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D型肝炎の原因・症状・検査・治療・予防とは

公開日: : 肝臓の病気

D型肝炎とは

D型肝炎(でぃーがたかんえん)とは、D型肝炎ウイルス(HDV)が原因で起こる急性および慢性の肝臓の病気です。
D型肝炎ウイルスはデルタ肝炎ウイルスという別名があり、D型肝炎はデルタ肝炎という病名で呼ばれていることもあります。

肝炎を引き起こすウイルスの種類はD型のほかに複数あり、A型、B型、C型、E型が存在します。
このようなウイルスによって引き起こされる肝炎のことはウイルス性肝炎といい、D型肝炎はこのウイルス性肝炎の一種です。

D型肝炎ウイルスがほかのウイルス性肝炎と違うのは、D型肝炎ウイルス単独で肝炎を生じさせることが不可能な点です。
D型肝炎ウイルスが増殖するためには、B型肝炎(びーがたかんえん)を引き起こす原因であるB型肝炎ウイルス(HBV)が不可欠です。
したがって、D型肝炎はB型肝炎ウイルスがいなければ感染が成立しません。

このB型肝炎ウイルスの感染とD型肝炎ウイルスの感染が同時発生した場合には同時感染といい、過去にB型肝炎ウイルスに感染した細胞にD型肝炎ウイルスが感染した場合には重複感染といいます。

同時感染や重複感染が起こった場合には、B型肝炎単独で発症する場合より肝障害の悪化を早めてしまい、肝硬変(かんこうへん)や肝細胞癌(かんさいぼうがん)を招くリスクがあります。

なお、地球上には大体1,500万人が慢性的にB型肝炎ウイルスとD型肝炎ウイルスの重複感染を起こしており、数字だけ見ると多いような印象は受けるものの、世界人口が70億人を突破しているため、感染者は多くありません。

そのなかで感染している人の割合が高いとされている地域に日本が含まれているものの、人数自体は少なく、まれな病気です。

D型肝炎の原因

病原体

D型肝炎を引き起こすのはD型肝炎ウイルスであり、このウイルスにはHDVやデルタ肝炎ウイルスという別の呼び名が使用されていることがあります。

小さく丸い形をしており、ほかの種類のウイルスと共存しなければ、D型肝炎ウイルス単独で増殖することはできません。
人間の場合、B型肝炎の原因であるB型肝炎ウイルスの感染下という、限定された条件下でのみ感染が成立します。

感染経路

D型肝炎の病原体であるD型肝炎ウイルスには、血液やそのほかの体液を介して感染します。

具体的には、B型肝炎ウイルスの感染経路と同様に性行為、輸血、針刺し事故、母子感染(垂直感染)などがあります。
なお、母親から子どもへの母子感染が起こることは滅多にありません。

D型肝炎はB型肝炎と同時に起こるするケースもあれば、末期のB型慢性肝炎になって起こるケースもあります。
HBs抗原という、B型肝炎ウイルスの外殻を構成するタンパク質が検出されると、B型肝炎ウイルスに感染していることを意味していますが、このHBs抗原が検出された人の5%がD型肝炎ウイルスに重複感染しています。

症状が出現していなければうつることはない?

ほかの種類のウイルス性肝炎にいえることでもありますが、D型肝炎ウイルスに感染していても、症状が出ていなければほかの人へと感染を拡大させないというわけではありません。

症状が出現していなくても、上記の感染経路にあてはまるようなことをしていれば、その人がD型肝炎ウイルスに感染してしまうリスクがあります。

D型肝炎ウイルスの感染リスクが高い人

D型肝炎ウイルス単独での自己増殖は不可能であり、増殖するにはB型肝炎ウイルスに感染していることが不可欠です。

したがって、B型肝炎ウイルスに感染している状態の人は、D型肝炎ウイルスに感染してしまう恐れがあります。
このほか、B型肝炎ウイルスの抗体を獲得していない人も、D型肝炎ウイルスに感染するリスクがあります。

自然感染の経験がなく、B型肝炎ワクチン未接種では、B型肝炎ウイルスの感染のリスクと同時に、D型肝炎ウイルスに感染してしまうリスクもあります。

D型肝炎の症状

D型肝炎の種類

D型肝炎にはD型急性肝炎とD型慢性肝炎の2種類があります。
D型急性肝炎はとつぜん発病する肝炎であり、D型慢性肝炎は徐々に病気が悪化していく肝炎です。

D型慢性肝炎は急性肝炎と比較して、肝硬変や肝細胞癌といった合併症を招いてしまう確率が上昇し、この種類の感染では症状が出現するまで長くかかります。

B型肝炎と酷似している症状

D型肝炎で起こり得る症状は、B型肝炎で出現する症状に非常に似ています。
実際に引き起こされている症状がD型肝炎によるものなのか、B型肝炎によるものなのか見極めるのは容易ではありません。

起こり得る症状としては倦怠感(けんたいかん)や疲労感、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、関節痛、尿が濃い色になる褐色尿、皮膚や白眼部分が黄色みを帯びる黄疸(おうだん)などがあります。

B型肝炎との関係

D型肝炎ウイルスに感染すると、B型肝炎の症状悪化を助長したり、症状が出現する引き金になったりすることがあります。
また、B型慢性肝炎を起こしていると、D型慢性肝炎を招くリスクが上昇してしまいます。

