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妊娠高血圧症候群を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2017/10/17 女性に多い病気

妊娠高血圧症候群とは

妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん)とは、妊娠20週以降産後12週までに引き起こされる高血圧のことです。
高血圧だけ起こっている場合は妊娠高血圧症(にんしんこうけつあつしょう)、高血圧に伴いタンパク尿が出ている場合には妊娠高血圧腎症(にんしんこうけつあつじんしょう)といいます。

最高血圧(収縮期血圧ともいいます)が140mmHg以上(重症では160mmHg以上)、または最低血圧(拡張期血圧ともいいます)が90mmHg以上(重症では110mmHg以上)では、高血圧が引き起こされたといいます。
尿中にタンパクが1日0.3g以上(重症では2g以上)排出されることをタンパク尿が出ているといいます。

妊娠高血圧症候群は妊婦の約5%の割合で発生しており、妊娠32週以降に引き起こされることが多いです。
妊娠32週の前に引き起こされた場合は早発型といい、重症化するリスクが高まります。

重症化した女性は高血圧、タンパク尿のほかに、子癇(しかん)という意識消失やけいれん発作、脳出血(のうしゅっけつ)、肝機能障害、腎機能障害、肝機能障害に溶血と血小板減少が付随するHELLP症候群(へるぷしょうこうぐん)などを招くことがあります。

母親だけでなく胎児に悪影響がおよぶことがあり、胎児発育不全(たいじはついくふぜん)といってお腹のなかにいる赤ちゃんの成長が滞ってしまう問題や、常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)という、子宮の壁から胎盤がはがれて赤ちゃんへと酸素が供給されなくなる問題、お腹のなかにいる赤ちゃんが元気であるとはいえない状態になる胎児機能不全(たいじきのうふぜん)、そして最悪の場合には赤ちゃんが命を落としてしまう胎児死亡(たいじしぼう)を招いてしまうことにもなりかねません。

妊娠高血圧症候群は、高血圧、糖尿病(とうにょうびょう)、腎臓病(じんぞうびょう)などを患っている人や、肥満(BMI25以上、非妊娠時体重55kg以上)、35歳以上でとくに40歳以上、15歳以下、家族のなかに妊娠高血圧症候群や高血圧の人がいる、双子などの多胎(たたい)、初回妊娠、感染症(尿、歯周病)、妊娠高血圧症候群の経験者、妊娠がわかった初診時の血圧が高い(最高血圧130~139mmHgまたは最低血圧80~89mmHg)女性に起こりやすい病気です。

現状においてこの病気が起こる原因は完全にわかっているわけではなく、根本的な治療方法も確立されていません。
予防方法もまた、確実な有効性が証明されているものはないというのが現状です。

妊娠高血圧症候群の原因

この病気はどうして起こるのですか?

現状において、妊娠高血圧症が引き起こされる原因は解明されていません。
複数の説が存在し、いまのところ有力視されているのが、妊娠15週までに胎盤の血管が異常な形成のされかたをしてしまうというものです。

胎盤が形成される過程で、一度子宮側のらせん動脈という血管の壁を壊し、より多量の血液が胎児へと供給されるよう、妊娠15週までに血管の壁の構造を作り直す現象が発生します。

妊娠高血圧症候群では、血管の壁の再構築が不十分な可能性があり、実例として患者の子宮を調べた結果、再構築が十分ではなかった血管が確認されています。

この血管の異常な形成のされかたにより、胎盤を経由して赤ちゃんへと届く栄養素や酸素の受け渡しがスムーズに行なわれなくなり、胎児の発育が悪くなってしまいます。

母親の体はこの問題をどうにかしようと、自分の体を高血圧の状態にしてまで胎児の発育に不可欠な栄養素や酸素を供給しようとして、妊娠高血圧症候群が引き起こされるという見方がされています。

どういう人に起こりやすい病気ですか?

