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陰のう水腫を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2017/06/15 男性に多い病気

陰のう水腫とは?

陰のう水腫(いんのうすいしゅ)とは、左右の精巣(睾丸)が格納されている袋の部分の陰のうに水がたまり、大きくなった状態です。
新生児男子の16人に1人程度の割合で起こり、新生児に比べると少ないものの、新生児とはまた違った原因で成人にも起こり得る異常です。

左右両方の陰のうに水がたまって大きくなるのではなく、大部分は左右のどちらかだけに起こります。
陰のうに水がたまると左右の大きさが非対称になるため、肉眼で見ておかしいとわかります。
ほかに陰のう部が大きくなる異常としては、鼠径ヘルニア(そけいへるにあ)があります。

この病気はまたの名を脱腸(だっちょう)といいますが、鼠径ヘルニアは腸が出てきて危険な病気であり、発見次第、手術を行なうべきものですが、陰のう水腫は陰のう部分に水が蓄積される病気であり、ほうっておくことで体に悪影響を及ぼす心配はありません。

また、陰のう水腫は1歳までにほとんどの人が陰のう水腫が自然に消失します。
そのあとにまで陰のう水腫を残してしまう人は、全体の20人に1人程度の割合です。

自然に陰のう水腫が消失しないケースや、あまりに陰のう部分が大きくなってしまった場合には、手術を受けなければいけなくなることがあります。

また、陰のう水腫は鼠径ヘルニアと一緒に起こっていることもあるため、自己判断ではなく医療機関で陰のう部分が大きくなっている原因を明確にし、適切な処置を受けることが重要です。

陰のう水腫の原因

陰のう水腫には、交通性陰のう水腫と非交通性陰のう水腫の2種類があります。

交通性陰のう水腫(こうつうせいいんのうすいしゅ)

妊娠末期を迎えると、母親のお腹のなかにいる赤ちゃんの精巣が、腹部から陰のうへと下降してきます。
陰のうは睾丸が下降してきたときに入る袋状の皮膚のことです。

普通、下降してきた通り道は自然に閉じてしまうのですが、通り道が閉じるのが遅くなることや、閉じきっていないままになることがあります。
そして腹部にある水分が陰のう部分まで下降してくるようになり、陰のう部分に水が蓄積されて大きくなってしまうのです。

このようなしくみで起こる陰のう水腫のことを、交通性陰のう水腫といいます。
新生児に起こるのはこの交通性陰のう水腫です。

非交通性陰のう水腫(ひこうつうせいいんのうすいしゅ)

交通性陰のう水腫とは違い、成人に多く起こっているのが非交通性陰のう水腫です。
陰のうの炎症や外傷により、液体が蓄積された場合に発生します。

陰のう水腫の症状

陰のう水腫ではどういう症状が出現する?

この病気になった場合には、陰のう部分に水が蓄積して、しだいに大きくなります。
左右の陰のうのどちらかに水がたまるのがほとんどではありますが、左右両方の陰のうに水がたまって大きくなることもあります。

片側の陰のうだけに水がたまって大きくなる場合には、片側の陰のうだけが大きくなって左右非対称になっていることが見た目でわかります。
陰のうが大きくなることによって、痛みを感じるようなことはありません。

陰のうのはれに関しては、交通性陰のう水腫では腹部と繋がった状態になっているために、寝た姿勢になると陰のうが小さくなり、立った姿勢になると陰のうが大きくなります。

一方、非交通性陰のう水腫では、寝たり立ち上がったりすることで陰のうが小さくなったり大きくなったりと変化することはありません。

ただ、成人男性の場合には、たまった水のせいで陰のうを重いと感じることがあるほか、違和感が増して歩きにくさを感じたり、がに股になったりする人もいます。

陰のう水腫自体とくに合併症はなく、命をおびやかすような病気ではないものの、日常生活にはある程度の支障が出てしまうことがあります。

陰のうがはれる病気はほかに何がある?

鼠径ヘルニア、精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)、精巣捻転(せいそうねんてん)、精巣垂捻転(せいそうすいねんてん)、精窄静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)などの病気では、陰のう水腫と同じように陰のうがはれる症状が起こります。

陰のう水腫でははれはするものの痛みを感じることはありません。
一方、陰のう水腫以外の陰のう部分のはれが認められる病気では、痛みをともないます。

たとえば、鼠径ヘルニアは鼠径部(脚のつけ根)にある筋肉の膜が弱まり、そこから腸などの臓器が飛び出てくる病気です。
初期段階では自分の指で押したり、寝た体勢になったりすると引っ込んでしまい、痛みを感じることもありません。

しかしながら、進行すると患部のひきつりや軽い痛みが出たり、便秘を起こしたりするようになり、さらに悪化すると飛び出た腸などが筋肉で締め付けられて戻らなくなる嵌頓(かんとん)の状態になります。

すると腸が締め付けられたようになって血流が悪化し、赤黒い色になる、熱や強い痛みが出る、さらには腸の組織が壊死したり腸閉塞(ちょうへいそく)になったりして、最悪の場合には命を落とすことにもなりかねません。

