*

心房細動を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2017/06/01 心臓・血管の病気

心房細動とは

心臓の内部は4部屋に仕切られており、上側の2部屋は右心房(うしんぼう)と左心房(さしんぼう)、下側の2部屋は右心室(うしんしつ)と左心室(さしんしつ)といいます。
心臓は体全体へと血液を送り出すポンプの役割を担っていますが、弱い電気を出して収縮しています。

心臓内部の4部屋のうち、右心房に存在する発電所のような働きをしている洞結節(どうけっせつ)が電気を作っており、発生した電気は心房に流れて心房を収縮させたあと、変電所のような働きをしている房室結節(ぼうしつけっせつ)を通って心室を収縮させます。
そして電気刺激がなくなると、弛緩して拡張します。

この収縮と拡張の一定リズムのことを拍動(はくどう)とよび、健康な状態では1分間に60~100回ほどの規則正しいリズムで拍動は起こっています。
心房細動(しんぼうさいどう)では、この拍動が1分間で400~600回以上の多さで不規則に動くようになり、心房がけいれんしているかのように見えます。

また、心房細動は不整脈(ふせいみゃく)の一種で脈の乱れ、動悸(どうき)、めまいなどが主な症状としてはありますが、症状が出現しないことも多く、心房細動の人の約50%の人は症状を訴えません。
有病率は1~1.5%とされており、年齢や性別に関係なく起こり得る病気です。

心房細動自体は死亡の直接的原因にはなりませんが、心房細動の人と心房細動ではない人では、前者のほうが脳梗塞(のうこうそく)を招くリスクが約5倍、心不全(しんふぜん)を招くリスクが約4倍にもなります。

なお、心房細動は症状の程度によって発作性心房細動(ほっさせいしんぼうさいどう)、持続性心房細動(じぞくせいしんぼうさいどう)、永続性心房細動(えいぞくせいしんぼうさいどう)にわけられています。

発作性心房細動

ときどき短時間の心房細動が発生するのが発作性心房細動です。
発作が生じて数秒~1週間以内に症状が消え、しばらくするとまた心房細動が発生します。

一度、発作性心房細動を引き起こすと、心房細動によって心房の筋肉が発作が再発しやすい構造に変わってしまい、発作の頻度が次第に高まっていって、持続性心房細動や永続性心房細動に移行してしまうリスクがあります。

発作時間は人によって異なりますが、大部分の人は数時間ほどといわれています。
治療では脳梗塞を防ぐために抗凝固薬、抗不整脈薬、発作時の脈をゆるやかにする薬、発作時に心房細動をおさめる薬の使用や、後述する高周波カテーテルアブレーション治療が行なわれることもあります。

また、心房細動が止まったときに心拍が止まったり、極端に遅くなるケースでは、失神や心停止、突然死を防ぐためにペースメーカーの埋め込みが行なわれます。

持続性心房細動

症状が1週間以上にわたって持続し、自然におさまらないのが持続性心房細動です。
ただ、薬の使用や電気ショックを行なうことによっておさまります(いまの実際の治療では抗凝固薬の使用やカテーテルアブレーション治療が一般的です)。

このタイプの心房細動は再発しやすく、通常の薬物療法を行なったケースでは、洞結節で作られた電気が正常に心臓全体に伝わり、心臓が正常なリズムを示している状態を保てる確率は約50%です。

なお、心房細動が1年以上持続している場合には、長期持続性心房細動(ちょうきじぞくせいしんぼうさいどう)といいます。

永続性心房細動

慢性心房細動(まんせいしんぼうさいどう)ともよばれているのが永続性心房細動です。
このタイプでは薬の使用や電気ショックを行なうことでも、心房細動の状態を止めることが不可能です。

そのため、永続性心房細動の場合、無理に心房細動を止めることはしません。
また、カテーテルアブレーション治療によっても、十分な効果を期待することはできないというのが一般的です。

心房細動は心房が規則正しく収縮しなくなる病気であり、これによって心房のなかの血流がスムーズにいかなくなり、心臓内で血液のかたまりである血栓(けっせん)が形成されてしまうことがあります。

そして血栓が血流にのって脳にまで到達し、脳の血管で詰まることによって起こる脳梗塞を防ぐために、抗凝固薬を使用する治療が行なわれることになります。
また、脈が速くなるのを防止する薬も使用されています。

心房細動の原因

心臓の基礎疾患

基礎疾患というのはいわゆる持病のことであり、心筋梗塞、狭心症(きょうしんしょう)といった虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)、心筋症(しんきんしょう)、弁膜症(べんまくしょう)など、心臓の基礎疾患がある人は、絶えず心臓には大きな負担がかかっているといえます。

