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常位胎盤早期剥離を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/05/10 女性に多い病気

常位胎盤早期剥離とは(概要)

妊娠して安定期に入り、順調に出産を迎えるなかで、母子ともに命の危険にさらされる症状の一つが「常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)」です。
常位胎盤早期剥離とは、正常位置に付着している胎盤がまだ胎児がお腹のなかにいるうちに剥がれる(剥離)病気で、妊娠後期や分娩中に起きます。
そもそも胎盤とは、受精卵が子宮に着床後に「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」というホルモン分泌により、母体と胎児を結ぶ「絨毛」という糸ができて子宮の一部が分厚くなり、その一部にくぼみができて胎盤となります。
胎盤形成は妊娠直後からはじまり、妊娠16週頃に完成し、安定期へと入ります。

胎児は胎盤を通して酸素や栄養を補給し、通常は出産後15~30分ほどで自然に子宮から剥がれ体外へと排出されます。
しかしながら、何らかの原因によって妊娠後期や分娩中に剥がれると、子宮壁から出血を起こし、子宮壁と胎盤のあいだに「胎盤後血腫」ができると血液が固まりにくくなる「DIC」やDICによる出血性ショック、腎臓や肝臓などの臓器障害を引き起こし、母体が危険にさらされます。
また、胎盤が剥がれると胎児への栄養と酸素供給も止まり、最悪の場合は胎児死亡、助かった場合でも脳性麻痺などの障害が残るリスクが高いとされています。
常位胎盤早期剥離は胎盤がどの程度剥がれるかによって重症度が判定され、軽度(0度・Ⅰ度)、中等度(Ⅱ度)、重症(Ⅲ度)に分類されます。

0度(発生頻度5~10%)

胎盤の剥離面積が30%以下、微量の子宮内出血を伴う場合があるがほとんど無症状のケースが多い。

Ⅰ度(発生頻度10~20%)

胎盤の剥離面積が30%以下、子宮内出血が500ml以下、胎児の心音消失が確認できる場合。

Ⅱ度(発生頻度50~70%)

胎盤の剥離面積が30~50%、子宮内出血が500ml以上、突然の多量出血と下腹部の激痛を伴う。

Ⅲ度(発生頻度10~20%)

胎盤の剥離面積が50~100%、高度の子宮内出血によって胎児死亡のリスクが高い。

胎盤早期剥離が起きる割合は全分娩の1%ほどとされていますが、母体の死亡率は重症の場合10%、胎児の死亡率は30~50%と高く、出産に関するトラブルにおいて死亡率が高い病気となっています。
そのため、常位胎盤早期剥離が起きた場合は迅速な処置が求められますが、常位胎盤早期剥離の詳しい原因は未だ解明されていません。
また、事前に予知することは難しく、検診では正常でも翌日に突然発症するというケースも珍しくありません。

常位胎盤早期剥離の原因

常位胎盤早期剥離の原因は詳しく解明されていませんが、さまざまな要因によって引き起こされるという見方がされています。

妊娠高血圧症候群(PIH)

妊娠高血圧症候群とは、妊娠中に高血圧、むくみ、尿たんぱくのうちのどれか一つ、あるいは二つ以上の症状が引き起こされることをさします。
多くの場合が妊娠後期に発症し、常位胎盤早期剥離のリスクを高めるだけでなく、発症した場合は重症化する場合が多いです。
また、常位胎盤早期剥離だけでなく、早産のリスクも高めるとされており、妊娠中の体重や塩分コントロールが重要となります。

胎児奇形、子宮胎児発育遅延(IUGR)

胎児奇形の場合は胎盤の構造が異常な場合が多く、常位胎盤早期剥離のリスクが高まるとされています。
また、子宮胎児発育遅延が重症の場合、妊娠高血圧症候群が原因である場合が多いため、常位胎盤早期剥離のリスクが高まるとされています。

常位胎盤早期剥離の既往

これまでの妊娠において常位胎盤早期剥離の経験がある場合、次の妊娠においても常位胎盤早期剥離のリスクが高いとされています。
一般的に常位胎盤早期剥離の再発率は10%ほどとされており、万が一の場合に備えて事前に主治医に相談しておくことが重要です。

前期破水、前期破水による感染

陣痛が起きる前に破水した場合、子宮の内圧が急激に減少することで、常位胎盤早期剥離を引き起こす場合があります。
また、前期破水すると雑菌が侵入して卵膜や胎盤が感染し、炎症を引き起こして常位胎盤早期剥離のリスクが高まるとされています。

切迫早産

妊娠後期に不正出血があるケースでは、切迫早産の危険があるため絶対安静となりますが、無理を続けると子宮への負担が増して子宮収縮を悪化させてしまい、常位胎盤早期剥離のリスクを高めるとされています。

