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ネフローゼ症候群を詳細に:原因,症状,検査,治療など

公開日: : 最終更新日:2017/05/25 腎臓の病気・人工透析


腎臓には体内にある不要物や有害物を排出する役割があります。

腎臓にある糸球体(しきゅうたい)は動脈と静脈を繋ぐ細い血管が集まった組織で、小さな穴があいており、この組織がろ過装置となり、1日あたり約150リットルの血液から不要物や有害物などが尿として体外へと排出されています。

ネフローゼ症候群(しょうこうぐん)とは、腎臓の糸球体に異常が起こることにより、尿中に大量のタンパク質が漏出する症状のことであり、病気の名称ではありません。
体内のタンパク質が減少することにより、強いむくみをはじめとする症状が引き起こされます。

年齢に関係なく起こり、小児では生後18ヶ月~4歳までに起こりやすく、男児と女児では前者のほうが罹患率が高いです。

ネフローゼ症候群にははっきりとした原因がなく、腎臓が直接に障害を受ける一次性(原発性)のものと、糖尿病(とうにょうびょう)、全身性エリテマトーデス(ぜんしんせいえりてまとーです)、ウイルス感染など体の別のところに引き起こされた病気の影響を受ける二次性(続発性)のものとがあります。

また、非ステロイド性抗炎症薬などの副作用としてネフローゼ症候群を招くことが知られているほか、アレルギー反応によりネフローゼ症候群が引き起こされる場合には、遺伝的要因が関わっていることもあります。

ただ、遺伝性のネフローゼ症候群を起こすケースはまれで二次性であり、一次性のものには遺伝性はないと考えられています。

ネフローゼ症候群のうち、一次性のものは推定で年間2,200~2,700人が新たに発症し、全体では約16,000人の患者数がいます。
一次性のものは、2015年7月より国の指定難病の一種となっており、難病医療費助成制度の対象です。

ネフローゼ症候群かどうかは通常の診察のほか、尿や血液を調べて診断を下します。
治療は入院をして安静にし、食事療法や薬物療法が行なわれるというのが基本です。

ネフローゼ症候群の原因

一次性(原発性)

一次性のネフローゼ症候群の糸球体の異常がどうして生じるのかは、現状においてはっきりしていません。
ネフローゼ症候群を引き起こしている人のうち、子どもの約90%以上、大人の70~80%を一次性が占めています。

一次性のネフローゼ症候群には糸球体の状態に応じて微小変化型(びしょうへんかがた)ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症(そうじょうしきゅうたいこうかしょう)、膜性腎症(まくせいじんしょう)、膜性増殖性糸球体腎炎(まくせいぞうしょくせいしきゅうたいじんえん)の4種類があります。

微小変化型は糸球体の形状に目立った変化がなく、小児~青年期に多く、10歳以下のネフローゼ症候群の原因としては一番多いものです。

巣状糸球体硬化症は一部の糸球体の血管が部分的に硬くなり、青年期に多いもので、膜性腎症は糸球体のなかの基底膜(きていまく)の障害で、大人に引き起こされるネフローゼ症候群の主な原因のひとつです。

膜性増殖性糸球体腎炎は糸球体の血管やとりまく組織が増えたり厚くなったりするもので、まれな種類の糸球体腎炎であり、8~30歳に主に認められます。

二次性(続発性)

二次性のものの原因となる病気のうち、一番割合が高いのは糖尿病、全身性エリテマトーデス、ウイルス感染です。

糖尿病は血液中のブドウ糖濃度=血糖値を正常範囲内にとどめておけなくなる病気であり、全身性エリテマトーデスは本来は体を守る免疫機能が自分自身に攻撃を仕掛けてしまう自己免疫性疾患の一種です。

そのほか日本人の死因トップの常連である悪性腫瘍(あくせいしゅよう)、非ステロイド性抗炎症薬などの副作用が原因となるケースがあり、まれにアレルギー反応によってネフローゼ症候群が起こることがあり、この場合には遺伝的要因が影響している場合があります。

ネフローゼ症候群の症状

むくみ

代表的な症状はむくみです。
むくみは浮腫(ふしゅ)とも呼ばれている症状であり、血液中のタンパク質が減少する=低タンパク血症(ていたんぱくけっしょう)により、血管中の水分が減少して、血管の外に水分と塩分が増加するためにむくんでしまいます。

ひどくなると腹部、肺、心臓、陰嚢(いんのう)にまで水がたまるようになります。
むくみが全身にまでひろがるようになった場合の体重増加も、ネフローゼ症候群の症状のひとつです。