そのため、不整脈を引き起こすリスクが上昇し、心房細動を招くリスクが高まります。

心臓の病気以外では、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)や、後述する高血圧(こうけつあつ)が誘因になることもあります。

なお、基礎疾患がない状態で引き起こされる心房細動のことは、孤立性心房細動(こりつせいしんぼうさいどう)といいます。

年齢の高まり

70歳代の高齢者では20人に1人の割合で、80歳代ではこの倍程度の割合で引き起こされるといわれています。
歳を重ねるほどに発症率が高まるのは、心房細動の主な特徴のひとつです。

高血圧

高血圧は血管内の圧力が上昇している状態であり、血管のなかの細胞に負荷がかかり、損傷することがあります。
これによって心臓を動かす電気信号に狂いが生じ、心房細動を招いてしまうといわれています。

高血圧は生活習慣病の一種であり、厚生労働省が3年ごとに行なっている調査では、2016年の高血圧の総患者数は1,000万人以上にのぼると推測されています。

高血圧の患者数が多いということで、高血圧が誘因となる心房細動が併存している人もまた多いのが特徴です。

生活習慣

食生活の乱れは高血圧や肥満などの生活習慣病を招くリスクを高めます。
すでに述べたように、高血圧は心房細動の誘因となります。

また、生活習慣病になると血栓が形成されやすくなるため、脳の血管が詰まって脳梗塞を招くリスクも上昇してしまいます。
そのほか、ストレス、過労、不眠、不安、脱水、発熱などが心房細動を招く原因になることがあります。

自律神経の乱れ

自律神経の働きも、心房細動を招くことに繋がる可能性があるといわれています。
自律神経に狂いが生じる原因としては、ストレスや過労などの生活習慣をあげることができます。

遺伝

アメリカで4,000人以上を対象に、8年間にわたって追跡調査が行なわれた結果が論文として発表されています。

親または兄弟が少なくとも1人いる人では、約10%が新たに心房細動を引き起こし、そのなかでほかの一親等家族が(親)が心房細動の場合、心房細動でない人と比較して約1.4倍心房細動を引き起こしやすいこと、心房細動のリスク因子である高血圧や糖尿病などを改善しても、少ししか若年での心房細動を抑えられないという結果が出ています。

心房細動の症状

心房細動を発症して出現する症状

脈が不規則で胸がどきどきする動悸(どうき)、胸の痛み、胸の不快感、フラつく、だるくなる倦怠感(けんたいかん)などがあります。

こうした症状は発作の回数が少ない初期のほうが、強く起こりやすいのが特徴です。
症状が強く出ると生活の質が悪くなるほど仕事に集中できなくなることもあります。

ただ、心房細動の症状は人によって違いがあり、いっさい症状が出ない人、ほとんど症状がない人も多いです。
また、慢性心房細動に近づくほど、症状を感じなくなる傾向があります。

慢性心房細動を引き起こした人の場合、たまたま何かのきっかけで心電図検査を受けて、心房細動が発見されたということもしばしばあります。

脳梗塞

心房細動では心房の収縮が不規則で、けいれんを起こしているような状態になります。
すると、心房内部で血液がよどむようになり、血液のかたまりである血栓が形成されやすくなります。

血栓は徐々に大きくなり、心臓を飛び出して血流にのり、脳内の血管まで到達すると、血管が詰まって脳梗塞を引き起こしてしまうのです。
脳梗塞を引き起こした人のうち、心房細動によって形成された血栓が原因になった人は15%といわれています。

また、心房細動による脳梗塞を引き起こし、そのあとに社会復帰を果たす人は30%ほどしかいません。
50%は死亡するか、死を回避することができても自力歩行が不可能になったり、寝たきり状態になったりします。

心不全

心房細動をほうっておくと、長期間にわたって心拍数や脈拍数が多い状態が続き、心室の収縮力が次第に悪くなり、心臓のポンプとしての働きが弱まってしまいます。

そして、体全体へと十分な量の血液を供給することができない、心不全の状態におちいります。

もともと心機能が弱い人では、頻脈に短い時間なっただけで、必要なだけの量の血液を心臓が送り出すことができなくなる場合もあります。

心房細動の検査・診断

心電図検査

ベッドに横になり、電極を体に取り付けて検査します。
機械が出力する波形を確認します。
発作が生じている状態では、すぐに診断がつきます。

レントゲン検査

X線を使用して体内の状態を調べる、画像検査の一種です。
心房細動の診断はできませんが、心不全などが起こっていないか確認することを目的に行なわれています。

ホルター(24時間)心電図検査

発作が一過性で、医療機関を訪れたときには無症状で、何の治療も行なわれなかったという人も多くいます。
このような人に対しては、外来で行なうことが可能なホルター心電図で、丸一日の心臓の動きを観察します。