絨毛羊膜炎

絨毛羊膜炎とは胎児を包む羊膜・脱落膜・絨毛膜のうち羊膜と絨毛膜が炎症を起こす病気です。
絨毛羊膜炎を放置すると子宮収縮を引き起こし、常位胎盤早期剥離のリスクが高まるとされています。

喫煙

妊娠中の喫煙は胎盤血管の攣宿を引き起こし、常位胎盤早期剥離のリスクを高めます。
また、たばこを吸っていることは切迫早産のリスクを高めるほか、胎児の発育に悪影響を及ぼすことが分かっています。
喫煙をする方は喫煙をしない方と比べて常位胎盤早期剥離のリスクが2倍も高いとされているため、妊婦自身の喫煙だけでなく家族の喫煙も控えるようにしましょう。

腹部への外的刺激

常位胎盤早期剥離において全体の1~2%が腹部への外的刺激が要因とされています。
交通事故や転倒などで受ける強い刺激だけでなく、人とぶつかった場合やボールが当たった場合など、軽い刺激でも常位胎盤早期剥離を引き起こす場合があります。
また、外的刺激を受けてすぐに常位胎盤早期剥離を発症する場合と、数時間経ってから発症する場合があるため、外的刺激を受けた場合はすぐにかかりつけの産科医に報告し、最低4時間以上は経過観察を行なう必要があります。

その他の要因

腎炎、子宮筋腫、バセドー病の疾患をお持ちの場合も常位胎盤早期剥離のリスクが高まるとされています。

常位胎盤早期剥離の症状

常位胎盤早期剥離は、発症すると母子ともに危険になる恐ろしい病気ですが、前兆が見られないというやっかいな特徴があり、予測が難しいとされています。
なかには分娩中に発症して緊急帝王切開になる場合もあり、妊娠後期になると常に気をつけておきたい病気でもあります。
しかしながら、常位胎盤早期剥離は予測が難しい反面、いくつかの兆候が見られるため、それらの兆候を感じた場合はただちにかかりつけの産科医に相談してください。

腹痛

妊娠中はお腹が張りやすく腹痛を感じることが多々ありますが、常位胎盤早期剥離の場合は立っていられないほどの急激な腹痛が持続的に伴います。
なかには救急車で運ばれる妊婦さんもいますが、腹痛の度合いには個人差があり、胎盤の剥離度合いによっては腹痛が軽い場合もあり、常位胎盤早期剥離と気付きにくい場合があります。

出血

常位胎盤早期剥離は少量の出血を伴いますが、妊婦さんによっては出血を感じない場合があります。
また、出血量が少ない場合でも子宮内では大出血している場合があり、急性貧血を起こすこともあります。

胎動減少

胎児の胎動は妊娠後期になるほど激しくなりますが、常位胎盤早期剥離を引き起こしている場合は胎動が減少することがあります。
2~3時間に10回ほどの胎動を感じることができれば正常ですが、胎動が減少している場合や何時間も感じない場合はすぐにかかりつけの産科医に相談してください。

常位胎盤早期剥離の検査

常位胎盤早期剥離は自覚しにくく、予測が困難な病気ですが、急激な腹痛が継続的に続き、かつ少量の性器出血を伴う場合は常位胎盤早期剥離を疑います。
しかしながら、常位胎盤早期剥離は軽度から重症まであり、さまざまな検査を行なって症状を調べたうえで、的確な処置をほどこす必要があります。

触診

常位胎盤早期剥離は腹壁が硬くなる場合が多いため、触診で腹壁の硬さを確認します。
腹壁が板状に硬い部分は胎盤の剥離部分と一致する場合が多く、剥離することによる血腫が増大すると痛みとともに性器出血を伴います。

超音波検査

超音波検査で子宮壁と胎盤の間に血液のかたまり(胎盤後血腫)が認められないか、あるいは胎盤が分厚く肥大していないかを確認します。
ただし、超音波検査で常位胎盤早期剥離の症状・所見が確認できる確率は25%ほどとされています。

胎児心拍数検査

常位胎盤早期剥離を発症している場合、胎児心拍数検査において胎児の頻脈や遅発性一過性徐脈、基線細変動の消失が出現します。
また、これらの症状が確認できる場合、時間経過とともに遷延性一過性徐脈や徐脈と変化し、胎児死亡にいたります。

鑑別診断

前置胎盤との鑑別のために行なわれています。

常位胎盤早期剥離の治療

常位胎盤早期剥離の治療は、症状の程度によって異なります。

妊娠34週未満で軽度の場合

妊娠34週未満で胎盤が少し剥がれているものの、正常に機能している場合は入院して経過観察を行ないます。
入院中は肉体的・精神的ストレスを排除して絶対安静とし、BMIを元に摂取カロリーをコントロールした食事療法を行ないます。

