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脳性麻痺を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/05/30 子供の病気

脳性麻痺とは(概要)

赤ちゃんが母親の体内にいるとき、もしくは誕生後まもなくまでのあいだに、脳になんらかのダメージを受けることで起こる運動障害のことを「脳性麻痺(のうせいまひ)」と呼びます。

具体的には妊娠中から生後1ヶ月ほどまでのあいだに脳に損傷が起こることで発症します。
脳性麻痺という言葉は知っていても、赤ちゃんがかかる病気だということは知らなかった人も多いのではないでしょうか。

ダメージを受けた脳の部分によっていくつかの種類にわけられます。
脳への障害による運動障害というイメージから知的障害を併発すると考える人も多いですが、必ずしも知的障害を伴うものではありません。
知的障害を伴うケース、運動障害のみを起こすケースなど、個々によって症状には違いがあります。

脳性麻痺は完治が難しい病気

現代の医学を持ってしても、壊れてしまった脳の部分を治すことはできません。
そのため、運動障害の原因を完全に取り除くことは難しいのが現状です。

生まれたばかりの赤ちゃんに脳性麻痺があるとわかり、大変な悲しみを抱くお母さんも多いですが、脳性麻痺の治療で大切なポイントは「最適な治療を早くからおこなうこと」です。
損傷した脳の部位や状態に合わせた治療をおこなうことで、後遺症の悪化を防ぐことは可能となっています。

脳性麻痺の原因

脳性麻痺の原因は、お母さんのお腹のなかにいるあいだに起こるものと、誕生後に起こるものにわけられます。

妊娠中の原因となるもの

母親が「妊娠高血圧症候群」を患う

妊娠高血圧症候群をわかりやすく言えば妊娠がきっかけとなって起こる中毒症状です。
この症状の原因ははっきりと解明されていません。
なんらかの関係があると考えられているのは「妊娠への適応がうまくいかない場合」が多いのではないかということです。

妊娠初期の胎盤が形作られる時期に母体がうまく適応できず、それが妊娠後期になると表にでてくると考えられています。
症状があらわれるのは一般的に妊娠8ヶ月頃の後期で、まれに妊娠中期から見られることもありますが、早く発症すると症状が悪化しやすくなると言われています。

症状が重くなると母子ともにたいへん危険な状態におちいります。
妊娠高血圧症候群の主な症状はむくみ、高血圧、尿タンパクですが、このうちむくみは近年では定義から外されています。
しかしながら、むくみを軽視するのは危険であるとの見方も根強く、妊娠中にむくみがなかなかとれない、朝起きるとひどいむくみがあるなど、気になる点がある場合はすぐに医師に相談してください。

妊娠高血圧症候群にかかりやすい人は?

糖尿病、高血圧、腎臓病を患っている、ふくよかすぎる体型、多胎妊娠(双子など)、35歳以上の高齢での初産、または15歳以下での若年妊娠・出産、スケジュールのハードな仕事に就いている、仕事の疲れやストレスが慢性的にたまっている、初の妊娠である、過去の妊娠で妊娠高血圧症候群の症状が見られた人などがかかりやすいと言われています。

・何らかのウイルス感染によるもの
・胎盤の機能がうまく働かず、異常がある
・染色体の異常など遺伝的な原因
・赤ちゃんの脳の形成段階での障害

出産時、または出産後の生活環境で原因となるもの

・仮死分娩
・髄膜炎や脳炎
・頭を強く打つ
・核黄疸
・頭蓋内の出血

これらが脳性麻痺の原因になりやすいとされていますが、妊娠中に起こる原因と同じく、未だ解明されない部分も多いとされています。
脳性麻痺の発症率は赤ちゃん1000人に対し1人から4人程度となっていて、さらに早産のケースでは発症リスクが10倍ほどになります。
言葉を交わすことができず、体の動きもつたないために生後すぐには症状がわかりにくく、母親や周囲の人が気づきはじめるのは生後約6ヶ月頃からが多いと言われています。