年齢が高い人、肥満の人、持病がある人、出産がはじめての人、前に妊娠高血圧症候群を起こした人、双子など多胎妊娠の人、妊娠がわかった初診時の血圧が上昇していた人、感染症がある人などがハイリスクです。

年齢が高い人に関しては、35歳以上の人に妊娠高血圧症候群が引き起こされるリスクが上昇し、40歳以上になるとさらにリスクは上昇します。
また、15歳以下の女性でも妊娠高血圧症候群を引き起こすリスクは高まります。

肥満に関しては、BMIが25以上の人や、非妊娠時の体重が55kg以上ある人は、妊娠高血圧症候群のリスクが高まります。
なお、BMIは非妊娠時の体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出することが可能です。
持病に関しては糖尿病、腎臓病、高血圧などがある人、感染症は尿、歯周病などが含まれます。

そのほか、妊娠がわかった初診時の血圧が上昇していた人に関してですが、妊娠初期の最高血圧が130~139mmHgまたは最低血圧80~89mmHgの女性の場合、あとあと妊娠高血圧症候群が引き起こされるリスクが高まります。

なお、この血圧の数値に非妊娠時にすでになっているような人も、その後に妊娠高血圧症候群を起こしやすくなるため注意が必要といえるでしょう。

妊娠高血圧症候群の症状

主な症状

高血圧、タンパク尿があります。
ハイリスクの女性はとりわけ、家で血圧測定を行なうことが推奨されています。
ほかには、眼華閃発(がんかせんぱつ)という、瞳を閉じると花火に似た光が見える症状が先行するケースも珍しくありません。

ただこれに対し目立った症状がなく、悪化していても自覚しないケースも少なくありません。
妊婦健診などをきっかけに、体がだるい、頭が痛い、眠気などの異常があったことに気が付く女性もいます。

そのほかには、おしっこの量が減少することによるむくみ、急激に太る、子宮がぎゅっと縮むような感じがするといった症状が引き起こされる人もいます。

なお、妊娠高血圧症候群では、非常に重く生命に危険がおよぶような合併症を招くリスクがあります。
主な合併症としては子癇と脳出血、HELLP症候群、常位胎盤早期剥離をあげることが可能です。

子癇と脳出血

子癇は妊娠20週以降に引き起こされるけいれんと意識消失発作で、原因としててんかん、脳炎(のうえん)、脳腫瘍(のうしゅよう)、脳血管障害(のうけっかんしょうがい)、薬物中毒が除外されたもののことをいいます。

この合併症は急激に引き起こされた高血圧で脳内の血液が増加し、脳内にむくみが生じてけいれんを招くとされています。
子癇が解消されないと脳のむくみがひどくなって脳ヘルニア(のうへるにあ)の状態になり、胎児だけでなく母親の生命までおびやかされてしまいます。

発作が引き起こされた女性には、脳出血(のうしゅっけつ)が起こっていることがあり、CT検査やMRI検査で脳出血の有無を調べ、脳出血があることが確認された場合には脳神経外科医または神経内科医と連携して治療を受けなければいけなくなります。

また、子癇が解消されないケースや胎児の状態がよくないケースでは、なるべく早く胎児をお腹から出してあげなければいけません。
そのため、帝王切開を選択しなければいけなくなるケースもあります。

母子共に救命するのがベストですが、やむを得ない場合には母親の命のほうが優先される形になります。
なお、子癇の前兆として強い頭痛が続く、ものが見えなく感じる、目の前で花火に似た光が見える、突然にみぞおちのあたりが痛む症状が起こることが知られています。

HELLP症候群

妊娠後半~分娩後に起こりやすい合併症であり、血中の赤血球が破壊されて、肝臓の機能が低下、血小板が減少してしまう病気であり、妊娠高血圧症候群全体の4~12%に引き起こされます。

ほかの症状としては急に起こるお腹の痛み、吐き気、おう吐などがあります。
血液検査でこの病気かどうかを調べ、発症している場合はなるべく早く赤ちゃんを母親のお腹から出してあげます。

HELLP症候群の10人に2人程度の割合で血液の凝固障害、肺水腫(はいすいしゅ)、多臓器不全を招くため、こうした問題に対する治療も行なわなければいけません。
発見が遅くなると致命的になるため、警戒が必要な合併症です。

なお、HELLP症候群の原因は現状において完全にはわかっていません。

常位胎盤早期剥離

胎盤が出産前にはがれてしまう病気です。
妊婦全体の1%前後に起こり、妊婦が命を落としてしまうリスクは5~10%、赤ちゃんが命を落としてしまうリスクが30~50%というデータが示されています。
また、赤ちゃんが命を落とさなかったとしても脳性麻痺(のうせいまひ)を引き起こすリスクがあるため、急いで的確な処置をほどこさなければいけません。

性器からの出血、お腹の痛み、子宮が異常にかたくなる、胎児の動きが少なくなるのが主な症状で、胎盤がはがれた箇所が大きい場合、出血性ショックや胎児死亡を招くことになります。

