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先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2017/08/22 甲状腺

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)とは

先天性甲状腺機能低下症(せんてんせいこうじょうせんきのうていかしょう)とは、のどぼとけの下に位置しており、蝶々が羽を開いたような形をしている甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンが足りなくなる生まれつきの病気です。
クレチン症は、先天性甲状腺機能低下症の別名です。

正常な甲状腺機能は、脳の下垂体(かすいたい)で産生される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が必要に応じて甲状腺ホルモン(T3、T4)の産生を促し、甲状腺はヨウ素(ヨード)を材料にして甲状腺ホルモンを産生します。

そして全身の細胞へと運搬されてタンパク質を合成し、新陳代謝を盛んにするという役割を果たしてくれます。
これに対し甲状腺機能が低下している状態では、体に必要なだけの甲状腺ホルモンを産生させようとして、甲状腺刺激ホルモンが過剰に発生します。

しかしながら、甲状腺の形成不全や甲状腺ホルモンの合成経路に異常があるなどの原因で、甲状腺ホルモンの産生が不十分になってしまいます。
症状は新生時期にははっきりわかりません。

ただし、病気をほうっておいてしまうと、身体の成長や知能の発達が悪くなってしまいます。
甲状腺機能低下症には先天性のもの以外に後天性のものもありますが、先天性甲状腺機能低下症のほうが割合が高く、全体の8割を占めています。

先天性甲状腺機能低下症は新生児マススクリーニングの対象になっている病気であり、症状が出現する前に大部分が発見されています。
日本国内で先天性甲状腺機能低下症の治療を受けている人は、2,000人に1人とされています。

なお、新生児マススクリーニングというのは、生後まもないすべての赤ちゃんの先天性疾患(生まれつきの病気)の一部を調べる制度であり、公費で実施されているものです。

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の原因

正しい位置に甲状腺がない

母親のお腹のなかにいる赤ちゃんの甲状腺は、最初は舌のつけ根に位置しており、この場所からのどぼとけの下あたりにまで移動します。
先天性甲状腺機能低下症を発症する場合、途中で移動が止まってしまい、舌のつけ根部分などにとどまってしまうことが原因の一つとしてあります。

なお、この甲状腺の移動が途中で止まり、正常な位置にない状態のことを異所性(いしょせい)甲状腺といいます。
手術で正しい位置に甲状腺を移したとしても、甲状腺機能が正常な状態にまで改善されるわけではありません。

甲状腺自体がない・小さい

先天性甲状腺機能低下症は、はじめから甲状腺がない、もしくは甲状腺はあるものの大きさが不十分であるといった形成不全によって起こるケースもあります。
このような状態の甲状腺のことは、欠損性(けっそんせい)甲状腺といいます。

甲状腺ホルモンをうまく作ることができない

甲状腺ホルモンが合成されるまでには、血液中のヨウ素が甲状腺の細胞中へと取り込まれることで作り出される物質(モノヨードチロジンとジヨードチロジン)とタンパク質(サイログロブリン)が結合するといった具合に、複数のステップを経る必要があります。

甲状腺ホルモンが生み出されるまでの過程のどこかで問題が発生し、正常に合成されないことにより、先天性甲状腺機能低下症が引き起こされてしまうことがあります。

この甲状腺ホルモンをうまく合成することができない場合のことを、甲状腺ホルモン合成障害による先天性甲状腺機能低下症といいます。

脳の機能に異常がある

甲状腺に対して分泌するよう命令を出しているのは脳です。
脳が甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンを産生される機能に問題が起こっていると、先天性甲状腺機能低下症を招く原因になります。
この場合の先天性甲状腺機能低下症は下垂体性や視床下部(ししょうかぶ)性といいます。

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の症状

クレチン顔貌(がんぼう)
かおかたちの異変であり、生後数ヶ月間で出現する症状です。
左右の目が離れた位置にある、くちびるが厚い、鼻の横幅が広い、おでこが狭い、舌が大きいといった特徴があります。