体に電極を貼り付け、器械を首からぶらさげるなどし、、入浴は水泳が行なえない以外は普段と同じように家で過ごすだけの検査で、負担が少ない方法です。
検査後、解析結果は1週間以内にわかります。

イベント心電図検査

器械を携帯し、普段どおりの生活を送る検査方法です。
動悸の症状が出現したときに器械を胸にあて、心電図を撮影するという方法です。

医療機関で解析を行なうことで、心房細動を引き起こしているかどうかを知ることができます。

この検査では、症状が起こることはあるものの、滅多に発作が発生しないような人に対しても、正確な検査が行なえるようになっています。

心エコー検査(心臓超音波検査)

高周波数の超音波を心臓に送り、返ってくるエコー(反射波)を受け取り、心臓の状態を画像化して、心臓の動きを観察する検査です。
心房の大きさ、心臓の機能低下の有無、血栓が形成されやすい状態でないか、血栓の有無の確認、基礎疾患の有無を調べます。

血液検査

心房細動の診断は不可能ですが、心房細動を引き起こす甲状腺機能の異常の有無や、心房細動を起こしている人が脳梗塞のリスクが高いかどうかなどを調べることが可能です。
また、脳梗塞を防ぐために服薬する抗凝固薬をコントロールうえでも、血液の採取が行なわれます。

経食道心エコー検査

超音波の機械が先端に取り付けられた、直径約1cmの管を口から挿入し、食道や胃のなかまで進めていって心臓を観察する方法です。

体の内側から心臓を観察することが可能であり、より正確に血栓の有無や場所、血栓の大きさを把握することが可能です。

造影CT

造影剤という薬剤を体内で循環させた状態で画像の撮影を行なう検査です。
心房細動の根治的療法であるカテーテルアブレーションを行なうときには、心臓の立体像を知ることが重要であり、この検査で心臓の3次元画像を作成し、治療に役立てます。

心房細動の治療

薬物療法

血栓形成を防ぎ、脳梗塞を防ぐことを目的に抗凝固薬が使用されています。
ほかには、心房細動を止めるため、再発を防ぐために抗不整脈薬が、心拍数を調節するためにベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬、ジギタリス製剤が使用されています。

カテーテルアブレーション

局所麻酔をほどこし、カテーテルという直径2mm程度の細い管を血管に挿入し、心臓の内壁を高周波電流で焼いて心房細動を引き起こす元凶となっている電気回路を遮断してリズムを正常化する治療法です。

所要時間は3~6時間ほどで、メスを使用しないため、患者にかかる負担が少ない治療です。

発作性心房細動では、治療成績が良好なところであれば80~90%の人に効果が期待できますが、持続性心房細動や慢性心房細動では60~70%にまで落ち込んでしまいます。
また、高度な技術が要求される治療であるため、カテーテルアブレーション治療を行なう人や、施設によって成績に差が出てしまいます。

なお、高周波電流で焼くこの治療のことは、高周波カテーテルアブレーションといいます。
ほかには、冷凍凝固アブレーションという治療法が行なわれるようにもなっています。

カテーテルの先端に取り付けられたバルーンを膨らませて、肺静脈入り口に押し当て、バルーンのなかに亜酸化窒素ガスを注入してバルーンが当たっているところを冷凍凝固し、組織を壊死させる方法です。
より広範囲をまとめて治療することが可能であり、高周波カテーテルアブレーションより早く終わります。

なお、カテーテル治療はどちらの方法でも、カテーテルを刺した場所からの出血、心臓に孔(あな)が開いて心臓のまわりに血液が貯留し、心臓が圧迫されて十分に拡張できなくなる心タンポナーデ、脳梗塞などが引き起こされることがまれにがあります。

ペースメーカー

電池と電気回路が内蔵されているペースメーカー本体と、本体と繋がっていて先端に電極があるリード(導線)を、手術によって体内に埋め込みます。
埋め込まれたペースメーカーは心臓の電気信号を常に監視し、遅い脈を察知したときには電気刺激が送られて、脈を正常化してくれます。

電池の減り具合を定期的に病院でチェックする必要があるほか、電磁干渉を受けて動作がおかしくなることがあるため、携帯電話の操作や通話時には埋め込んでいるところから15cm以上離す、腹部を圧迫する運動は避ける、車などの乗り物の露出したエンジンに近づかないなど、日常生活で細かい制限があるのは面倒なところです。

