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機能性ディスペプシアを詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/05/31 胃・食道の病気

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)とは

機能性ディスペプシア(きのうせいでぃすぺぷしあ)とは、胃潰瘍(いかいよう)や胃癌(いがん)などの病気を疑うような胃痛や胃もたれなどの慢性的な不快症状が起こっているのに、内視鏡など詳しい検査を行なっても症状の原因にあてはまるような異常が発見されない病気のことです。

過去には慢性胃炎(まんせいいえん)、神経性胃炎(しんけいせいいえん)、胃下垂(いかすい)、胃アトニー(いあとにー)、胃痙攣(いけいれん)と呼ばれていましたが、現在では機能性ディスペプシアのほか、Functional dyspepsiaを略してFDという病名で呼ばれることや、機能性胃腸症(きのうせいいちょうしょう)と呼ばれることもあります。

日本国内では大体25%が機能性ディスペプシアを患っているという調査報告があり、罹患率の高い病気です。
機能性ディスペプシアになること自体、死亡してしまうような心配はないものの、生活の質(QOL)を落としてしまうため、放置することなく適切な治療を受けるべき病気です。

この病気の原因は現在、解明されてはいないものの、精神的ストレス、胃の運動機能低下、胃の知覚過敏などによって引き起こされているのではないかという見方がされています。

ディスペプシアは消化不良という意味のある言葉ですが、機能性ディスペプシアの場合には胃痛や胃もたれなどの多くの症状が起こり得ます。

機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)の原因

機能性ディスペプシアが起こるしくみ

胃には3種類の機能があります。

まず、口から摂取したものが食道を通過して胃に到達すると、胃のうえ側が広がり、胃のなかに摂取したものを貯め込もうとします。
これを胃の貯留機能といいます。

次に胃はうねるように動く蠕動(ぜんどう)運動を起こして、摂取したものと胃液をかき混ぜ、消化してかゆ状にします。

この機能は胃の撹拌(かくはん)機能です。
そして最後に消化したものを十二指腸へと送り出します。
これは胃の排出機能といいます。

機能性ディスペプシアは胃の貯留機能、撹拌機能、排出機能に異常が起こり、症状が出現すると考えられています。

胃の運動機能低下

貯留機能の異常により、摂取したものが胃に到達しても、胃の上部が正常に広がらず、胃のなかで長くとどめておくことができなくなります。

これにより、食事ですぐにお腹がいっぱいになる早期膨満(ぼうまん)感や痛みなどの症状が出現します。
このほか、排出機能の異常で、胃の内容物を十二指腸へと正常に送り出すことができず、胃のなかに内容物が長くとどまってしまいます。

これによって起こるのが、胃もたれなどの症状です。
また、胃の内容物が十二指腸へと送り出すのが速くなり、痛みなどの不快症状が出現することもあります。

なお、貯留と排出の機能は関わりがあり、胃の貯留機能に異常があると、胃の内容物と胃酸が急に十二指腸へと送り出されてしまい、これによって十二指腸は胃の排出機能を抑制するようにはたらきかけます。

その結果、胃の内容物が胃から送り出されなくなってしまい、胃もたれなどの不快感を招いてしまうのです。

胃の知覚過敏

知覚過敏とは、刺激に敏感で痛みを感じやすい状態のことをいいます。
健康な状態の胃ではまったく感じないレベルの刺激でも、知覚過敏になっていると少量の食事で胃の内圧が高まります。

そしてこれにより、少し食べただけでお腹がいっぱいになる、胃が痛くなる、焼けるような感じがするといった不快症状を引き起こすことがあるのです。

胃酸の分泌

胃酸が十二指腸に流入することにより、胃の運動機能が悪くなり、機能性ディスペプシアの症状である胃もたれなどの症状が出現します。

また、胃の知覚過敏では、胃酸の分泌過多でもないのに痛みや焼けるような感じがするなどの症状を自覚することがあります。

ストレス

胃の制御をしているのは自律神経です。
ストレスで自律神経のバランスに狂いが生じることで、胃の機能に異常を起こすと考えられています。

また、ストレスのほかには疲労を感じやすい人も機能性ディスペプシアを引き起こしやすいといわれています。

機能性ディスペプシアが悪化する要素

食生活の乱れ、寝不足、たばこは自律神経のはたらきに悪影響をおよぼします。
また、胃酸の分泌過多、ヘリコバクター・ピロリの感染は、胃のはたらきに直接悪影響をおよぼします。

ヘリコバクター・ピロリは除菌治療を受けることで機能性ディスペプシアが軽快するという報告があります。

機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)の症状

食後愁訴症候群(しょくごしゅうそしょうこうぐん)

Postprandial Distress Syndromeを略してPDSと呼ばれることもあります。
食事をとったあとのもたれ感や食べはじめに満腹になる早期膨満感が1週間で数回以上あります。

心窩部痛症候群(しんかぶつうしょうこうぐん)

Epigastric Pain Syndromeを略してEPSと呼ばれることもあります。
みぞおちの痛み(心窩部痛)や焼けるような感じ(心窩部灼熱感)が出現しやすいのが心窩部痛症候群の特徴です。

食後愁訴症候群とは違い、食後だけに限って症状が出現するわけではなく、空腹時に症状が出現することもあります。

そのほかの症状

食後のもたれ感、早期膨満感、心窩部痛、心窩部灼熱感の4種類が、機能性ディスペプシアを引き起こしている人によく起こる症状です。

人によっては吐き気を催したり、吐いてしまったりするほか、ゲップが出るなどの症状が出現することもあります。

機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)の検査・診断

機能性ディスペプシアの治療に適した診療科目

食後のもたれ感、食べはじめにお腹がいっぱいになる、みぞおちが痛い、みぞおちが焼けるような感じがするなど、機能性ディスペプシアにあてはまるような症状があり、病院に行こうという場合、何科に行けばよいのでしょうか。

