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ボツリヌス食中毒を詳細に:原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/06/30 感染症

ボツリヌス食中毒とは

ボツリヌス食中毒(ぼつりぬすしょくちゅうどく)とは、食餌性(しょくじせい)ボツリヌス中毒とも呼ばれているものであり、クロストリジウム属の細菌である「ボツリヌス菌」によって引き起こされる、感染症法上では4類感染症の毒素型食中毒です。

診断を行なった医師は最寄りの保健所にただちに届出を行なうことが義務となっています。

ボツリヌス菌は泥砂(でいさ)のなかにせい息しており、熱への耐性が高い芽胞(がほう)という生殖細胞を形成し、酸素のない環境で発芽して増殖、毒素を発生させます。

一口に毒素といっても自然界には数多くの種類が存在しますが、ボツリヌス菌によって生み出される毒素は、そのなかでも現状において一番強力とされているものです。

菌はA、B、C、D、E、F、Gの型が存在しており、人間にとって有害な作用を引き起こす主要な種類はこのうちA型、B型、E型、F型です。
A型とB型は土壌中に、E型とF型については海底や湖沼にせい息しています。

ボツリヌス食中毒はボツリヌス菌の増殖により生み出された「ボツリヌス毒素」を食品と一緒に摂ったあと、数時間~1日以上で症状が引き起こされるようになります。

主な症状は吐き気、嘔吐(おうと)、視力障害、言語障害、嚥下(えんげ)障害といった神経症状であり、重症の場合には呼吸麻痺(まひ)を引き起こして命を落としてしまいます。
神経症状は左右対称に引き起こされるのが特徴です。

致死率は原因療法である「抗毒素療法」が開始された1962年以降、約4%にまで下がっていますが、この治療方法が行なわれるようになるまでは約30%と、命を落としてしまう確率の高い病気でした。

食中毒というと多発しているイメージがある人が少なくないでしょうが、ボツリヌス毒素による食中毒は1951~2012年までの発生件数は120件であり、あまり発生していません。

120件「も」発生しているのかと思う人がいるかもしれませんが、厚生労働省の2008年(平成20年)食中毒統計調査(平成21年6月26日付)で、細菌が原因となった食中毒で一番発生件数が多かった原因菌はカンピロバクターであり、509件も発生しています。

約60年間で120件と2008年で509件ということで、ボツリヌス食中毒があまり発生していないということがご理解いただけたのではないかと思います。

細菌性食中毒の種類

細菌性食中毒は食中毒全体の約6割を占めているといわれています。

そのなかで毒素型の菌はボツリヌス菌、黄色ブドウ球菌、セレウス菌、感染型としてカンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などがあります。

毒素型と感染型の違いとして、毒素型の細菌は毒素の摂取によって引き起こされる食中毒であるのに対し、感染型は細菌感染した食品を口に入れて、体のなかで増殖した細菌が病原性を持つことによって引き起こされるという点をあげることができます。

ボツリヌス食中毒の原因

この病気はボツリヌス菌(芽胞)が食品に混ざり、酸素がない環境で発芽、増殖して産生されたボツリヌス毒素を、その食品と共に摂取することで引き起こされます。

酸素のない環境になる食品としては、缶詰、びん詰、容器包装詰め食品、保存食品をあげることが可能であり、缶詰やびん詰に関しては自家製食品が原因となったケースが多いです。

日本では、北海道や東北地方の特産である郷土料理の飯寿司(いずし)という魚の発酵食品が原因であるボツリヌス食中毒が、1997年ごろまで発生していました。

しかしながら、いまでは自家製のいずしを作る文化が廃れてしまったこと、これまでの食中毒の発生で対策が強化されたことを主な理由として、報告例はほとんどありません。

1951~2012年に発生したボツリヌス食中毒120件のうち、104件は飯寿司によって起こったものです。

すでに述べたように、飯寿司による食中毒の発生は激減しましたが、容器包装詰め食品によるボツリヌス食中毒やびん詰、自家製の缶詰が原因となった事例があります。

容器包装詰め食品というのは、120℃で4分間の加熱処理が行なわれていない製品のことをいいます。
食品にボツリヌス菌が混入している場合、加熱処理がされていないということで菌は死滅せずに残っているというわけです。

なお、容器包装詰め食品は容器が膨張していることや封を開けることによっておかしなニオイがすることがありますが、こうしたものではボツリヌス菌が増殖している可能性が高く、たいへん危険です。

飯寿司とは別のものでボツリヌス食中毒を発生させる原因となったものとしては、井戸水、真空パックの辛子れんこん、輸入キャビアびん詰、あずきばっとう、里芋の缶詰、国外産のグリーンオリーブびん詰、パック詰めのハヤシライスソースといったものがあげられます。

これらのうち、あずきばっとうというのは何なのか、なじみがないという人もいるでしょうが、これは岩手県の郷土料理であり、甘さ控えめの小豆汁のなかに「はっとう」と呼ばれる平打ちうどんが入った食べ物です。

なお、発生したすべてのボツリヌス食中毒で原因食品がはっきりしているわけではなく、原因食品の不明なボツリヌス食中毒が占めている割合が圧倒的に高いという状況です。

ボツリヌス食中毒の症状

いつ発症する?