脳性麻痺の症状

脳性麻痺の具体的な症状は、生後約6ヶ月頃から徐々に見えてきます。
脳に障害が起きている状態のため、症状は主に心身の発達の遅れや運動障害としてあらわれます。

授乳時に上手に飲むことができない

これも脳性麻痺の症状の一つに挙げられますが、脳に障害がなくても授乳がうまくできない赤ちゃんも多くいます。
可能性の一つとして考えられていることなので、不安が大きい場合は医師に相談すると良いでしょう。

見ていて異常なほど体を反り返す

体を反り返すのは赤ちゃんの行動として珍しいものではありません。
しかしながら、睡眠中に手足が突っ張るような様子が見られる、反り返しが多く見られる場合には注意が必要です。
また、反り返し後に首や肩にねじれが見られるなどがあれば、脳性麻痺の可能性があります。
一般的に、赤ちゃんが起きている際に自分で反り返し行動をするのは問題がないとされています。

運動発達の遅れ

生後6ヶ月頃から気づきやすい症状です。
寝返り、ハイハイ、おすわりなど赤ちゃんが成長とともに身につける行動が遅いと感じたら、医師に相談してみましょう。
ただし、体格などによっても成長には多少の違いがありますから、あまり神経質にならずにゆったりと赤ちゃんの様子を観察します。
一般的に生後5ヶ月ほどですわると言われている首がなかなかすわらない、ハイハイができないなどが気になりはじめたら、脳性麻痺を疑って早めの診察を受けることをおすすめします。
大切なことは、不安なことをすぐに相談できるかかりつけ医院を探しておくことです。

このほかにも、関節が硬くうまく手足を動かせない、声をスムーズに出せていないなどの様子があれば脳性麻痺による症状の可能性があります。
脳性麻痺は進行性のある症状ではないので運動障害が悪化していくことはありませんが、赤ちゃんの意志で動きを止めていることのできないアテトーゼ型麻痺で不随意運動が持続していると、首の動きが制御できずに頚椎に支障をきたすなどの二次障害が起こる恐れがあります。
運動障害が進行していく様子が見られれば、脳性麻痺とは違う別の病気に陥っている可能性が高くなります。
脊髄の神経が通っている頚椎を傷めてしまうと、運動障害や麻痺の症状が重くなるケースがあります。

脊髄の神経が痛むことで、子ども時代や若いころは平気でも更年期の頃に不具合があらわれ、ひどい場合には寝たきりの生活になるなどの心配もあります。
頚椎の障害は脳の障害と同じく、治療をおこなっても完全に治すことが不可能です。
そのため、頚椎の障害などの二次障害を防ぐ目的として首の骨を固定したり、首の筋肉の一部を切り取ったりといった手術が治療の一環とされる場合もあります。

脳性麻痺の検査

赤ちゃんに脳性麻痺による障害があるかどうかを監査する方法は多岐にわたり、血液検査、髄液検査、視覚検査、聴覚検査、知能テスト、運動機能テスト、脳内の発作を確認するための脳電図検査、MRI検査やCT検査などがあります。
さらに、赤ちゃんだけではなくお母さんになんらかの合併症がないかなども確認しつつ、総合的な結果から判断されます。

脳性麻痺の治療法

治療法や原因などについてさまざまな研究が続けられていますが、まだ脳性麻痺を根本から完全に治療することはできません。
そのためこの病気の治療法は症状の悪化を防いで赤ちゃんが持っている能力を最大限に活かすためのものとなります。
治療法にもいくつかの種類があり、一般的には症状に合わせていくつかを組み合わせておこないます。

リハビリテーション

リハビリは脳性麻痺の治療のなかでもっとも重要と言っても良いでしょう。
麻痺による運動障害を抱えながらも、持っている能力を最大限に活かすために必要不可欠な治療法となります。

理学療法

体の動かし方、姿勢を適切に保つなど、普段の生活で必要な動きの訓練をおこないます。
早期からおこなうのが望ましく、脳性麻痺と判断されたあとすぐに実施されることも多いでしょう。
うまく動かせないストレスからリハビリそのものに嫌悪感を持ってしまうことを防ぐために、専門の理学療法士のアドバイスのもとで、無理強いすることなく続けられるよう工夫されます。

