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トキソプラズマ症の原因・症状・感染経路・治療・予防・検査など

公開日: : 最終更新日:2015/09/22 感染症, 人獣共通感染症


トキソプラズマ症はトキソプラズマによる原虫感染症で、この感染症は世界各地で確認されています。
世界人口の3分の1が感染されているとも言われますが、その有病率は地域によって大きく異なります。
ここではトキソプラズマ症について、くわしく見ていきます。

トキソプラズマ症の症状

人間や動物の多くに感染する菌ですが、免疫機能に問題がなければ症状は軽度で済み、ほとんどは自然治癒します。
のどの痛みや微熱、痛みをともなわないリンパ節の腫れといった程度で済むことがほとんどです。
しかし、幼児や免疫機能が機能低下している人の場合は、症状が悪化することもあります。
発症すると、悪寒や高熱、リンパ節の腫脹といった風邪に似た症状があらわれ、感染した場所によっては心筋炎や肺炎、肝炎、髄膜脳炎などが引き起こされます。

感染された臓器は正常に機能しなくなり、さまざまな障害が起こります。
症状が悪化して脳炎となると、痙攣発作や錯乱、頭痛、言語障害、半身の脱力といった神経症状があらわれます。
エイズ患者がトキソプラズマ性脳炎によって頭蓋内に病変を来すことがありますが、これは前に感染したものが再活性化して生じることがほとんどだと言われています。
臓器移植などによって、免疫抑制中にトキソプラズマ症を発症することがありますが、あらたにキソプラズマに感染する場合と、前に感染していたものが活性化することで起きる場合の2パターンがあります。
妊娠6ヶ月前~妊娠中に女性がはじめて感染した場合、ごくまれに胎盤を介して胎児が感染して発症することがあります。
これは一般的に先天性トキソプラズマ症と呼ばれ区別されています。

症状としては、精神遅滞、黄疸、痙攣、水頭症、頭蓋内石灰化、脈絡網膜炎、肝臓や脾臓の腫大、黄疸、痙攣、水頭症などが挙げられ、死産や流産にいたる場合もあります。
胎児の発症率は、妊娠後期に近づくにつれて高くなります。
そのため、妊娠初期には胎児に感染する可能性は低いですが、万が一感染してしまうと症状は重篤化する傾向にあります。
先天性トキソプラズマ症にかかった小児は、生後すぐに死亡に至ることもあれば、何ヶ月も経過してからはじめて症状があらわれることもあります。
人によっては何年も症状が見られない場合もあり、生涯にわたって発症しないケースもあります。

眼の網脈絡膜炎の主原因のひとつである眼トキソプラズマ症は、先天性のトキソプラズマの感染によって発症することがほとんどです。
眼の眼底部分の網脈絡膜上にトキソプラズマが入り込むことで、網脈絡膜が剥がれ手萎縮と色素沈着が生じます。
そして、視力障害や視野の異常などが起こりますが、眼の病変のみでほかの症状が確認できない場合、学童期まで気づかれないケースもあります。

トキソプラズマ症の感染経路

トキソプラズマ症を人間が発症する場合、猫の糞便に存在する菌の経口摂取、もしくは加熱が十分されていない食肉に含まれる菌の感染が主です。
眼瞼結膜から感染することもありますが、経皮感染や空気感染などはありません。
日本国内の感染源としては従来は豚肉が多くを占めているとされてきましたが、現在ではトキソプラズマ症の報告は減少しています。
しかし、報告例が完全に消失したわけではなく、沖縄では発生数は増えていると言われています。

畜検査は全国で実施されていますが、沖縄ではトキソプラズマ症が全部廃棄対象疾病のなかでも上位となっています。
豚だけでなく、トキソプラズマは多くの動物に感染している恐れがあるため、牛や鶏などすべての食肉は十分加熱する必要があります。
食肉のほかにも、最近は土壌や水による感染が報告されています。
トキソプラズマはいろいろな動物の組織で育ちますが、卵であるオーシストが産み付けられるのは猫の腸にある内皮細胞に限られます。
産み付けられた卵は猫の糞に付着した状態で排泄され、土のなかで18ヶ月生存すると言われています。

この卵が土、あるいはほかのものを介して口から取り入れられたり、汚染されたものを口にすることで感染します。
できたばかりのオーシストは感染力が皆無ですが、数日で成熟して感染力を備えるようになります。
猫は最初にトキソプラズマに感染したあと1~3週間のみオーシストを排出しますが、排出されるオーシストの量は膨大です。
乾燥や冷凍などの環境にも強いですが、加熱には弱いとされています。

トキソプラズマ症の治療

感染していても、免疫機能がしっかり働いている成人の場合は症状があらわれないことは珍しくありません。
その場合は、特別な治療を行う必要はないでしょう。
症状が確認された成人と先天性トキソプラズマ症の乳児の場合は、スルファジアジンとピリメタジンかロイコボリンを併用して治療を行うのが一般的です。
高用量のピリメタミンも有用ですが、なんらかの疾患やエイズなどで免疫機能が働きにくくなっている人に適しています。