遷延性黄疸(せんえんせいおうだん)
黄疸というのは、皮膚や白めなどが黄色くなる症状です。
先天性甲状腺機能低下症では、黄疸が長引く症状があります。
このような特徴がある黄疸のことを、遷延性黄疸といいます。

臍(さい)ヘルニア

臍ヘルニアというのは、ヘソが飛び出た状態になることをいいます。
一般にいうでべそのことです。

便秘

うまく便を排泄することができない症状です。

低体温

体温が下がっていることにより、手足が冷たくなる症状です。

哺乳不良

先天性甲状腺機能低下症では、母乳の飲みが悪くなる症状もあります。

体重増加不良

先天性甲状腺機能低下症では、体重が増えない問題も起こっています。

浮腫(ふしゅ)

浮腫というのはむくみの症状のことです。

皮膚乾燥

先天性甲状腺機能低下症では、肌がカサカサになる症状も引き起こされています。

泣き声の異常

先天性甲状腺機能低下症では、泣いている赤ちゃんの声がかすれる症状も出現しています。

甲状腺腫(こうじょうせんしゅ)

甲状腺が大きくなる症状も、先天性甲状腺機能低下症では起こっています。

小泉門開大(しょうせんもんかいだい)

小泉門というのは、後頭部の頭蓋骨のへこみです。
先天性甲状腺機能低下症では広く開大します。

低身長

先天性甲状腺機能低下症では、低身長の問題が起こっています。
低身長というのは、子どもの身長が同じ歳で同じ性別の平均身長と比較して著しく低い人が該当します。

知的障害

先天性甲状腺機能低下症では、知能障害を招いてしまうことにもなりかねません。
全般的な知的機能が歳が一緒の子どもと比較して著しく低く、環境への適応が難しい状態になります。

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の検査・診断

甲状腺刺激ホルモンの測定

生後まもない赤ちゃんは、血液中の甲状腺刺激ホルモンの数値が高まります。
そしてほぼすべての赤ちゃんは生まれて3日が経つと数値は低くなります。

一方、先天性甲状腺機能低下症の赤ちゃんの大半が、正常な範囲まで数値が低下しないのが特徴です。
新生児マススクリーニングとして、生後4~7日にごく少量の血液を採取することによって、血液中の甲状腺刺激ホルモンの数値を調べます。

検査結果の報告で、これによりカットオフ値という一定の数値以上の結果が出た場合、連絡がきて再検査を受けることになります。

再検査の内容

新生児マススクリーニングで出た数値が軽度~中等度高値なのか、異常高値なのかによって再検査の内容は異なります。
前者の場合、もう一度血液を採取する形になります。

そして再び検査結果の報告を受けて、異常なしとなるケースがあるほか、経過観察をするのか精密検査が必要になるのかが判断されます。
後者の場合には指定医療機関や小児内分泌専門医での精密検査が行なわれています。

甲状腺刺激ホルモンや甲状腺ホルモンの数値測定、膝の骨のレントゲン撮影、甲状腺の超音波検査、尿中ヨードの濃度測定、臨床症状チェックリスト(スコア)などが精密検査の内容です。

このうち、疑問を抱きやすい検査方法として、なぜ膝のレントゲン撮影を行なうのかと思った人もいるでしょう。
これは甲状腺ホルモンが不足していると骨の成長具合がよくないケースがあるため、レントゲンを撮って様子を観察しているのです。

また、甲状腺の超音波検査がどういうものなのか、気になった人もいるでしょう。
超音波検査は画像検査の一種であり、甲状腺の位置、大きさなどを確認することが可能な検査方法です。
なお、先天性甲状腺機能低下症の検査では、母親の甲状腺機能やヨード濃度の測定を行なうケースも珍しくありません。