ボツリヌス毒素によって汚染された食品を摂ったあと、一般には8時間~1日半程度の時間が経過して症状が出現します。
そのため、直前に摂取した食品が原因とは限りません。

もっと前に摂った食品でボツリヌス毒素が産生されて、食中毒を起こしている疑いもあります。

なお、一般には8時間~と述べましたが、短時間で起こるものだと5~6時間しか要さないことがありますし、長くかかるものだと2~3日間が経過して症状が引き起こされるケースもあります。

引き起こされる症状の種類は下記のとおりです。

腹部膨満(ぼうまん)感

ボツリヌス食中毒の症状が進行することによって起こる症状です。
胃や腸が膨れることによってお腹が張り、圧迫感があります。

吐き気・嘔吐

ボツリヌス食中毒の初期段階で引き起こされることが多い症状です。
気分が悪くなり摂取したものを吐いてしまいます。

頭痛・めまい
初期に起こることが多い症状です。
別の症状と一緒にめまいが付随する形での頭痛が引き起こされます。

口の症状

口のなかが渇く、しわがれ・かすれ声が出る、言葉が喋りにくくなる、ものをうまく飲み込めなくなるといった症状が出現します。
めまい、頭痛が付随する形で起こる全身の違和感などの症状が出現する前後に引き起こされます。

また、ものをうまく飲み込めなくなる症状は嚥下障害といいますが、この症状により唾液や食べ物が肺に取り込まれてむせたり、のどに詰まったりすることによって肺炎(はいえん)を招く危険性があります。

眼の症状

最初の段階で起こることが多い症状です。
視力が落ちる、目がかすむ、ものが二重に見える、まぶたが垂れるといった異常が起こります。

下痢・便秘

お腹を下してしまう症状はボツリヌス食中毒の初期段階で起こることが多いです。
一方、便秘の症状を引き起こす人もいて、症状が進行した場合に出現することがあります。

胃けいれん

初期段階のボツリヌス食中毒で出現することがよくある症状です。
胃けいれんを起こすと突然、みぞおちのあたりに痛みが生じます。

尿閉(にょうへい)

ボツリヌス食中毒の症状が進行することによって起こり得る症状です。
膀胱(ぼうこう)のなかに多量の尿がたまり、尿意はあっても排尿を行なえなくなるという症状です。

四肢(しし)の麻痺

腹部膨満感、便秘、尿閉と同じくボツリヌス食中毒の症状の進行とともに引き起こされる症状の一つです。
四肢というのは手足のことをさしています。

脱力感

ぐったりとしてしまう症状です。
ボツリヌス食中毒の症状の進行と共に起こり得ます。

呼吸困難

重症のボツリヌス食中毒で起こる症状です。
呼吸器系が麻痺してしまうことによって、酸素を供給することができない状態が続いた結果、脳死状態に陥るリスクがあります。
また、治療を受けることができなければ命を落としてしまうことは避けられません。

疲労・息切れ

一部の人に引き起こされる症状であり、回復したあと長く続いてしまいます。
何年間という長期にわたり持続するボツリヌス食中毒の後遺症であり、地道に理学療法を受け続けなければいけません。

そのほかの症状に関する特徴

さまざまな症状が引き起こされる可能性のあるボツリヌス食中毒ですが、体温に異常は起こりません。
高熱が出たり、反対に体温低下が起こることはほとんどないです。

また、症状が進行したとしても意識ははっきりとした状態であるというのがこの病気の特徴の一つです。
そのほか、人間から人間へとうつったり、動物から人間へとうつったりするようなことはありません。

ボツリヌス食中毒の検査・診断

何科へ行くべきか

まずは内科へ行きましょう。
そこでの対応が困難な場合には、対応可能な医療機関の紹介を受けることが可能です。

息苦しい場合には呼吸筋が動かなくなって呼吸が停止します。

この場合には人工呼吸器を装着する処置をほどこさなければいけず、対応が遅れると命を落とすことになりかねないためすぐに救急車を手配しましょう。

どうやって調べるのか

どういう症状が出現しているのか、症状が引き起こされるまでの暮らしぶりがどうだったのかを確かめることにより、ボツリヌス食中毒が疑われることになります。
診断は血液中に毒素が存在すること、便培養でボツリヌス菌がいることがわかると確定します。
なお、毒素はボツリヌス食中毒を起こしている人が食べたものから検出されるケースもあります。

