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細菌性赤痢の原因・症状・感染経路・治療・予防・検査など

公開日: : 最終更新日:2015/11/08 感染症


細菌性赤痢は、赤痢菌によって発症する急性下痢症のひとつです。
2007年4月に改正された感染症法においては三類感染症に分類され、患者と無症状でも病原菌をもっている人は届け出ることが義務づけられています。
ここ数年の日本国内の報告数は500~600件で、20代の患者が多いとされています。
国外感染が多くの割合を占め、特にインド、インドネシア、タイなどのアジア地域での感染率が高いと言われています。
ここでは細菌性赤痢について、紹介していきます。

細菌性赤痢の症状

赤痢の症状のあらわれ方として多いのが、1~3日の潜伏期間を経て悪寒をともなう高熱や全身の倦怠感、水様便といった症状が見られるといった流れです。
1~2日間は発熱が継続し、膿粘血便やしぶり腹、腹痛などがあらわれます。
しぶり腹というのは排泄後もすっきりせずに、すぐにトイレに行きたくなるという症状です。
赤痢にはいくつかの菌があり、日本国内で多いのがゾンネ菌という種類です。
この菌は感染しても、重症化することはあまりなく、多くは下痢や発熱のみで、菌をもっていても症状がまったくない人もいます。
しかし、高齢者や小児は症状が重篤になることが多いので、気をつける必要があります。
もっとも病原性が高い菌の場合は、腸内で出血が起こるため、血便が確認されます。
それ以外の菌で血便が確認されることはありません。
症状が悪化して脱水が起こると、程度によってはショックや死亡にいたるケースもあります。
こういった症状は栄養不良あるいは衰弱している高齢者や小児、慢性疾患を抱える人などで発生しやすいと言われています。
溶血性尿毒症症候群が起こると赤血球がこわされて、脱力や疲労、軽い頭痛をともなう貧血などが生じます。
血液の凝固が進んで、腎臓の働きが止まってしまうこともあります。
脳卒中やけいれん発作などのリスクも高まるので、注意が必要です。
成人の場合も、下痢症状があらわれた数週間後~数ヶ月後に、反応性関節炎や排尿痛、眼の炎症があらわれるケースがあります。
細菌性赤痢と似た症状にアメーバー赤痢という感染症がありますが、感染経路や適した治療方法はちがいます。

細菌性赤痢の感染経路

赤痢菌はA群(志賀赤痢菌)、B群(フレキシネル菌)、C群(ボイド菌)、D群(ソンネ菌)の4種類があります。
志賀赤痢菌はもっとも病原性が高く、志賀毒素を生成します。
フレキシネリ菌も赤痢の特徴的な症状を引き起こしますが、日本国内で発症件数が多いゾンネ菌は病原性がそれほど強くありません。
ボイド菌は日本国内ではほとんど見られず、発症者はごくわずかです。
赤痢菌は汚染された水や食品を通じて感染にいたりますが、感染に要する赤痢菌の量は10~100個と少量です。
つまり少量の菌だけで感染にいたってしまうため、箸や食器などを介して感染することがあるということです。
水や食品だけでなく、人間同士で糞口感染することが知られています。
家族間での二次感染率が高い感染症でもあるので、抵抗力の弱い小児や高齢者の感染には気をつける必要があります。
人間だけでなく、猿などの動物を介して感染することもあるので注意が必要です。
塩素処理が十分になされていないプールに入ること、口腔性交・肛門性交などによって感染にいたることもあります。
人口が密集していること、衛生状態が整っていないといった条件下だと、細菌性赤痢は蔓延しやすくなります。
たとえば開発途上国や軍隊のキャンプ、周遊船、知的障害者向けの施設、難民キャンプ、長期療養施設、小児のデイケアセンターなどは、適切な対策をしないと細菌性赤痢は容易に拡大します。
特に開発途上国は深刻で、細菌性赤痢は下痢に関係した乳幼児死亡の原因の多くを占めています。
日本国内での感染は輸入食品や国外で感染した人からの二次感染が主であると言われていますが、牡蠣を介した集団感染、学校やホテルなどの集団発生なども報告されています。

