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エキノコックス症の原因・症状・感染経路・治療・予防・検査など

公開日: : 最終更新日:2015/10/20 感染症, 人獣共通感染症


エキノコックス症は、エキノコックスという条虫の幼虫が寄生することで起こる病気です。
日本国内では北海道のみに存在すると言われてきましたが、2005年には埼玉県にいた犬の糞便から、2014年には愛知県知多半島にいた犬から、それぞれ虫卵が含まれるのが発見されました。
エキノコックス症をひとたび人間が発症すると重篤化しやすいので、病気のことをよく知って予防していくことが大切です。
ここではエキノコックス症について、詳しく見ていきます。

エキノコックス症の症状

犬がエキノコックスに感染しても、症状があらわれることはまれです。
通常の固形便に加えて塊状の粘液を排便したり、発生頻度は低いものの下痢をしたりすることもあります。
エキノコックスの成虫が糞便と一緒に排泄されることもありますが、とても小さな体なので肉眼で判別するのは不可能です。
エキノコックスは動物を介して人間にも感染しますが、包虫の増殖するスピードは遅く、感染後数年~10数年は症状はあらわれません。
しかし、包虫が増殖してスポンジ状の大きな病巣をつくると、近くにある肝臓の機能が悪化します。
上腹部の膨満、不快感といった症状にはじまり、悪化すると肝機能不全が起こり、発熱や黄疸といった症状があらわれ、皮膚の激しい痒みや腹水が生じることがあります。
包虫は肝臓だけでなく、肺や脳に転移することがあり、脳に達すると神経症状が起こります。
転移は、形成された病巣が破れて包虫が放出されることで、起こると言われています。
肺が侵されると、咳や胸痛、血痰、発熱など結核に近い症状が見られるようになります。
骨や心臓などに寄生するケースもあり、それぞれ重い症状が起こります。
発症後そのままにしておくと、10年でほとんどの患者が死亡すると言われています。

エキノコックス症の感染経路

エキノコックスは20世紀以降に北海道に定着したと言われ、現在でも北海道全域で蔓延しているとされています。
北海道ではキタキツネから感染することが多く、その感染例は全体の60パーセントを占めると言われています。
最近は北海道以外でもエキノコックス症の感染例が確認されていますが、本州にわたった経緯やルートは明らかになっていません。
成虫はキツネの腸に寄生して産卵し、その卵がキツネの糞とともに排出されます。
それを野ねずみが木の芽などとともに食べて、体内で卵がかえって幼虫となって肝臓に寄生します。
この幼虫が寄生している野ねずみをキツネが補食することで、キツネの腸内で幼虫が成虫へと成長します。
つまり、食べたり食べられたりする動物同士の関係のなかでエキノコックスは成長していくのです。
キツネだけでなく、犬が感染した野ねずみを食べることで、エキノコックス成虫は寄生するため、犬を飼っている人は注意が必要です。
犬が感染しても重篤な症状があらわれることはまれですが、一度感染した犬は糞便とともに虫卵を排泄します。
成虫は、動物に感染後26日以降に虫卵の排泄を開始すると言われています。
ただし、成虫がキツネや犬の体内で増殖するということはなく、通常は2~4ヶ月ほどで死ぬと言われています。
それが人間の口に入り込んで、人間が感染すると重篤な症状が起こる可能性があります。
人間はエキノコックスの卵に汚染された水や山菜などを摂取する、あるいは卵に汚染された手指を通じて感染することで感染にいたります。
通常は人間同士の感染や、野ねずみからの感染することはないでしょう。
また、人間への感染は虫卵の経口摂取に限られ、幼虫が感染している動物を人間が食べたとしても、エキノコックスに感染されることはありません。
犬やキツネに虫卵を食べさせた場合も同じで、あくまでも成虫によってしか感染されることはないのです。

エキノコックス症の治療

人間がエキノコックスに感染した場合、ただひとつの根治的治療は、感染部位の外科的切除です。
早い段階で診断がされた場合は術後の予後はよいですが、進行し過ぎた病床を完全に取り除くのは非常にむずかしいと言えるでしょう。
ほかにもPAIR法による嚢胞を穿刺する治療法、駆除薬による治療などがあり、手術がむずかしい場合に選択されることがあります。
PAIR法はCTガイド下の経皮的吸引をおこなったあとに、殺頭節薬注入と再吸引を行うという方法です。
どこでもできる治療法ではなく、実施可能な施設は限られています。
薬での治療法としては、アルベンダゾール400mgを経口で1日2回とり、それを1~6カ月間つづけるのが一般的です。
小児の場合は、7.5mg/kgを1日2回というのが目安となります。
嚢胞内容物の漏出が懸念される場合は、転移性感染を防ぐことを目的に、手術前にアルベンダゾールを投与することがあります。
体に寄生する幼虫を完全に取り除かない限り、エキノコックス症の予後はいいとは言えません。
そのため、できる限り手術を行って、病巣を取り除くことが望ましいとされています。
しかし、位置や症状、病変の大きさなどによって、手術が適さないケースもあるため、その場合はちがう方法が試されることになるのです。