この点に関してですが、消化器内科など胃を調べることが可能な診療科が設けられている医療機関へ行けば対応してくれます。
内視鏡検査を受けることができる病院であれば間違いありません。

問診

医療機関へ行くと問診が行なわれます。

症状はいつ、どのように起こっているか、急激に体重が落ちていないか、嘔吐物や便に血が混じっていないか、真っ黒い便が出ていないか、貧血の症状は起こっていないか、過去に潰瘍や癌治療を受けた経験はあるか、家族に潰瘍や癌経験者はいないかなどの質問を受けます。

問診によって機能性ディスペプシアの疑いがあるのか、別の病気の疑いはないかなどを調べます。

上部消化管内視鏡検査

細い管の先端に超小型カメラが取り付けられた内視鏡を経口または経鼻で挿入し、モニターの映像で胃や十二指腸の様子を観察します。

上部消化管内視鏡検査は胃や食道に炎症が生じていないか、潰瘍が発生していないかなどを確認することを目的に行なわれている方法です。

上部消化管造影検査

バリウムという造影剤を飲み、X線(レントゲン)で胃、十二指腸の状態を確認する方法です。

上部消化管造影検査は、胃や十二指腸に炎症が生じていないか、潰瘍が発生していないかなどを確認することを目的に行われています。

ヘリコバクター・ピロリ検査

一般にピロリ菌と呼ばれている細菌に感染していないかどうかを調べます。

上部消化管内視鏡検査で胃の粘膜組織を採取して顕微鏡で観察する方法や、内視鏡を使用することなく吐いた息を採取し、ヘリコバクター・ピロリが持っている酵素の作用で生成される二酸化炭素量を確認する方法、尿や血液にヘリコバクター・ピロリの抗体があるかどうかを調べる方法、糞便中にヘリコバクター・ピロリの抗体があるかどうかを調べる方法などがあります。

なお、内視鏡を使用する検査は侵襲的検査法といい、使用しない検査は非侵襲的検査法といいます。

胃排出能検査

胃の運動機能のうち、排出機能に異常がないか確認する方法です。
代表的な方法の一つとして、試験薬入りの食事をとり、決まった時間ごとに呼気中の薬の濃度をチェックし、摂取したものが胃から排出されているかを把握する検査があります。

機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)の治療

生活習慣の見直し

機能性ディスペプシアの治療は対症療法が中心です。
対症療法というのは、症状の緩和を目的に行われる治療のことをいいます。
この対症療法の一つが生活習慣の改善です。

脂っこいもの、甘いもの、刺激が強いものの摂り過ぎ、食べ過ぎ、早食い、食事を抜く、夜中に食べる、過度な飲酒、たばこを吸うという悪しき食習慣を改善し、日常生活では疲労やストレスをため込まないようにして、十分な睡眠を確保します。

薬物療法

胃のもたれ感や早期膨満感の症状が起こっている人に対しては、消化管のはたらきを正常な状態へと導く作用のある、消化管運動機能改善薬が使用されています。
このほか、心窩部痛や心窩部灼熱感の症状が起こっている人に対して使用されているのは、胃酸分泌抑制薬です。

消化管運動機能改善薬や胃酸分泌抑制薬を使用しても軽快しない人、強いストレスのある人に対しては、抗うつ薬や抗不安薬が選択されることがあります。
そのほか、ヘリコバクター・ピロリの感染がある場合には、胃酸分泌抑制薬と抗菌薬を使用する除菌治療が行なわれています。

機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)の予防

規則正しい時間に食事をとる

食事をとる時間が規則正しくないことや、深夜や寝る直前に食べることはやめましょう。
このような食生活を送っていると、胃に多大な負担がかかってしまいます。

よく噛み時間をかけて食べる

一口での咀嚼回数を多くし、食べ物を細かくしたうえで飲み込みましょう。
そうすることにより、胃で消化が行われやすくなり、胃にかかる負担も軽くなります。

食べ過ぎない

食事量が多過ぎると、胃には多大な負担がかかり、胃酸過多を招いてしまいます。
食事は腹八分目にとどめましょう。

胃に対する負担が大きい食品は控える

脂っこいもの、甘いもの、辛いものの摂り過ぎはやめましょう。
胃のもたれ感や胃酸過多を招いてしまうことに繋がるためです。

食後すぐの運動はしない

食事が終わってすぐに活発に動くのはやめて、30分間は休憩をとりましょう。
食べたあとすぐの活動は消化によくないためです。

睡眠不足を解消する

機能性ディスペプシアはストレスや過労と関係が深いと考えられている病気です。
十分な時間、質のよい睡眠をとることは、ストレスや疲労の解消に効果的です。

運動不足を解消する

適度な運動を習慣化することは、機能性ディスペプシアの効果的な対策です。
自律神経のはたらきを正常化し、消化管の機能が高まります。

過度な飲酒をしない

お酒に含まれているアルコールには、胃酸の分泌を促進する作用があります。
胃酸の分泌は機能性ディスペプシアの原因であり、アルコールは控えるに越したことはありません。

たばこを吸わない

喫煙をしていると、胃の血行不良を招いてしまい、胃の機能低下を起こす原因になります。
喫煙習慣がある人は禁煙に取り組みましょう。

色々な種類の胃の薬をご紹介しています…

こちらでは色々な症状におススメの胃薬をご紹介しています。
お薬選びの参考にして下さい。

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