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劇症肝炎を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 肝臓の病気

肝臓は栄養素の糖質、脂質、タンパク質の合成・分解を行なうほか、薬物や身体に悪影響を及ぼす物質を解毒・排泄するなど、私たち人間の生命活動にとって重要な仕事をこなしてくれている臓器です。

肝臓のなかで、こうした役目を果たしている肝細胞という細胞が急激、多量に破壊されることにより、肝機能が低下してしまう病気が劇症肝炎(げきしょうかんえん)です。

肝機能が低下すると、血液凝固因子の産生が悪くなって出血を起こしやすくなるほか、身体に悪影響を及ぼす物質がため込まれて肝性脳症(かんせいのうしょう)という意識障害が引き起こされます。

劇症肝炎は、急性肝炎(きゅうせいかんえん)と共通の全身倦怠感、嘔気、食欲不振といった症状が出現して8週間以内に肝性脳症が認められて、極端に血液凝固因子が減少した場合に診断が下される病気です。

肝細胞は増殖能力に優れており、急性肝炎は多くの場合、肝細胞が破壊されても自然に元通りになり、この現象のことは肝再生といいます。

劇症肝炎の場合は広く肝細胞の破壊が起こるため、肝細胞が増殖が妨げられてしまい、適切な処置をほどこさずにいると命を落としてしまう確率が高い病気です。

日本では推定で1年あたりおよそ400人が劇症肝炎を引き起こしており、この人数は急性肝炎を罹患している人の100分の1程度にあたります。

年齢や性別に関係なく起こり、B型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染者が劇症肝炎を引き起こしたり、肝臓の病気とはまた別の病気での薬物療法を行なっていた人が劇症肝炎を引き起こしたりするケースが多くなってきています。

劇症肝炎の原因

劇症肝炎はなぜ起こる?

この病気はウイルス性肝炎の病原体である肝炎ウイルスに感染することや、薬物に対する免疫の過剰反応、自己免疫性肝炎(じこめんえきせいかんえん)などによって引き起こされます。

日本ではウイルス性肝炎の一種であるB型肝炎(びーがたかんえん)の病原体、B型肝炎ウイルスの感染で劇症肝炎を招くケースが一番多く、全体の大体40%の数値になっています。

この40%のなかには、B型肝炎ウイルスの持続感染者が劇症肝炎を発症するケースと、持続感染者との性交渉などによりB型肝炎ウイルスに感染し、発症するケースが含まれています。

持続感染者とはいったいどのような人のことを指すのかといいますと、B型肝炎ウイルスにはこのウイルスに感染後、一定期間が経過してウイルスが体内から排除されて回復する一過性感染と、長期にわたりB型肝炎ウイルスが排除されることなく住み着いてしまう持続感染とがあります。
持続感染者は後者の状態に陥っている人のことをいいます。

B型肝炎以外では、ウイルス性肝炎の一種であるA型肝炎(えーがたかんえん)の病原体のA型肝炎ウイルス(HAV)や、同じくウイルス性肝炎の一種であるC型肝炎(しーがたかんえん)の病原体のC型肝炎ウイルス(HCV)によって劇症肝炎が起こることもあります。

B型肝炎ウイルスの感染に続いて原因として高い割合を占めているのが、原因不明の劇症肝炎であり、全体のおよそ30%の数値です。
薬物に対する免疫の過剰反応や自己免疫性肝炎が閉める割合は全体の10%以下しかありません。

ただ、原因不明の劇症肝炎の人のなかには、薬物に対する過剰反応や自己免疫性肝炎が原因の劇症肝炎が含まれているかもしれないという見方がされています。

また、A型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスによって引き起こされる劇症肝炎は、急性肝炎と原因が共通しているにもかかわらず、どうしてそのなかのわずかな人だけが劇症肝炎を招いてしまうのか、この点に関しては現状においては解明されていません。

劇症肝炎は遺伝する病気?

