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反応性関節炎(ライター症候群)の原因,症状,検査,治療,予防など

公開日: : 最終更新日:2017/05/10 感染症

反応性関節炎(ライター症候群)とは(概要)

反応性関節炎(はんのうせいかんせつえん)は、1961年に医師ハンス・ライターにより報告されたことにちなんで、ライター症候群とも呼ばれています。
ライターの報告では、赤痢に罹患した患者が、そのあとに関節炎、尿道炎、結膜炎の症状をしめしたとあり、1981年になり米国リウマチ学会が尿道炎、下痢、子宮頸管炎などに続いて関節炎が1ヶ月以上続く症状を「ライター症候群」として紹介したことで、この名称が広まりました。
このように比較的新しく定義がされた病気で、それまでは関節リウマチとの区別がついていませんでした。
1960年代になり、関節リウマチ患者の多くはリウマイド因子という抗体が陽性を示すことが発見されることにより、リウマチと反応性関節炎が区別されるようになっていきます。

また、反応性関節炎の定義として、「HILA-B27(ヒト白血球抗原のうちのひとつ)関連脊椎関節症を伴う微生物が関与した関節炎」であることが提唱されるようになり、そのほかの感染症が関連した関節炎とは別の疾患として扱われるようになりました。
つまり、反応性関節炎は、特定の白血球抗原を持つ人が、微生物の感染症により誘発されて発症した脊椎関節症と定義されています。
我が国における感染者数は、症例が少ないため正確なことはわかっていません。

欧米白人の場合、HIA-B27の陽性者は7~14%であり、我が国での1%以下を大きく上回っていることから、人口100,000人あたり年間4~6人の患者が出ていると推定されています。
発症年齢としては20歳前後が圧倒的に多いですが、発症者自体はあらゆる年代にわたっています。
また、反応性関節炎は性別でいうと、女性と比較して男性に多く見られる疾患です。

反応性関節炎(ライター症候群)の原因

反応性関節炎の原因や発症のメカニズムについては、微生物への感染症のあとで発症すること以外、現時点ではよくわかっていません。
発症に関与するといわれている微生物としては、クラジミア菌、サルモネラ菌、赤痢菌、キャンピロバクター、エルシニア菌などがあげられています。
ヒトの白血球の抗体にはさまざまなタイプがあり、膨大な種類に及びますが、そのなかでもHILA-B27を持っている人の多くが、上に挙げた微生物への感染後に発症しています。

そのため、反応性関節炎はこの抗体に関連した症状であろうと考えられています。
ただし、HILA-B27を持たない人でも発症したケースはあります。
また、HILA-B27に関連した脊椎炎ということで、同様にHILA-B27保持者か患者の9割を占める強直性脊椎炎と似た発症機序をとると考えられています。
原因菌の感染要因としては、性的接触や不衛生な食品の取り扱いが多く挙げられます。

つまり、反応性関節炎は環境要因により発症する病気であるともいえます。
反応性関節炎そのものは遺伝性の病気ではありませんが、この病気と強い相関関係をもつHILA-B27が遺伝した場合は、発症する可能性はあります。
そのため、遺伝素因は反応性関節炎の大きなリスク要因となります。

また、炎症性腸疾患により反応性関節炎を起こすこともあります。
炎症性腸疾患とはクローン病と潰瘍性大腸炎のことで、下痢や血便を主症状とします。
これらの疾患は、5~10%の人に腸管以外の症状が出ることがあり、その1つとして関節炎を起こすことがあります。
潰瘍性大腸炎の場合、関節炎が発症した場合には本体である腸管の病気も悪化するケースが多いようですが、クローン病の場合は関節炎との病勢の連動はとくにないといわれています。

反応性関節炎(ライター症候群)の症状

症状としては、3つの特徴を示します。
脊椎関節症、無菌性尿道炎、結膜炎です。
また、細菌感染を契機として全身の免疫反応により発症する疾患なので、関節内には微生物が存在しないのが特徴です。
これら反応性関節炎の症状が出る前には、微生物感染症が先行しておきます。
また、リウマチと違って、通常であれば骨の破壊は起こりません。

