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感染性心内膜炎症を詳細に:原因,症状,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/05/09 心臓・血管の病気

感染性心内膜炎症とは(概要)

私たち人間の心臓には心内膜(しんないまく)というなめらかな膜があります。
この心内膜は心臓内の血液がなんらかの異常を引き起こすと傷つき、そのときに血液中に細菌が入り込むことがあります。

この細菌が増殖すると心臓にイボのようなかたまり(疣贅:ゆうぜい)をつくり出してしまい、このイボが心臓弁にできると心臓の組織の破壊をはじめます。

この一連の流れのことを感染性心内膜炎症(かんせんせいしんないまくしょう)と呼んでいます。
一般的には心内膜に関する感染のことを呼んでいますが、そのほかにも心臓弁、心筋、心房・心室にも感染がおよびます。

また、先天的な心臓の疾患がある場合、その部分が感染することも多いようです。
感染性心内膜炎症は敗血症(はいけっしょう)の一種であり、循環器に関わる感染症です。
年間のデータでは100万人につき10人から50人程度の発症と、そこまで頻繁にあらわれる病気ではありません。

しかしながら、診断の難しさから発病後に重篤(じゅうとく)な状態になることが多いため注意が必要です。

また、性別ではどちらがこの病気になりやすいのか気になっている人もいるでしょうが、この点に関しては女性よりも男性がかかりやすいというデータがあり、約1.5倍から2.5倍の発症リスクがあるといわれています。

高齢者層では男性は女性の約8倍もの発症リスクがあるともいわれています。
年齢に関する話としては、ほかにも感染性心内膜炎症は若年層よりも高齢者層に多い病気という情報もあり、患者の4分の1は60歳以上となっています。

感染性心内膜炎症の種類

急性感染性心内膜炎症

急性という名のとおり、突然発症するものです。
死亡リスクが非常に高く、発症してから数日のうちに危険な状態になるケースが珍しくありません。
多くの場合は高熱を発し、心不全の症状をともないます。

亜急性感染性心内膜炎症(亜急性細菌性心内膜炎症)

症状がゆっくりしているのが特徴で、数週間から数ヶ月の時間を費やして進行していきます。
発熱や食欲不振、体のだるさ、関節痛などが症状としてあらわれます。
風邪の症状と似ているため、異変を見逃してしまう人が多いのが問題点でしょう。

感染性心内膜炎症の合併症

合併症のなかでももっとも重要視されるのが塞栓症(そくせんしょう)です。
これは血管が塞がれてしまうことでさまざまな症状の引き金になります。
感染性心内膜炎症の患者のうち40%に見られるとされており、患者に起こる合併症のなかでも高確率なものとなっています。

感染性心内膜炎症の原因

シンプルに原因をいうのであれば、血液のなかへと細菌が入り込むことで起こります。
細菌が侵入する原因にはさまざまなものがあり、生活のなかで比較的身近なものでいうと歯科医での抜歯(ばっし)、内視鏡(ないしきょう)を用いた細胞の診断、婦人科などでの出血の可能性がある処置、といったものが挙げられます。

これらの問題以外にも、心臓の弁膜の異常、先天性の心臓疾患などがあり、健常な人に比べ血流が乱れがちな場合にリスクが高いといわれています。

心内膜が荒れた状態であり、肝臓疾患、人工透析、ステロイド治療などを受けるような免疫力の低下が見られる病気を患っているときもかかりやすいとされています。
わかりやすくいえば、心臓病を患っていたり、過去に心臓手術を受けたりした人の発症率が高くなっています。

発症リスクが高い場合には、歯科治療などの前に医師に心臓に関する治療の有無を伝えておきましょう。
感染性心内膜炎症で原因となる細菌の種類がはっきりわかるケースは全体の60%から70%となっています。
そのなかでも多いのがブドウ球菌(きゅうきん)、溶連菌(ようれんきん)です。
細菌の種類によって症状に多少の差が出ることもあり、黄色(おうしょく)ブドウ球菌では著しい組織破壊が、真(しん)菌・腸球(ちょうきゅう)菌ではできる贅腫(ぜいしゅ)が大きくなりやすく、それを原因として塞栓症におちいりやすいなどの特徴を持っています。

