*

食道静脈瘤を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/05/25 胃・食道の病気

食道静脈瘤
食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)とは、食道粘膜のなかにある静脈が太くなり、コブ状のかたまりが形成される病気です。

食道は消化管の一部であり、口から摂取した飲食物が胃へと送り込まれるときに通る管状の器官で、正常な状態では凸凹はなく、水道管を見ているような状態です。
しかしながら、食道静脈瘤が発生すると凸凹が確認されるようになり蛇行しているように観察されます。

また、正常な状態では食道は肌色をしていますが、食道静脈瘤が発生して進行すると青みがかってきて、さらに悪化すると赤い部分がところどころに確認されるようにもなります。

コブは次第に巨大化し、血管がもろく、出血のリスクが高まります。
悪化して食道静脈瘤が破裂すると、大量の出血によって死亡してしまうことにもなりかねません。

食道静脈瘤の原因

門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)

食道静脈瘤は、門脈圧亢進症という病気の症状のひとつです。
門脈というのは、消化管で吸収した栄養素などを肝臓へと送り込む静脈のことです。

静脈にかかる圧のことを門脈圧(もんみゃくあつ)といい、この圧が高まることにより、食道静脈瘤が引き起こされます。
なお、門脈圧亢進症というのは、門脈圧が上昇している状態のことをいいます。

門脈圧が高まるのはどうして?

門脈圧が上昇する原因には、肝臓の病気があります。
肝硬変(かんこうへん)や慢性肝炎(まんせいかんえん)で血液が通過しにくくなることで、門脈圧が高まります。

また、腫瘍(しゅよう)、炎症で門脈そのものが狭まることや塞がれてしまうことも、門脈圧上昇の原因です。
門脈圧亢進症を引き起こすことにより、血液が肝臓ではなく食道へと逆流してしまいます。
食道の血管は門脈と比較して太くないため、食道静脈瘤が発生してしまうのです。

食道静脈瘤の症状

食道静脈瘤自体の症状

食道は口から摂取したものの通り道ということで、食道静脈瘤が発生すると食事でなにか違和感が出てくるのではないかと思う人もいるでしょう。
しかしながら、初期の段階でははっきりとした自覚症状は出現しません。

痛みを感じるようなこともなく、口から摂取したものも食道静脈瘤が発生する前と同じように通り抜けていきますし、食事中に違和感をおぼえるようなこともない状態です。

肝臓病の症状が出ることはある

食道静脈瘤自体、初期の段階でははっきりとした自覚症状が出現しませんが、肝臓の病気によって引き起こされる症状は出ます。
食道静脈瘤を起こした人には肝硬変の人が多く、患者全体の8割がこの病気にかかっているという話があるほどです。

たとえば手のひらが赤くなる手掌紅斑(しゅしょうこうはん)、胸やお腹の皮膚に蜘蛛(くも)が脚をひろげたような赤い模様が発生するクモ状血管腫(くもじょうけっかんしゅ)、貧血(ひんけつ)、お腹のなかに水が蓄積される腹水(ふくすい)、胃粘膜の出血があります。

貧血では顔色が悪くなる、疲労を感じやすくなる、立ちくらみがする、動悸・息切れがする、イライラする、頭が痛くなるなどの問題も起こります。

また、肝硬変の程度によって皮膚や目の白目部分が黄色くなる黄疸(おうだん)や意識障害が出てくることもあります。
さらに重症では肝臓の悪性腫瘍へと移行してしまうこともあります。

食道静脈瘤が進行した場合の症状

食道静脈瘤自体の症状はとぼしく、無自覚のまま悪化していきやすいのがやっかいなところです。
病気の進行に伴いコブ状のかたまりは巨大化し、血管はもろく破れやすい状態になります。

実際に血管が破れてしまった場合には、口から血を吐いてしまう吐血(とけつ)の症状が出たり、血液が混入した黒色の便が出る下血(げけつ)の症状が出たりします。

この時点でやっと異変に気づく人は多いものの、急に大量の血液を失ってしまったことによるショックで、命を落としてしまうケースもあります。

肝硬変の人に食道静脈瘤が多いということを先述しましたが、この病気では出血を止めるために不可欠な血液凝固因子や血小板などが不足しているため、大量の出血を招きやすくなっています。