モタモタしていると命に関わる病気であるため、治療は診断を確定することを目的とした検査の結果が出るまでのあいだに行なわれるケースが多いです。
マウスを使用することによる毒素の検出も行なわれています。

毒素が入っている検査材料をマウスに注射することにより、腹部筋肉の弛緩(しかん)性麻痺を起こし、多量の毒素では呼吸麻痺を招いて命を落とします。

また、抗毒素を事前に注射したマウスに、毒素が入っている検査材料を注射した場合、毒素が抗毒素によって中和されることにより、マウスはボツリヌス食中毒を起こすことなく生きています。

ボツリヌス食中毒の治療

どんな治療が行なわれる?

ボツリヌス食中毒を引き起こした場合、早期に「乾燥ボツリヌスウマ抗毒素」という抗毒素血清の投与を行なうことにより、高確率で有効とされています。
抗毒素血清の投与は注射によって行なわれる治療方法です。
抗毒素にはアナフィラキシーや血清病を引き起こすことがあります。

また、活性炭を投与することにより、体内にある吸収されていない毒素を除去する方法もあります。
活性炭は口から投与するか、胃に管を挿入し、その管から投与するかのいずれかが選択されることになります。

そのほか、ボツリヌス食中毒の重症例では呼吸困難を引き起こすリスクがありますが、症状が出現した場合には集中治療室で人工呼吸器を装着する方法があります。

どのぐらいで回復する?

ボツリヌス食中毒を起こした人によって、回復まで要する期間には違いがあります。
数日間でよくなるケース、数週間でよくなるケース、数ヶ月間でよくなるケースとさまざまです。

疲労や息切れの後遺症が残った場合には何年間ものあいだ症状が続くため、長期に及ぶ理学療法を受けなければいけなくなります。

ボツリヌス食中毒の予防

食品の洗浄を徹底する

食品に付着した食中毒を引き起こす原因菌であるボツリヌス菌は、十分に洗い流すことによりリスクを低下させることが可能です。
野菜類、果物類、魚介類といった食品は流水を使い、ていねいに洗い流します。

また、料理で使用した調理器具やシンクなどもしっかりと洗い、菌を徹底して残さないようにすることが大切です。

食品は十分に火を通して摂取する

ボツリヌス食中毒の直接の原因である毒素自体は、80℃で30分以上または100℃以上で数分間以上の加熱を行なうことによって食中毒を回避することが可能です。
食事をとる直前にしっかりと火を通すくせをつけるとよいでしょう。
また、自家製の缶詰食品に関しては、10分間の煮沸を行なうことによって食中毒の予防効果が得られます。

自家製食品を避ける

ボツリヌス食中毒は自家製食品によって発生している割合が圧倒的に高いです。
ボツリヌス毒素は前述した温度と加熱時間で破壊することが可能ですが、原因菌であるボツリヌス菌は熱への耐性が高く、120℃で4分間あるいは100℃で6時間以上、加熱を行なわなければ完全に殺菌することができません。

自家製の缶詰、びん詰、真空パック、いずしなどは素材の洗浄を徹底して行ない、火を通すことで菌を死滅させて、なおかつ3℃未満で冷蔵保存するか、マイナス18℃以下で冷凍保存しないと食中毒のリスクが高まります。

自作は手間と時間がかかるうえに食中毒のリスクが上昇するということで、回避したい人は自家製食品をつくらない、人にゆずらない、食さないのが無難といえるでしょう。

形や色、ニオイがおかしいものは食べない

膨張した状態の缶詰、真空パックはボツリヌス食中毒のリスクがあるため食べてはいけません。

また、酪酸臭というバターのようなニオイがするなど、異臭をはなっているものも同様に食べるのは危険ですのでやめましょう。
変色を起こしている缶詰も危険ですので食べてはいけません。

食品の表示を守る

食品を気密性のある容器包装に入れ、密封した後、加圧加熱殺菌という記載がないもの、要冷蔵、10℃以下で保存してくださいなどと記載のある商品があります。
こうしたものは絶対に冷蔵保存を行ない、期限が到来してしまうまでに消費してしまいましょう。
表示にしたがわない、期限内に消費しない場合には、ボツリヌス食中毒のリスクを高めてしまうことになります。

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