細菌性赤痢の治療

細菌性赤痢の治療では、5日間にわたって抗菌薬を服用するのが一般的です。
早い段階で抗菌薬を用いた治療を開始すると、症状の継続時間や保菌期間が短縮される傾向にあります。
抗菌薬は、成人の場合はニューキノロン系、小児にはホスホマイシンが選択されます。
乳酸菌やビフィズス菌などが含まれる制菌整腸薬も同時に服用し、脱水症状が見られるようなら点滴や経口補液を用いて水分補給を行います。
解熱剤は脱水を悪化させる恐れがあること、ニューキノロン系の薬との相性が悪いものが多いため、使用には慎重さが求められます。
効果が強い下痢止めは感染症を長引かせる可能性があるため、通常は用いられません。
治療がおわっても再度検査をする必要があり、時間を置いて2回検査が行われます。
それで陰性が出て、はじめて保菌していないことが認められます。
感染症状が重度の場合は3~6週間は症状がつづくので、入院が必要となる場合があります。
入院中は塩分入りの輸液を静脈内投与し、溶血性尿毒症症候群などの合併症状が見られる場合はその改善を目指します。
シプロフロキサシンやアジスロマイシン、トリメトプリム・スルファメトキサゾールといった抗生物質が治療に用いられます。
症状が重症化している人のほか、高齢者や幼児、感染がほかに拡大する恐れがある場合などにこの治療は行われます。
抗生物質は、症状が軽度な場合は必ずしも用いられるわけではありません。
抗生物質を用いることで、症状が緩和されて、便に最近が排出される期間が短縮されます。

細菌性赤痢の予防

細菌性赤痢は世界に広く分布している感染症で、特に衛生状態が悪化した国に顕著に見られます。
そういった場所を訪れる場合は、生ものや生水などは口にしないことがこの感染症を予防するうえで重要となります。
屋台などで売られている氷やヨーグルト飲料などを介して感染にいたった症例もあるので、衛生上問題のある飲食店や屋台での飲食も控えたほうがいいでしょう。
生野菜や生の魚介類などから感染するケースもあるので要注意です。
また海外旅行をする場合は訪れる地域の感染症情報をあらかじめ集めておき、危険性が高い場合は十分に注意する必要があります。
細菌性赤痢の予防ワクチンは現時点では開発にいたっていないので、ある程度の自衛が必要です。
口にするものに注意するだけでなく、定期的に手洗いするなど気をつける必要があるでしょう。
また、感染を拡大しないためには、感染者に食事をつくらせないこと、感染者の世話をする場合は食品を取り扱う前やほかの人に触れる前に手洗いすることが大切です。
感染者が身につけた衣服や寝具に付着した便は水で洗い流して、汚れたものはお湯をつかって洗濯機で洗います。
洗濯作業が終わったら洗濯機や流しなどは薄めた塩素系漂白剤などの消毒液で拭きましょう。
小児が感染した場合は、ほかの子供との接触は避ける必要があります。
感染した症におむつは密閉状態にあるゴミ箱に捨てて、おむつ交換をした場所はそのつど消毒液で掃除をします。
場合によっては隔離が必要となるので、医療機関や保健所の指示をあおぐようにしましょう。

細菌性赤痢の検査

細菌に接触した人で、熱や痛み、出血をともなう下痢、水様性下痢などの症状がある場合は細菌性赤痢が疑われます。
診断を確かなものにするために、便サンプルを研究室に送って細菌培養して赤痢菌の有無を確かめます。
培養結果が明らかになれば、症状が似ているほかの病気とも区別することが可能です。
より検査結果が出るまでの期間を短縮するために、菌の遺伝子を検出する方法も開発されています。
海外に滞在中に血便をともなう下痢などの症状が確認されたら、細菌性赤痢の可能性があるのでできるだけ早く検査を受ける必要があります。
検疫所もしくは培養検査を実施可能な医療機関で相談し、便の細菌検査を早めに受けるようにしましょう。

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