母親が出血性ショックや凝固障害を招いている場合には、こうした問題に対する治療を行なうと共に、なるべく早く赤ちゃんをお腹から出します。
場合によっては、帝王切開を選択しなければいけなくなるケースもあります。

また、出産後に子宮の収縮が悪い場合は出血量が多くなるため、子宮の摘出を行なわなければいけなくなる場合があります。

なお、常位胎盤早期剥離の原因は解明されておらず、引き起こされるのを前もって知ることはできません。

胎児への影響

妊娠高血圧症候群では、子宮や胎盤の血流が悪くなります。
胎児は母親の胎盤を通じて栄養素や酸素を受け取っているため、栄養素や酸素が不足してしまいます。

栄養不足の状態では胎児発育不全、低出生体重児(ていしゅっせいたいじゅうじ)になることがあり、酸素不足では低酸素症(ていさんそしょう)を起こし、低酸素症が持続すると脳に悪影響をおよぼすことがあります。

また、子宮内胎児死亡(しきゅうないたいじしぼう)といって、お腹のなかで赤ちゃんが命を落としてしまうことにもなりかねません。

そのほか、子宮収縮が引き起こされると、子宮から胎盤への血流が余計に悪化し、胎児の酸素不足により胎児機能不全という、心拍に異常が出る状態を招くリスクが高まります。

このようになると、なるべく早く赤ちゃんをお腹から出してあげる必要があり、帝王切開が選択されるケースが多いです。

妊娠高血圧症候群の検査・診断

血圧測定と尿中タンパクの測定

妊娠高血圧症候群の診断の基本は、この2種類の検査を行なうことです。
およそ6時間以上の間隔をあけ、複数回最高血圧が140mmHg以上あるいは最低血圧が90mmHg以上、またはそのどちらも該当する場合、高血圧と診断されます。

なお、妊娠高血圧では最高血圧160mmHg以上、もしくは最低血圧110mg以上を示した場合には、重症の妊娠高血圧と判断されます。
また、尿検査では24時間の尿を採取して1日のタンパク尿を正確に調べなければいけません。

尿中に1日あたり300mg以上のタンパクが出る場合にはタンパク尿と診断されます。
重症の場合には1日あたり2g以上のタンパク尿が出ます。

そのほかの検査

脳出血の有無を確認するため、CT検査やMRI検査が行なわれています。
また、HELLP症候群の診断のために血液検査、常位胎盤早期剥離では超音波検査や胎児モニターが行なわれています。

妊娠高血圧症候群の治療

どのように治療するのですか?

軽症と重症とで、治療方法は異なります。
軽症では基本的に薬を使用することはせず、通院でカロリー制限や塩分制限などに取り組みます。
なるべく安静に過ごし、家庭で血圧測定を行いながら、定期的に病院で診察を受けることになります。

一方、重症の場合は入院加療となり、安静にすると共に血圧を低下させる作用のある薬や子癇を抑制する点滴注射をし、妊娠週数が浅いケースでは胎児が大きくなるのを待つ場合もあります。
ただ、母子の状態次第では帝王切開あるいは陣痛誘発で胎児をお腹から出し、そのあとに母親と赤ちゃん療法の治療を行なうケースもあります。

出産後に快復しますか?

出産後、胎盤が母体から排出されることにより、大部分の女性の状態は改善します。

しかしながら、重症のケースでは、出産後も血圧が上昇している状態や、尿中にタンパクが出る状態が持続することがあり、出産後も継続して血圧を低下させたりけいれん発作を防ぐ薬を使用しなければいけない場合があります。

また、出産後84日以上、高血圧やタンパク尿が認められるケースでは、別の病気の有無を精査することが推奨されています。

妊娠高血圧症候群はその後の健康に影響は出ますが?

妊娠高血圧症候群を起こした人はそうではない人と比較して、出産後数十年が過ぎて高血圧、脳血管障害、虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)、糖尿病、脂質異常症(ししついじょうしょう)などのメタボリックシンドローム、腎臓病などが発見されることが多いという報告があります。

生活習慣病との関わりが深いということで、出産後にも食事の管理を行なう、ほどよい運動を習慣化する、十分に休息・睡眠をとる、喫煙や過度な飲酒はやめるなど、生活習慣には十分に気をつけることが大切といえるでしょう。

また、ストレスが蓄積しないよう、自分なりの健康的な発散方法を実践しましょう。
適度な運動は妊娠高血圧症候群のリスクを上げる肥満の防止だけでなく、ストレス発散にも効果的です。

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