食道静脈瘤の破裂による大量出血では、身体的な負担は非常に大きなものとなります。
命を落とさずに済んだとしても、多くの血液を失ったことで肝臓に送り込まれる血液が減少すれば、肝不全(かんふぜん)を招いてしまうことにもなりかねません。

食道静脈瘤の検査・診断

内視鏡検査

小型のカメラを挿入することにより、食道粘膜の様子を映像として確認します。

これにより、食道静脈瘤があるのかどうか、ある場合にはどういう形の食道静脈瘤がどこにあるのか、さらには色は肌色なのか青みがかっているのか、ところどころに赤いところがないのかなどを把握することが可能です。

出血を起こしているケースでは血液の出どころが食道静脈瘤であり、胃潰瘍(いかいよう)などが出血源ではないこともはっきりします。
内視鏡検査で食道静脈瘤を起こしていることがわかったときには、そのまま治療に移るケースもあります。

内視鏡検査以外の検査

内視鏡検査とは別に行なわれる検査としては、血液検査があります。
血液を採取して調べることにより、肝機能がわかります。

また、画像検査の腹部CT検査や、超音波内視鏡検査(Endoscopic ultrasonography:EUS)、経皮経肝門脈造影といった検査も行なわれています。

食道静脈瘤の治療

出血を起こしているケース

食道静脈瘤が破れて出血を起こした人に対しては、内視鏡検査で診断し、出血を止めることを目的にそのまま治療を行ないます。

出血を起こしている場所を絞り込めない人に対しては、先端にバルーンが取り付けられたカテーテル(管)を挿入し、内側から圧迫させる処置をほどこします。

これに対し、出血を起こしている場所がわかる人に対しては、内視鏡的静脈瘤結紮(けっさつ)術(Endoscopic variceal ligation : EVL) という方法が選択されることが多いです。

内視鏡的静脈瘤結紮術は、内視鏡を使用することで、素材がゴムのバンドで食道静脈瘤を縛り、血流を止めることにより壊死させる治療です。

この治療方法以外では、食道静脈瘤硬化療法(Endoscopic injection sclerotherapy : EIS) も行なわれています。
食道静脈瘤硬化療法というのは、内視鏡で食道静脈瘤を確認しつつ、食道静脈瘤の血管のなかやまわりに硬化剤を注入してかためる治療です。

こうした方法により緊急止血を行なったあとには、患者の状態に応じてピトレシンという点滴薬が使用されます。
この薬を使用することにより、再び出血を起こしてしまうのを防ぐ効果が望めます。

また、緊急止血後にはなるべく早期に、永久止血を目的とした再度の内視鏡的静脈瘤結紮や食道静脈瘤硬化療法が行なわれます。
こうすることにより、食道静脈瘤を根絶やしにすることが可能になります。

出血を起こしていないケース

食道静脈瘤で出血の症状がない人に対しては、出血を起こしている場合と同じく食道静脈瘤硬化療法または内視鏡的静脈瘤結紮術が選択されることになります。

食道静脈瘤硬化療法は、食道静脈瘤を完全になくすのに効果的な方法であり、再発の確率を下げることが可能です。
ただ、合併症を招いてしまうリスクがあります。

具体的には胸の痛み、発熱のほか、食道潰瘍(しょくどうかいよう)、腎臓の機能障害、肝不全の症状悪化などが起こり得ます。

一方、内視鏡的静脈瘤結紮術では合併症のリスクは低いものの、食道静脈瘤が再び発生してしまうリスクが高くなってしまうため、手術を受けたあとの経過観察が重要です。

また、食道静脈瘤を除去したあとには、内視鏡的アルゴンプラズマ凝固という治療も行なわれています。
これは高周波の電流であるアルゴンプラズマをあてることにより、組織をかためる治療です。

繰り返し食道静脈瘤を起こすケース

内視鏡を使用する治療を受けても食道静脈瘤を繰り返す人に対しては、ハッサブ手術という治療が検討されることになります。

これは胃へと流れ込む血液の一部を通過させないようにしたり、脾臓(ひぞう)を摘出したりして、血流量を調節する方法です。
ハッサブ手術は内視鏡か開腹で行なわれます。

リスクとしては手術時に発生した血液のかたまりにより門脈が詰まる場合があることや、手術後にお腹のなかに水がたまり、張りを感じることがあります。

また、たまった水が細菌感染を起こすと、お腹の痛みや発熱を伴って、特発性細菌性腹膜炎(とくはつせいさいきんせいふくまくえん)を招いてしまうこともあります。

門脈が詰まったり、お腹のなかに水がたまったりした場合には投薬治療が行なわれますが、お腹のなかに水がたまる症状が進行している人に対しては、針を刺すことによって水を抜く処置がほどこされます。