新生児マススクリーニングで異常が確認された赤ちゃんのうち、実際に先天性甲状腺機能低下症を引き起こしているのは全体の3割強ほどです。
先天性甲状腺機能低下症は診断がすぐに確定するわけではなく、何年もの期間を要するケースも珍しくありません。

病型(びょうけい)診断

5、6歳ごろのようにある程度の年齢になるまで治療を継続し、病気の原因をくわしく調べることを目的とした病型診断が実施されています。
病型診断は2泊3日か3泊4日ほど入院して行なわれることになり、入院前には使用中の薬の4分の1の量の薬に置き換えて、3~4週間にわたり服用します。
そして入院1週間前に薬をやめて、ヨード制限食をスタートします。

ヨード制限食は食事制限の一種で、ヨードが含まれている海藻類などの摂取禁止食品を避けるという内容です。
入院後には、TRH(負荷)試験、ヨード甲状腺摂取率、甲状腺シンチグラフィー検査のほか、甲状腺超音波検査、知能検査、聴力検査が行なわれるケースもあります。
TRH試験のTRHというのは、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンのことであり、このホルモンは甲状腺刺激ホルモンの分泌調節を行なっています。

このホルモンの試薬を注射し、一定時間ごとに血液を採取します。
そして血液中の甲状腺刺激ホルモンの数値を調べ、甲状腺機能低下症があるかどうかを確認します。
また、甲状腺ホルモンやタンパク質のサイログロブリンの測定を行ない、甲状腺の働き自体を調べることも、TRH試験で可能です。

数値を確認することで、甲状腺ホルモンの合成能力が悪くなっていると考えられます。
ヨード甲状腺摂取率、甲状腺シンチグラフィー検査はヨード制限食を約2週間継続し、試薬を服用する検査方法です。
甲状腺の場所、形状、ヨードの取り込み能力などを調べることが可能です。

甲状腺超音波検査はすでに述べたとおり、甲状腺の場所、形、大きさなどを確認することが可能で、知能検査は知的機能に異常がないか、聴力検査は聴く能力に問題がないかを調べることを目的に行なわれる検査です。
病型診断での検査終了後には、これまで使用していた薬の服用を再開することになります。

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の治療

甲状腺ホルモン剤の内服

先天性甲状腺機能低下症の治療は、通院して定期的な血液検査で甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの数値を測定しつつ、レボチロキシンナトリウム(チラージンS錠)という甲状腺ホルモン製剤を服用し続けて、安定した数値を維持していくことです。

1日1回の内服を、診断が確定した場合には生涯にわたって継続していく形になり、内服する量は成長に応じて、背の高さや体重、骨の成長などを確認して調節していく形になります。

治療は検査の結果、甲状腺機能低下の疑いありと判断されればすぐにスタートします。
適切に甲状腺ホルモン製剤を内服することにより、甲状腺ホルモンが足りず、身体の成長や知能の発達に悪影響が及ばないようにします。

なお、チラージンの副作用の心配はほとんどありません。
治療がうまくいっていれば、先天性甲状腺機能低下症ではない子どもたちと変わらない日常生活を過ごしていくことが可能です。

治療で気をつけること

健康な子どもと同じ日常生活を送っていると、先天性甲状腺機能低下症が治ったのではないかと思うかもしれませんが、これは甲状腺ホルモン製剤が効いているために実現していることです。

治ったと勘違いして甲状腺ホルモン製剤の内服を勝手にやめたり、内服したりしなかったりするようになったり、量を少なくしたりすることはしてはいけません。
自己判断で薬の使用方法を変更するのではなく、通院して医師の判断にしたがい、甲状腺ホルモン製剤を使った治療を続けていくことが大切です。

また、甲状腺ホルモン製剤のレボチロキシンナトリウムは豆乳と一緒に摂取すると吸収をさまたげてしまいますので、たとえば薬を豆乳で内服するということはやめましょう。

そのほか、ヨウ素は病型診断の際には制限しますが、あとは制限する必要はありませんが、過剰摂取をすることがないよう注意する必要はあります。

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