エキノコックス症の予防

エキノコックス症は発症後の治療が非常に困難なので、予防に力を入れることがなにより大切です。
北海道で飼われている犬のうち、1%以上がエキノコックス成虫に感染しているというデータもあるので、北海道在住の人は特に気をつけたほうがいいでしょう。
北海道のそれぞれの市町村の保健所では住民のエキノコックス血清検査を行っているので、定期的に検査を受けることで早期発見や予防につなげることができます。
感染した犬やキタキツネとの接触経験がある人は、発症のリスクが高いので血清検査を受けることが望ましいでしょう。
北海道へ旅行などで訪れる場合は、キタキツネと接触しないことが重要です。
もしもキタキツネが生息する地域に出向く場合は、植物や土に触れたあとに手をしっかり洗う、沢の水は絶対に飲まないなど、自分で気をつける必要があります。
ペットのエキノコックス感染のリスクは、野ねずみの補食回数が多いほど跳ね上がります。
ペットの周辺環境や散歩ルートなどに気を配り、極力野ねずみと接触させないことが予防として大切となります。
ペットの放し飼いは接触回数が増える原因となるので、できるだけ避けるようにしましょう。
緑地の少ない狭い空き地や室内でペットを飼い、リードをつけて散歩をさせて拾い食いの機会をなくすことで、かなりの確立でエキノコックス症を予防することができます。
犬の飼育環境が自然環境に近く、エキノコックス感染のリスクが高い場合は、駆除薬を投与するというのも予防として有効です。
野山で犬が放し飼いとなってしまった場合、あるいは野ねずみの補食が確認された場合は、感染リスクが高いので、予防的に駆除しておくといいでしょう。
感染した野ねずみを犬が補食した場合、糞便と一緒に虫卵が排出されるまでには25日以上かかります。
感染後20日までに駆虫することができれば、虫卵が排泄されることなく人間への感染リスクは低く済みます。
広い庭園などで放し飼いしている場合で、検査でエキノコックス感染が確認されたケースでも、定期的な駆虫は欠かせません。
こういった駆虫はエキノコックスに感染する機会がどの程度あったかによって、回数を決める必要があるため、獣医師と相談しなければいけません。
感染の頻度が高そうな場合は、20日間の駆虫間隔で虫卵の排泄を押さえ込むことが可能ですが、頻度が多い分費用はかかります。
感染の機会が少なそうな場合は、費用の面も考えて定期的な投薬ではなく、感染が予想された日から数えて20日以内に1度投薬すれば駆除することが可能です。
駆虫薬については非常に効果が高く、しかも副作用のリスクがないものがあるので、定期的な使用でも問題ありません。
また、犬は散歩中に糞便を排泄することがありますが、すでに感染しているケースもあるので、糞便をそのまま放置するのは感染拡大の原因になり得ます。
そのため、飼い主が適切な方法で持ち帰って処理する必要があります。
虫卵対策としては、虫卵による汚染が推測できる場所やものに適切な対処をすることが重要となります。
虫卵が含まれる糞便の焼却、あるいは病原体汚染物質として処理業者に依頼することは必須です。
虫卵を完全に取り除けなくても、水で流したり電気掃除機で吸い込むことは効果が見込めます。
ペットを駆虫したとしても体毛にごくわずかの虫卵が残っている可能性があるので、シャンプーをして洗い流すようにしましょう。
虫卵は高温や乾燥が弱点なので、熱湯消毒も予防や対策として効果的です。
洗えるものは熱湯をつかって洗い流して、そのあとにしっかり乾かすと残った虫卵もすべて死滅させることができます。

エキノコックス症の検査

血清検査と画像検査の2つの方法で、診断を行うのが一般的です。
娘胞嚢や包虫砂といった包虫の痕跡があれば、超音波画像やMRI、CTなどの画像検査で確認できます。
しかし、血清検査を含めて、包虫が成長しきっておらず小さい場合は、どちらの検査でも陽性とならないケースもあります。
包虫嚢が見られる場合も、一般的な良性嚢胞や腫瘍、あるいは悪性腫瘍と区別するのは非常に困難です。
生検法はほかの病気との鑑別のために行われることがありますが、病巣の腹腔内や穿刺創への播種・定着の機関性が高いため、通常は行われません。
吸引してとれた嚢胞液中の包虫砂は診断の役に立ちます。
血清検査では全血球計算で好酸球増加が確認できることがあるため、行う価値はあります。
血清検査は感染直後に行っても抗体価が変化していないことが多いので、時間を置いて再度実施するか、定期的に行うことが大切です。
どこに住んでいるか、キツネや犬との接触歴なども診断を行ううえで非常に重要な要素となるので、内容を整理して伝えるようにしましょう。

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