脊椎関節症

微生物感染後、4~6週後に関節炎が発症します。
抹消関節炎は、膝や足関節といった下肢に出ることが多いのが特徴で、ひとつの関節が炎症を起こす単関節炎、または全身ではなく5関節未満の少数の関節が炎症を起こす少関節炎として発症します。
また、非対称に発症します。

たとえば膝に発症したとしたら、片方の膝だけに発症し、両膝ともが痛くなることはありません。
背骨と骨盤のつなぎ目にある仙腸関節が炎症を起こす仙腸関節炎は、患者の20%に発症し左右の臀部のうち片側だけに軽い痛みが現れることが多いといわれています。
腱付着部炎は約70%発症し、強い痛みを伴います。
踵の骨に繋がる腱に発症することが多く、足底腱膜起始部、アキレス腱付着部などに多く発生します。

わかりやすい症状としては、踵やアキレス腱、下半身の痛み、足指の腫れなどがあります。
関節痛は、腰、膝、足首を中心にして発症します。
また、重い症状になると腰の痛みにより、背中が痛くなることもあります。

無菌性尿道炎

尿道炎は関節炎に先行して発症することが多く、この病気の最初の自覚症状となることがあります。
反応性関節炎は男性に多い病気ですので、尿道炎は主に陰茎亀頭の潰瘍としてあらわれ、20~50%の患者に認められます。
尿道が炎症を起こし、軽度の排尿困難や排尿時痛を起こします。

また、膿のようなものが出ます。
前立腺炎を伴うこともあります。
女性の場合、こうした症状が尿道炎の他に子宮頚管に炎症として現れることがありますが、症状は軽微なものである傾向があるようです。
尿道炎はクラジミア菌の感染により発症しますが、これは性病としてポピュラーなものです。

結膜炎

目が充血し赤くなる症状です。
また羞明(しゅうめい)といって、強い光を受けた時に目に不快感や痛みを生じます。
目やになどの分泌物が出ることもあります。

また、ブドウ膜炎や虹彩炎を併発することもあります。
こうした目の症状は、無痛性の軽微なものが多いことから見逃される傾向があります。
以上の3つのほかにも、手のひらや足の裏の皮膚病変、口内炎といった症状を引き起こすことがあります。

口内炎は無痛性のものが多い傾向があります。
また、まれに合併症を起こし、大動脈閉鎖弁不全、IgA腎症、脳や神経など障害、肺を覆う膜の炎症などが現れることがあります。

反応性関節炎(ライター症候群)の検査

特異な検査所見はなく確立した診断基準がないため、微生物に感染して4~6週経ったときに脊椎関節症を発症した場合、白血球抗原を検査しHILA-B27が陽性であれば、反応性関節炎であると診断されます。
尿路感染に起因する場合は、尿道からの分泌物や尿の細菌培養、PRC(ポリメラーゼ連鎖反応)によるDNA検査、結成抗体値測定を行ないます。
細菌性腸炎が原因と考えられる場合、便の培養をします。

関節痛ですが関節内の感染症ではないため、関節液の細菌はこの病気の証明には使われません。
骨X線やシンチグラフィによる画像検査を行なうこともあります。
反応性関節炎はその性質上、細菌感染後時間を置いてからの発症となるので、診断が困難になる傾向があり、症状の特定が遅れることがあります。

反応性関節炎(ライター症候群)の治療

反応性関節炎は、関節が細菌に感染して起こる現象ではないので、関節に対して抗菌薬を投与しても意味がありません。
通常、この症状は通常は一過性のもので6週間から6ヶ月で自然治癒するので、それまで痛みを緩和するだけで治療としては充分とされています。
痛みへの対処のために主に利用される薬物は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)ですが、症状が長引く場合は、サラゾスルファピリジンやメトトレキサートといった、抗リウマチ薬を使用します。