親が劇症肝炎になると、子まで劇症肝炎になるのか、子を持つ人や将来的に子を持ちたいと思っている人には気になる問題です。

この点に関してですが、劇症肝炎が子へと遺伝してしまう心配はありません。

ただし、B型肝炎ウイルスは母親が持続感染者である場合、出産時にB型肝炎ウイルスに感染した子が持続感染者になることが多いです。

そしてその結果、劇症肝炎を招いてしまうという危険性がある点には注意しなければいけません。

B型肝炎ウイルス感染の原因とは

劇症肝炎の原因として最多のB型肝炎ウイルス。
このウイルスはB型肝炎ウイルス感染者の血液や体液を介して感染し、主に垂直感染と水平感染の2通りの感染経路があります。

まず垂直感染ですが、この感染経路はまたの名を母子感染といいます。

母親がB型肝炎ウイルス感染者で、出産時に産道で血液を介して赤ちゃんに感染させてしまうリスクがあります。

乳幼児は免疫力が不十分で、B型肝炎ウイルスに感染してもウイルスを異物と認識することが困難であり、仮に異物と認識することができたとしても、排除する能力に乏しいため、B型肝炎ウイルスは肝細胞に住み着くようになってしまいます。

感染後にはそのまま肝炎の症状が出現することなく生活を送りますが、思春期~30歳あたりには免疫機能が成熟し、ウイルスを追い出そうと肝細胞に攻撃を仕掛けるようになり、肝炎を発症します。

ただ、大部分は軽度の肝炎の症状で、肝臓の障害が進むことは少ないものの、B型肝炎ウイルスに感染している人の10人に1人程度が慢性肝炎に移行し、さらにB型肝炎ウイルスに感染している人の100人に1~2人の人が、肝硬変(かんこうへん)や肝臓癌(かんぞうがん)へと進展してしまいます。

次に水平感染ですが、B型肝炎ウイルスに感染している人との性交渉、医療従事者による針刺し事故、予防接種における注射器の使いまわし、B型肝炎ウイルスに汚染された血液による輸血、不十分な消毒や使いまわしの器具によるピアスの穴あけや刺青を彫る行為、麻薬・覚せい剤の注射器の共用、B型肝炎ウイルスに感染している人の血液が付着した歯ブラシやカミソリの共用などがあります。

大人になってはじめてB型肝炎ウイルスに感染した場合には、70~80%の人は肝炎を起こすことなく自然回復し、急性肝炎を起こすのはあとの20~30%の人です。

急性肝炎を起こした人の大部分は回復しますが、そのなかの1~2%の人は劇症肝炎を招いて、適切な治療を受けなければ死亡してしまうことにもなりかねません。

B型肝炎ウイルスと劇症肝炎

B型肝炎ウイルスの持続感染では、肝機能に異常がない状態で劇症肝炎になるケースがあります。

紅茶に似た濃い色の尿になる褐色尿の症状が出たり、皮膚や白眼部分が黄色みを帯びる黄疸(おうだん)の症状が疑われたりするようであれば、すぐに病院へ行きましょう。

また、B型肝炎ウイルスの持続感染では、別の病気で副腎皮質ステロイドなどの免疫抑制剤や抗がん剤を使用した際に劇症肝炎を引き起こすことがあります。

このほか、B型肝炎ウイルスに感染後、快復したといわれた人のことを既往感染といいますが、この場合でも免疫抑制剤や抗がん剤の使用後に、持続感染に比べると少ないものの、劇症肝炎を引き起こすケースがあります。

別の病気で免疫抑制剤や抗がん剤を使った治療を受ける前には、医師と相談して未然に防ぐための適切な処置を受けましょう。
そのほか、B型肝炎ウイルスは感染者との性交渉で感染し、持続感染や既往感染の人以外でも劇症肝炎を引き起こすことがあります。

相手がB型肝炎ウイルスの持続感染の場合には、B型肝炎ウイルスのワクチンの接種を受けることをおすすめします。
初回と2回目は4週間あけて、初回と3回目の接種は20~24週間あけて、計3回の接種を受けることにより、ほとんどの場合は免疫を獲得することが可能です。

まれに免疫を獲得しにくい人がいますが、この場合には再びワクチンの接種を受けることが推奨されています。
B型肝炎の予防接種は赤ちゃんであろうと大人であろうと計3回、同じスケジュールで行なわれています。

劇症肝炎の症状

どういう症状が出現する?