エイズ患者の治療では、トキソプラズマ症は再発するリスクが高いため、期間を設けずに投薬を行うのが一般的です。
スルファジアジンを用いるのがむずかしい場合は、クリンダマイシンもしくはピリメタミンで代用します。
脈絡網膜炎を発症している場合は、基本的な薬剤とともに、炎症抑制効果のあるプレドニゾロンやほかのステロイド薬が用いられます。

妊娠中の女性がトキソプラズマ症を発症した場合は、胎児への影響を防ぐためにアセチルスピラマイシンが用いられます。
アセチルスピラマイシンは1日1200mgで21日間服用し、14日間薬を飲まないというサイクルを1周期とし、これを分娩まで繰り返し行います。
妊娠中の女性が適切な治療を行うことで、重症先天性トキソプラズマ症の発生率が大幅に低下することがわかっています。

トキソプラズマ症の予防

人間への主な感染源は、猫の糞便に含まれるオーシスト、そして生肉とそれを取り扱った手指、包丁やまな板などの調理器具を介しての経口摂取です。
感染を防ぐには、肉を食す場合には十分に加熱すること、野菜やフルーツを食べる前には皮をむいてしっかり洗うことが重要になります。
洗う前の野菜や生肉に接触した手、食器、まな板、包丁などの調理用具は洗剤をつかってきちんと洗うことを徹底しましょう。

野良猫が庭で排泄することがあるので、土に触れる場合や庭作業をする場合は土に直接触れるのは避けるべきです。
使い捨て手袋などを用意して、作業をしたあとは石鹸をつかって温水できちんと汚れを落とすようにしましょう。
ペットとして飼っている猫が外に出ると、鳥やネズミを補食することで感染することがあります。
また、土壌をなめるなどすることで感染にいたるケースもあります。

猫を飼う場合は室内のみで生活をさせて、市販のキャットフードを与えるようにしましょう。
加熱しきれていない肉を与えると感染リスクが高まるので、避けることが大切です。
また、糞便中に含まれるオーシストはすぐに感染する力が備わっているわけではありません。
十分な感染力が備わるまでには1~5日ほどはかかるので、そうなる前にできるだけ早く処理することが重要です。

妊娠中の女性は感染しやすいので、ほかの人に処理してもらうか、どうしても自分で行う場合は使い捨てタイプの手袋をつかうようにして触れないようしましょう。
猫がオーシストを排出する期間というのは、最初に感染した数週間のみに限定されます。
そのため、予防は十分可能なので、妊娠したからと言って猫を余所に預けたり、隔離したりする必要はないでしょう。
トキソプラズマ症は感染にいたっても症状があらわれないか程度が軽い場合がほとんどです。

そのため、治療の必要がないケースも多いですが、妊娠中の女性や妊娠の予定がある女性、免疫力が低下している人は、通常よりも感染リスクが高い状態にあるので、きちんと予防することが大切です。
トキソプラズマ症の感染リスクが高い人は、トキソプラズマの血液検査を受けておくことも重要です。
免疫力が低下している人の場合、トキソプラズマが陽性であれば体のトキソプラズマの再活性化によって起こるトキソプラズマ症を予防する必要があります。
薬剤によって予防することは可能なので、検査結果を受けて検討することができます。

トキソプラズマが陰性の場合も油断はできないので、日頃から予防のための行動を心がける必要があります。
妊娠を目指す人も、トキソプラズマの血液検査を受けることが望ましいでしょう。
トキソプラズマが陽性の場合は、胎児に感染して先天性トキソプラズマ症を発症するリスクは低いと言えます。

陰性の場合は感染を防ぐための対策をとることができるので、検査をあらかじめ行うことは非常に大切です。
もうすでに妊娠している女性は、かかりつけの産婦人科で検査について相談しておくと安心です。

トキソプラズマ症の検査

妊娠中の女性に感染が疑われるケースでは、IgGアビディティ検査やIgM抗体検査、抗体検査などを行って、胎児に感染している可能性を検討します。
高確率で感染している場合は、羊水から原虫遺伝子をPCR法によって検出することで診断する場合もありますが、これは確かな方法とは言えません。
生まれた赤ちゃんを診断する場合は、移行抗体がなくなったあとに血清検査が行われます。

小児あるいは健康状態に問題のない成人がトキソプラズマに感染したケースでは、そのほとんどは特に症状はあらわれません。
症状があらわれた場合は検査を行い、通常は特異的IgGとIgMの抗体価測定によって診断されます。

免疫力が低下している人の場合は、感染によって腫瘤が生じることがあるので、CTやMRI、頭部造影などによって確認します。
トキソプラズマ脳炎の診断では、PCRによる髄液からの原虫遺伝子で行われますが、感度が高くないため陰性でも必ずしも感染していないとは言い切れません。

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