また、高血圧の場合は降圧剤を投与して胎児の発育を待ちます。
症状が安定し分娩可能になれば分娩誘発を行ないますが、胎盤機能に以上があれば帝王切開による分娩を行ないます。
また、胎児が死亡している場合は、母体の状況により経膣分娩か帝王切開かを選択します。

妊娠34週以降の場合

妊娠34週以降で胎児の健康状態が確認できた場合は誘発分娩を行ないます。
ただし、妊娠周期が早い場合でも、胎盤機能不全が確認された場合は緊急帝王切開を行ないます。

中度から重症の場合

常位胎盤早期剥離は予測が困難な病気のため、多くの場合が中度から重度になってから気付くことが多く、その場合は緊急帝王切開で胎児を速やかに娩出する必要があります。
また、緊急帝王切開では播種性血管内血液凝固症候群(DIC)のリスクが高くなるため、DICの治療も同時に行ないますが、出血が止まらない場合は母体救命のために子宮を摘出する場合があります。

常位胎盤早期剥離の予防法

常位胎盤早期剥離は予測困難な病気ですが、さまざまな要因によって引き起こされると考えられており、その要因を取り除くことで予防につなげることができます。

妊婦検診をしっかりと受けること

常位胎盤早期剥離は自覚症状がないため、妊婦が自分自身では気付きにくい病気ですが、早期に発見するには定期的に妊婦検診を受けることが重要となります。
妊婦検診を受けることで常位胎盤早期剥離の兆候にいち早く気付くことができ、早期に対策を打つことができます。

妊婦検診は妊娠週数によって定められており、妊娠初期~妊娠23週までは4週間に1回、妊娠24週~妊娠35週までは2週間に1回、妊娠36週以降は1週間に1回が望ましいとされています。
常位胎盤早期剥離は妊娠23週~36週頃に起きやすいとされているので、少しでも異常を感じた場合はすぐに医療機関を受診するに越したことはありません。

体重&血圧管理

常位胎盤早期剥離を予防するうえで、体重と血圧の管理は大切な要素となります。
妊娠すると食欲が増え、つわりの期間中は味の濃い食事を好むようになり、体重増加を招いたり、高血圧になったりしやすくなります。
この体重増加や高血圧は妊娠高血圧症候群を招いてしまうだけでなく、常位胎盤早期剥離のリスクも高めてしまうことにもなりますので、塩分の摂取量を控えたバランスの良い食生活を心掛けるようにしましょう。

喫煙をしないこと

妊娠中の喫煙は胎盤血管の攣宿を引き起こし、常位胎盤早期剥離のリスクを高めるとされています。
そのため、妊婦自身の喫煙は控え、さらにまわりの家族も喫煙を控えるようにしましょう。
一緒に生活しているパートナーや両親などが喫煙をしているなどの事情があり、どうしても禁煙ができないという場合には、ベランダなど妊婦自身が煙を吸ってしまうことがない場所で吸ってもらうというのも悪くはありません。
また、家以外では喫煙をしている人に近付かないことで、副流煙を吸ってしまう機会をなくすることも大切です。

腹部への外的刺激があればすぐに病院へ

交通事故や転倒などで腹部に外的刺激があると、常位胎盤早期剥離を引き起こす場合があります。
また、軽く人とぶつかった場合やボールがぶつかった場合でも、常位胎盤早期剥離を引き起こすリスクがありますので、腹部への外的刺激を受けた場合はすぐに病院で診察を受けましょう。
このぐらいは大したことはない、大丈夫だろうと油断しないことが大切です。

体調の変化を見逃さないこと

妊娠中はお腹が張ることが多々ありますが、常位胎盤早期剥離の兆候でもお腹が張る場合があります。
また、妊婦検診時では異常がない場合でも、翌日に突然発症する場合もあるので、毎日体調の変化を見逃さずに過ごすことが重要です。
さらに、毎日の生活では無理をしないことも重要です。

妊娠初期や安定期でも極力負担がかかるようなことをせず、体調を見ながら無理のない日々を送りましょう。
パートナーや家族など、身近な人たちの協力を得ることも、無理のない毎日を過ごすためには大切です。
なお、そうしていても少しでも変化があった場合には、放置することなくかかりつけの産科医に相談することをおススメします。

常位胎盤早期剥離による痛みは陣痛の痛みとは違うことを理解しておく

臨月が近づくと常位胎盤早期剥離のリスクも高まります。
常位胎盤早期剥離では腹痛と少量の性器出血を伴いますが、陣痛と勘違いする場合があります。

陣痛の場合は強弱のある腹痛が一定期間続いたあとに楽な時間がきて、徐々に間隔が狭くなってきます。
一方、常位胎盤早期剥離の場合は痛みに強弱はなく、立っていられないほどの腹痛が持続するのが特徴です。
陣痛だと思っていた痛みが長く続く場合には常位胎盤早期剥離を疑い、救急車を呼んでできるだけ早く病院で処置を行なう必要があります。

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