鼠径ヘルニアを放置して進行した場合には、緊急の開腹手術を受けなければいけなくなる可能性があります。
痛みがない場合は陰のう水腫でほうっておけばいいと自己判断するのは危険です。

鼠径ヘルニアのように、初期症状としては痛みを感じない、陰のう部分がはれる病気もあるためです。

痛みがなくてもはれがある場合には医療機関へ行き、どの病気を起こしているのかを明確にし、適切な処置を受けましょう。

陰のう水腫の検査・診断

陰のう水腫かも?と思ったら

陰のう部分が大きくなっていて、陰のう水腫の可能性がある場合には、何科へ行けばいいのでしょうか?
このような疑問を持っている人もいることでしょう。

実際、インターネットのQ&Aサイトでも、子どもの陰のうが大きくなっていて、何科に連れて行ってあげればよいのかと、質問をしている人を見かけます。
陰のう部分が大きくなっている症状が出ている場合には、小児外科または泌尿器科へ行くとよいでしょう。

どうやってこの病気かどうかを調べる?

陰のう水腫では、陰のう部分にライトを押しあてる透光テストが行なわれており、中身が液体の場合には陰のう全体が赤く透けて見えます。
鼠径ヘルニアの場合には、中身が腸などであるため、透けて見えることはありません。

また、陰のう水腫では痛みを感じることがありません。
ライトを押しあてて中身が透けて見えない場合や、痛みの症状が出現している場合には、鼠径ヘルニアや精巣上体炎、精窄捻転など別の病気を起こしている疑いがあります。

透光テストや症状の確認以外には、画像検査の一種である超音波(エコー)検査も病院で行なわれている検査方法の一つです。
陰のうに超音波をあてることで、描出された画像で中身が水なのかどうかを確かめます。

陰のう水腫の治療

経過観察

交通性陰のう水腫を起こしている子どもの大部分は、1歳までのあいだに陰のう水腫が自然に消失してしまいます。
そのため、交通性陰のう水腫の場合には、自然に快復するまで様子をみていくことになるのが基本です。

20人に1人程度の割合で自然消滅しない人がいて、2歳を過ぎても陰のう水腫が解消されない場合や陰のうがあまりに大きい場合には、手術が検討されることになります。

穿刺(せんし)

針を刺すことによってたまった水を抜く方法です。
一見、効果的なように思える治療法ですが、なかの水を抜いたとしても2~3日も経過しないあいだに再び腹部から水分が下降してきて陰のうに水がたまり、大きくなってしまうため、行なう意味がありません。

また、すぐに元どおりになってしまうだけでなく、出血によって血液が一ヶ所にたまり、かたまって腫瘤状になる血腫(けっしゅ)や細菌感染のリスクを高めてしまいます。
そしてそれによってかえって陰のう水腫の快復を遅くしてしまうことにもなりかねません。

また、小さい子どもの場合はとくに、このような治療方法に対してひどく恐がってしまいがちです。
以上のような理由で、針を刺して水を抜く処置は今日では一般的ではなくなっています。

手術

鼠径ヘルニアが一緒に起こっていたり、2歳を過ぎて解消されないまま、あまりに陰のうが大き過ぎるような場合には手術が検討されることになります。
子どもの交通性陰のう水腫の場合、大掛かりな手術ではないものの安全を考慮して全身麻酔で行なわれています。

赤ちゃんの腹部のなかにある精巣は、生まれてくるまでに脚のつけ根部分を通過し、陰のうのなかにまで下降してきます。
このとき精巣が通過してきた道は自然に閉じるのが正常ですが、完全に閉じることなく精巣のまわりに水が蓄積されたのが陰のう水腫です。

手術では精巣の通過してきた道の残っている部分を糸で縛る手術を行ないます。
鼠径ヘルニアと同じ手術であり、脚のつけ根部分を2~3cm切開して行なわれます。

この手術は受けた人に対する体の負担が軽く、スムーズに進めば30分も経過しないうちに完了することもあります。
また、日帰り手術を行なっている医療機関もあるほどです。

成人に多い非交通性陰のう水腫の場合には、睾丸を包む膜からの滲出液が、陰のう部分のはれの原因になっています。
基本的には半身麻酔で手術をする形になります。

陰のう部を4cm前後切開することでなかの滲出液を取り除いたあと、再び蓄積されないように、滲出液を産生している膜を切除します。

細菌感染が付随している人や、あまりに水腫が大きい場合には、術後にまだ滲出液が持続すると思われる人に対しては、排液を目的に一定のあいだ手術部にドレーンという名称の細い管を留置するケースがあります。

手術の合併症

ほとんど起こることはないものの、手術が終わったあとに傷口が細菌感染してしまったり、血液のかたまりができてしまったりして、もう一度手術を受けなければいけなくなる可能性があります。

軽い出血や陰のう・脚のつけ根のはれは大部分が自然に消失します。
また、これも滅多に起こることはありませんが、手術のあとに精巣が縮小してしまう可能性もあります。

なお、手術を受けた側の陰のう水腫は極めてまれではあるものの、再発を起こしてしまうリスクがないわけではありません。
また、逆側にあとから陰のう水腫が起こる可能性もあり、これは再発に比べて起こるリスクは高いです。

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