特に家庭内でおこなうリハビリには注意が必要で、理学療法士とコミュニケーションをとりながら注意深く進めていきます。
動かしにくい関節を無理やり動かしてしまうと痛める心配もあり、関節の故障や変形を予防するための補装具が用いられることもあります。
補装具を着用してのリハビリは3歳頃から取り入られることが多く、その後成長に合わせ作り直しながら治療をしていきます。
そのほか、必要に応じて車いすや杖、歩行器などが用いられます。

作業療法

理学療法で基本的な体の動かし方に慣れたら、日常に必要な動きに慣れるための作業療法もおこないます。
具体的には、服の着替え、トイレ、食事、入浴などに必要な動作を身につけます。
補装具や歩行器に頼りすぎず、持つ能力を活かしながら生活するために必要な治療となります。

子供の心身を健康に保ちながらおこなうために、積み木やぬりえ、お絵かきなどのさまざまな遊びを通して動きを学んでいきます。
リハビリを嫌なことではなく、楽しみながら継続しておこなえるものにする環境をつくることが大切です。

言語聴覚療法

唇や舌、あごの動きがスムーズでないと、言葉の発声に不具合が生じます。
脳性麻痺での運動障害があっても、できるだけはっきりと言葉を伝えられるように訓練をおこなうのが言語聴覚療法となります。

子供時代から多感な思春期にコミュニケーションがうまくとれないことでのストレスやコンプレックスを招かないための療法でもあります。
食べ物の咀嚼の方法から、つばを飲み込む動きの方法など、口や口に関する器官の動かし方を学び、基本的な動きから全体を改善していきます。

ボツリヌス毒素を用いた治療

神経に作用する働きをもつボツリヌス毒素を用いたボトックス治療が適応されるケースもあります。
脳性麻痺をはじめ、まぶたや顔のけいれんの治療としても知られる方法です。

子どもが脳性麻痺と診断されたらどうする?

現段階では完治させることはできない病気ですが、治らないことを悲観して悩んで時間が経過したり、そもそも充分な治療を受けさせなかったりすると、将来の発育に大きな不具合が出る恐れがあります。
障害が大きくなる前に、早めに適切な治療を開始することが必要です。

脳の一部が損傷を起こしていても、残っている健常な部位を発達させることは可能なので、リハビリによる訓練や体の機能を高める動きを学ぶことで将来的な社会への参加もしやすくなります。
脳性麻痺の子どもの治療の一環として、精神的な面をフォローすることも忘れてはなりません。
うまく動かせないことを咎めたり、叱ったりすることを避け、不安なことや気になる点は医師や医学療法士とのコミュニケーションで解決していきましょう。

脳性麻痺を予防することは可能なのか

脳性麻痺の原因には解明されていない部分が多く、予防では解決しきれない病気です。
しかしながら、ゼロにすることはできなくても、生まれてくる赤ちゃんが脳性麻痺になるリスクを少しでも軽減する方向での予防は可能であると考えられています。
妊娠高血圧症候群を予防するために食事の内容を見直し、高血圧を招きやすいメニューになっていないかのチェックや、粗食を心がけることでの減塩などが効果的です。
脳性麻痺は未熟児になると患うリスクが大きくなると言われているので、低出生体重児で誕生しやすい早産を予防する意識もポイントとなるでしょう。

風疹、水痘、麻疹など胎児にも影響の出やすい感染症の予防や、自身の喫煙や受動喫煙を避けることも必要です。
脳性麻痺の治療法は、いつの日か根本的な脳の損傷を治療できるように世界中で研究されています。
もっともそれに近い療法として、へその緒に含まれる幹細胞を用いた研究と臨床試験が進められています。
そのほかにも損傷した脳の細胞を再生させる研究もおこなわれており、近い将来に革新的な治療法が広まることが期待されています。

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