心房細動の予防

原因となり得る病気の予防

心房細動は虚血性心疾患など心臓の基礎疾患を持っている人や、高血圧などの病気があるとリスクが高まります。
そのため、こういった心房細動を引き起こす病気を未然に防ぐことが、心房細動の発症を防ぐことにも繋がります。

たとえば狭心症や心筋梗塞の予防には、タバコをやめる、塩分・糖分・脂肪分を摂り過ぎない、バランスのよい食事を摂取する、適度な運動を行なう、ストレスを避けて規則正しい生活を送ることが予防に効果的とされています。

また、血縁者に心筋梗塞の人がいる場合にはとくに生活習慣に気をつけ、高血圧、糖尿病、脂質異常症を早期に発見すること、強い胸の痛みが出た場合にはすぐに医療機関へ行くことが大切です。

高血圧は過剰なカロリー摂取、肥満、塩分の摂り過ぎ、運動不足、過度な飲酒、喫煙、ストレスなどの要因と遺伝素因が組み合わされることによって引き起こされます。

塩分の摂取量に気をつけるほか、血圧を下げるカリウムを積極的に摂取する、太っている人はカロリーの制限や運動で原料に取り組む、習慣的な飲酒をしない、タバコを吸っている人は禁煙をする、ストレスを発散するなどして予防しましょう。

病院で検査を受ける

心房細動は最悪の場合、脳梗塞を起こして死亡することがあるほか、助かっても重い後遺症が残り、寝たきりになって社会復帰ができなくなる恐い合併症があります。

しかし、心房細動を発症していてもまったく症状がないか、あっても大したことがないケースが非常に多く、発症していても長期間にわたって気づくことができない場合が多いです。

とくに治療による効果の期待値が下がる慢性心房細動に近づくほど、症状は感じなくなる場合が多いです。
病院で検査を受けることにより、心房細動を早期に発見できるようにしましょう。

関連記事

動脈硬化症の原因・症状・注意点・改善法

こちらでは、動脈硬化症の原因・症状・注意点・改善法について、ご紹介しています。 現代病と言われるま

記事を読む

感染性心内膜炎症を詳細に:原因,症状,治療,予防など

感染性心内膜炎症とは(概要) 私たち人間の心臓には心内膜(しんないまく)というなめらかな膜があ

記事を読む

心筋梗塞を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

心筋梗塞とは 心筋梗塞(しんきんこうそく)とは、心臓へと栄養や酸素を送る血管である冠動脈(

記事を読む

心不全を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

心不全とは 心臓は、体中に血液を送り出すポンプの役割を担っています。 心不全(しんふぜん

記事を読む

心房粗動を詳細に:原因,症状,検査,治療など

心房粗動とは 心臓の内部は上下左右の4部屋に区切られており、上側の左右2部屋を左心房(さし

記事を読む

不整脈を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

不整脈とは 健康な心臓は一定間隔の規則正しいリズムで動いており、1分間で60~100回

記事を読む

狭心症を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

狭心症とは 狭心症(きょうしんしょう)とは、心臓へと栄養や酸素を送り込む血管である冠動脈(

記事を読む

心臓の心膜に異常が起こる病気の原因・症状・治療

急性心膜炎の概略や原因について 心膜は、心臓をおおっている2層の膜で、臓側心膜と壁側心膜の空間

記事を読む

肺の病気が原因で起こる心臓の病気

肺性心の概略や原因について 肺の病気が原因で、肺へ血液を送っている右心室に負担が生じて機能が低

記事を読む

動脈・静脈の病気の原因・症状・治療

動静脈瘻の概略や原因について 血液は動脈から毛細血管を通り静脈へ流れるのが普通ですが、動脈と静

記事を読む

妊娠高血圧症候群を詳細に:原因,症状,検査,治療など

妊娠高血圧症候群とは 妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん)

細気管支炎を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

細気管支炎とは 細気管支炎(さいきかんしえん)は、主に生後18ヶ月未満の子ど

漂白剤誤飲を詳細に:症状,対処法,応急処置,治療,予防など

漂白剤誤飲とは 漂白剤誤飲(ひょうはくざいごいん)とは、洗濯用やキッチン用の

上腕骨顆上骨折を詳細に:原因,症状,検査,治療など

大人と比較して、子どもに多い骨折の種類に上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっ

キーンベック病(月状骨軟化症)を詳細に:原因,症状,検査,治療など

キーンベック病(月状骨軟化症)とは キーンベック病(きーんべっくびょう)とは

→もっと見る

PAGE TOP ↑