なお、むくみの症状は昼間は下半身に、夜間は上半身に起こりやすいともいわれています。

そのほかの症状

むくみのほかにはまぶたの腫れが起こります。
また、疲労を感じやすく、倦怠感が発症初期には続きますし、食欲もなくなります。

ほかにも筋肉の萎縮や、血管のなかの水分が減少して腎臓への血液供給が悪くなるとおしっこの量が減少し、タンパクがおしっこに含まれることで尿が泡立つ症状も引き起こされます。

さらには血圧低下やコレステロールの増加、合併症として腎不全(じんふぜん)、脳梗塞(のうこうそく)、肺梗塞(はいこうそく)、心筋梗塞(しんきんこうそく)、感染症などを引き起こすリスクもあります。

症状を自覚できないケースも

ネフローゼ症候群は発症初期に疲労を感じやすく休んでも体がだるい状態が続いたり、まぶたの重さやおしっこが泡立つなどの症状が出現します。

ただ、こうした症状は忙しいせいだと片付けてしまったり、尿の状態を毎回いちいち気にしなかったりするため、症状に気づきにくいのがやっかいなところです。

そのため、健康診断で異常が発見されるケースが珍しくありません。
少しでも思いあたる不調がある場合には、腎臓内科へ行きましょう。

ネフローゼ症候群の検査・診断

診察

病気を疑い医療機関へ行った場合には、通常の診察が行なわれます。
むくみがどの程度ひどいのか、どこがむくんでいるのか調べるほか、原因となる薬剤を使用しているかどうかを確かめます。

したがって、病院へ行く際に服用中の薬がある場合には、答えられるように服用中の薬をなにかに控えておくと診察がスムーズに進みます。

尿検査

尿中へと漏出したタンパク質の量を調べることが目的です。
24時間蓄尿(ちくにょう)検査という方法があり、1日に排泄した全部の尿を採取し調べます。
24時間おしっこをためるのが困難なケースでは、無作為に採取した尿で調べる形になります。

血液検査

ネフローゼ症候群では低タンパク血症のほか、高コレステロール血症(こうこれすてろーるけっしょう)が引き起こされるケースも珍しくありません。
したがって、アルブミンなどのタンパク質の量やLDLコレステロールなどの脂質の量が確認されます。

また、ネフローゼ症候群では血液の主成分である赤血球や、赤血球中のタンパク質であるヘモグロビンなどの低下、電解質のナトリウムの低下などが生じるケースもあるため、こうした成分の検査項目もチェックされています。

診断基準

ネフローゼ症候群の診断基準は成人と小児で異なります。
厚生労働省による基準では成人の場合、尿中のタンパクが1日3.5g以上、血中アルブミン濃度が3.0g/dl以下が基準として定められており、小児の場合は尿中のタンパクが1日3.5g以上、あるいは朝一番の尿100mgあたり100ml以上のタンパク尿の持続、血中アルブミン濃度が2.5g/dl以下の場合にネフローゼ症候群と診断されます。

なお、ほかにコレステロール値の高さも基準としてはありますが、尿中のタンパク量と血液中のアルブミン濃度の条件を両方満たしている場合には診断可能です。

そしてはっきりとした原因がない場合には一次性のものと判断されることになります。

そのほかの検査

画像検査である超音波検査、CT検査、MRI検査により、腎臓の形状や肺水腫(はいすいしゅ)などの有無を確認する方法があります。

また、腎生検(じんせいけん)といって、針を刺して腎臓の組織を一部だけ採取し顕微鏡で調べる検査があります。
腎生検は、原因を絞り込むことに役立つ方法です。

ネフローゼ症候群の治療

対症療法

対症療法のメインはむくみをコントロールすることです。
タンパク尿が増やす運動を控え、安静にします。

また、むくみは塩分が細胞外に蓄積されて生じるため塩分を制限するほか、利尿薬を使用して尿量を多くすることにより体内にたまった水分を排出します。

むくみがひどい場合には水分の制限が行なわなければいけなくなるほか、病気の進行具合次第ではタンパク質の摂取も制限されることになります。

そのほか、血圧降下作用のある薬剤が使用されるケースや、コレステロール低下作用のある薬剤が使用されることもあります。

原因療法

副腎皮質ホルモン薬による治療と、免疫抑制剤による治療があります。
症状の改善に伴い、薬の使用量は減少していくことになります。

副腎皮質ホルモン薬には尿タンパクの減少、腎機能低下の緩和、むくみの抑制効果があり、免疫抑制薬は副腎皮質ホルモン薬のみでは不十分な場合に補助的な薬として投与されることになるほか、副腎皮質ホルモン薬の投与量を少なくしたり、副腎皮質ホルモン薬の使用をやめたりする場合に使用されるケースもあります。

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