劇症肝炎ははじめ、急性肝炎と同じような症状が引き起こされます。
熱が高くなる、吐いてしまう、全身がだるくなる、食欲がなくなる、筋肉が痛むといった、風邪と間違われてしまうような症状が出現します。

そしてこれらの症状に続いて、褐色尿や黄疸の症状が出現します。
そのほか、細菌感染、肺、心臓、腎臓などの異常、血液凝固異常などが起こり、多臓器不全の状態に陥ることがよくあります。

これにより、熱が高くなる、息が苦しくなる、むくむ、血液の混じった便が出る、口のなかや注射したところから出血するなど、さまざまな症状が続々と引き起こされることになります。

また、劇症肝炎の特徴的な症状として、肝性脳症があります。
肝性脳症は程度によって5段階があり、Ⅰ度が一番軽度、Ⅴ度が一番重度です。

Ⅰ度では昼夜の睡眠リズムが反対になってしまったり、服装や姿勢の乱れに対しての関心が失われたりといった精神症状があり、Ⅱ度では羽ばたき振戦(しんせん)という、両腕を前方に出して手のひらを反らせると手指が震える症状や、時間や場所を正確に認識できない指南力障害(見当識障害)などが起こります。

さらに悪いⅢ度では、興奮状態になって暴れる症状が起こり、Ⅳ度では痛みの刺激に対して反応を示す以外には、完全に意識が失われている状態になります。

そして最重度のⅤ度では、痛みの刺激に対してもいっさい反応を示さなくなる、肝性昏睡(かんせいこんすい)を引き起こします。

急性肝炎の症状との違い

急性肝炎の場合には、黄疸の症状が出現すると、全身がだるいなどの症状が軽減されます。

これに対し、劇症肝炎に進展する場合には、症状が次第に軽くなっていくことはなく、反対に悪化していくことになり、肝性脳症による精神症状が引き起こされます。

劇症肝炎の経過

劇症肝炎には、発症後10日以内に脳症が起こる急性型と、11日以降に起こる亜急性型があります。
経過不良なのは、亜急性型の劇症肝炎です。

救命率は亜急性型で25%前後、急性型で45%前後、A型肝炎ウイルスによる急性型の劇症肝炎では、大部分の経過が良好であったことが報告されています。
そのほか、肝臓の移植を行なった人の救命率はおよそ80%と高い数値を示しています。

肝臓を移植することなく助かった人は、基本的に後遺症に悩まされることなく快復します。
ただ、肝硬変に移行してしまうと、肝硬変に対する適切な処置をほどこさなければいけなくなります。

また、肝臓の移植を行なって助かった人は、別の人の肝臓が提供されたわけであるため、拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤の服用を生涯にわたって続けていかなければなりません。

劇症肝炎の検査・診断

劇症肝炎の診断基準

肝炎の症状である発熱、吐き気、嘔吐、倦怠感、食欲不振などの症状が出現後、8週間以内にⅡ度以上の肝性脳症が起こり、プロトロンビン時間が40%以下の数値になっている場合に劇症肝炎と診断されます。

プロトロンビン時間

前述したとおり、劇症肝炎の診断基準の一つにプロトロンビン時間40%以下があります。
プロトロンビンは止血作用を担っている凝固因子の一つです。

プロトロンビン時間は出血が起こり、肝臓でプロトロンビンが産生されるまでの時間を測定する検査のことですが、40%と数値が100%を大きく下回っていると血液が早く固まって止血するのではと思う人も少なくないでしょう。

実はそうではなく、40%というのは血液が固まるまでの時間短縮を意味しているのではなく、正常な数値を100%とし、その値に対して40%しか血液を固める力がないことを意味しています。

血液を固める力が乏しくなっているため、血液が固まる時間が正常値より長くなってしまいます。
劇症肝炎では血液凝固因子が著しく減少してしまうため、血液を固める力が弱く、固まるまでの時間が長くかかるため、出血傾向の症状が引き起こされます。