これらの薬が効かない場合は、腫瘍壊死因子をターゲットとした生物学的製剤を投与します。
あまりに痛みが激しい場合、関節にコルチステロイドという炎症を軽減する薬剤を注入することもあります。
また、マッサージやリハビリなどの理学療法も、関節痛の緩和に効果を発揮する場合もあります。

このように、痛みの緩和をしつつ、病気の原因である感染症の治療を行なっていきます。
根本である感染症を取り除かないかぎり、反応性関節炎の治療はありえないわけです。
感染症の治療は抗生物質の投与などが中心となりますが、クラジミア菌への感染が原因の場合、再発を繰り返すので、テトラサイクリン系薬剤を2週間投与することになります。
また、患者だけでなく、性交渉の相手にも同様の薬剤を投与します。

ただし、必ずしも効果があるとは限らず、最適な投与期間がわかっているわけではありません。
炎症性腸疾患に伴う関節炎では、腸管の治療の強化が重要と考えられています。
そのため、関節炎そのものをターゲットとした薬剤試験は行なわれていないので、どういった薬が効くのかはよくわかっていません。
腫瘍壊死因子阻害薬であるインフリキシマブとアダリムマブは、ともに潰瘍性大腸炎とクローン病への保険適用があり、関節リュウマチにも効果があることから、炎症性腸疾患による関節炎への効果が期待されています。

逆に、細菌感染症による反応性関節炎に効果的な非ステロイド性抗炎症薬は、腸管病変への悪影響があると考えられていますが、鎮痛薬として使用されることがあります。
治療中は、痛みが強いときは可能な限り安静にします。
外傷とは違いますので、痛みが強いときに無理に動かしても、関節炎を悪化させるだけです。

また、細菌感染症や炎症性腸疾患の症状を悪化させないことにより、関節炎の治療につながることもあります。
予後としては、細菌感染症による反応性関節炎であれば80%は自然に治癒しますが、数年にわたり再発するケースも多々あります。
再発を繰り返すと関節や脊椎の変形につながりますので、関節の恒久的な機能障害につながる恐れがあります。

また、慢性化して脊椎関節症に移行するケースもあることがわかっています。
炎症性腸疾患による反応性関節炎の場合、元となる腸疾患が特定疾患に認定されるほどのものですので、治療は難しく症状を寛解状態へ持っていくことが重要となってきます。
この場合は、症状が治まれば関節炎も沈静化する傾向が強いと考えられています。

反応性関節炎(ライター症候群)の予防

反応性関節炎の予防法は、細菌への感染を防ぐことです。
この病気の原因となるクラジミア菌、サルモネラ菌、赤痢菌、キャンピロバクター、エルシニア菌は、主に不衛生な環境に触れたときに感染するものです。
クラジミア菌は性病の原因として有名ですし、サルモネラ菌は食中毒の原因としてポピュラーなものです。
エルシニア菌やキャンピロバクターも食中毒細菌として知られており、集団食中毒の原因となるものもあります。

赤痢はについては、近年はあまり患者の発生は聞きませんが、大都市などの人口密集地では近年になり衛生環境の悪化が心配されているので、注意が必要となります。
そのため、食物を取り扱う前や動物に触ったあとには手を洗うこと、食品を保管や調理をする場所の衛生状態を保つことなど、基本的な公衆衛生に則った行動が必要となります。
眼や口に触れるときにも、できれば手を洗ってからにしましょう。
また、性行為をする場合には、コンドームの使用を徹底しましょう。
クラジミア菌の感染は婚外交渉が多い男性に多発する傾向があります。

また、そうした男性からうつされてしまうケースもあります。
日本国内で生活するうえでは、こうしたことに気をつけていれば細菌への感染リスクはさほど高くないといえますが、衛生環境が良いといっても無菌室にいるわけではありません。
油断せず手洗いうがいをしましょう。
また、感染症を防ぐには免疫力を高める必要があります。
現代人はストレスや不規則な生活など免疫力低下のリスクにさらされていますので、注意して健康を保つようにしましょう。

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