障害といった下垂体機能低下症をはじめ、下垂体後葉の機能低下により喉の渇きや多尿、頻尿といった中枢性尿崩症、視力障害、手術部位の痛みや膿、感染症などを引き起こす場合があります。

ガンマナイフ

ガンマナイフとは放射線治療の一種で、定位放射線治療ともよばれています。
主に下垂体の周囲に発生した腫瘍が原因となって前葉機能低下症を発症している方のうち、外科療法を行なえない方や外科療法後にまだ腫瘍が残っている方に対して行なう治療法です。

実際に治療を行なう際には、高い放射線量を持つガンマナイフを腫瘍へと照射します。
基本的にガンマナイフの照射は1回のみとされ、1~3時間ほど照射した後は3日ほどの入院が必要です。
ガンマナイフを使った放射線治療は術後の痛みが少なく、体への直接的な負担がありません。

しかし副作用として、治療後数時間以内に血圧低下や吐き気、嘔吐、めまい、頻脈などの症状が現れる放射線宿酔(ほうしゃせんしゅくすい)を引き起こす場合があるほか、下垂体を損傷するとによる低血圧や脱力、放尿症、無月経、勃起障害といった下垂体機能低下症)、腫瘍の周辺組織が水分を異常に蓄積することによって脳がむくむ脳浮腫(のうふしゅ)を引き起こす場合もあります。

下垂体前葉機能低下症は、発症後できるだけ早く適切な治療をほどこすことで予後は良好な場合が多いです。
欠乏しているホルモンの補充療法を行なえば、発症前と同じ生活を送ることができますが、欠乏しているホルモンの種類によっては一生涯にわたり補充療法を継続する必要があります。

ただし、放置して症状が進行すると高血圧や高血糖、成長障害などの合併症を引き起こすほか、下垂体の周囲に腫瘍が発生している場合は腫瘍サイズが小さいうちに切除することが望ましいです。

そのため、少しでも異変を感じた場合には、できるだけ早く医療機関で受診し、早期発見・早期治療に努めましょう。

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