感染性心内膜炎症の主な症状

特徴として、発熱の症状が長く続くというものがあり、感染性心内膜炎症の患者の80%にあらわれるといわれています。

具体的には38℃以上の高熱が続くとされていますが、高齢者では微熱程度の発熱の場合や、患者によっては発熱の症状を見せない場合もあるので注意が必要です。

加えて関節や筋肉の痛み、皮膚が赤くなるなどの症状があるものの、自覚症状として大きな病気と気づきやすいものはなく、風邪を引いたと間違えられやすいのが問題点です。

80%以上の高い頻度で見られる特徴的な症状としてはもう一つ、心雑音がある場合もあります。
そのほかの症状としては、爪の下に見られる出血、眼球結膜(がんきゅうけつまく)出血、血尿(けつにょう)、肌に赤く発疹(ほっしん)や班(はん)が見られる症状などがあります。

感染性心内膜炎症を患った人の大半は風邪の症状と思い、抗生物質などの投与を受けて一時期は治まるものの、抗生物質の投与を中止した段階で再び発熱する状態になります。

そのまま放置すると、心臓の組織破壊が進んで息切れ、体のむくみ、呼吸困難などの心不全で見られる症状や、血管が詰まることで起きる手足の麻痺、背中の痛み、目が見えにくくなる、ろれつが回らない、意識障害などを引き起こす塞栓症の状態に陥ります。

心不全の進行度や塞栓症のリスクが高い場合には手術での治療が必要とされますが、感染が活発なうちにおこなうと患部の除去が不十分になるケースもあり、難しい一面があります。

手術では痛んだ組織に人口弁などを縫い付けて治療するので、この人工弁に再び細菌が付着すると危険な状態となります。
細菌の動きが活発化すると炎症の再発や縫い付けた弁が外れるなどのトラブルの可能性があります。

感染性心内膜炎症の検査方法

この病気の検査方法では、まずデューク大学が提唱した診断の基準を用いるのが基本とされています。
心エコーで心臓の弁の様子を観察し、弁逆流や感染巣の存在、炎症の範囲、人工弁をつけている場合には弁の破壊がないかなどを確認します。

通常の胸にあてる心エコーでは患部をはっきりと診断することが難しい場合も多く、感染性心内膜炎症の診断のために体の内部から心臓の様子を観察する方法がとられます。

これは経食道心エコーと呼ばれるもので、食道から胃カメラのような管を通すことで食道側からの観察が可能となるものです。
心臓と食道の間の組織が少ないためにはっきりと観察することが可能で、心臓の異常を確認できる確率も90%と高くなっています。

検査をおこなっても陰性である場合もありますが、病気の疑いが強いときは診断の正確性を高めるために間をおいて再び検査するケースも少なくありません。
約1週間の期間をあけて、心エコーなどの検査をおこないます。

そのほかの検査方法

心エコーのほか、血液のなかに潜む細菌の判断や炎症の状態を見るために血液検査がおこなわれます。
心不全の確認のためには胸部へのエックス線検査が実施されています。
頭や腹部のCT検査、尿検査、眼底検査などは塞栓症があるかどうかを確認するために必要です。

感染性心内膜炎症の治療法

基本的には炎症の原因となっている細菌をはっきりさせ、その種類に効果的な抗生剤の投与で菌の働きを抑えるものとなります。

細菌により心臓の組織破壊まで症状が進んでいる場合には手術が必要とされますが、菌の動きが活発なうちは術後の経過が良くないケースも多いため、タイミングの判断は慎重におこなわれます。

しかし、菌の活動がおさまらないうちに手術がおこなわれるケースもあり、これは患者の症状から見てなんらかの合併症のリスクが高いと判断された場合になります。

抗生剤の投与

心臓の血管のなかにできたイボのようなかたまりの内部には細菌が詰まっています。
この細菌を除去・殺菌するために抗生剤を注射で投与する治療法があります。

高い濃度の抗生剤を長期間にわたり投与することが必要なので、副作用のリスク管理とともに、体内にほかの異常があらわれていないかなどのチェックが不可欠です。

用いられる抗生剤の種類は多く、原因となっている細菌に合わせて効果的なものが選択されます。
感染性心内膜炎の治療を効果的に進めるために、まずは患者の血液を採取し、原因となっている細菌の特定をおこないます。

外科手術による治療

抗生剤の投与に加え、外科手術での治療がおこなわれる場合があります。
手術に踏み切る状態の判断にはうっ血性心不全がある、抗生剤の投与を一定期間続けたにもかかわらず思うような結果が得られなかった場合、脳梗塞(のうこうそく)のリスクが高まっている場合などが参考にされます。