食道静脈瘤の予防

再発を防ぐための生活

適切な治療により一度はよくなっても、食道静脈瘤には再発するリスクがあります。
再発を防ぐためには、重い荷物を持つ、トイレでいきむといった、大きな力がかかる動作は避けなければいけません。

いきまなければ便を排泄することが無理な場合には、下剤を使って対処することもあります。
また、食生活でも注意が必要です。

食道静脈瘤に刺激を加えるような食品は、破裂のリスクを高めます。
熱いもの、煎餅、ピーナッツ、魚の骨などは摂取しないように気をつけたいところです。

そのほか、異変を感じたらすぐに病院へ行くことも大切です。
日ごろから便の状態をチェックし、血液が混入した黒色の便が出ていないか確かめましょう。

根本的な原因を取り除く

食道静脈瘤を引き起こす背景には肝硬変や慢性肝炎のような肝臓の病気があります。

肝臓の病気がある人はとくに、健康的な食事をとる、アルコールを摂取しない、適正な体重を維持すること、肝炎のリスクを低減させるために、安全な性行為をする、針やカミソリを共用しない、血液や血液製剤と接触しない、感染症にかかっている人と性的接触をしないことも大切です。

関連記事

胃潰瘍の原因・症状・検査・治療法など

胃潰瘍はストレスで胃酸と粘液のバランスが崩れることで起こることが多く、胃酸が胃や十二指腸の粘膜を

記事を読む

機能性ディスペプシアを詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)とは 機能性ディスペプシア(きのうせいでぃすぺぷしあ)

記事を読む

減酸症/無酸症の原因・症状・治療

減酸症、無酸症とは、いずれも胃粘膜の塩酸の分泌が減少する胃の病気のことをいいます。 胃粘膜の塩

記事を読む

胃神経症(神経性胃炎)の原因・症状・治療

胃の精密検査をいくらおこなっても、がんや潰瘍はもちろん、患者の訴えに相当するような病気がないのに

記事を読む

胃粘膜下腫瘍の原因・症状・治療

胃粘膜下腫瘍 どんな病気(概要) 胃粘膜下腫瘍とは何か説明する前に、胃壁について少しお話したい

記事を読む

胃のトラブルの原因となる要因のまとめ

こちらでは、胃のトラブルの原因となる様々な要因をご紹介しています。 要因なるものは一つとは限り

記事を読む

胃の働きを詳しく!

胃酸・胃粘膜・蠕動運動=胃の働きを詳しく!

胃の働き 胃には大きくわけて4種類の働きがあります。 口にしたものを一時的に貯蔵する 食べ

記事を読む

胃に良い事とは?胃を健康に保つ為に。

ストレス発散・解消 ストレスが絡むと人は体調を崩したり、心を傷めたりします。 ストレスはそれ

記事を読む

胃炎を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

胃炎とは、胃の粘膜が炎症を起こした状態のことをいいます。 はじめのうちは胃の粘膜の表面がた

記事を読む

バレット食道を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

バレット食道とは バレット食道(ばれっとしょくどう)とは、食べ物をのどから胃へと送り込

記事を読む

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)を詳細に:原因,症状,検査,治療など

先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)とは 先天性甲状腺機能低下症(せんてんせ

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)を詳細に:原因,症状,検査,治療など

遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)とは 遺伝性出血性末梢血管拡張症(オ

精巣損傷を詳細に:原因,症状,検査,治療など

精巣損傷とは 精巣(せいそう)は睾丸(こうがん)ともいい、下腹部の陰嚢(いん

日光角化症を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

日光角化症とは 日光角化症(にっこうかくかしょう)とは、太陽光などの紫外線を

汗疱を詳細に:原因,症状,検査,治療など

汗疱(かんぽう)とは、手のひらや手指、足の裏に小さい水疱(すいほう)が多発する病気

→もっと見る

PAGE TOP ↑