アルブミン

血液中に存在するタンパクの総称を総タンパクといいますが、アルブミンは総タンパクの約3分の2を占めているタンパク質の一種です。

そしてこのアルブミンは肝細胞でしか合成されないという特徴があり、肝機能が低下すると肝臓のアルブミンを合成する能力が低下してしまい、血液中の数値が低下してしまいます。

劇症肝炎ではこのアルブミンの数値が下がってしまいます。

肝炎ウイルスマーカー検査

ウイルス性肝炎の病原体に感染すると、血液中で多くなる物質の総称を肝炎ウイルスマーカーといいます。
ウイルス性肝炎の病原体に感染した場合、血液中にウイルスの遺伝子や、抗原、抗体が多くなります。

抗原というのは、肝炎ウイルス独特のタンパク質のことで、抗体というのは抗原を取り除くために免疫機構で産生された免疫グロブリンのことです。

劇症肝炎の原因として最多のB型肝炎ウイルスを例に出すと、HBs抗原が検出された場合には、現在B型肝炎ウイルスに感染していることを、HBs抗体が検出された場合にはすでにB型肝炎ウイルスに感染し、免疫を得ていることを意味しています。

また、HBc抗体は抗体価といって抗体の量が多い場合には現在B型肝炎ウイルスに感染していることを、少ない場合には過去に感染したことを意味しています。

それから、HBe抗原が検出されれば、血液中のB型肝炎ウイルス量が多く、ウイルスが盛んに活動していることを意味し、まわりへと感染を拡大させるリスクが高いと判断できます。

そのほか、HBe抗体が検出されれば、B型肝炎ウイルスがいたとしても量自体は少ないことを意味しています。
肝炎ウイルスマーカー検査は、劇症肝炎の原因を確認することを目的に行なわれている方法です。

画像検査

腹部超音波検査、腹部CT検査を行なうことにより、肝臓の状態を画像として確認します。

劇症肝炎では肝細胞の再生に比べ死滅が急速に起こるため、肝臓が萎縮した状態になっていることがあります。

また、はっきりとした腹部に水がたまる症状である腹水が確認されることもあります。

劇症肝炎の治療

B型肝炎・薬剤性・自己免疫性肝炎が原因の治療

B型肝炎の病原体であるB型肝炎ウイルスの感染が原因のケースでは、抗ウイルス療法が行なわれています。
抗ウイルス作用のある注射薬のインターフェロンや内服薬の核酸アナログ製剤が使用されます。

薬物に対する免疫の過剰反応や自己免疫性肝炎が原因になっているケースでは、B型肝炎ウイルスの感染が原因の場合とは違った治療法が行なわれています。

強力な抗炎症作用や免疫抑制作用、抗アレルギー作用を発揮する副腎皮質ステロイドを短期間のうちに大量に点滴静注するステロイド・パルス療法が選択されることになります。

こうした治療を精神症状が出てくる前に受けることで、劇症肝炎への移行を抑制できる可能性もあります。

人工肝補助療法

劇症肝炎を招いた人に対しては、肝臓の機能を助けるための人工肝補助療法が行なわれています。
この治療方法は体にとって不可欠な物質を補充し、反対に体にとって悪影響を及ぼす物質を除去するものです。
人工肝補助療法としては、血液浄化療法である血漿交換や血液ろ過透析が行なわれています。

血漿交換は劇症肝炎を起こしている人の血液から血球を除く成分(血漿)を除去し、除去した分を健常な人の血漿と置き換える治療のことをいいます。

一方の、血液ろ過透析は腎機能が著しく低下している人に対して行なわれている、血液の不要物を透析膜で取り除いてきれいにする血液透析が応用された治療法です。

こういった治療を行なっているうちに肝機能が落ちている期間が過ぎ去ってしまえば、肝臓の再生が進んで死亡せずに済みます。

肝移植手術

上記の治療を受けたものの、肝機能が改善されない場合があります。
このときに検討されるのが肝移植手術です。

肝移植には、脳死者移植と生体部分肝移植があります。
脳死者移植というのは脳死状態になった人の肝臓を移植する方法で、生体部分肝移植というのは、近親者の肝臓の一部を移植する方法です。

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