手術では主に感染巣の除去、さらに人工弁の取り付けなどがおこなわれますが、近年は感染が落ち着いた状態で、かつ感染巣の除去が高い確率で成功すると判断された場合には、できるだけ患者自身の弁をリフォームする方法の選択も広まってきています。

心臓の弁に広い範囲で炎症がおよび膿んでしまった場合や、人工弁の取り付け処置をおこなった患者の場合は感染巣を完全に除去することは難しいとされ、手術そのものに工夫が凝らされますが、それでも術後の経過は不良となる場合が多いでしょう。

一般的な心臓手術による人工弁の取り付け手術では術後の死亡率が1%以下であるのに対し、感染性心内膜炎症では実に10%から20%と高いリスクがあり、この病気の治療の難しさが浮き彫りになっています。
症状が重篤化した場合には50%から80%におよぶというデータもあります。

感染性心内膜炎症は治療をおこなわなければやがて死に至る病気の一つです。
治療した場合でも、年齢や症状の進行具合、人工弁があるかどうか、原因となっている細菌の強さなどによって幅があります。
しかしながら、大半の人は抗生物質による治療をしっかりと進めることで回復します。

感染性心内膜炎症は予防できる?

感染性心内膜炎症は、一般的に心臓病を患っている人、過去に心臓に関する手術を受けたことがある人に起こりやすい病気です。

そのため、心臓に関する病気を患っている場合には「自分は発症リスクが高いかもしれない」と意識して予防をすることがポイントとなります。

感染性心内膜炎性にかかるきっかけは小手術や小さな医療処置によるものが多く、こうした場面で細菌に感染することを防いでいきます。

歯科治療、あらゆる手術、検査などの際には前もって医師に病気のことについて伝えておく必要があるでしょう。
処置の前に抗生物質を服用することで、細菌での感染を防ぐことが可能となります。

抗生物質での予防が必要とされる処置の一例

外科的な処置(手術)

・心臓弁を人工的なものに置き換える手術
・扁桃腺(へんとうせん)の除去
・開心(かいしん)手術・肺に関連した手術
・前立腺(ぜんりつせん)の手術
・腸や胆管(たんかん)に関連した手術

歯科での処置

・歯石(しせき)除去
・歯肉(しにく)の形成術
・歯周(ししゅう)ポケットを検査する処置
・インプラント
・抜歯・抜歯後の歯の再植(さいしょく)処置
・歯のクリーニング
・その他、出血の可能性がある処置全般

内科での処置

・気管支鏡(きかんしきょう)検査
・膀胱鏡(ぼうこうきょう)検査
・食道の拡張処置
・尿道の拡張処置
・食道の静脈瘤(じょうみゃくりゅう)に対する処置
・胆石(たんせき)の除去の際におこなう造影剤を用いてのエックス線検査
・カテーテルや静脈ラインなどを用いる処置

これらの処置の際には、感染性心内膜炎症のリスクが低いとされる場合や予防の効果が低いとされる場合でも、抗生物質の投与がおこなわれることが一般的です。

感染性心内膜炎症では、早期発見と早期治療がもっとも重要であるとされています。
原因のわからない発熱が長く続く場合など、早めに医師の診断を受けることが大切です。

非感染性心内膜炎症との区別

血液の逆流、弁の開閉の不具合、塞栓症や脳梗塞・心臓発作のリスクが高まるなど、感染性心内膜炎症と非感染性心内膜炎症の症状はとてもよく似ています。
しかし、治療方針や方法が異なるために慎重な判断が必要とされます。

非感染性心内膜炎症のリスクが高いとされる病気

・自己免疫の疾患
・肺がん
・胃がん
・膵(すい)がん
・結核(けっかく)
・肺炎(はいえん)・敗血症
・やけど
・尿毒症(にょうどくしょう)

感染性心内膜炎症と非感染性心内膜炎症を区別して判断するのは難しいとされていますが、心エコー検査の結果、弁にイボ状のかたまりが見られても、血液検査の結果で細菌が検出されなかった場合には非感染性であると判断されます。

感染性と同じように予後が不良とされる病気ですが、大きな違いは非感染性の場合は心臓そのものの疾患よりも、元となる原因の病気が重症化しやすいものばかりであるという部分でしょう。

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