同時感染と重複感染

まず、B型肝炎ウイルスとD型肝炎ウイルスの同時感染では、軽~中等度の肝炎や、劇症肝炎(げきしょうかんえん)を招いてしまうこともあります。

劇症肝炎というのは急性肝炎のなかでも重症度が高く、肝不全と意識障害を引き起こします。
ひどい場合には、昏睡状態に陥ってしまいます。

なお、B型慢性肝炎を起こしているとD型慢性肝炎を招くリスクが上昇すると述べましたが、D型急性肝炎がD型慢性肝炎に移行することは少なく、数値としては5%に達しません。

次にB型慢性肝炎でのD型肝炎ウイルスの重複感染は全体の70~90%であり、悪化を早めます。

D型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスの増殖過程であるウイルスの複製を抑制するものの、D型肝炎ウイルスの重複は、B型肝炎ウイルスだけの感染と比べて、肝硬変への進展を10年程度早めてしまいます。

D型肝炎ウイルスはさらに重い肝炎を生じさせますが、B型肝炎ウイルスだけの感染に比べ繊維化が早く進むしくみは現状において解明されていません。

D型肝炎の検査・診断

抗体検査

血液検査を行なうことにより、D型肝炎に対する抗体であるHDV抗体の有無を確認します。
検査の結果、血液中にHDV抗体が存在することが確認された=陽性を示した場合には、D型肝炎ウイルスに感染していることを意味しています。

核酸増幅検査

検出したいウイルスの遺伝子(ウイルス核酸=RNA)の一部を、試験管のなかで人工的に増幅させて検出する方法が核酸増幅検査です。

ほかのウイルス性肝炎などの抗原や抗体を調べる方法では、感染後に抗原や抗体が検出可能な量になる前の段階で血液を採取しても発見されません。

この前段階をウィンドウ期といいますが、核酸増幅検査によって検出感度が高くなり、ウィンドウ期を短くすることに成功しています。

肝機能検査

肝臓の病気の疑いがある人に対しては、肝臓の機能を調べることがあります。
抗体検査と同じく肝機能検査も血液検査です。
血液検査で血液中の酵素の量を確認しますが、肝臓が損傷していると検査結果に異常が出ます。

D型肝炎の治療

治療法

D型急性肝炎とD型慢性肝炎の両方を完璧に治すような治療法は確立されていません。
D型肝炎の治療で行なわれているのは、注射薬であるインターフェロンの投与であり、インターフェロンは抗ウイルス作用がある薬です。

このインターフェロンを使用する治療法のことは、インターフェロン療法といいます。
どの程度の治療期間を要するかははっきりしていません。
場合によっては1年以上かかる可能性もあるとされています。

また、全身がだるくなる、熱が上がる、頭が痛む、筋肉が痛む、食欲がわかない、髪が抜けるといった副作用が起こり、体がだるくなる症状や熱が出る症状はほぼ全員に引き起こされます。

注意しなければいけない副作用としてはうつ状態があり、ひどい場合には自殺をはかることもあります。

そのほか、視力障害(しりょくしょうがい)、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)、甲状腺機能異常(こうじょうせんきのういじょう)、糖尿病(とうにょうびょう)の増悪が起こることもあります。

深刻な副作用が引き起こされた場合には、インターフェロンの投与が中止されることもあります。
なお、インターフェロン療法で認められる効果は全体的に高くなく、大部分の人は治療をやめたあとに再発を招いてしまいます。

また、B型肝炎の治療で効果を発揮する内服薬の核酸アナログ製剤(ラミブジン)は、D型肝炎に対する複製の抑制効果はありません。
そのほか、重度の肝硬変や劇症肝炎では、肝臓移植が必要になる可能性があります。

肝臓移植というのは、ダメージを受けた肝臓を摘出し、ドナーが提供した正常な肝臓に入れ替える手術のことです。

D型肝炎の予防

唯一の予防方法

D型肝炎を未然に防ぐには、B型肝炎ウイルスに感染することを阻止するしかありません。
B型肝炎ウイルスの感染は、血液や体液を介して起こります。

したがって、感染者の血液が付着している疑いがあるため、歯ブラシやカミソリなどの共用をしない、ほかの人の血液を素手で触ることをしない、感染していないことがはっきりしているような信頼のおける相手以外との性交渉では必ずコンドームを使用する、ピアスの穴をあけるときには十分な消毒が行なわれている、使いまわしがされていない器具を使用するといったことを徹底しておけば、B型肝炎ウイルスの感染は防ぐことが可能です。

そのほか、B型肝炎ワクチンの接種を受けておくとより安全です。

B型肝炎ワクチンの接種

赤ちゃん、大人の両方が予防接種を受けることが可能です。
3回の接種で、初回と2回目は4週間あけて接種、初回と3回目は20~24週間あけて接種します。

計3回の接種で十分な免疫を獲得することが可能ですが、滅多にないものの、免疫を獲得しにくい人もいます。
この場合には必要に応じて再びワクチンの接種を受けることが推奨されています。

副反応・副作用としては、接種した箇所の赤みや軽い発熱が数%に起こることがあります。
ただ、このような副反応・副作用は小児で起こることは滅多にありません。

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